落枝蒐集領域幻想郷   作:サボテン男爵

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今回より、短編から連載に変更します。


落枝蒐集領域幻想郷 その8

「ぐわーっ!? 氷の礫が俺を打ち据えるー!?」

 

 博麗神社へとやって来た立香たちを真っ先に出迎えたのは、見覚えのあるまっくろくろすけが吹き飛ばされる光景だった。

 

「やっぱりあたいったら最強ね!」

「ああ、そして私は最弱だ……ガクリ」

 

 何故か妙にバリトンの聞いたボイスを出しつつ地面に突っ伏するまっくろくろすけ――もといアンリ・マユ。

 そんな彼の上でピョンピョン跳びはねて喜ぶのは、水色の髪と氷の羽を持った女の子の妖精。

 加えてちょこちょこと近づいていったのは、なんだかカエルっぽい印象を受けるこれまた女の子。

 

「ほらチルノ、死体蹴りはその辺りにしておきな。はっはっは、それにしてもアンタ弱いねー」

「いやまあ、伊達に最弱英霊名乗ってないわけですし? だがこんなんでも人間相手にゃ犬と蜘蛛の次に最強――いや、最近はこのキャッチセールスもちょっと怪しくなってきた気がしなくもないんだが。そもそもほら、この弾幕ごっことやらが俺には向いてないわけですよ? なんせ弾数が2本の剣だけだし。頑張れば、ガンドくらいは出せるかもしれませんけど?」

「だったら他の遊びするー? かくれんぼとか」

「そりゃ夜にやれば無敵だろうけどなー」

 

 何故か幼女二人に囲まれている必要悪に、立香は声をかける。

 

「アンリ!」

「およ? マスターじゃねぇか。こんな長階段上ってご苦労さん……って」

 

 アンリは立香たちを見渡し、そして今度は自分の周りに目をやり――

 

「はぁ……」

「えっと、アンリさん。どうかされましたか? ってこれは、お酒の匂い……?」

「いやぁね。マスターはボインボインな別嬪お二人さんに囲まれているってのに、なんで俺はこんなちんちくりん達に絡まれているんだかー、って思っちまってね。さっきはさっきで、なんかちっこい角娘にしこたま飲まされるし」

「あははー、いい度胸してるねあんたー」

「痛いっ!? 笑いながら脛蹴らないで!?」

「チルノー、アンタもこいつの背中に氷押し当ててやりなよ」

「わかったー!」

「うおっ、づめたいっ!? でも生前は氷責めなんぞ受けなかったからこれはこれで新鮮か?」

 

 微妙に笑えなかった。

 

「それにしても元はただの人間っぽいのに、えげつないくらい業を背負ってるねー。生贄の羊かなんか?」

「いや、羊の話は止めてくれ」

「うん? なんか悪い思い出でもあるの?」

「俺というか、多分別口で召喚された俺だとは思うんだが。なんか羊の群れに轢き飛ばされたような気がする」

「アハハっ! なにそれっ!」

「いやね、こいつが意外と笑い事じゃねーんですよ。アイツらつぶらな瞳のくせに、そのまま突っ込んでくるから反面ホラーっつーか」

 

 身に覚えがあり過ぎる出来事だったが、立香は賢く口をつぐむことにした。

 

「あー、このクソ長い階段に妙な懐かしさを覚えちまったのが運の尽きか……で、マスター。どうした訳よ? 日本人だし、参拝ってやつか?」

「ここの巫女さんに用事があって」

「あー、だったらあっちで酒盛りしてるぜ? 俺もさっきまで捕まってたからな。赤い女だから、見りゃすぐにわか――赤……サンタ……うっ、頭が……」

「大丈夫? まっくろくろすけ」

「えっと、お大事にー」

 

 チルノと呼ばれた妖精がアンリの頭に氷を乗せてあげているのを尻目に、立香たちはアンリが指し示した方角に進んだ。

 

「うっ、これはいっそうお酒の香りが……」

 

 マシュが顔を顰める。同時に立香はビーストマシュの誕生を危惧した。

 酒気の中心にいるのは、境内に座り込んだ4人の少女。

 内一人には見覚えがあり……

 

「酒吞?」

 

 その声に反応したのは、二人――

 お馴染みカルデアの酒吞童子と、同じくらいの背丈の鬼らしき少女。

 

