瑠弾のネモ   作:ホウカ

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第11話 旅行の時間

 

 

 

 

「遠山君!班の人数揃った?」

 

「片岡さん?」

 

班?人数?はて…?

 

「決まったら学級委員の私か磯貝君に伝えてね。もし良かったら…」

 

「班?」

 

「忘れたのか?来週の修学旅行のだ」

 

隣の席の根本さんにつっこまれてしまう。

クラスではその話題で持ちきりで、みんなして京都のガイドブックを開いている。

 

「まったく…3年生も始まったばかりのこの時期に総決算の修学旅行とは片腹痛い」

 

そう言いつつも殺せんせーは学校にどデカイバックを持ってきている。まだ1週間前なのに。

 

「先生 あまり気乗りしません」

 

「「「ウキウキじゃねーか!!」」」

 

「たかだか修学旅行に荷物でかすぎ!!」「明らかに必要ないもの入ってるし!」

 

「…バレましたか。正直先生、君達との旅行が楽しみで仕方ないです」

 

テストの次は修学旅行。暗殺教室でも行事の予定は目白押しだ。

 

 

「知っての通り来週から京都2泊3日の修学旅行だ。君らの楽しみを邪魔したくないが、これも任務だ」

 

「…てことは、あっちでも暗殺を?」

 

岡野さんの問いに、烏間先生は首を縦に振って答えた。

 

「その通り。京都の街には学校内と段違いに広く複雑。しかも…君達は回るコースを班ごとに決め、奴はそれに付き添う予定だ。狙撃手を配置するには絶好の場所。既に国は狙撃プロ達を手配したそうだ。成功した場合貢献度に応じて百億円の中から分配される。暗殺向けのコース選びをよろしく頼む」

 

「「「はーい」」」

 

内容は暗殺といった残酷なことだが、校庭に響き渡る返事の声はとても無邪気なものだった。

 

「遠山君!同じ班にならない?」

 

「矢田さん…!いいのか?」

 

未だに誰とも班になれていないぼっちの俺もついにこれでぼっち脱出だ。

顔を赤くして頼んできた矢田さんもホッとしたような表情だ。

 

「うん!今陽菜乃ちゃんも同じ班なんだけど、あと3人必要なんだよね」

 

陽菜乃ちゃん…? ああ、倉橋さんのことか。仲よかったもんな、この2人。

 

あと3人か…ん?…キョロキョロしてたら根本さんが近寄ってきたぞ?

 

「キンジ…!今神崎さんと2人なんだけど…一緒の班にならないか?」

 

「ああ、いいぞ。俺らも今のところ3人なんだけど、他の2人にも聞いてくる」

 

「他の2人…?」

 

根本さんは不安げな感じだが両方女子なので大丈夫だろう。

矢田さんと倉橋さんに伝えにいったら速攻でオッケーが出た。

 

「矢田さんと倉橋さんも分かったってさ。よろしくな根本さん、神崎さん」

 

「ああ!」

 

顔は人形のように可愛く整っている、男口調の根本さんと

 

「よろしくね、遠山君」

 

真面目でおしとやかな美人。目立たないけどクラスみんなに人気がある黒髪ロングの神崎さんが班に加わった。

 

「それよりも遠山君…班は7人班か6人班なんだけど、どうするの?」

 

「その辺はどっちでもいいんじゃないか?」

 

「どっちでもいいって…もし6人班で最後の1人も女子だったら、男子遠山君だけになるんじゃないかな」

 

「えっ…あっ…ああ!!」

 

まずいまずいまずい。ただでさえ可愛い人とか美人はダメなのにこの班そういうのばっかじゃねーか!

 

「急いで男子誘った方がいいよ。今こっちを見てる片岡さんや、不破さんも遠山君と同じ班になりたがってるだろうから先越されちゃうよ」

 

こういう事が全然分からない俺とは違い、神崎さんは勘が鋭いぞ。

 

「渚ーー!頼む!同じ班になってくれぇ!!」

 

「いいよー!僕からも頼もうと思ってたんだ」

 

渚はカルマと2人だったらしく、事情を説明し班に入ってもらった。

 

「でもさすが遠山君だ…僕ら以外女子だったなんて」

 

渚は若干引き気味でそんなことを言ってきた。ん?何でそこでさすが俺、なんだ?

