落枝蒐集領域幻想郷   作:サボテン男爵

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続きました。
プロット? 奴ならここから先の戦いにはついてこれそうにないから、置いてきたよ。


落枝蒐集領域幻想郷 その1

 藤丸立香は人類最後のマスターである。

 

 人理継続保障期間フィニス・カルデアに招聘された48番目にして、今現在では唯一のマスター。

 唐突に世界を焼き尽くした人理焼却事件を解決――その後おおよそ1年の時を経て人理は再び崩壊し、世界は漂白された。

 今は数多の異聞帯によって侵略された地球を、汎人類史の手に取り戻すための戦いを続けており、多くの犠牲を払いながらも3つの異聞帯と空想樹を伐採。

 先立っては日本の江戸時代に出現したビーストⅢ/Lを何とか討伐し、現在はインド異聞帯攻略の準備が終わるまで、待機しているところだった。

 

 さて、ここまでの事柄を並べると休みの欠片もない、激務の日々のように感じるかもしれないし、実際夢の中ですら唐突にどこぞに放り出されることがあるので割と気の休まる暇はなかったりするのだが、この日は珍しくゆったりとした時間を過ごしていた。

 

 ――誰も自分の布団に潜り込まず、ベッドの下にも天井にも潜んでいない清々しい起床。

 ――比較的穏やかな気質のサーヴァントが集まっていたタイミングでの、優雅な朝食。

 ――大きなトラブルも起こらない、平穏な昼下がり。

 

 現在ではメインサーヴァントであり後輩でもある(実際経歴的には先輩にあたるが)マシュと共に、マイルームで談笑しつつ紅茶を飲み交わしていた。

 そんな穏やかで当たり前なひと時――

 

「子イヌー!!」

「――ふう、さようなら平穏」

 

 どたばたと部屋に転がり込んできた鮮血魔嬢の姿を認めた瞬間、その瞳には諦観の色が浮かび、あったかもしれない“何事もない1日”に別れを告げた。

 

「ちょっとちょっと何よ! 人の顔を見た瞬間に死んだ魚みたいな目になって! このスーパーアイドルエリザベートが会いに来て上げたんだから、喜び勇ぶことはあってもテンション下げることはないでしょう!?」

「ま、まあ落ち着いてください。エリザベートさん……先輩もここの所激動の日々で、お疲れですから」

「ホント、声は超一級品なんだけどなぁ……」

 

 キャーキャーと喚くエリザベートだが、その声はまるで不快なものに感じないという不可思議。英雄王ですら認める美声なのである。だがこれが一度“歌”というフィルターを通してしまえば、途端に鼓膜どころか城まで揺るがし、セイレーンも逃げ出す怪音波に変貌するのはミステリーを通り越してファンタジーだった。

 

「ちょ、そんないきなり褒めるなんてもう……わかっているじゃない!」

「うん、エリちゃんカワイイカワイイ。それで今日はどうしたの?」

 

 一瞬で機嫌を直したエリザベートに、内心『チョロイなー』なんて感想を抱きつつも、来訪の目的を尋ねる。

 

「あ、そうそう。ちょっとこの子のことで相談したくて……出てきて」

 

 その声に引きずられるようにひょっこりとマイルームに入ってきたのは、齢10にも見えない少女。

 赤いドレスと緩やかなウェーブを描いた金髪。

 ここまでは至って普通のゴスロリ少女なのだが、背中に見える一対の異形の羽と尻尾が、彼女に人外感を醸し出していた。

 その姿を認めた立香はスッと立ち上がり、エリザベートの手をそっと取る。

 

「エリちゃん――」

「え、やだこんな真っ昼間から。こういうのはもっと、人目がないところで雰囲気を考えて……」

「自首しよう」

「ってなんなのよー!?」

 

 そのまま逃がさないように手をがっちりとホールド。同時に後輩にアイコンタクト。

 マシュは悲しそうに目を伏せ、しかし毅然として告げる。

 

「残念ですエリザベートさん……カルデア刑法において未成年略取は重罪。ルーラー警察に引き渡しの上、厳正な取り調べが行われます。刑罰は動機や被害内容次第で情状酌量の余地がありますが、最低でも同人誌全没収は免れないかと」

「何そのニッチな刑罰!? 斬新過ぎない!?」

「主に黒髭さん相手に使われることを想定していましたので」

「あらヤダ。スッゴイ納得」

「弁護士を呼ぶ権利は保証するので安心してください。カエサルさんはダメですが」

「う……仕方ないわね。腐っても――いえ、別に腐ってはないけど私も一領主。正々堂々と裁判で無実を勝ち取って見せるわ……ってちがーう!」

 

