「わたしも閉じ込められてはいたけど、自分から閉じこもってもいた。アイツがなんでわたしを閉じ込めていたのかずっと分からなかったけど、今ならちょっとだけ分かる気がするわ」
修正)2019年8月27日、フランのレーヴァテインの描写を追加。
「アハハハハハハハ!」
チェイテ郊外――墓地付近の一角で、フランドールは哄笑を上げながらパンプキンスケルトンを蹂躙していた。
「えっとこれは――先に例の通路から戻ったのなら、チェイテ城で待っているはずでは?」
レイシフトしてきた矢先に飛び込んできた光景に、目を丸くするマシュ。それにエリザベートが苦笑しつつ答える。
「そうなんだけど、迎えに行くって聞かなくてね。ほら、あの子ビューって飛べるから速いのよ?」
『とても飛ぶのに適した羽の構造とは思えナイですけどねー。この辺りはまだ普通に見えますが、遠目に見えるのがチェイテピラミッド姫路城ですか。いやー、直接見ると頭悪いですね、アレ!』
通信越しに現れたシオンが、件の違法建造物に爆笑する。
「ちょっと! アタシも最初はどうかと思ったけど、意外と住めば都というか」
『ナイナイ。中層になっている逆さピラミッド区画とか、どう見ても生活環境0でしょう! 懐かしのアトラス院でもちょっと見かけないレベルの斬新さですよ、アレ』
『はいはい、実のない議論は一先ず置いておこうよ。しかしフランドール君、大した戦闘能力だね。動きは経験不足が否めない気がするけど、ポテンシャルならA級サーヴァントにも匹敵するよ』
「確かにサーヴァントの皆さんは、見た目と戦闘能力が比例しないことも多いですが、凄まじい力です」
「アハハ、もう終わりー!?」
「今はハロウィンじゃないから、エネミーも少ないみたいだね」
散らばったパンプキンスケルトンたちの破片を見回し小首をかしげるフランドールに、立香は『お疲れ様』と声をかける。
「あっ、あなたは――」
「うん、改めまして、藤丸立香っていうんだ。さっきはろくに相手もできずゴメンね?」
「変なの……わたしの方こそ、ゴメンって言おうと思ってたのに」
「まあ、似たような場面には何度か出くわしているから。でも次は勘弁してほしいかな」
幾ら数をこなしても、痛みにも命の危機にも未だ慣れはしないのだが。
同時に、多分慣れてはいけない事なんだろうと立香は考える。
「あらフランドール、服に汚れがついているわよ。払ってあげるからこっちに来なさい」
「はーい!」
「ふふ、レディたるもの、身だしなみには気を使わなくっちゃね」
エリザベートの呼び声に、素直に従うフランドール。二人が並ぶその光景は――
「ふふっ、先輩。微笑ましいですね」
「なんだかお姉さんみたいだ」
「え? そ、そうかしら?」
「うん、二人ともちょっと似た部分があるからね」
実際造形は大分違うのだが、羽とか、尻尾とか似通った要素は多かった。
うん――尻尾? なにか違和感が……
「尻尾が取れてる?」
「これ尻尾じゃないよー。レーヴァテイン!」
その瞬間、彼女の小さな手に見合わぬ巨大な炎剣が顕現した。
「うわっ」
「アハハ、びっくりした?」
「まさか剣だとは思わなかった……」
「魔法の杖みたいなものだからね」
炎剣を一振りすると火は消え、そのまま元の細長い悪魔の尻尾のような姿に戻った。
そこでマシュが、姉さんの言葉で連想したのかエリザベートに尋ねる。
「そう言えば、エリザベートさんにはご兄弟がいらっしゃったのですよね?」
「あー、うん、まあそうなんだけど……やめときましょう、その話は。多分、あんまりおもしろくもないし」
目を伏せ僅かに翳りを見せるエリザベート。
しかし次の瞬間には顔を明るくし、フランドールと手をつなぐ。
「じゃあチェイテ城に向かいましょう! ふふ、道すがら領内を案内してあげるわ」
「わたし、あんなに人が一杯いるところに行くの初めて」
「あら、そうだったの? だったら楽しみにしていなさいな。なんせ、アタシの領内と領民なんだから!」
◇
領内の店などを軽く冷やかしながら進み、辿り着いたのは懐かしのチェイテピラミッド姫路城。
「ここに来るのも久しぶりですね、先輩」
「オレはなんか、ちょくちょく来ている気がする」
記憶の再現だとか、XXにチョコを貰ったときだとか、こたつに入ったらなぜか辿り着いたとか。なんだかんだで妙な縁が生まれてしまっているのかと、立香は遠い目をする。
「どうだった? アタシの領内は?」
「楽しかった! でもカボチャがいっぱいね?」
「ふふ、ハロウィンの時期にはもっともっと盛り上がるのよ。カボチャたちは踊り狂い、アタシの美声が領内を潤すわ!」
「へー!! 見てみたいなぁ」
「あーうん、それは……」
