瑠弾のネモ   作:ホウカ

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ちょっと間隔空いてしまいました…
お気に入りなどありがとうございます!!


3巻
第13話 しおりの時間


 

 

 

 

月を壊した超生物が、あろう事か俺らのクラスの先生に。でも困った事にこの生物は…限りなく暗殺不可能なターゲットだ。

 

 

 

 

 

 

修学旅行の判別行動中、俺たちはトラブルにあった。男子2人は気絶させられ、女子2人は拉致されてしまった。

 

「遠山君!隠れて見てたけど、さっきの、大丈夫だった!?」

 

どうやらさっき俺が鉄の棒で打たれた事を心配しているらしい。

矢田さんが泣きそうな、というかもはや泣きながら心配してくる。倉橋さんも涙目だった。確かに女子は男子よりもこういう場面は縁遠いからな。心底怖かったのだろう。

 

「どうしようどうしよう…!殺せんせーには連絡つかないし…!」

 

あのタコ…!どうせ観光楽しんでやがるな…こんな大事な時に。

 

「矢田さん、倉橋さん、一旦落ち着いて」

 

俺はそう言って2人の顔に手を当て涙を拭き取ってあげた。

 

「遠山君…」

 

「まず、俺は昔から石頭でできていて、さっきのは全く痛くなかったから大丈夫だ。だけど渚とカルマは気絶してる。下手に動かさずにここで2人が起きるまで一緒にいてあげてくれ」

 

「石頭…?よかったぁ…とにかく大丈夫なんだね」

 

「ああ…俺はいいから渚とカルマを頼む」

 

「分かった…遠山君は…?」

 

「俺は根本さんと神崎さんのいるところへ向かう」

 

「場所がわかるの!?」

 

「ああ…実はさっき、神崎さんにGPSをつけておいた。殺せんせーに使えるかと思って買ったんだが、思わぬところで役に立った」

 

「じゃあ、通報してそこに向かえば…!」

 

「いや…それだと時間がかかる。殺せんせーも電話に気づいていない。だから俺1人で行ってくる。このしおりには『拉致られた時の対処法』が載っているから殺せんせーに連絡がつけば後は秒読みなんだけどな…」

 

「そんなの危険だよ!あいつら刃物まで持ってたし…人数も…」

 

「矢田さん…俺を信じてくれ」

 

俺は矢田さんの頭に手を置き、安心させるように撫でた。すると矢田さんはカアァァァァ。一瞬で顔を真っ赤にしてしまった。

 

「…ぅん…じゃあ…信じる…絶対に無事に帰ってきてね…」

 

俯きながらもそう言ってくれた。

 

「ああ…!ありがとう、行ってくる!」

 

あれ、この感じ…まさか。

 

(…奪い返せ…)

 

マジかよ、入ってやがる。あのモードに。参ったな。

 

 

 

 

 

奴らは車で移動したにもかかわらず、どうやら2キロほどしたところで止まったようだ。よかった、タクシーを使わなくても済む。

こいつらは土地勘のない修学旅行生だったな…そうなれば必然的に近場で人目につかない場所を選ぶ。

あとはGPSに向かってダッシュするだけだ。

 

(よし…ここだな)

 

なるほど。閉店した店を選んだか。看板は錆びだらけで、『ダーツ・ビリヤード』と書いてある。拉致にはもってこいだな。

入り口に見張りが1人いたのでとりあえず赤子の手をひねるようにボコし、ギィ…と重く錆びた扉を開いた。

 

「お、来た来た。うちの撮影スタッフがご到着だぜ」

 

「誰が撮影スタッフだって?」

 

「!?」

 

俺はさっきと同じポカをしないよう、入ると同時にダッシュし、根本さんと神崎さんを守れる位置につく。

俺の登場からのダッシュに不意をつかれたようで、こいつらは動かないから楽勝だったぜ。これで2人が人質に取られることはない。

 

「遠山君!」「キンジ!」

 

「なっ…テメェ!なんでココが分かった…!?」

 

「さあ、教える義理はないな。それよりも…どうすんだ?こんだけの事してくれたんだ。あんたらの修学旅行はこのあと全部入院だよ」

 

俺はあのモードに入ってるせいもあってか、口調が荒くなる。

 

「………フン。中坊がイキがんな。呼んどいたツレ共だ。これでこっちが10人。お前みたいな良い子ちゃんはな。見たこともない不良共だ」

 

扉からは新たに5人ほど部屋に入ってきた。

俺は根本さん達を後ろにし、10人を相手にしなければならない。これから何が起ころうとしてるのか、女子も含めこの場の全員が肌で感じる。

 

「退路はなくなった、か。これで思う存分お前らの望む展開ができるな」

 

