―――裏京都。
俺たちが足を踏み込んだのは、異界といっても過言ではないような場所だった。
江戸時代の街並みのセットのごとく、古い家屋が建ち並び、扉から窓から通り道から、面妖な生き物たちが顔を覗かせていた。
金閣寺の人気のない場所に設置してあった鳥居。そこをくぐると別世界だった。
薄暗い空間。独特の空気。先ほど説明した古い家屋群。
そこの住人たちが俺たちを迎えてくれた。
色々な妖がいるな。
ただ……全員がミツキを気にしているようだった。
今のミツキは九尾の……大人の姿だ。
九尾の姿=大人の姿と考えてくれ。
ミツキはこの裏京都の妖からしてみれば、もはや伝説の存在だ。
いま京都の妖を束ねている八坂の先祖……という設定だからな。
そんなこんなで家屋が建ち並ぶ場所を抜けると、小さな川を挟んで林に入る。そこをさらに進むとと巨大な赤い鳥居が出現した。
その先にデカい屋敷が建っている。古さと威厳を感じさせてくるな。
あ、鳥居の先にアザゼルと着物姿のセラがいる。
「お、来たか」
「やっほー、皆☆」
……こいつらなんでこんなにいつも通りなんだ?
二人の間には金髪の少女がいた。この前の九尾の子だな。
今日は巫女装束ではなく、戦国時代の御姫様が斬るような豪華な着物を着ていた。
いいねぇ……萌えるね……
「九重様、皆さまをお連れ致しました」
オネエサンはそれだけ報告すると、ドロンと炎を出現させて消えて行った。狐火か?
「私は表と裏の京都に住む妖怪たちを束ねる者―――八坂の娘、九重と申す」
自己紹介をしたあと、深く頭を下げてきた。
「先日は世話になった。刃、ミツキ様」
俺のことは刃でミツキのことはミツキ様なんだね……
「な、なぁ……そう言えばミツキちゃ……さんは一体何者なんだ?」
イッセーは俺に聞いてきた。
他のみんなも興味津々のようだ。
ミツキのことはバラしても問題ないし、いいか。
「ミツキはな、八坂の先祖だ。しかも一番初めの、な」
「「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」
「やっぱそうか……」
「…………………………」
アザゼルとセラ以外はものすごく驚いていた。
アザゼルは納得したようだ。
セラは……わからん。だって無言なんだもん。
「さて、九重。詳しい事情を話してもらっていいか?」
俺は話を進めるために九重に切り出す。
「う、うむ。そうじゃな……どうか、どうか!!母上を助けるために力を貸してほしい!!」
「もちろんだ。ただ、行方不明になったときの状況などを教えてくれ」
「わ、わかったのじゃ。そうじゃな―――」
九重が言うには、この京都を取り仕切る妖怪のボス―――九尾の狐こと八坂は、須弥山の帝釈天から使わされた使者と会談するため、数日前にこの屋敷を出たという。
ところが、八坂は帝釈天の使者との会談の席に姿を現さなかった。不審に思った妖怪サイドが調査したところ、八坂に同行した警護の烏天狗を保護した。
その烏天狗が死の間際、八坂が何者かに襲撃され、さらわれたことを告げたらしい。
……帝釈天!!テメェが『禍の団』を手引きしたんだな。
『禍の団』より先に帝釈天をブチ殺してやろうか?
まぁいいや、それより先に八坂を助けださねぇとな。
その後、アザゼルとセラが九重と交渉し、冥界側の関与はないことを告げた。
そして、『禍の団』の仕業の可能性が高いという情報も提供した。
「あぁ、そうだアザゼル」
「あぁん?なんだ?」
「帝釈天だ……あいつは『禍の団』の英雄派トップの曹操とつながっている」
「なに!?それは本当か?」
「あぁ……内密に頼む。騒がれて帝釈天にこっちの動きがバレたら『神使』全員で帝釈天の勢力を破壊しつくさないといけないくなる」
「はは、ははは。はぁ……わかった」
アザゼルは顔を引きつらせながらも了承してくれた。
イッセーたちは向こうでなにか騒いでいるようだが俺はそんな気分ではなかった。
帝釈天……どう殺してやろうか?
とりあえず、敵はこの京都にいる。
八坂がもし京都から出ていたら京都は大変なことになっているからな。
「九重、安心しろ。絶対に八坂は助け出してやる」
「う、うむ。よろしく頼むのじゃ///」
う~ん、萌えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!
これだけで俺は三日間戦えるぞおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
こうして、俺の、俺たちの京都での戦いが始まろうとしていた。
―――俺の部屋。
「ミツキ、頼みがある」
「な、なんですか?」
「九尾の尻尾で眠らせてくれ!!」
「もちろんじゃ///」
夜。
俺は寝ようとした。
だが、何かが足りなかった。
そう、もふもふ感だ!!
だからミツキには九尾に戻ってもらって俺はその尻尾の中で寝るんだ!!
「はふぅ……もふもふさいこぉ……zzz」
「ひゃ!?な、何するんじゃ!!って、もう寝ておるのか。ふふふ、かわいい寝顔じゃ」
俺はすでに意識を失っていた。