落枝蒐集領域幻想郷   作:サボテン男爵

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今回、若干のキャラ崩壊表現があります。


落枝蒐集領域幻想郷 その5

「きゅう~」

 

 闇を操っていた少女の妖怪が、目を回しながら地に落ちた。

 

「ふふん、まだまだ甘いですね。どうでした? “弾幕ごっこ”の感想は」

 

 美鈴が手をパンパンとはたき、胸を張って振り返る。

 

「幻想郷で独自に発展した決闘方式――とても華やかというか、煌びやかでした。美鈴さんの弾幕は虹のようで、見ていて楽しかったです」

「お褒めにあずかり光栄です。もっともわたしは、こっちの方が得意なんですけどね」

 

 美鈴は腰を落とすと、ヒュっと拳を振るって風を切る。

 

「中国拳法……ですよね? 美鈴さん、武術を修められているんですね」

「カルデアにも何人か拳法家はいるよ」

 

 本場出身の李書文に燕青、あとは何故か女神イシュタルなどがそれに当たる。

 

「そうなんですか? 良ければ紹介してもらいたいところですね。なかなか本気で拳を交える相手もいないもので」

「分かったよ。ところでそっちの子は大丈夫?」

「幻想郷の妖怪は丈夫なので、この程度なら小一時間もすれば目を覚ましますよ。しかしルーミアさんも、もっと底力はありそうなんですけどねぇ」

 

 まじまじと金髪の少女を見下ろす美鈴。

 

「再臨したら姿が変わるとか?」

「先輩……サーヴァントの皆さんじゃないんですから」

「へえ、そっちはそんな風に姿が変わるんですか? わたしもたまには別の服を着てみますかね」

「ドレスとか似合いそう」

「ふふっ、ありがとうございます。歯の浮くようなセリフをサラッと言える辺り、意外にお手が早いんですかねぇ」

 

 藤丸立香――割と思ったことをそのまま口にする男であった。

 

「コホン! とにかく弾幕ごっこでしたか。カルデアにもやれそうな方は少なからず、いますよね?」

「初期組とか、結構光弾撃てるしね」

「初期組、ですか?」

「人理修復の初期から、カルデアに力を貸してくださっている皆さんです。最近は『新入りに負けてられない!』と独自の動きを導入する方も増えていますが、今でも根強く使い続ける方もいらっしゃいます。作家系サーヴァントの皆さんとかは特に。アンデルセンさんは『バカめ! モーション変更に時間を使っている暇があったら、まずは締め切りをどうにかしろ!』などと仰っていましたが」

「ははぁ、どこも大変なんですねぇ」

 

 美鈴はよく分かっていない顔つきだったが、大きく頷いていた。

 とりあえず頷いておくことも、時には大切なのだ。

 

「話を戻しますが、イシュタルさんやアストライアさん、メディアさんなんかは綺麗な弾幕を撃てるんじゃないでしょうか?」

「女神2柱は宝石の雨みたいだし、メディアも結構凝り性だからね。王様は?」

「ギルガメッシュ王はどちらかというと、爆撃になる気がしますね……」

「幻想郷でも結構そういう弾幕ありますから、大丈夫ですよー」

 

 美鈴はのんきそうに答えるが、『興が乗ったわフハハハハ』とやらかしそうだなぁと、立香は考えてしまった。

 そんな弾幕談議に花を咲かせる道中、ふと視界の端に映った光景に足を止める。

 

「ちょ、離れなさいよ! この羽虫ども! くっ、人外の郷と聞いてつい気になって足を運んでみれば、なんでこんな目に……」

 

 なんか見覚えのあるパイセンが妖精に集られていた。

 妖精たちは叱られながらも『わーわー』『キャッキャ』と楽しそうだ。

 

「えっと……ぐっちゃんパイセン?」

「軽々しいわね後輩!? ってコラ! 髪を引っ張るな!」

 

 妖精の一匹を掴み、ぽーいと投げ飛ばす女性。もっとも投げ飛ばされた方はそれはそれで楽しそうなのだが。

 

「あの黒髪の女性は?」

「カルデアに属している虞美人さんです」

「…………へ?」

 

 なぜかポカンとする美鈴だったが、立香は近くに佇んでいた人馬一体の異形の機人に声をかける。

 

「項羽も一緒に来てたんだ」

「うむ、主導者よ。我が妻の付き添いと、クロスロードの同調先の探索をこちらでも行うつもりだ」

「助かるよ。でも先輩どうしたの?」

「私が聞きたいわよ!?」

 