エリザベートがチラチラと視線を向けてくるが、さすがに首を横に振るしかない。
ハロウィンまでまだ数か月――さすがにゴルドルフ所長が現状維持を許可するとは思えなかった。
「そう、よね……うん! じゃあせめてハロウィン料理を用意するわ! 雰囲気だけでも味わっていきなさい!」
◇
「おおっ! お戻りになられましたか!」
城に入ると真っ先に声をかけてきたのは、何やら焦った雰囲気の騎士たちだった。
「慌ただしいわね。何かあったのかしら?」
「はい、それが……例の通路から羽の生えた女の子が多数現れまして――」
「何ですって!? それで、何か被害は出ているの!?」
「いえ、その……やっていることは悪戯程度なので、現状目に見える被害は出ていないのですが……」
何やら哀愁漂うオーラを纏い、肩を落とす騎士。
「歯切れが悪いわね。ホウレンソウはシャキッと、テキパキと!」
「はい! 戦闘能力は大したことがないので、捕まえるのは容易いのですが……侵入者相手とはいえ、子供と同じくらいの見た目相手ではどうにもやり辛く……」
「それは――確かにそうかもしれませんね」
屈強でゴツイ騎士が、小さな女の子を力づくで捕まえる。
控えめに言っても絵面が最悪だった。
「一応お菓子を渡せばおとなしくなるので、それで対応しています」
「ハロウィンでもないのにトリックオアトリートなんてハロウィン協定違反よ! 楽しみで気が急いているのは分かるけど!」
「エリザベートさん。あの、それは違うのではないかと」
「たぶん、そいつらウチの妖精メイドじゃないかしら?」
「妖精メイド……ですか? 何やらとてもメルヘンな響きですが」
「アイツ――レミリアお姉さまが見栄で雇ってる奴ら。大して仕事はできないけど、数は簡単に揃うの」
フランドールの言葉に、騎士は合点がいったというように頷く。
「ああ、確かにそんな感じの見た目ですね。言いえて妙というか」
「つまり、他にも帰さなきゃいけない子が増えたってことか」
「藤丸殿、ちょっと言いにくいのですが、実はカルデア側の通路にも何人か向かってしまいまして……」
『ぬおー!? 今朝焼き上げて寝かせておいた私のアップルパイが!?』
通信越しに聞こえるゴルドルフ所長の悲鳴。
さっそくカルデアでも被害が出ているようだった。
「そういえばメカエリはどうしているの?」
「子供の悪戯程度とはいえ、重要施設に入られたら万一もあるだろうと、そちらに待機しています」
「あー、地下区画も再建してたんだっけ。あっちはあの子の管轄だから、アタシにもよくわからないのよね」
何やら聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたが、そこでシオンからの指示が入る。
『立香君、マシュさん。カルデアに侵入した妖精メイドとやらは待機しているサーヴァントに対処してもらうので、先に例の通路の方を抑えてもらえますか? これ以上数が増えるのは避けたいところなので』
「了解です。エリザベートさん、例の通路まで案内してもらえますか?」
「ええ、こっちよ」
エリザベートの先導の元辿り着いたのは、チェイテ城区画の一室。
「ここは本来、3つの部屋が横に並ぶ形でセットになっていたの。中央部の部屋だけ廊下と繋がる扉があって、部屋の中に両隣に繋がる扉があったんだけど……今はご覧の通りよ」
もともと扉が設置されていたであろう部分には、ぐるぐるに渦巻く謎の光が。
「これ、ドラ○エで見たやつだ……」
「何と先輩、この謎の通路のことを既にご存知でしたか。さすがの博識さです」
某国民的RPGを思わせる光景に、立香はちょっぴり感動していた。
『エリザベート君、その通路……いつまでもこの言い方じゃなんだし、とりあえず“クロスロード”とでも呼ぼうか。』
「ダ・ヴィンチちゃん。旅○扉じゃダメ?」
『アハハー、立香君。ちょーっとお口にチャックをしようか? ともかく、クロスロードの先にはもう行ったのかい?』
「ええ、普通に通れたわ。右側が紅魔館に、左がカルデアに繋がっていたわ」
『ふむふむなるほど――ちょっと君の槍をカルデア側のクロスロードに突っ込んでもらっていいかな? 手は離さないように』
「OK、これでいいかしら?」
ダ・ヴィンチちゃんからの指示通り、エリザベートは槍の先端を光の渦に突っ込む。
『ありがとう、こっちでも槍が出てきているのを確認できたよ』
「ダ・ヴィンチちゃん、これには何の意味が?」
『何、クロスロードの性質の検証さ。槍の一部だけがこっちに出てきていることから、クロスロードは触れたものを別の場所に“跳ばす”んじゃなくって、空間そのものを連続的に“繋げる”代物だってことがわかった』
『それよりもっ! 原因となっている聖杯はどうしたっ!? 肝心なのはそれだ!』
