時間を空けてしまってすみません。
たまたま書き溜めていたものを見つけたので投稿します。
ビッチ先生が烏間先生の模擬暗殺に成功した日から時が経ったある日の放課後ーーー
「ごきげんですね殺せんせー。この後何かあるの?」
パンッと殺せんせーを撃ちながら磯貝が質問した。
この行動にはもはや誰もツッコまないが、よく考えたら異常な光景である。
それほどまでに、この『暗殺教室』は暗殺を日常にしたのだろう。
それはともかく今磯貝が言った通り、殺せんせーは雑誌を見ながらとても分かりやすくらんらんムードだった。
「ええ。ハワイまで映画を見に行くんですよ。先にアメリカで公開するので楽しみにしていたんです」
「うそぉずるーい先生」
中村さんが驚いたように言ったが、俺も全く同じことを思った。やっぱりマッハ20は色々便利だなぁ。
「ヌルフフフ。マッハ20はこういう時のためにこそ使いのです」
「ソニックニンジャ…?」
「ーーーっ!」
中村さんが殺せんせーの読んでいた雑誌を見て読み上げた瞬間、俺の心臓が跳ね上がる。
「あ〜あのヒーロー物ね。明日感想聞かせてー」
そう言って取り巻きの生徒たちは帰っていった…。
ソニックニンジャ……俺も続編出るのずっと待ってたんだ!雑誌も今読んでたし!
これはもう………
(…行くしかないッ!)
「待って!殺せんせー!」
「どうしたんですか?そんなに慌てて。珍しいですね」
「殺せんせー、お願いがあります。俺たちも連れて行ってくれませんか?ちょうどその映画早く見たいって話していたんです」
「おや、好きなんですか?」
「大好きです。映画観賞は趣味なんですけど、ソニックニンジャは続編が出るのをずっと楽しみにしてました」
「矢田さんがヒーロー物とは意外ですねぇ」
………本当は一人でお願いしたかったんだが、実はさっきまで矢田さんと2人でこの話をしていたのだ。
矢田さんもこの監督が好きらしく、話があった感じだった。
「そうなんですよ〜。この監督、アメコミ原作手がけるの珍しいんですよ!」
「いいでしょう」
「!」
「映画がてら…君達にも先生のスピードを体験させてあげましょう」
俺と矢田さんは先生の服の中に入れられ、先生の首もとから顔を出す体勢となった。
「遠山君……軽い気持ちで頼んでみたけど…私たちひょっとしてとんでもないことしてるんじゃ…」
「確かに…身の安全までは考えてなかったな…」
確かにそこまで気が回らなくて、今俺たちは青ざめている。
「ご心配なく。君達に負担がかからないようゆっくり加速しますから」
「「うわぁぁぁっぁぁぁぁ」」
「はっ速っや…!」
すげえ。もう太平洋が見えてきた。
「あれ…風も音もあんまり来ないね殺せんせー。ほとんど先生の頭で弾かれてる」
「良いところに気がつきました矢田さん。秘密は先生の皮膚にあります。普段は柔らかい先生の頭ですが…強い圧力を受けると硬くなるます。そうするとマッハの風圧にも負けないのです」
ん…なんか服から色々物を取り出したぞ…?
「音速飛行には君達の知らない高度な物理法則が絡んでいますが、先生の皮膚と同じ原理なら君達の身近にもありますよ。そのひとつ、『ダイラタンシー現象』について学んでみましょう。まず片栗粉と水を混ぜて…」
飛行中に授業始まっちゃった!!
「暗殺しないのですか遠山さん?密着した今はチャンスかと思われますが…」
俺のケータイから律がそんなことを言ってきた。
「無茶言うなよ律。今殺れても俺らまでマッハで太平洋にドボンだよ。完全に殺せんせーの思うツボだ。大人しく授業を受けるしかないな」
数分後、よく写真で見るハワイの光景が近づいてきた。海も綺麗だ。
「…とまぁそのように、最新の防弾チョッキにも応用されている技術なのです。1つ賢くなったところで、映画館はこの下ですよ」
「……!」
………着いてしまった。軽く授業をしている間にハワイまで!
殺せんせーの案内の元、俺たちは下の映画館に入った。
「寒っ!冷房効きすぎじゃないかこの部屋」
「ハワイの室内はとにかく冷房が効いています。皆さんちゃんと防寒の準備をしてください、はい」
うんうん。膝掛けくれるのはありがたいが、デザインがものすごくダサいんだよな。
「でも…ここアメリカだから日本語字幕無いんだよね。スジわかるかなぁ…」
確かに。電車感覚で来たけどここはアメリカだった。
「大丈夫ですよ。矢田さんは英語の成績は良好ですし、2人ともイリーナ先生に鍛えられているでしょう?」
俺は英語50点だもんな!そりゃお世辞でも良好なんて言えないわな!
「それと、先生の触手を耳に」
「?」
「習っていない単語が出たら解説します。あとは頑張って楽しみながら聞き取りましょう!はい、コーラとポッポコーン」
やばい……かなり幸せだ…!
映画の内容としては、人類の味方の主人公に対し、人類の醜さを見せることで組織へと勧誘する的、アダム。
悩みながら世界を救う孤独のヒーロー。俺らの年頃ならみんな憧れるキャラクターだ。
(…正義のヒーロー…か…)
「面白かった〜あそこで引かれると続編めっちゃ気になるよね!」
1時間半で上映が終わり、俺らは映画館の外でソニックニンジャの余韻を満喫していた。特に、矢田さんは興奮が冷めない様子だ。
「けど、ラスボスがヒロインの兄だったのはベタだったよな」
「え、あ、確かに」
「ハリウッド映画一千本を分析して完結編の展開を予想できます。実行しますか?」
「いやいいよ、冷めてるなぁ遠山君も律も」
矢田さんはそんな俺らに呆れていたが、俺は目の前のタコに呆れていた。
「生き別れの兄と妹!!なんと過酷な運命なんでしょう!!おーいおいおいおい」
「かと言ってこれもどうなんだ、いい大人が」
殺せんせーは映画が終わってから泣きっぱなしだ。
泣く要素あったかアレ…?
