―――イッセーの家、鍛練場。
イッセーが禁手状態になり、背中の魔力噴出口から火をふかして、ジグザグに高速で動く木場を追う。
あきらかに、木場の『騎士』としての脚はイッセーを超えている。
だが……
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!」
倍化して、瞬間的なダッシュ力を一気に高めれば直線だけ抜ける。直線だけね。
ギィィィィィン!!
木場が聖魔剣を振るう。それをイッセーはアスカロンを出現させてそれを受け止める。
まぁ、こんな感じでイッセーと木場は訓練をしている。
俺はというと……
「ハァッ!!」
『影』で創った鎌で俺に攻撃を仕掛けてくるのは、ギャスパーだ。
俺は鎌の柄の部分を拳で殴り、鎌を吹き飛ばす。
だが、次の瞬間にはまた次の鎌を創って攻撃を仕掛けてくる。
それも長くは続かない。
「よっと……チェックメイトだぜ」
俺は『念』で鎌を創る。それをしたから振り上げるように斬り上げる。
そして、反撃をくらう前に首元に鎌を持っていく。
「はぁ……やっぱり刃さんは強いですね……まだまだかないそうにありません」
「ハハハ、そんなに簡単に抜かれたら俺のこれまでの人生はなんだったんだって感じなんだけどな」
ギャスパーよりかなりの修羅場を経験しているのにすぐ抜かれたらショックで立ち直れそうにない。
まず、ありえないがな。
そろそろ向こうも終わったかな?
そう思い、イッセーと木場の方を見る。
すると、なぜかアザゼルもいた。
「ギャスパー、向こうに行くぞ」
「は、はい」
俺とギャスパーはイッセーたちの元に向かった。
「アザゼル、なんでここにいるんだ?」
イッセーたちの元に着くと、俺はまずアザゼルに声をかけた。
「差し入れを持ってきたのさ。ほれ、女子部員のお手製おにぎりだ」
そう言っておにぎりを差し出してくる。
まぁ、もらいましたよ。
「よーし、休憩もしっかりとれたし、木場、組手再開するぞ!!」
そう言って、イッセーと木場は組手を再開させた。
俺とギャスパーは、それを眺めることにした。
―――数日後、夜。
スレイプニルという八本足の巨大な軍馬に、俺、グレモリー眷属、アザゼル、オーディンのジジイ、ロスヴァイセが乗っていた。
しかも空を飛んでいる。
軍馬が大きいせいか、馬車も大きい。
外には護衛として木場、ゼノヴィア、イリナ、そしてバラキエルが空を飛んでついてきている。いつでもテロリストを殲滅できるようにだ。
「日本のヤマトナデシコはいいのぉ。ゲイシャガール最高じゃ」
ジジイが満足げな表情で「ほっほっほっ」と笑っていた。
くそったれが!!
ついていく俺たちの身にもなりやがれ!!
ここのところ、日本の名所に馬車で連れまわされている。
まったく、面倒ったらありゃしない。
ロスヴァイセはジジイにお説教中だ。
その時だった。
ガックンッ!!
ヒヒィィィィィィィィィィッ!!
突然、馬車が停まり、俺たちを急停止の衝撃が襲った。
いって~な……誰だ?俺に喧嘩売ってんのは…・・
そう思い、俺は馬車から出ていく。
すると、外にいたメンバーが戦闘態勢になっていた。
「はっじめまして、諸君!!我こそは北欧の悪神!!ロキだ!!」
無駄に声を張り上げて登場した。
なんかしらんが、イッセー以外のメンバーはみんな目元をかなり引きつらせてる。
「……ロキ。北欧の神」
アザゼルが呟く。
「アザゼル、そんなに危険なのか?コイツ」
「あぁ、悪神だからな」
「そうなのか……『箱庭』にはこの程度ならゴロゴロいたぞ?」
そう言うと、アザゼルは顔を思いっきり引きつらせた。
正直に言おう。
ロキは多分第五層がいいところだ。
「これはロキ殿。こんなところで奇遇ですな。何かようですかな?この馬車には北欧の主神オーディン殿が乗られている。それを周知の上での行動だろうか?」
おい、アザゼル。俺を忘れてる。俺、創造神。一番偉い。
「いやなに、我らが主神殿が、我らが神話体系を抜け出して、我ら以外の神話体系に接触していくのが耐え難い苦痛でね。我慢できずに邪魔しに来たのだ。
悪意全開の宣言ありがとうございます。はい。
「堂々と言ってくれるじゃねぇか、ロキ」
「本当だぜ。まったく……ただでさえイライラしてんのによ」
ジジイのせいで俺のストレスはものすごいこっとになっている。
だから……
「ふはははははは、これは堕天使の総督殿。きd「うるさいぞ、こっちはイライラしているんだ。さっさと死ね」…グハァ!?」
俺は神速でロキに近づき、顔面を思いっきり殴った。
ロキは面白いようにぶっ飛んでいく。
「ふうぃ~スッキリした☆」
「なにやってんだおまえは!!」
アザゼルが俺の頭を殴ってくる。
「うるせぇな、俺は創造神だぞ?少しくらい好きにやらせろ」
「あ、そういえば創造神だったな。おまえ」
この野郎……ぶっ殺してやろうか?
