―――俺の部屋。
就寝時間を間近にして俺の部屋に俺、ペスト、ミツキ、イリナ、ゼノヴィア、ロスヴァイセ、グレモリー眷属、シトリー眷属、アザゼル、セラが集まっていた。
最初はイッセーの部屋に集合するはずだったんだが、あそこは狭すぎる。
ミツキは九尾の姿に、その尻尾に俺が埋もれて、その俺の膝の上にペストがいる。
久しぶりに会ったせいか、ペストは呼び出して出てきた瞬間にキスしてきた。しかも思いっきり深く。
それは置いておいて……
アザゼルが今夜の作戦についての説明を始める。
「では、作戦を伝える。現在、二条城と京都駅を中心に非常警戒態勢を敷いた。京都を中心に動いていた悪魔、堕天使の関係者を総動員して、怪しい輩を探っている。京都に住む妖怪たちも協力してくれているところだ。いまだ英雄派は動きを見せていないが、京都の各地から不穏な気の流れが二条城を中心に集まっているのは計測できている」
「不穏な気の流れ?」
木場がアザゼルに聞く。
「あぁ、京都ってのは古来、陰陽道、風水に基づいて―――」
アザゼルがものすごく長い説明をだらだらと言う。
はっきり言おう。
どうでもいい。
そのあとも、実験のことなどをだらだらと話していく。
「刃……今回の戦いはなにか秘策があるんだろ。一応、全員薬は飲んでいる。俺だけじゃなくて全員に説明してやれ」
お?俺の出番か。
「よし、一回しか言わないからよく聞け。俺は英雄派にものすごくイラついているのは知ってんな?」
コク
と、みんながうなずく。
「だからさ……地獄を見せてやりたいんだよ。それでな、ペストの出番だ」
「はいは~い♪」
ペストは俺の膝の上でかわいく手を上げる。
「ペスト……みんなに説明してくれ」
「は~い♪私は『黒死斑』の神霊……精霊だよ~。私はね、黒死病で命を落とした八千万人の死者の霊群の代表。だから、ね……お兄ちゃんが考えたのは、英雄派の人間を全員黒死病にしちゃおっか☆ってことなんだよ♪」
「「「「「……………………」」」」」
全員なにを言っているか分からないようだ。
ただ、アザゼルは何かを考えているようだった。
仕方ない、簡単に説明するか。
「お前ら、黒死病ってなんだか分かるか?」
この問いにはアザゼル以外の全員が首を横に振った。
「黒死病……それは人間の体にペスト菌が入ることにより発症する伝染病だ。ペストは元々齧歯類に流行する病気で、人間に先立ってネズミなどの間に流行が見られることが多い。ノミがそうしたネズミの血を吸い、次いで人が血を吸われた結果、その刺し口から菌が侵入したり、感染者の血痰などに含まれる菌を吸い込んだりする事で感染する。人間、齧歯類以外に、猿、兎、猫などにも感染する。かつては高い致死性を持っていたことや罹患すると皮膚が黒くなることから黒死病と呼ばれ、恐れられた。14世紀のヨーロッパではペストの大流行により、全人口の三割が命を落とした。こんな感じだ」
「どこが簡単な説明だよ!!」
イッセーがなんかほざいてるなー。
まぁ、関係ないけど。
「だー、面倒だな。簡単に今回の説明をしよう。英雄派を黒死病にかけて、苦しませよう!!ってことだ……OK?」
「「「「「イエッサー!!」」」」」
やっとわかってくれたか。
あ、言い忘れてた。
「二日から五日たたないと発症しないのを速攻で発症するからな。即死するからな、あまりペストの邪魔して前に出ていくと死ぬぞ。まぁ『神使』は大丈夫だけどな」
「「「「「『神使』パネェ!!」」」」」
そりゃ、神様の使いだからな。
「あ、そういえば刃」
「なんだ?」
アザゼルが話しかけてくる。
「今回はテロリスト相手のプロフェッショナルを呼んでおいたんだ。各地で『禍の団』相手に大暴れしている最強の助っ人だったんだが……まぁおまえがいるし、それにペストのお嬢ちゃんもいるからな」
「……アザゼル、ペストはあれでも500歳は軽く越えている」
「マ、マジかよ!?」
「あぁ、大マジだ」
その後、アザゼルが詳しく説明を始めた。
ものすごく長い。
だから暇。
だから俺はミツキの尻尾の感触を楽しんでいた。
もっふもふなんだ。
そうもっふもふだ。
どうやら説明が終わったようだ。
「俺からの説明は以上だ。俺も京都の上空から独自に奴らを探す。下院一時間後までにはポジションについてくれ。怪しい者を見つけたらソッコーで相互連絡だ。―――死ぬなよ?修学旅行は帰るまでが修学旅行だ。―――京都は俺たちが死守する。いいな?」
「「「「「はい!!」」」」」
全員が返事をして、作戦会議は終わった。
―――ロビー。
準備を終えた俺たちはロビーに来ていた。
まだ俺たち以外は来ていない。
いや、イッセーとアザゼルが先に来ていたか。
「刃、行くぞ」
「わかった」
アザゼルが俺に声をかけてきた。
どうやら全員そろったようだ。
俺たちがホテルの入口から出ようとするとサジがシトリー眷属のみんなに声を掛けられていた。
つーかよく考えたらサジもハーレムやってるよな。
―――???。
ホテルを出て、京都駅のバス停に赴く。
ここからのバスに乗って二条城まで行くらしい。
いや、普通に走った方が速いだろ。
服装だが、グレモリー眷属、シトリー眷属は冬服の制服だ。
だけど、俺と『神使』は違う。
巫女装束だ。
なんで?と思うだろ。
一応それが『神使』の正装だからな。
バスを待っているときだった。
俺の背中になにかが飛び乗ってきた。
ふむ、この感触は少女だな。
「刃!!私も行くぞ!!」
金髪の巫女装束、九重だ。
確かこいつは妖怪のいる裏京都で待機していたんじゃないか?
「九重、どうしてここにいるんだ?」
俺の肩い肩車の格好で座る九重は俺の額をペチペチ叩きながら言う。
「私も母上を救う!!」
「危ないから待機しているよう、セラやアザゼルに言われただろ?」
「言われた。じゃが!!母上は私が……私が救いたいのじゃ!!頼む!!私も連れて行ってくれ!!お願いじゃ!!」
ぐっ……こんなかわいい少女にお願いされたら……
断れるわけがないだろうッ!!
「もちろんd」
そっから先は言えなかった。
『絶霧』が俺たちを転移させたからだ。