「さて、向こうはもう真っ暗のはずです。帰りますかねぇ」
ひとしきり泣いたあと、涙声で殺せんせーがそう言った。
その時ーーー
「おにい…ちゃん…?」
「?」
目の前で栗色の髪の毛をした少女が俺に向かってそう呼んできた。
もちろん俺に妹なんていないし、この少女を見たのも初めてだ。
「違うよ。人違いじゃないか…?」
あれ?言ってて気づいた。この子が喋った言葉は、日本語だ。
「人違いじゃないよ。遠山キンジ。私のカッコいいお兄ちゃんだよ!」
「「「!」」」
これには全員が驚いた。
殺せんせーでさえも前まん丸にしている。
どういうことだ?なんで俺の名前を…?
(ーーっ!頭が…)
きたぞ。曖昧な記憶のカケラ。
「剣は銃より強し」
「やっと見つけた。お兄ちゃん。もう行こうよぅ」
「呼ぶな……その名前で私を呼ぶなああああッ!」
(…痛ッ…!)
今回のはかなり痛かった。
「遠山君、大丈夫でしょうか?今とても頭が痛そうに見えましたが…」
「ええ。ちょっと混乱して。大丈夫です」
今のでも十分驚きだが、次の一言でさらに凍りつくことになる。
「それにしてもお兄ちゃん。なんでそんな第一級危険生物なんかと一緒にいるの?」
これは確実に殺せんせーのことだ。
この驚きの連続で先々を見通せる殺せんせーが動揺している。それもその筈だ。
俺の名前を知っていて、国家機密である殺せんせーのことも知っている。
今俺たちが思っていること。それは…
(この少女は一体…何者なんだ…?)
「ねえお兄ちゃん、なんで…」
「フォース!なに道草食ってやがる!行くぞ!」
「待ってよサード。今ここにお兄ちゃんが!」
少女が向いた先からは、男の声がした。まずい、さらにややこしくなる。殺せんせーがバレたのもまずい。
そう思った矢先…俺の体が浮いたのがわかった。
「何!?それは遠山キンイチか?それともキンジか?」
「キンジお兄ちゃんの方…ってあれ?」
「どこにもいねえじゃねえか」
「おかしいなぁ。さっきまでいたのに…」
「本当にキンジだったっていうのか?」
「うん。何故かあの巨大生物と一緒にいた」
「巨大生物…?」
「ほら、例の三日月事件のやつ」
「フン、ありえねぇ組み合わせだな。くだらねえこと言ってねーで行くぞ、時間だ」
「ちょっと待ってよ〜」
こいつらとはまた会うことになる。この時の俺は、そのことを知る由もなかった。
「殺せんせー!どういうことですか!あれは一体…!」
「あれはおそらく人工天才、ジニオンです」
「ジニオン…?」
「ええ。彼らはアメリカで育てられた軍隊です。そして、先ほど少女に呼び掛けられたサードという人は、Rランク武偵。先日アメリカ大統領の護衛についてました」
「Rランク…? Sランクまでじゃないんですか?」
「ええ…Sよりさらに上。Sランク武偵が世界で700人前後に対して、Rランクは世界で7人です」
「なっ…!」
それは単純に考えたら世界で上位7人に入る強さの持ち主ということ。
「ここからが問題なのです。彼らは『HSS』という特性を持っています。君達は知る由もないでしょうが、私にとっては最悪の相性なのです」
「…!」
「私1人ではなんとかなると思いますが、君達にまで被害が出るかもしれない。だからこうやってマッハで逃げてきたわけです」
「ねえねえ、さっきから2人はなんの話をしているの?」
会話の内容が映画と全く違うものだと思い矢田さんがついに質問してきた。
(バカか俺は…!)
こんなブッ飛んだ会話をしていたら何も知らない人は疑問を抱くに決まってる。俺も先生も気が動転してて配慮できなかった。
「いやぁ矢田さん。次回作の映画の予想ですよ…」
先生も焦っていたようで、苦しい言い訳しか出てこない。
こんなに焦るなんて。それほどの奴らということか。
殺せんせーの性格上、正直に話すかと思ったが、よほど矢田さんのような一般人をこっち側の世界に来させたくないらしい。まあ、俺もその方が好都合だが…。
「とにかく矢田さん、遠山くんも。今回のことは内緒ですよ。もし言いふらした場合は今日の感想を英語で10000文字書いてもらいます」
「えぇ…10000も…」
矢田さんがげんなりしたように言う。
「はい。なのでぜひ内密にお願いします」
そう言われ、不承不承ながら了承した。
気になったようだがしっかりと空気を読んでこれ以上言及してこなかった。さすがは矢田さんだ。今度色々聞かれるかもしれないのでそこはうまく言っておこう。
(…それにしても『お兄ちゃん』って…確か記憶でも同じようなことを…)
話している間に、太平洋を抜け、日本に帰ってきた。
人生初の体験だ。5時間の間にハワイ行って帰ってくるなんて。
「とりあえず、今日はお疲れ様でした。帰り道気をつけて帰ってください」
「はい、さようなら」
そんな挨拶を交わし、殺せんせーと別れる。
またこれで1つ謎が増えてしまった。それに『HSS』…。
聞き覚えのある言葉に頭を悩ませながら、矢田さんと2人で帰路に就くのであった。