「とりあえずさ……アイツ、殺していいよね?」
俺は殺気をぶちまけながら聞く。
「いや、待ってくれ。それは困る。おまえにはオーディンの護衛を頼みたい。ロキはこっちでどうにかする」
「仕方ねェ……わかったよ」
俺は大人しくジジイの元に行く。
「おいジジイ、なんかハブられたからこっちに来た。安心しろ、こっちに流れ弾が来ても完璧に防いでやる」
「ほっほっほっ、心強いわい」
向こうでは、ロキとみんなが熱い戦いをしているっていうのに俺は……俺はジジイのお守りかよ。
おっと、流れ弾か……
「ATフィールド展開」
俺はATフィールドを展開してそれを防ぐ。
あー早く終わんないかな。
ヌゥゥゥッ
空間がゆがんだ。
そこから出てきたのは灰色の狼。
どっかで見たような気がするな……どこだっけ?
えーっと……あぁ、『箱庭』か。
確かあいつは……
「フェンリルじゃと!?」
「フェンリルか……懐かしいな」
あいつ元気にしてっかな……
「あいつら大丈夫か?」
「キツそうじゃな」
「まぁでも、俺には関係ないけど」
その時だった。
オオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!
フェンリルが吠えた。
イッセーがリアスに向かうフェンリルと殴った。
だが反撃をくらった。
腹を牙に貫かれたようだ。
「あーあ、何も考えずに飛び出すからだ」
「そんなこと言っておる場合か!!わしのことはいい、早くあの小僧どもを助けに行け!!」
「へいへい……」
しゃーない、少し張り切りますか。
俺は少し力を開放した。
指輪?
アレはもうやめた。
いちいち外すのが面倒になった。
俺はチャクラを練る。
「火遁・豪龍火の術(かとん・ごうりゅうかのじゅつ)!!」
印を結んで術を発動する。
それも上空に向かってだ。
これで下準備は整った。
さて、いきますか。
違う印を結ぶ。
そして術を発動させる。
「麒麟……」
雷遁の中でも最強の位に位置する術だ。
下準備だけで普通はチャクラがほとんど持って行かれる。
だが俺は違う。
だって俺、神様だもん。
フェンリルは麒麟を避けられない。
直撃した。
だが、消滅までとはいかなかった。
そのうちに俺はイッセーの元に近づく。
「うし、これでOKだな」
俺はイッセーの腹に『フェニックスの涙”極”』をかけた。
するとすぐに腹に開いた穴がふさがっていく。
これで一命は取り留めたな。
「兵藤一誠、無事か?」
「ヴァーリか」「ヴァーリ……」
ヴァーリがなんでこんなところに?
どうでもいいけどさ……
「俺の邪魔だけはするなよ……したら『破壊』しつくすからな」
「ハハハ、そんなバカなことはしない」
あれ?ロキがいなくなっている。
クソが……次会ったら『破壊』しつくしてやる。
―――馬車付近。
「オーディンの会談を成功させるにはロキを撃退しなければいけないのだろう?」
ヴァーリは全員を見渡してから、遠慮なしに言う。
「このメンバーと赤龍帝だけでは……まぁ、創造神は別だが。それだけではロキとフェンリルを凌げないだろうな。しかも英雄の活動のせいで冥界も天界もヴァルハラも大騒ぎだ。こちらにこれ以上人材を割くわけにもいかない」
正直言うと俺一人で全部解決できるんだけどな……
「おまえがあいつを倒すとでもいうのかよ?」
イッセーがヴァーリに聞く。
「残念ながら今の俺でもロキとフェンリルを同時には相手にできない」
ククク、偉そうなこと言ってたのにな。
ヴァーリは続けて言い放つ。
「だが……二天龍が手を組めば別だ」
その発言に、みんなが驚いた。
「今回の一戦、俺は兵藤一誠と共に戦ってもいいと言っている」
この野郎……一体何様のつもりだ。