 チョロQ属性持ちのエリザベート、なんやかんやで怒涛の展開に流されつつあったが、ハッとしたように顔を上げる。

 

「誤解よ誤解! 冤罪を主張するわ! 第一私が疑われる謂れなんて……ま、まあ生前の前科云々を換算したら無くも無い訳だけど……」

 

 言葉尻はいささか弱々しくなってしまったが、それでも言うべきことははっきり告げる。

 

「とーにーかーくー! チェイテ城に紛れ込んできたこの子のことで相談を――」

「エリザ、虐められてるの?」

 

 唐突に、目の前のやり取りを見つめていた少女が口を開いた。

 

「え、いや、別にそんな訳じゃあ……子イヌだって、話せばわかる相手だし――」

「悪い人間なんだ」

 

 しかし少女は、エリザベートの言葉が耳に入らないかのように虚ろな瞳を立香に向けた。

 

「だったら、別にいいよね?」

 

 すっと、小さな手を上げる。か細く、やわらかそうな子供の手。

 しかしならば、それを向けられた瞬間心臓に直接ナイフを押し当たられたかような錯覚を立香が覚えたのは、一体なぜなのか。

 

「きゅっとして――」

 

 ゾワリと、立香の背筋に悪寒が走る。同時にこれまでの旅で何度も味わってきた、『あっ、コレ死んだな』という確信めいた予感。

 マシュやエリザベートも異変に気付き、されども静止する間もなく――

 

「ドカ「はいはい、おイタはそこまでよ」」

 

 しかしながら立香は、此度もまた唐突な乱入者によって命を拾われることとなった。

 少女が拳を握りしめる直前に、白魚のような女性の手が少女の手を優しく包み、僅かに引く。

 

「え――」

 

 少女が驚いたように、目を見開く。

 握り潰すはずだった“目”は手を空振り、立香の元へと戻っていっていた。

 

「“ソレ”は、簡単に壊していいモノではないわ。キレイな花を摘むのとは訳が違うのだから、あなたは自重を覚えるべきね」

「誰、あなた――“目”が見えるの?」

「似たようなモノを見ることができる目を持っているから、そのちょっとした応用。もっとも、私が見るモノは“目”じゃなくて、“死”よ」

 

 そう言って微笑むセイバーのサーヴァント、両儀式から青い瞳を向けられた少女は、ビクリと体を震わせた。

 

                     ◇

 

「ふむふむなるほど、それでそのフランドールって娘が君のチェイテ城にいつの間にか迷い込んでいたのか」

 

 場所は移り、ノウム・カルデア管制室――

 一通りの事情を聴いたカルデアの頭脳の一人、ダ・ヴィンチちゃんは小柄ながら端正な顔の額にしわを寄せながら、エリザベートに問いかけた。

 

「そうなのよ。それでウチの騎士たちを使って城内を調べたら、部屋の一室が見たこともない屋敷に繋がっているのを見つけたの。一応、こっちにも話を通した方がいいと思って」

「うんうん、賢明な判断をしてくれたこと、心底感謝するよ。一人で突っ込まれてたら、この忙しい時期に更なるトラブルに発展したこと請け合いだった」

「ふふふ、アタシだって日々領主レベルが上がっているのよ。……アレ? 今褒められたのよね?」

「勿論だとも」

 

 首を捻るエリザベートをダ・ヴィンチちゃんは軽く流し、代わりに今度はアトラスの錬金術師・シオンが発言する。

 

「チェイテピラミッド姫路城でしたか。一応資料は確認していましたけど、てっきりエイプリルフールネタを消し忘れたのかと思ってましたよ」

「アハハ、さすがにそれはないさ。とは言えこの特異点を実際に担当したのは、わたしの作成者の方なんだけどね。その時期、わたしはまだ調整中だったわけだし」

「アレばっかりは実際に目にしないとなぁ。実際、査問でも滅茶苦茶突っ込まれたよ」

「うむ、正直なところこのゴルドルフ率いる査察団が旧カルデアの報告書を鵜呑みに出来なかった原因の3割くらいは、アレのせいだからな」

「あー、そりゃ仕方ないって納得するしかないよな。最初からいるカルデアスタッフとしてはある程度慣れはしたけど、やっぱりおかしいよな。アレ」

 