「うぅん? 懐かしいあだ名で呼ぶのはだぁれ?」

「ちゃうちゃう、呼ばれたんは萃香はんやのうてうちやで。なあ、旦那はん?」

「はぁ? 旦那ってあの人間、あんたの番かなんか?」

「ご主人様、いう意味や」

「……何あんた、鬼なのに人間に仕えているっていうの?」

 

 萃香と呼ばれた少女の声色に、怒気が混じった。

 しかし酒吞はというとどこ吹く風で――困ったように。

 

「あらあら、萃香はんは鬼の格ってヤツをよくよく気にするんやね。んー、やったら……」

 

 どこか愉しそうに――

 

「一発、自慢の拳で殴ってみたらええんちゃう? それで死ななかったら、認めるゆうことで」

 

 とんでもない事を口にした。

 

「はあっ!? ちょ、お前――」

 

 金髪の女の子が慌てたように叫ぶが、時既に遅く――

 

「分かりやすくていいね。じゃっ、そうしよっか」

 

 萃香はふらふらと体を揺らしながらも立ち上がり、とろんとした瞳で立香を見据え――直後、その小さく強大な拳は立香の眼前にまで迫っていた。

 

「先輩っ!!」

 

 マシュが叫び――同時に立香の体は後ろに引かれる。

 入れ替わるようにマシュが前に出て盾を構え、拳と触れ――炸裂。

 鼓膜を震わせる轟音が響き、マシュの足元は陥没しクレーター状になる。

 しかし――

 

「推定筋力値、Aランク! 先輩っ、ご無事ですか!?」

 

 頼もしきシールダーは、揺るがない!

 

「こっちは大丈夫!」

 

 先ほど立香の身を引いた美鈴に支えられたまま、マシュに無事を伝える。

 マシュもチラリとその姿を確認し一つ頷くと、正面の小さな巨人に視線を戻す。

 一方殴りかかった萃香も驚いたような顔で自分の拳を見つめており――

 

「へぇ……それなりに力を込めたつもりだったけど、ヒビ一つ入らないとはね。うん、こりゃ久方ぶりに殴りがいがありそうな獲物だね」

 

 ニヤッと笑い、再び拳を固める鬼。だが――

 

「萃香はん?」

 

 美しき鬼が、その後姿に声をかける――

 

「一発、やで?」

 

 面白そうに声をかけてくる酒吞に、萃香はバツの悪そうな顔をする。

 

「あー、ほら? 本人には当たってないし、もう一回くらいダメ?」

「ふふ、萃香はん自身がそれを許せるんなら、うちは構わへんけど?」

「それを言われちゃ弱いなぁ……あっ、そうだ! さっきのとは別に、個人でやる分なら――!!」

「ダメに決まってんでしょ!」

 

 名案を思い付いたとばかりに目を輝かせる萃香の頭に、お祓い棒がピシャリと振り下ろされた。

 

「きゃんっ?!」

「まったく――人の神社で暴れないの! 見なさいよ、この陥没。ちゃんと後で直しときなさいよ!」

「うー、わかったよ霊夢。はぁ~、興が削がれちゃったな。飲み直すか。あっ、そっちの女の子! また今度殴らせてね!」

「え、ええっと。それは……」

「ちゃんと断っといた方がいいわよ。でないと辻殴りが出るから」

 

 紅白の巫女服をまとった少女が、赤ら顔で手に持ったお祓い棒を自身の肩に当てる。

 

「で、あんたら誰よ?」

「それは――」

 

 ~少女説明中~

 

「ふ~ん、なるほどねぇ」

 

 コクコクと頷きながらも巫女――霊夢はあんまり興味がなさそうだった。

 

「お~い、霊夢。こいつはやっぱり異変じゃないのか?」

「って言ってもねぇ、魔理沙。繋がっている異世界が一つ増えたくらいの話でしょ。どこかで被害が出ている訳でもないし」

「対処療法とか?」

「始まる前に潰してちゃ、わたしのごはんの種がなくなるでしょう」

「えぇ……」

 

 金髪の魔女然とした少女――魔理沙はそんな声を漏らしながらも、『そういやこんなヤツだったなぁ』的な顔を浮かべていた。

 

「それよりあなたたち」

「はい、なんでしょうか?」

「素敵なお賽銭箱はあっちよ?」

 