 キッと立香を睨みつけてくる虞美人。でも割といつもの事なので、あまり気にはならなかった。

 

「せっかくの項羽様との逢瀬だというのに、気が付けばこいつらがワラワラと寄ってきて……って何よその生暖かい目は!?」

「いや、蹴散らしたりしない分優しいなーって」

「…………そりゃまあ、邪魔だけど実害があるわけじゃないし。ってか悪意も害意も感じないし、この見た目相手じゃあ――って何言わせてるのよ!」

「ごめん?」

「謝るなっ! 簡単にっ!」

「あのー」

 

 立香と虞美人とのやり取りに、いそいそと加わってくる小さな影が一つ。

 若草色の髪に羽を生やした女の子。

 

「君は?」

「あ、大妖精です。こんにちは」

「あんたはこいつらに比べたら話が通じそうね。なんなの、こいつら?」

「アハハ、すみません。ここまで位が高い同族の方に会うのは初めてなんで、みんなはしゃいでいるんだと思います」

「なんだ、そんな理由……うん? 同族?」

 

 目を丸くする虞美人。

 それはそうだろう――彼女は長らくたった一人で、人目から隠れ忍んで生きてきたのだから。

 

「そういえば、幻想郷において妖精は自然の化身だと聞きました。芥さん――虞美人さんは真祖。星の内海から生まれた自然の擬人化。確かに同族……と言えなくもないのでしょうか。少なくとも、同じカテゴリーではあるのでは」

「難しい事は分からないけど、やっぱりすごい方なんですよね! ひょっとして妖精の女王様とかっ!?」

 

 キラキラとした目を向けてくる大妖精に戸惑うばかりの虞美人。

 基本、敬われるとかそういう扱いに慣れていないのだ。

 その割には、立香に対しては先輩風を吹かせマウントを取ってくるのだが。

 

「は? いや、女王様って……でもこの気配、よくよく探れば確かに――え、マジで同族なの、こいつら?」

 

 なんかもう、しどろもどろだった。

 いやまあ、予想外の事態に対しては、割とこういう部分はあるのだが。この人。

 

「つまりパイセンは、妖精さんだった?」

「殺すわよ」

 

 泳いでいた目が一点、キュッと細まる。

 相変わらず、この手のレスポンスが早い先輩である。

 

「ふむ――虞よ。異世界とはいえ同族に邂逅できたというのは、僥倖であろう」

「はっ、項羽様……確かにそうかもしれませんが、その、正直どうしていいか……」

「受け入れるも拒絶するも、汝の思うままにすればよい。元よりそのような在り方であろう」

「――っ。そう、でしたね……長らく人の規範の中にいたので、忘れかけていました」

「何かあれば相談に乗ろう。私も、主導者もな。ところで――」

 

 項羽の顔が、森の一角の何もない場所――何もないように見える場所を見据える。

 

「其処な少女よ。先ほどからこちらを伺っているが、我らに如何様か?」

「…………」

 

 返事はない。視線の先には誰もいない。

 だが立香もマシュも身構える。虞美人も言わずもがな。

 知っているからだ。項羽が人とは異なる性能を有し、人とは異なる景色を見ることを。

 

「…………ふむ」

 

 項羽は一つ唸り、ゆっくりと視線の先に歩みを進める。

 そしておもむろに手を伸ばし――

 

「わっ!」

 

 首根っこを掴まれた女の子が姿を現した。

 

「え、なんでわかったの?」

 

 あどけない表情に浮かぶ、不思議そうな色。

 緑の瞳が大きく見開かれている。

 

「私のセンサーに反応したまでだ」

「センサー……ウサギさんの波動みたいなものかな?」

 

 小首を傾げる少女だったが、『あっ!』と声をあげる。

 

「わたしは古明地こいし! えーと、あなたはおじさん? それともお馬さん?」

「ちょっと小娘! 項羽様相手に馬だなんて――!」

「よい、虞よ。斯様な躯体だ。その評価も妥当であろう」

「へぇ、項羽って言うんだ。大陸の武将さんの名前だったっけ?」

「なるほど、こちらにも私はいたか。無論、私そのものではなかろうがな。――改めて尋ねるが、我らに如何様か?」

「全然知らない人たちだったから、見てただけだよー」

 

 そんなやり取りを続ける二人の傍ら、美鈴が立香とマシュに耳打ちしてくる。

 