 うんうんとうなずき合うカルデア一同。

 特異点には突拍子もないモノも多々存在したが、その中でもチェイテピラミッド姫路城の存在感は際立っていた。

 

「しかも今回、更に新たな要素をひっかけてきたわけですか。アハハ、ナイナイ! でも実際の所、特異点としては群を抜いた存在強度と安定性を誇るんですよねぇ。カオス具合に目をつむれば、いろいろと興味深くはありますが」

「そこんところどうなんだい? ホームズ?」

「名探偵にだって解くべきではない謎はあると思うのだよ……しかし請われた以上、推測くらいなら話させてもらうが。おそらくだが、カルデアで回収した以外にも聖杯があの特異点には存在しているのではないか? それが特異点の維持と固定の役割を果たしているのだろう。他のサーヴァントなら限りなく可能性は低いが、事が彼女の話だからね」

「???」

 

 向けられた視線にキョトンとするエリザベート。

 カルデアでもトップクラスのトラブルメイカーにして、何故かよく聖杯を拾う少女であった。

 

「他にはそれなりの期間“唯一の人類”だったカルデアから長期間観測されたことで、存在が固定された可能性も考えられるが……断言するには些か証拠不足と言わざるを得まい」

「エリザベート・バートリーに、聖杯にまつわる逸話はなかったはずなんですけどねぇ。あの特異点に関しては、もういっそ消去よりも有効利用を考えた方がいいかもしれません。元々汎人類史にも、ここ“彷徨海”の他にも、“霊墓アルビオン”や“妖精郷”のように特異点染みた場所は幾つか存在しますから。今更一個増えたくらいじゃ、大局には影響しないでしょう。もし彷徨海を追い出されたら、そっちを第3のカルデアとして運用するとか。資料にあるギガフレーム・メカエリチャンも、アトラス院の技術とこれまで得られた聖杯を組み込めば、対異聞帯用の汎用エリチャン型決戦兵器として使えるかもしれませんし」

「うわぁ、一瞬でも“ありかな?”と思った自分を殴りたいよ」

 

 シオンの冗談染みた提案に眉を顰めるダ・ヴィンチちゃん。

 立香も空想樹と取っ組み合いをするギガフレーム・メカエリチャンの姿を想起し、眩暈を覚えた。

 

「でもアレ、一応“人類の脅威”属性持ちなんだよなぁ」

「ちょっとちょっと、ウチの話で盛り上がってくれるのは嬉しいけど、今はあの子のことが優先でしょう?」

「そ、そうでしたねエリザベートさん。ついつい話が逸れてしまいました」

 

 カオスな論戦をカオスの元凶が納めるという珍事の元、脱線した話が元に戻る。

 

「ごほん――それでは改めまして、不肖マシュ・キリエライトから説明させていただきます。名称フランドール・スカーレット。500歳ほどの吸血鬼だそうですが、見た目は映像にある通り10歳ほどの子供です。何でもずっと家に引きこもっていたらしく、精神年齢も見た目と大して変わらないか、下回ると思われます」

「ふむ、吸血鬼といえばメジャーなのは死徒だが、あの少女はどうなのだね? まさか芥ヒナコのように真祖とは言うまいな?」

「スキャンしてみた感じでは、確認されているいずれにも該当しませんね。新種か、どこぞの秘境にひっそり暮らしていたのか。うーん、個人的には興味をそそられます!」

「フランさんのお話では、幻想郷という場所にある紅魔館というお屋敷で、お姉さんと一緒に暮らしているそうです。チェイテピラミッド姫路城に来た経緯としては、たまたま開いた扉が繋がっていたそうですが……」

「エリちゃんが言ってた例のヤツだね」

 

 現在は他の来訪者があった場合の対処の為、騎士たちに見守らせているらしい。

 

「その部屋に何らかの異常が発生し、フランドールさんのご実家とつながった訳ですね。エリザベートさん、何かお心当たりは?」

「あっ、そういえばこの間拾った聖杯を放り込んでおいた部屋だったかも」

「「「「「「「それだぁーーー!?」」」」」」」

 

 総員、心からのツッコミであった。

 

「エリちゃん、見直したと思った矢先に……」

「私も紳士らしからぬ大声をあげてしまった訳だが、結果として解決方法が最短で判明したというのならば大目に見るとしよう。無論、そもそも問題が起こらないに越したことはないのだがね。――技術顧問、例の小娘は今どこに?」