 すっとお祓い棒を神社の方に指せば、なるほどそこには寂れた賽銭箱。

 

「なるほど、神社に来て参拝の一つもしないのも失礼でしたね。先輩」

 

 促してくる後輩に頷き返し、立香賽銭箱へと向かう。

 隣にマシュと美鈴も一緒に並び立つ。お賽銭を投げ入れて、二礼二拍手一礼しようとしたら――

 

「ちょっと待って」

 

 何でか霊夢に呼び止められた立香は、振り返る。

 

「えっと、何か?」

「今何入れたの? お金の音じゃなかったけど」

「QPだけど」

「きゅーぴー?」

「おっ、わたし知ってるぜ。香霖の店に飾ってある人形のことだろ」

「違います」

 

 QP――クォンタム・ピース。カルデアで運用される魔力リソースの一種であり、通貨としても代用されている。

 立香がそれを説明すると、霊夢はがっかりしたような表情になり――

 

「そんなの入れられても……」

「じゃあこっちで貰っていいか?」

「ダメ。それならアリスあたりと物々交換できないか話してみるわ」

 

 魔理沙からの要求をあっさりと却下した霊夢。

 立香たちもその間に参拝を済ませ、彼女らの元へと歩いていった。

 霊夢はひょいっと盃を持ち上げ――

 

「飲む?」

「いえ、わたしは未成年なので」

「外の世界の人間は面倒ねぇ」

 

 彼女は盃の中の酒を一息にあおると、ふぅと小さき息を吐いた。

 

「――で、さっきの話だけどちょっと心当たりはないわね。というか“強い力を持ったアイテム”ってだけなら幻想郷を探せばそれなりにあるでしょうし、各勢力が隠し持っている分まで合わせたらちょっと絞り切れないわ」

「その辺りは、さすがは幻想郷ってところですよねぇ」

 

 霊夢の説明に、美鈴も頷いた。

 

「やはり一筋縄ではいきませんか……ダ・ヴィンチちゃんたちもクロスロードからの逆探知は行っているので、こちらもできる限り足で探しておきたかったのですが」

「こういう時こそ巫女の出番じゃないのか、霊夢? ほら、神様の力でちょちょいっと」

「今は酔っているからパス」

「巫女って、そういうトランス状態で儀式とかするんじゃなかったっけか?」

「あら、そうだったかしら」

 

 暖簾に腕押しというか、なんだか立香が想像していたよりもずっと自由な巫女さんだった。

 

「まあ明日にでもやってみるから、待っていなさい。結果は保証しないけど」

 

 立香はその言葉に、『ありがとう』と首を縦に振った。

 そんな折、酒吞が声をかけてきた。

 

「あぁ旦那はん。さっきのは勘弁なぁ?」

「肝が冷えたよ」

「ふふふ……し・ん・ら・いゆうやつやで。マシュはんも、ちゃあんと防ぎはったろ?」

 

 笑みを深める酒吞に、背中にゾクリとしたものが走る。

 “猫の心を持った獅子”――以前誰かが、彼女たち鬼種をそう表現していたか。

 

「いやー、それにしてもこの酒うまいな! なんていう名前なんだ?」

 

 そんな立香の心境を知ってか知らずか、魔理沙が全く別の話題を切り出した。

 話を遮られた形になった酒吞だが、あっけらかんと答える。

 

「あぁ、神便鬼毒酒いうんや」

「ブーーーッ!?」

 

 途端に横で気持ちよさそうに飲んでいた萃香が吹き出した。

 

「ああもう、もったいないわぁ」

「いや、おまっ、今、神便鬼毒酒って……」

「うん? そうやけど、なんか問題あるん?」

「え、これわたしがおかしいの? あっ、そっちの歴史では違う道をたどったとか」

「あぁ、うちが首刎ねられた時と違って今は毒ないから、気にせえへんでええよ」

「やっぱり一緒じゃないかー!?」

 

 うがー! と叫ぶ萃香の様子に、霊夢が目を丸くする。

 

「珍しいわねぇ。傍若無人の化身みたいなあんたが」

「自分勝手の擬人化みたいな霊夢にだけは言われたくない。いやまあ、こればっかりはトラウマを刺激してくるというか……」

「でも美味しかったやろ?」

「へ?」

「だから、味。さっき鬼は嘘つかへん言っとりなはったよなぁ?」

「う、うう……」

 