 

「どういうことだ?」

 

「まあ…それでこそ遠山君だよね」

 

意味がわからん…がこれで7人班の完成だ。男性陣は俺、カルマ、渚。女性陣は矢田さん、倉橋さん、根本さん、神崎さん。

良かった、わりと男女のバランスが取れて。

 

「よし、じゃあどこ回るか決めちゃおっか!」

 

この班を発足させた矢田リーダーの元、話し合いが始まったのであった。

 

 

 

ワイワイガヤガヤ。

すべての班が無事に決まり、今は班ごとに計画を立てている。

 

「フン、みんなガキねぇ。世界中を飛び回った私には…旅行なんて今更だわ」

 

ったく。そんな見え見えの見栄なんか張るなっての。本当は楽しみのくせに。

 

「じゃあ留守番しててよビッチ先生」「花壇に水やっといて〜」

 

案の定生徒に留守番頼まれてるし。

そう言われたビッチ先生は唖然としてしまう。

 

「ねー2日目どこ行く?」「やっぱ東山からじゃない?」「暗殺との兼ね合いも考えると…」「でもこっちの方が楽しそ〜」

 

「何よ!!私抜きで楽しそうな話してんじゃないわよ!!」

 

「「「行きたいのか行きたくないのかどっちなんだよ!」」」

 

行きたいんだろうな、きっと。と…そんなツッコミをしている間に殺せんせーが広辞苑のようなものを大量に持って教室に入って来た。

 

「1人1冊です」

 

「重っ…何これ殺せんせー?」

 

「修学旅行のしおりです」

 

「「「辞書だろこれ!」」」

 

「イラスト解説付の全観光スポット、お土産人気トップ100、旅の護身術。入門から応用まで。昨日徹夜で作りました。初回特典は組み立て紙工作金閣寺です」

 

「「「どんだけテンション上がってんだ!揃いも揃ってうちの先生は!」」」

 

「大体さぁ、殺せんせーなら京都まで1分で行けるっしょ?」

 

「もちろんです。ですが移動と旅行は違います。皆で楽しみ、皆でハプニングに遭う。先生はね、君達と一緒に旅できるのが嬉しいのです」

 

3-Eは暗殺教室。普通よりも盛りだくさんになるだろう修学旅行に、やっぱり俺もテンションが上がっていた。

 

 

 

 

 

東京駅…椚ヶ丘中学校の修学旅行の出発地点だ。

 

「うわ…A組からD組まではグリーン車なんだ」

 

「E組だけ普通車。ま、いつもの感じだな」

 

俺と矢田さんが喋っていると、後ろから声をかけられた。

 

「うちの学校はそういう校則だからな。入学時に説明したろう」

 

こいつは…テストの時にやたら音を立てて邪魔をしてきた大野とかいう教師…!

 

「学費の用途は成績優秀者に優先される」

 

「おやおや君たちからは貧乏の香りがしてくるねぇ」

 

教師に便乗して、Dクラスの生徒も言ってくる。

全く…こいつらは。

 

 

「ごめんあそばせ……ごきげんよう生徒達」

 

サングラスにネックレス。ヒョウ柄のコートに……有名ブランドのカバン……誰だよ。いや、知ってるけどさ。

 

「ビッチ先生。何ですかそのハリウッドセレブみたいなカッコは」

 

思わずに俺がツっこむと、不敵に笑い出した。

 

「フッフッフッフッ…女を駆使する暗殺者としては当然の心得よ。狙っている暗殺対象にバカンスに誘われるって結構あるの。ダサいカッコで幻滅させたらせっかくのチャンスを逃しかねない。良い女は旅ファッションにこそ気を遣うのよ」

 

「目立ちすぎだ着替えろ」

 