「はいはーい、しっかりサーチしてるよ。今は食堂で子供チームと一緒に遊んでる」

「例のアビゲイルとかいう娘も一緒か。正統派魔術師たる私としては、空想上の神など疑問視せざるを得ないが……まあ力は本物だ。万一暴れた場合の抑えとしては十分だろう」

「セイバーの式君も近くで見ていてくれてるからね。それにしてもゴルドルフ君、ツンケンしてるけど知ってるんだよ? この間彼女にパンケーキ作ってあげてたの」

「ごほっ!? ふ、ふん。あの赤いアーチャーにキッチンで我が物顔されているのが気に食わんかっただけだ。他意はない!」

 

 相変わらず事料理に関しては、何やら妙なこだわりを見せる新所長であった。

 料理に関する専用の術式を幾つも編んでいるあたり、“実は魔術使いの方が向いているのではないか?“と立香はひそかに考えていたが、怒られるのは明確なので口にはしていない。

 

「ともかく! あの小娘をすぐさま送り返し、件の部屋から聖杯を回収してくる! これで全ての問題は解決し、魔力リソースも手に入る。うわっはっは、簡単な話ではないか!」

「ところで今更なのですが、フランドールさんはどうやってカルデアに来たのでしょう?」

「はっはっは……はい?」

「今のカルデアは、彷徨海という人理漂白の波すら受け付けない不可侵領域に存在しています。アルターエゴは事前の仕込みで侵入して見せましたが、カルデアと縁を持たないフランさんがエリザベートさんの先導があったとはいえ、そう簡単に入って来られるものでしょうか?」

「んー、確かにエリザベートは特異点からの退去という形でカルデアに戻ってきている訳ですが、そのレイシフトに着いてきた? いえ、ナイですね。マスターである立香君と契約を結んだサーヴァントならそれも可能でしょうが、フランドール・スカーレットは実体ある吸血鬼……その方法論は使えません。となると――」

 

 一同の視線が、再びエリザベートに集まった。

 当の本人はというと、気不味そうに頬をかく。

 

「あっ、えーと……そう言えば領地とカルデアとの移動にいちいちレイシフトを使うのが面倒だったから、“いっそ直通の通路ができたらいいなー”なんて考えた気が……」

「えっ、ちょっと待ちたまえよ君。つまり、聖杯がそのフワッとした願いを叶えてしまったと? ということはなんだね? 今、カルデアと件の特異点、そして幻想郷とやらは、空間的に繋がっている状態だと?」

 

 ゴルドルフ新所長の顔は、先ほどの余裕から一転、みるみると青ざめていった。

 

「簡潔な説明ありがとうゴルドルフ君。いやー、まいったねこれは」

「バカモンッ! テヘペロなどとあざとい仕草をしている場合ではなかろう! 第一種警戒態勢発令! これは我がカルデアの安全保障上に関する重大な問題だ! 藤丸立香、並びにマシュ・キリエライト! すぐに現地に赴き小娘を送還後、直ちにその厄介な“通路”を閉鎖するのだっ!」

「りょ、了解です! オルテナウス装備への換装後、直ちに出動します!」

「行ってきます!」

 




チェイテピラミッド姫路城が第3のカルデアになったif
コヤンスカヤ「いえ、例え縁があっても侵入しませんよ、あんなところ。私のキャラが残念なことになっちゃうじゃありませんか」

ギガフレーム・メカエリチャン
カルデアに関連する戦力としては、おそらく設定上XXと並び最大級。
多分完全稼働状態なら、ティアマトやグガランナとも殴り合える。
仮にそうなった場合、ウルクにて三つ巴の頂上決戦が繰り広げられるifも……

輝夜とスカサハ、山の翁を絡ませる一発ネタの予定でしたが続きました。
一応導入とラスト付近の設定は練っていますが、その間が曖昧なので
起承転結のはっきりしたメリハリのある話とはいかないかも。
更新は不定期になると思われます。

あと二次創作、個人的にはオリジナルよりだいぶ書きやすいなぁと。
キャラと舞台設定がある程度かたまっている分、勝手にしゃべってくれる部分がw
このキャラだったらこの時こういうセリフ回しを使いそうとか、考えるの楽しいですしね。
ただ他のキャラに対する一人称には注意していきたいところ。
あと、私が実は”東方原作ゲーム未プレイ”という穴に引っかからないようにしないと(汗
しょ、書籍関連は割と読んでいるんですよ?
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