 萃香は盃に残った神便鬼毒酒に目を落とし、肩をプルプル震わせながら、そして一気にあおった。

 

「くっ、悔しい! でも美味い!」

 

 なんか女騎士みたいなことを言い出した。

 

「ええい、こうなったら今日は飲む! トラウマもきれいさっぱり吹き飛ばしてやる! おっ、戻って来たな黒いの! ほら、わたしの酒を飲めー!!」

「うおうっ!? 謂れのないアルハラが俺を襲う!?」

 

 アンリに突撃していく萃香を見送りながら、霊夢はポツリと呟く。

 

「今日“は”じゃなくて、今日“も”でしょうに」

「ふふふ、容赦ないなぁ巫女はんは」

「あんたもほどほどにしときなさいよ。ああ見えて、キレたらすごいんだから」

「やろうなぁ……ふふ。あんまり深く関わったら大喧嘩になりそうやし、楽しくお酒飲めるくらいがええわなぁ」

 

 ――とは言いつつ、大喧嘩は大喧嘩で悪くないとも思っているのだろう。

 酒吞の笑みが、それを雄弁に語っていた。

 

「ところで霊夢さん、聞きそびれていましたがこちらの神社では一体どのような神様を祀っておられるのでしょう?」

 

 マシュからの問いに、霊夢は眉一つ動かさず――

 

「え、知らないけど」

「はい?」

 

 さも当然と言わんばかりの返答に、目を丸くする。立香も心境は同じだった。

 横では魔理沙が苦笑いしている。

 

「こういうヤツなんだよ。才能だけで巫女やってて、自分とこの神様の名前すら興味ないんだからなぁ」

「え、ええっと……それはどうなんでしょう?」

「別に困ったことはないからいいんじゃない? そもそも誰も教えてくれたこともないんだし、知らなくて当然でしょう」

 

 神様の名前を聞かれて答えられないのは十分に困った事じゃないかと立香は思ったが、当の本人がここまであっけらかんとしている以上あまり深くも突っ込めなかった。

 そんな中酒吞は神社をじぃっと見つめて――

 

「なるほどなぁ……」

「酒吞?」

「旦那はん、知ってはる? この日本いう国にはなぁ、そりゃあ仰山の神さんがおるんよ。森羅万象あらゆるものに神さんが宿ると考えて、荒ぶる自然も恐ろしい怨霊も容赦なく有効活用できる存在に組み替えてきたんや。ほら、あそこの小さい神さんも祟り神みたいやし」

「あぁ、諏訪子の奴か? 確か土着神だのなんだの言ってた気がするけど……」

「あらまあ、それはまた思った以上に大物かもしれへんなぁ。――ともかく、そういうことなんよ」

「えっと、どういうこと?」

「この国では、その気にさえなれば“何であろうと”神さんにできるいうお話。今回のこと、単なる偶然でもないかもしれへんねぇ?」

 

 そう呟く彼女の視線の先では――

 

「そ、それ以上俺に近寄るなー!? うっぷ、さすがにこれ以上は厳しいぞ。く、来るってんなら俺の宝具が火を吹くぞ!」

「あははー、やってみなよ。鬼の体は頑丈なんだ! 例え柱の角に足の小指をぶつけてもへっちゃらさ!」

偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)

「痛いっ!? 何この地味な痛み!?」

「それがお前の知らなかった、“柱の角に足の小指をぶつけた痛み”ってやつさ! 勿論、宝具の性質上俺も痛いんだがね!」

「くっ――まさか人間たちは、ずっとこんな痛みに耐え続けてきたっていうのっ!?」

「いや、そんなマジなトーンで返されても困るんだけど」

 

 なんか色々とカオスな光景が広がっていた。

 

                      ◇

 

 一方、その頃紅魔館にて――

 

「集まりましたね」

 

 メイド長の十六夜咲夜は、屋敷で働く妖精メイドたちを睥睨してよくとおる声で話しかけた。

 

「今日集まってもらった理由ですが、あなた達は現状メイドとしての仕事が十全にこなせているとは思えません」

 

 ざわざわと騒ぐ部下たちを、咲夜は両手を広げて制する。

 