明らかにビッチ先生対して怒っている様子の烏間先生が注意する。こっちはすっかり見慣れたスーツ姿だ。

 

「どう見ても引率の先生のカッコじゃない」

 

「堅い事言ってんじゃないわよカラスマ!ガキ共に大人の旅の…」

 

「脱げ。着替えろ」

 

 

 

 

のちに電車は出発し、E組のみんなは班ごとに席に座り談笑している。ビッチ先生はというと地味な格好でシクシク泣いていた。

 

「誰が引率だか分かりゃしない」

 

「金持ちばっか殺してきたから金銭感覚ズレてんだろうな」

 

ビッチ『先生』を見ているとあることにに気がつく。

 

「あれ…?電車出発したけどそういえば殺せんせーは?」

 

どうやら倉橋さんも気がついたようだ。

 

ベタァ。

 

「うわっ!!」

 

なんか電車の窓に張り付いているんだが、国家機密が。

 

「何で窓に張り付いているんだ殺せんせー!」

 

美少女ながら男口調全開の根本さんがツッコんだ。

 

「いやぁ…駅中スウィーツを買っていたら乗り遅れまして、次の駅までこの状態で一緒に行きます。ああご心配なく。保護色にしていますから、服と荷物が張り付いているように見えるだけです」

 

「それはそれで不自然だ!」

 

根本さんの顔と口調も一致しなすぎて不自然だ!!

ギャップがあってむしろ不味いんですって!

 

 

 

「いやぁ疲れました。目立たないように旅するのも大変ですねぇ」

 

「そんなクソでかい荷物持って来んなよ」

 

「ただでさえ目立つのに殺せんせー」

 

岡島と速水さんは言うが…確かにその通りだ。だがな岡島…お前もエロ本持ってくるなよな。さっきカバンの中がチラッと見えたぞ。

 

「てか外で国家機密がこんなに目立っちゃヤバくない?」「その変装も近くで見ると人じゃないってバレバレだし」

 

「にゅやッ!?」

 

いやいや自分の姿見て気づけよ…どう見たってこんな関節の人間いないだろうに。

 

「殺せんせー、ほれ」

 

そう言って菅谷が殺せんせーに何か小さい物を投げた。

 

「まずそのすぐ落ちる付け鼻から変えようぜ」

 

「おお…すごいフィット感!」

 

「顔の曲面と雰囲気似合うように削ったんだよ。俺そんなん作るの得意だから」

 

凄いな菅谷。あんまり関わった事ないけど、これで殺せんせーの鼻が焼き石に水くらいには自然になった。

 

「あはっ、面白いね遠山君。旅行になるとみんなのちょっと意外な面が見れるね」

 

「ああ…これからの旅の出来事次第で…もっとみんなの色んな顔が見れるかもな…」

 

俺たちは今班のみんなでトランプのババ抜きをやっている。そして今、話しかけてきた神崎さんと俺はタイマン張ってるところだった。

 

「そうだね…まずは遠山君がババ抜き弱いって事が見れたしね」

 

「なぬ」

 

うまく二分の一を引かれてしまい、俺の手元にはジョーカーだけが残った。

 

「あはは、表情に出すぎだよ遠山君は」

 

神崎さんに指摘されながらコロコロと笑われた。くっ…なんて可愛いんだ!

しかも最下位はみんなにジュースを奢る約束だった。俺の小遣いが…シクシク…。

 

「みんな、飲み物は何がいい?貧民の俺が買ってくるけど」

 

「あ…私も手伝うよ。遠山君の次に貧民だし…」

 

うーん。さすが気がきくなぁ神崎さんは。

俺たちはジュースを買いに車両を移動しようとした時、他校の生徒とすれ違った。別の学校も修学旅行が被ってるらしいな。

 

「あっ…ごめんなさい」

 

どうやら神崎さんはぶつかったらしい。今すれ違った5人くらいの集団は高校生だろうか…?とてもガラの悪い服装だった。そしてみんな神崎さんに目が釘付けだったなぁ。さすが神崎さんだ。

 




旅行行きたい…。
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