瑠弾のネモ   作:ホウカ

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1ヶ月ぶりです!
遅くなってしまいすみません!


第16話 改良の時間

 

 

 

 

 

 

「ねぇ…今日もいるのかな」

 

おう。今日もいるぞ、君が隣に。なんで俺は毎日神崎さんと登校する事になってるんだろうな。昨日同様学校の最寄駅で待たれてたし。

まあ神崎さんが言ってるのは固定砲台のことだろうけどさ。

 

「多分…」

 

「烏間先生に苦情言いたいよね。固定砲台と一緒じゃクラスが成り立たないって」

 

教室に入り、固定砲台を見ると……何か違和感を感じる。

 

「……ん?なんか体積が増えてるような…」

 

「おはようございます!遠山さん神崎さん!」

 

「「!!!」」

 

なんか箱全体に制服姿の女の子が映っているんだが。

しかも昨日のように無表情・無感情ではなく、仕草、笑顔など可愛らしいものがある。

 

「親近感を出すための全身表示液晶と体・制服のモデリングソフト、全て自作で8万円!」

 

なんか後ろにタコが現れたぞ。

殺せんせー…あんたいらん機能までつけてるんじゃ…しかも8万て…。

 

「今日は素晴らしい天気ですね!!こんな日を皆さんと過ごせて嬉しいです!!」

 

「豊かな表情と明るい会話術。それらを操る膨大なソフトと追加メモリ。同じく12万円!!」

 

転校生が…おかしな方向へ進化してきた。

 

「先生の財布の残高…5円!!」

 

このエロダコ…!やっぱり頭おかしいわ…!

 

 

 

 

 

 

 

「庭の草木も緑が深くなっていますね。春も終わり近付く初夏の香りがします!」

 

なんかムード音楽流れてるし。

 

「たった一晩でえらくキュートになっちゃって…」

 

その100倍くらいえらくキュートな根本さんが言うなって。

クラスの大半はこの固定砲台の変貌に驚いているようだ。

 

「何ダマされてんだよおまえら。全部あのタコが作ったプログラムだろ」

 

「寺坂…」

 

「愛想が良くても機械は機械。どーせまた空気読まずに射撃すんだろポンコツ」

 

寺坂がそう言うと、液晶に移った女の子の背景は暗くなり、俯いてしまった。

 

「………おっしゃる気持ち、分かります。寺坂さん。昨日までの私はそうでした。ポンコツ…そう言われても返す言葉がございません」

 

あーあ。泣いちゃった。これも殺せんせーのプログラムだろうが、なんか可哀想に見えてきたな。

 

「あーあ、泣かせた」

 

「寺坂君が二次元の女の子泣かせちゃった」

 

「なんか誤解される言い方やめろ!!」

 

ぱっつん前髪学級委員の片岡さんと、ぽっちゃり系原さんも可哀想だと思ったようで、寺坂を責めていた。

 

「いいじゃないか2D…Dを1つ失う所から女は始まる」

 

竹林それ初ゼリフだけどいいのか!?

 

「でも皆さんご安心を。殺せんせーに諭されて…私は協調の大切さを学習しました。私の事を好きになっていただけるよう努力し、皆さんの合意を得られるようになるまで…私単独での暗殺は控える事にいたしました」

 

おお…さっきの悲しい表情から一変、いい笑顔だ。

 

「そういうわけで仲良くしてあげてください。ああもちろん、先生は彼女に様々な改良を施しましたが、彼女の殺意には一切手をつけていません。先生を殺したいなら、彼女はきっと心強い仲間になるはずですよ」

 

なんでもできるな殺せんせーは。機械までちゃんと生徒にするとはな。

その後、固定砲台は菅谷が答えられなかった問題を表示してあげたり、体の中で芸術品を作ってみせたり、

矢田さんに花を作る約束をしたり、千葉君を将棋で倒したりと…思いのほかクラスで人気だった。

 

「…しまった」

 

ん?何やら殺せんせーが焦った顔をしている。

 

「?何が?」

 

「先生とキャラがかぶる」

 

「「「被ってないよ1ミリも!!」」」

 

その後、片岡さんの提案で、呼び方について議論されて、不破さんが『律』と名付け、安直ながら満場一致となった。さすが不破さん、また今度ジャンプについて語ろう。

 

 

 

 

改めて、律もクラスに加わった放課後。

俺は速水さんと射撃訓練をやっていた。速水さんは静かなので俺と似たような部分があり、存外一緒にいて居心地が良いのである。

 

 

「それにしても、律、上手くやっていけそうだね」

 

「まあ人気だったな、変わってからは。だけど、どうかな…」

 

「…?」

 

「寺坂の言う通り、殺せんせーのプログラム通り動いているだけだろ?機械自体に意思があるわけじゃない。律がこの先どうするかは…あいつを作った持ち主が決める事だ」

 

「それってどういう……ん?」

 

速水さんが言葉を途中で紡いだのは、見たことない人たちがE組の校庭に上がってきたからだ。

おそらく生徒が全員下校した時間を見計らってきたのだろう。

現に今いるのは俺と速水さんだけだ。

 