ゴルドルフ所長が激を飛ばすと、シオンが説明を始める。
『解析の結果からみると完全に魔力として還元されて、“クロスロードそのもの”に変化しているようです。“願いを叶える”為のリソースが“世界を繋げる”方向に全振りされているので、クロスロードはかなり頑強且つ安定した代物に仕上がっていますね』
「それはつまり、聖杯の回収は不可能ということでしょうか?」
『ノンノンマシュさん、アトラスの錬金術師として不可能なんて容易く口にはできないですね。聖杯がクロスロードに変化したプロセスを解明して、その逆工程をなぞることができれば聖杯への復元は可能かと思われます。ただモノがモノだけに、ひょっとしたら“世界を繋げる術式”が副産物的に手に入るかもしれませんが……そしたら私も第2魔法使いですかね?』
ペロリと舌を出すシオンだが、ゴルドルフ所長は顔を青くして突っ込む。
『とんでもない事をサラッとぬかすな! 宝石翁が聞きつけたらどうするつもりだね!? 以前一度時計塔で見かけたことがあるが、アレは遠目にもとんでもない怪物だぞ! ああ恐ろしい……』
『アハハ、ゴルドルフ君も何気に顔が広いよね。平行世界を運営する魔法使い――人理崩壊の中でも多分まだ生きているんだろうけど、今どこで何をしているんだろうね?』
『時計塔の怪物連中ですら手綱を握れぬ御仁だ、我々が気にしても仕方なかろう。それよりも、クロスロードの解析状況はどうなっているのかね?』
『アー、それなんですけど……』
シオンが若干歯切れ悪く、目を伏せる。
『トリスメギストスを使って演算しているんですが、どうにも“ナニカ”と同調しているッぽいんですよね。多分、例の幻想郷側のモノと』
『何……?』
『聖杯の変換プロセスは、複雑かつ難解です。その同調している“ナニカ”を突き止めて調べないと、クロスロードの完全な解体は不可能。端的に言えば――幻想郷探索が必要ってことですね!』
『む、それは……』
シオンの笑顔に、反面苦い顔になるゴルドルフ所長。
『ううむ、人理を取り戻すために必要なマスターを、そのような右も左も知れぬ場所に送り出すというのは……いやしかし、このままではカルデアが常時危機にさらされるということになる。今回の妖精メイドはまだどうにでもなる相手だったが、もっと強大な相手に侵入され、まかり間違ってシャドウボーダーが破壊などされてしまえばその時点で人類は詰む。ええと、フランドール君? つかぬことを聞くが君、幻想郷の案内とかはできるかね?』
「ムリ! わたし、お外のこととかほとんど知らないし」
『ですよねー。ずっと引きこもっていたというし、仕方のない話かもしれんが』
「でもウチのヤツ等だったら紹介できるかも?」
『ふむ……それが現実的なラインか。ちなみに、他の住人というのも君と同じ吸血鬼なのかね?』
「ううん、吸血鬼なのはお姉さまだけ。後は魔女とメイド、門番に妖精メイドたちがいるわ」
『現地協力者のアテがあるのなら、無謀という訳でもないか。どちらにせよ、幻想郷側のクロスロードが紅魔館とやらにあるのなら、協力関係を築くことは必須。ゴホン……それでは藤丸立香、並びにマシュ・キリエライト。任務内容を更新する。幻想郷に赴き紅魔館勢力と接触。協力を取り付けて幻想郷を探索し、クロスロード解体のための手掛かりを見つけてくるのだ!』
再度の発令に、立香とマシュは背筋を伸ばす。
「マシュ・キリエライト、任務更新を受諾しました! ふふ、フランドールさん。今度は案内してもらう側になりましたね」
「お姉さんたちへの紹介、よろしくね?」
「わかった! 気分屋なところがあるけど、多分だいじょうぶよ」
「あっ、もちろんアタシも行くわよ? ウチの問題でもあるしね」
こうしてカルデア一行は未知の異郷――幻想郷へと足を踏み入れることとなった。
○フランドール・スカーレット
クラスは多分バーサーカー。
アーツは弾幕、クイックはフォーオブアカインド、バスターはレーヴァテイン、EXアタックはきゅっとしてドカーン。宝具は……“そして誰もいなくなるか?”とかかな?
冒頭の会話は、彼女がカルデアで遭遇した巨大な少女とのやり取り。
○第2魔法使い
万華鏡のお爺さんで、吸血鬼。多くのマスターが概念礼装としてお世話になっている。
○ガチャラッシュ
運営からの対マスター宝具
サバ☆フェス復刻、4周年、2019年度水着イベと続く、天国と地獄の性質を併せ持つ強行軍。日ごろからの貯蓄と自制心が試される。
???「諭○を喚べ! 怯声を上げろ! 爆死の海で溺れる時だ!」
その2更新。ラスト付近の設定固めとネタの書き溜めの方が先に進んでいるという現状w
やっぱり中間付近が一番難産になりそうかなぁと。