「まずその澄ました顔を恐怖に変えてやる」

 

「また暴力か」

 

「暴力はこの世で最も強い力だ。どれだけ小細工しようが、暴力の前には屈さざるを得ない。お前ら優等生もな」

 

今にも仕掛けてきそうな状況になったところで、俺は一度ここにいる全員に視線を送った。

 

「お前の無様な姿を目に焼き付けて、それで手打ちにしてやるよ。その後は後ろの女の調理に入る」

 

「確かに人は暴力の前には屈する…けどな、それを貫き通すには常に相手の力量を上回る必要がある。そのことを分かっているのか?」

 

「あ?」

 

「この場にいる10人だけじゃ、俺は止められないってことだ」

 

「ク、ククク。クククククククク」

 

よほどおかしかったのか、リーダー格の男は腹を抱えて笑った。

 

「よしお前ら…このバカに教育してやれ」

 

ひとしきり笑った後、ついに指示が出された。

 

「ナメたこと言いやがって!」「ふざけんな!!」

 

4人が一気に殴りかかってくる。手に瓶を持ってるやつもいる。

 

「ふざけるな?」

 

俺は4人全員の顎を強打し、ダウンさせる。

 

「俺のセリフだ。そんな汚い手で、俺の仲間に触れるなんてふざけるんじゃない」

 

残りのやつも襲いかかって来たので、死なない程度に意識を落としてやる。

その俺の強すぎる姿に…神崎さんは絶句し、根本さんは笑っていた。

残るはリーダー格1人だけだ。

 

「ケ…テメーも肩書きで見下してんだろ?バカ高校と思ってナメやがって」

 

「エリートじゃない…」

 

「…?」

 

「確かに俺らは名門校の生徒だが…学校内では落ちこぼれ呼ばわりされ、クラスの名前は差別の対象になっている。だが、お前らのように他人を水の底に引っ張るようなマネはしない。学校や肩書きなんて関係ない。清流に棲もうがドブ川に棲もうが前に泳げば魚は美しく育つもんだ」

 

そう。結局のところ、そいつ自身の問題なんだ。俺はそう信じたい。

 

「……!」

 

俺はこいつに言ったつもりだったが、神崎さんも何か心当たりがあるようで目を見開いていた。

 

「さて遠山君…最後に彼を手入れしてあげましょう」

 

やっと到着か、殺せんせー。

声の方向から広辞苑のようにブ厚いしおりが投げられた。それを頑張ってキャッチするが、マジで重いなこれ…。

 

「修学旅行の基礎知識を…体に教えてあげるのです」

 

言われた通り、その鈍器と化したしおりをリーダーの男の頭にゴスッーーと食らわせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遠山君、よく頑張りました。ありがとうございます」

 

「たまたまうまくいってよかったです」

 

「それにしても遠山ぁ、あの人数を1人でやったの〜?もしかして君ケンカ強い〜?俺と勝負しない?」

 

カルマと渚は気絶からすっかり回復したらしい。よかったよかった。だがカルマは元気になりすぎだ。

それにしても…

 

「何かあったのか神崎さん」

 

「え…?」

 

「ひどい災難にあって混乱しててもおかしくないのに…なんか逆に吹っ切れた顔をしてるぞ」

 

「……特に何もないよ遠山君。ありがとう」

 

頰を染めながらお礼を言われちゃった。

 

「おう」

 

これにて、一件落着だな。

 

「ところで、遠山君って喧嘩強いんだね」

 

全然落着してなかった。見られちゃったんだよな。

 

「どうしてその力を普段も見せないの?絶対に暗殺で役に立つと思うのに。もしかしたら烏間先生より強いんじゃ…」

 

「神崎さん」

 

俺はそう言って神崎さんの肩に手を置いて引き寄せた。

 

「今回はたまたまうまくいっただけだ。それに俺は平和主義なんでな。あんま人に知られたくないんだ。今日助けたことを少しでも恩に感じたのなら、秘密にしてくれないか」

 

言い方がずるい気がするが、これでいいや。こう言えば神崎さんも黙っていてくれるだろう。

 

「……分かった。でも1つだけ言わせて」

 

そう言うと神崎さんは俺に顔を近づけて来て…

 

「遠山君、凄くカッコよかったよ」

 

「!」

 

耳打ちしてきた。なんか石けんみたいないい匂いしてきてドキドキしてしまった…が、どうやら秘密にしてくれるらしい。良かった、今度こそ一件落着。

 

それにしてもまさかこんなトラブルに遭うなんてな。しかもこれを想定してしおりに対処法が書いてあるとか…うちの先生は正気か?

もし俺がいなかったらこのしおりは大いに役に立ってただろうな。

困ったことに俺らのターゲットは…限りなく頼りになる先生だ。

 




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