「彼女は地底のサトリ妖怪姉妹の妹の方です。何でも他人の無意識の内に入り込んで、誰にも認識されないとか」

「サトリ……って確か、心を読む妖怪だっけ?」

「わたしは目を閉じているから読めないんだけどね。だから安心していいよ、お兄さん」

 

 宙にぶら下がったまま声をかけてくるこいしの胸元には、確かに瞳を閉じた異形の目のようなモノが。顔についている両目は空いているので、アレのことなのだろう。

 

「――といっても、カルデアにも似たような人はいるから今更だけどね」

「そうなの?」

「はい、紫式部さんですね。正確には“相手の思考や経歴を、本人にだけ見えないように表示させる”能力なのですが……」

「アハハハハ!! なにそれ性質悪ーい! わたしが言うのもなんだけど、えげつなーい!」

 

 何かツボに入ったのか、お腹を抱えて爆笑するこいしであった。

 実際割と全方位に刺さりそうな、その内とんでもないトラブルを引き起こしそうな能力ではあるのだが。

 彼女がひとしきり笑い終えたのを見計らい、項羽が声をかける。

 

「時にこいしよ」

「なぁに? おじさん」

「汝は幻想郷には詳しいのか?」

「うん! 自慢じゃないけど、幻想郷でわたしがご飯の味を知らない家はないよ。自慢じゃないけど!」

 

 自慢気だった。

 

「そうか。ならば幻想郷の案内役を頼みたいのだが」

「ちょ、項羽様!?」

 

 項羽の提案に、虞美人が驚いたような、慌てたような顔を見せる。

 

「幻想郷はカルデアによく似た条件が揃っている。数多の神仏人妖の運命が交差し、幾つもの異界が隣り合っているせいか、私の未来予測も十全には働かん。故に案内人がいた方が、探索の効率は上がる。無論、謝礼はしよう」

「いいよー。あっ、背中に乗ってもいい?」

「かまわん。しかし誰かを乗せるような構造ではないから、乗り心地はよくはないだろうが……」

「ヤタッ! それじゃあお邪魔しまーす!」

 

 ぴょんと項羽の背に飛び乗るこいし。

 彼は非常に大柄なのだが、簡単にその背に乗れるあたり、やはり人外ということだろう。

 

「なっ!? この小娘、私でも乗った事がないのに――!」

「虞よ。乗ってみたいのか?」

「はっ、えっと、実際に乗るのはちょっと恥ずかしいと言いますか……」

「あのっ! わたしもご一緒していいですか? ちょっとは案内もできると思います!」

「え? ええ、まあ別にいいけど……」

「はいっ! よろしくお願いします、女王様っ!」

「だから女王じゃないって!?」

 

 こうして虞美人、項羽、こいし、大妖精という即席パーティが探索班として出発することになった。

 

「では主導者よ。何かわかったら連絡を入れる」

「うん、よろしく」

 

 頷き合うと、項羽は美鈴の方に視線を向けた。

 

「同郷と思しき娘よ。紅魔館からの案内人と見受けるが」

「アッ、ハイ。項羽……さんでよろしかったですよね?」

「うむ、遅くなったが、主導者たちをよろしく頼む」

「――承りました、この拳にかけて。ああ、あと、えー……ぐっちゃんさん?」

「何よ。あとぐっちゃん言うな」

「では虞美人さん、それに項羽さん。――どうか、末永くお幸せに」

「へっ?」

 

 突然見知らぬ相手からそんなことを言われた虞美人は戸惑った色を瞳に載せ、周りを見渡し、立香と目が合った。

 とりあえず、口の形だけで『お・れ・い』と伝えておく。

 

「え、ええっと……ありがとう?」

「はい、どういたしまして! それじゃあ私たちも行きましょうか。立香さん、マシュさん」

 

 美鈴に先導され、再度人里への道を進む。

 そして少し進んだところで、マシュがおずおずと、その背に声をかけた。

 

「あの、美鈴さん? 先ほどは何故、急にあのようなことを?」

「んー、一言で言えば、感傷みたいなものですかね」

「感傷、ですか?」

「あとは、“if”へ祝辞ってところですか。別に大した話じゃないですよ。あーあ! 私も紅魔館に帰ったら、久しぶりに剣を振るってみようかなぁ」

 

 そう言って彼女は、どこか遠い場所を見るように空を見上げた。

 

                     ◇

 

 一方その頃、人里にて――

 往来の真ん中で二人の少女が向かい合っていた。

 

