―――テレビ収録の日、テレビ局。
なんか、テレビに出るんだって。
理由?知らんがな。
だっていきなり部室から強制転移されたらさ、ね?
だってさ、転移して着くとすぐによってきてさ……
「お待ちしておりました。神浄刃様、リアス・グレモリー様。そして眷属の皆さま。さぁ、こちらへどうぞ」
と誘導されちまった。
こっそり抜けてもいいんだけどさ、暇だったし。いい暇つぶしになるでしょ。
「サイラオーグ。あなたも来ていたのね」
リアスが声をかけた。
おぉ、ワイルドだな。
サイラオーグは貴族服を肩へ大胆に羽織っている。
俺?俺は黒の浴衣だ。
浴衣っていいよね……涼しくて。
サイラオーグの後ろにいるのは『女王』か?なかなかの強さだ。
「リアスか。そっちもインタビュー収録か?」
「えぇ。サイラオーグはもう終わったの?」
「これからだ。おそらくリアスたちとは別のスタジオだろう。―――試合、見たぞ」
サイラオーグが俺とリアスを交互に見ながら言う。
「お互い、新人丸出し、素人臭さが抜けないものだな……まぁ、そこの神浄は違うようだがな」
当たり前だ。
何年戦ってきたと思ってんだ。
はっきり言うと、この世界は『箱庭』よりぬるい。まだ、だけど。
サイラオーグはリアスと話し込んでいる。
暇だ……早くしてくんないかな?
帰っちゃうよ?帰っちゃてもいいの?
「遅れてすいません。お初にお目にかかります。冥界第一放送の局アナをしているものです」
やっと来たか……
ってあれ?リアスたちがいない?なんでだ?
「今回は神浄様だけの取材となりますので、グレモリー眷属の皆さまとは別のスタジオとなります」
なるほどね……
確かに一緒に取材しても意味ないしね。
だって俺はグレモリー眷属じゃないし。
「では、さっそくですが、打ち合わせを―――」
打ち合わせの内容はこうだ。
大したものではなかった。
どんなことが質問されるかなど、だった。
―――収録後、楽屋。
「あー、緊張したー」
イッセー……何してたんだ?
もしかして……『おっぱいドラゴン』か!?そうなのか!?
たのしみだな~。
そろそろ帰ろうか。
そう思い、皆で席を立った時だった。
コンコン
楽屋の扉をノックする音が聞こえた。
そして、扉が空けられる。
入ってきたのは……
「刃様はいらっしゃいますか?」
「レイヴェルか……どうした?」
俺と視線があうレイヴェル。
一瞬、パァと顔が輝いた。
でもすぐに赤くなった。
かわいい……
手に持っていたバスケットを俺に渡してくる。
「こ、これはケーキですわ!!この局に次兄の番組があるものですからついでです!!」
俺はバスケットを開けて中を見る。
そこにはおいしそうなチョコケーキが入っていた。
「すごいな……これをレイヴェルがつくったのか?」
「は、はい!!ケーキには自信があるので!!それにケーキをごちそうする約束しましたし!!」
「そうか……わざわざありがとうな。でも、別にお茶の約束の時でもよかったんだぞ?」
「いえ、収録でお疲れかと思ったので甘いもので少しでも疲れがとれればと……」
なかなか気の利く子だ。
たったこれだけのためにわざわざ来てくれるなんて。
「で、では、私はこれで」
レイヴェルがそそくさと帰ろうとする。
「ちょっと待ってくれ」
俺はケーキを切るのにちょうどいいナイフを創造する。
ケーキを少しだけ切って、口に運ぶ。
おぉ……うまい。チョコの甘味が口いっぱいに広がる。だが苦味もかすかにあり、バランスの良く取れたすばらしいチョコケーキだ。
「うまい……レイヴェルありがとう。残りはゆっくり家で食べることにするよ。今度一緒にケーキでもつくろう。そのときにお茶もね」
レイヴェルは目を潤ませて、顔をものすごく赤くしていた。
「……よろしくお願いします」
レイヴェルは俺たちに一礼したあと、その場を足早に去っていった。
―――数日後、レーティングゲーム観戦場、最高貴賓席。
今回はリアス対ディオドラのレーティングゲームをアザゼルと一緒に見ることにした。
「アザゼル、どっちが勝つと思う?」
俺は聞いてみた。
「難しいな……普通ならリアス、と即答する。だが、ディオドラの強さも以上だ。短期間であそこまで強くなるなんてな。その成長速度を考えると、な」
……あれってさ、たしかオーフィスの『蛇』のおかげだよな?