「行ってみよう速水さん。音を立てずにな」

 

奴らは教室に入っていき、俺らは廊下で聞き耳をたてる事にした。

 

「こんばんはマスター!おかげさまでとても楽しい学校生活を送っています!」

 

「…ありえん」「勝手に改造された上に…どう見ても暗殺と関係ない要素まで入っている」

 

「今すぐ分解だ。暗殺に不必要なものは全て取り去る」

 

責任者のような人がそう言うと、律の解体作業が始まった。やっぱりこうなったか。

 

「こいつのルーツはイージス艦の戦闘AI。人間より早く戦況を分析し、人間より速い総合的判断であらゆる火器を使いこなす。加えてこいつは卓越した学習能力と、自分で武装を改造できる機能を持つ」

 

「こいつがその威力を実証すれば…世界の戦争は一気に変わる…と」

 

学者たちが律の機能や利便性について語り合っていたが、1つ気がかりな言葉があった。

 

(戦争だと…?)

 

なるほどね。その規模のことに山を合わせてるなら百億円なんてついでで、この教室は最高の実験場というわけか。なんせもし律が殺せんせーを殺した場合…世界中のテロリストが喜んで律を買いにくるだろうからな。

それは困るが…今は律が前の状態に戻ることの方が困る。なので、俺は前に出て行くとしよう。

 

「ちょ…!遠山!」

 

「戦争が何だって?」

 

速水さんが止めようとするが、無視無視。

 

「……!何だね…君は!」

 

「ああ、ここの生徒ですよ。それより…なんだかやばい話をしていましたけど…」

 

「君には関係ない事だ。気にしなくていい」

 

「でも…この話が表に出回ったらやばいですよね?言っちゃおうかな」

 

「ふっ…こんな子供の言う事なんか誰が信じると言うのかな」

 

「ちゃんとケータイで録音してたので…言質はあるんですけどね…」

 

「!」

 

もちろんこれはブラフだ。都合よく録音なんてしてるわけない。

 

「その言質を使ってに私たちに何がしたいのかね?」

 

「その固定砲台をこのままにして欲しいんです」

 

「それは乗れない相談だ。どう見ても暗殺に不要な要素が多すぎる。今後は改良行為も危害と見なしてもらう。それに…本当は録音なんてしていないのだろう?」

 

気づかれたか…。

 

「録っていますよ」

 

「じゃあその音声を流してみたまえ」

 

「………」

 

「はっはっは。やっぱりか。子供が大人をからかうものじゃないよ」

 

相手にブラフもばれたところで、研究者はまた解体作業を進めた。これで律はバキバキと部品を取られ、元の体積に戻ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「おはようございます皆さん」

 

次の日の朝、律の表情は最初と同じ無表情になっていた。

 

「生徒に危害を加えないという契約だが…『今後は改良行為も危害とみなす』と言ってきた。君らもだ。彼女を縛って壊れでもしたら賠償を請求するそうだ」

 

烏間先生はそう言って寺坂からガムテープを取り上げた。

 

「開発者の意向だ。従うしかない」

 

「開発者とはこれまた厄介で…親よりも生徒の気持ちを尊重したいんですがねぇ」

 

烏間先生のその言葉に…殺せんせーも困り顔だ。

 

「攻撃準備を始めます。どうぞ授業に入ってください殺せんせー」

 

ダウングレードしたってことは…また始まってしまう。あの一日中続くハタ迷惑な射撃が。

そして箱が光りーーー

 

「「「!」」」

 

また機関銃が出てくると思ったが、出て来たのは綺麗なピンク色の花だった。

 

「花を作る約束をしていました……殺せんせーは私にボディーに、計985点の改良を施しました。そのほとんどは…開発者が『暗殺に不必要』と判断し、昨日の夜に削除・撤去・初期化してしまいました」

 

計985点て…よく殺せんせーの給料でそれだけできたな、逆に。

 

「ですがそこで遠山くんに助けられて、消される前に関連ソフトをメモリの隅に隠すことができました」

 

「…素晴らしい」

 

これは殺せんせーにも予測できなかったらしく、珍しく驚いている。

 

「ちなみに遠山君はどのようにして律さんを助けたのですか」

 

わざわざ聞く必要ないって殺せんせー。恥ずかしいから。

 

「殺せんせーが改良した律に俺と律がチャットできるように接続したんだ。そうすればいざという時俺が律に何か頼めるからな」

 

「はい…そして昨日の解体中、『開発者たちから時間を稼ぐから、お前が必要だと思うデータは消される前に隠せ』と送られてきて、実行できたのです」

 

「そうだ。昨日偶然学校に遅くまで残っていたからな。開発者たちを見かけてやばいと思ったんだ」

 

「なるほど。つまり律さん、あなたは仲間の助言とともに、自分の意思で産みの親に逆らったということですね」

 

「はい。こういった行動を『反抗期』と言うのですよね。律は悪い子でしょうか…」

 

「とんでもない!中学3年生らしくて大いに結構です!」

 

殺せんせーは顔に丸のマークを浮かばせた。

こうして、E組の仲間が1人増えた。これからは29人で殺せんせーを殺すんだ。

 

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