「ほう、あなたが戦国の覇者、織田信長ですか」

「そういうそなたが、かの聖徳太子……いや、わしが言うのもなんじゃが、“歴史上の偉人が実は女だった問題”、ちょっと多過ぎじゃね? バーゲンセールでもしておるのか?」

 

 片や幻想入りした聖徳太子――豊聡耳神子。

 片やカルデアから来訪した第六天魔王・織田信長。

 ばったり出会った彼女たちは、(迷惑なことに)往来の真ん中で雑談を始めたのであった。

 

「しかしお主、伝わっとる絵と顔違い過ぎじゃろ」

「それはお互い様だろう。時世というものが、女性の権力者をよく思わないっていうね。うん? どうかしたのかな?」

「いや、ちょっと前にあった妙なことを思い出しての。実は歴史の教科書そのままのわしが目の前に現れたんじゃが……いやあ、あの時の感情は筆舌にしがたかったわ。アイデンティティの崩壊というか、SAN値チェック開始というか……ぶっちゃけマジでビビった」

「ふふ、まだまだ修行が足りない。道教を修め不死となり、確たる“個”と化した私であれば、例えそのような状況に遭遇しようとも――」

「もし、先ほど私の名を呼んだのは、そちらのお嬢さんかな?」

 

……

…………

………………

 

「「でたーーーー!?」」

 

 人里の空に、綺麗なデュエットが響き渡った。

 




○平行世界間の類似について
 各国の神話や文明、文化において、発生時期や地域が違うにも関わらず“何故か非常に似通った要素”が発生することがある。例えば酒などは、多くの文明において必然とでもいうように発生している。この“奇妙な類似性”は平行世界間でも発生すると思われ、汎人類史同士は比較的、似通った歴史になる。
 具体的には、同じ神話や同じ人物が発生するなど。しかし表面上は同じでも内実は異なる場合も多く、“同姓同名の別人”や“同じような活躍をした他人”といった場合も少なくない。
 例えばFGO世界線の酒吞童子と東方世界線の酒吞童子は完全に別個体であるし、東方世界線の項羽は機人ではなくれっきとした人間であった。虞美人においては――

○虞美人
 魔術世界において“真祖”と呼ばれる存在に酷似するが、本人曰く“精霊”。星の内海から生まれた超越種。夫の死に伴い、夫の元上司の勧めで新しい職場にリクルートした。最近の悩みは職場での人間関係。

○妖精
 東方世界線の幻想郷においては、どこにでもいる弱小種。自然の化身であり、時に大きな力を発揮する場合もある。基本的には不滅。存在規模や出力こそ違えと、その性質はFGO世界における“真祖”に酷似しているとも。妖精を電卓とするなら、真祖はスパコン。いや、言い過ぎかな?

○古明地こいし
 心を閉じたサトリ妖怪。本来相手の心を読む能力を持つが、彼女は反転し無意識を司る能力に変化している。生物や精神を主体とする相手には基本的に存在すら認識されないが、残念。相手はスーパー中華ロボだった。

○項羽
 型月どうしてこうなった枠。仙術をベースとして発達した異形の科学技術で生み出された、スーパー中華ロボ。現在の躯体は異聞帯秦において発展していったものであり、特に未来予測という一点にて強力な性能を誇る。ゼ○システム。なので弾幕ごっこも、回避については極めて高い性能を誇ると思われる。基本、“絶対に躱せない攻撃”はしない遊びなので。

○本物太子
 一体何者なんだ……

 当時現場に居合わせた現役女子高生、USMは語る。
「いえ、私もですね。もうそれなりの間幻想郷に関わっていますし、大概の異常事態は受け入れられるかなーって思ってたんですよ。甘かったです。だって何年も教科書越しに睨めっこして、時には落書きもしていた顔が急に目の前に出てきたんですよ? DI○と対峙したポル○レフの気持ちが分かりましたって。私でさえそれなんですから、当事者の神子さんの心境は如何ほどと言いますか……あの人、あんな顔出来たんですねぇ。思わず写メって待ち受けにしちゃいましたよ。えっ? 写真を提供してほしいって? ……それ、遠回しに死ねって言ってるんですか?」

○紅美鈴 マテリアル2
 種族不明、経歴不明の妖怪……なのだが、幻想郷では別に珍しくないので、特に誰も気にしない。しかし以前は別の名前だった時期もあるらしく、今の名前は当時呼ばれていた名前をもじったモノだとか。




FGOではサバ☆フェス復刻をのんびりとプレイ中。
ちょうどイベント内容が創作関係の話なので、こうやってSS書いている身としては色々ためになります。
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