「これは上司であるわたしの責任でもあります。メイドとしての仕事にかまけて十分に新人教育を行えなかった、という点において。ところで、今朝カルデアから帰ってきた妖精メイド4名のことを、知っていますか?」

 

 妖精メイドたちは、何のことだかわからないというようにお互い目配せし合う。

 

「彼女たちもあなた達と同じく、昨日までは自分の面倒を見るくらいしかできない仕事っぷりでした。ですがカルデアから帰ってきた彼女たちは見違えるようになり、一人前とは言わないものの0.68人前の仕事ができるようになっていました」

 

 ――シンと静まり返る妖精メイドたち。

 咲夜は彼女たちを見渡し、再び声をあげる。

 

「原因を探ったところ、彼女たちを見かねた“ある人物”によって教導が施されたことが判明しました。――先生、どうぞ」

 

 現れたのは、妖精メイドたちと同じくらい小さく――そして赤い影。

 

「あちきは今回、臨時講師を請け負った舌切り雀の紅閻魔。よくもまあ女中とは名ばかりの有象無象がここまで集まったものでちね」

 

 小柄ながら妖精メイドたちを見渡す視線は鬼の如く――いやまあ鬼なのだが。

 

「紅閻魔先生には、本日あなたたちの教育を行ってもらうよう依頼してあります。しかしながら、これは決して強制ではありません。あなた達には参加するかどうかの選択権があります。ですが今回の訓練に参加し無事乗り越えた際には、ボーナスを約束しましょう」

 

 咲夜はそう言うと、指を1本立てる。

 

「1週間――その間、参加者にはおやつを一品追加。訓練を乗り越えたものには、更に一品追加します」

 

 ざわつく妖精メイドたち。ほとんどのものは、今の一言で参加を決意したようだった。

 

「……いえ、当人同士が納得しているのならあちきからは何も言いまちぇんが」

 

 ちょっと呆れ気味の紅閻魔だったが、再度瞳に力を入れる。

 

「でははじめまちゅよ、このひよっこども――!!」

 

 こうして紅魔館にて、地獄の窯が蓋を開いた。

 この“訓練”を乗り越え帰還した者達は、後に“キッチン帰り”と呼ばれるようになる。




〇酒吞童子
 幼い少女の姿をした鬼。しかしながらその実態は美しき人食い花。人と同じように考え、愛し、そしてふとした拍子に反転する。伊吹萃香相手のスタンスは玉藻の前と同様であり、“深く関われば殺し合いになるので、ほどほどの距離をとる”といったもの。人間でも化生でも、距離感は大事です。

〇伊吹萃香
 幼い少女の姿をした鬼。しかしながらその実態は幻想郷でも屈指の巨大な力の塊。鬼という種に誇りを持つが、反面幻想郷(厳密には旧地獄)の鬼たちからははぐれ者。――彼女はかつてのだまし討ちを『卑怯』だと許せなかった。酒吞は『そらそうなるわ』と納得した。故に、互いに深くは踏み込まない。今は、まだ――。

〇洩矢諏訪子。
 幼い少女の姿をした土着神。しかしながらその実態は、日本においても最古クラスの古き神であるとも。大地を操り、祟りを司る。多分大地に刻まれた負念で、全時空を破界したり再世したりできる。

〇チルノ
 幼き氷の妖精。今日も元気に遊び回り、喧嘩を売る。ある意味幻想郷でも屈指の怖いもの知らず。

〇アンリ・マユ
 生贄の羊。この世全ての悪たれと願われた、あなたのような誰か。人類悪を笑う必要悪――なのだが今回は何故かいじられ役に。

〇紅閻魔
 小さな体に溢れる母性。これには赤い彗星もニッコリ(風評被害?)。彼女も鬼の一員であり、鬼教官でもある。

〇賽銭を巡る一幕
「アリスー。これなんかと交換してくれない?」
「どうしたのよ藪から棒に……ってどうしたのよコレ!?」
「どうしたって、お賽銭だけど」
「これ、ちょっとした額よ?」
「……え、本当?」
 藤丸立香のお賽銭額――500万QP




 書き終えたら萃香のツッコミ比率が多かった件について。酒吞のメインツッコミ役であるイバラギンが不在だったから、彼女の方にその役が回ってしまいました。でも何気にボケ役でもツッコミ役でもいけると、改めて気付いたり。あと、京都弁はにわかなので深い追及はご容赦を(汗

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