ということは……オーフィスはある程度『蛇』を『渦の団』にあげちゃった?
あー……
ま、しょうがないよね。だってオーフィスだもん。
「お、そろそろ始まるぞ」
アザゼルが俺に言う。
そろそろか……
「なんだ……これは!?」
観戦席が丸ごと結界に取り込まれた。
そして、次々に魔法陣が展開される。
そこから、黒いフードを被った者がゾロゾロと出てきた。
「『渦の団』か……」
「なに!?『渦の団』だと!?」
こんなやり取りをしているうちにも、どんどん増えていく。
とりあえず……
「一気に片付けるか……おいで、なのは、アリシア、フェイト、ヴィヴィオ」
床にピンクと黄と白の魔法陣が展開される。
「急にどうしたの?刃くん」
「ホントだよ~」
「ね、姉さん……」
「パパ?なにかあったの?」
今回呼び出したのはリリカルのメンバーだ。
俺が説明をしようとする。
そのときだった。
「パパ!?刃テメェ娘がいたのか!?」
「義娘だ。死にそうだったし、俺になついてたから連れてきた」
「……そうか。で?なんでこの姉ちゃんたちを呼んだんだ?」
「それはな……なのは」
「ん?説明してくれるの?」
「あぁ、実はな―――」
俺はなのはたちに説明した。
すると……
「いいよ、じゃあ一気にいこうか」
なのははそう言うと、魔力を収束し始めた。
「で?刃、なんで呼んだんだ?」
「見てろアザゼル。すんごいから」
「……わかったよ」
アザゼルが素直に従った。
てか、サーゼクスとか何やてんだ?
「いくよ……全力全開、スターライト……ブレイカー!!」
ゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
ものすごいピンクの光線が『渦の団』の集団に向かっていく。
「お、おい……な、なんだ今の?」
「収束魔法だ。空間に漂っている魔力も収束して放つ魔法。いや魔砲だ」
「たしかに魔砲だな……俺は絶対に受けたくないね」
すげぇ……もうほとんどいなくなってる……
「うし、なのはがだいたい倒してくれたけど、おまえたちにはあそこにいるテロリストを殲滅してもらいたい。ここではどんな魔法を使っても構わない。ただしスターライトブレイカー級のはあまり使わないでくれ。結界がもたない。んじゃ、いっていいよ」
「わかったよ」
「オッケー」
「わかった」
「いってくるね~」
リリカル組は意気揚々と飛び出していった。
「よし、アザゼル。ここはあいつらに任せてくれ。他の奴らは邪魔になるだけだからな。俺はリアスたちの方に行ってくる」
「あぁ……じゃあ俺はここでお手並みを拝見させてもらうよ」
「んじゃな」
俺はリアスたちの気を探り、瞬間移動をした。
―――???。
「よっと……なんだこれ?」
辺りには白いがれきが散らばっている。
「げごぎゅがぁぁ、ぎゅはごはぁッ!!ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
なんだ?
あれは……覇龍か!?
もうそこまで……
「どうなっている……リアス」
「や、やいばぁ……イッセーがぁ……」
リアスは泣きながら抱き着いてくる。
俺はリアスの髪を優しくなでる。
「木場、どういう状況だ」
「アーシアさんがシャルバ……あそこにいる男に殺されて……」
「そうか……とりあえず俺はイッセーを止めてくる。リアスたちを頼んだぞ」
「任せて!!」
さて、どうしましょうかね。