瑠弾のネモ   作:ホウカ

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殺せんせーが・・・


第23話 苦戦の時間

ザザザザザッ

 

先生の体を貫いたイトナの触手。

 

ドドドドドド

 

なお手を緩めずに、地面で這いずり回っている先生に向かって容赦のない攻撃を続けるイトナ。

 

「・・・っ!」

 

ドドドドドドド

 

「うおおおっ」「殺ったか!?」

 

ギャラリーの生徒たちが気になり、身を乗り出している。

地面がえぐれるのとともに砂ぼこりが舞い、先生の状態が見えていないようだ。

 

「いや、上だ」

 

先生が高速で上に逃げていくのが見えた俺は、そう言いながら上を向いた。

 

「・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

「脱皮か。そういえばそんな手もあったっけか」

 

殺せんせーをかつてないほど追い詰め、余裕な態度のシロが思い出したように言う。

殺せんせーのエスケープの隠し技。まさかこんなに早く使わせるなんてな。

 

「でもね殺せんせー。その脱皮にも弱点があるのを知っているよ」

 

「はっ!?」

 

ヒョンと音を鳴らし、イトナの触手が天井にぶら下がっている殺せんせーを襲う。

 

「にゅやッ」

 

その攻撃をスレスレで躱す殺せんせー。

 

「その脱皮は見た目よりもエネルギーを消費する。よって直後は自慢のスピードも低下するのさ。常人から見れば速いことに変わりはないが、触手同士の戦いでは影響はでかいよ」

 

シロのいう通り、俺の目から見て殺せんせーは明らかにスピードが落ちており、完全に防戦一方だった。

 

「加えて、イトナの最初の奇襲で腕を失い再生したね。それも結構体力を使うんだ。二重に落とした身体的パフォーマンス。私の計算ではこの時点でほぼ互角だ。また、触手の扱いは精神状態に大きく左右される」

 

確かに・・・殺せんせーはテンパるのが意外と早かったりする・・・今までの経験からいくつか思い当たる節があった。

 

「予想外の触手によるダメージでの動揺。気持ちを立て直す暇のない狭いリング。今どちらが優勢か、生徒諸君にも一目瞭然だろうね」

 

「お、おい!」「マジかよ!」「マジで殺っちゃうんじゃないの」

 

そんな生徒からの心配の声も飛び交う。

 

「さらには、献身的な私のサポート」

 

 

ピカッ

 

 

「うっ・・・」

 

特殊な光により殺せんせーの動きが固まる。

そして・・・

 

 

バシュッ!

 

 

「・・・!」

 

足も何本かちぎられてしまった。

 

「フッフッフ。これで脚も再生しなくてはならないね。なお一層体力が落ちて殺りやすくなる」

 

「安心した・・・兄さん、俺はお前より強い」

 

そう確信したイトナの発言。

殺せんせーが追い詰められている。あと少し・・・地球が救えるんだ。

 

(―――と、普通なら思うんだろうが)

 

今、E組のみんなは悔しいはずだ。後だしジャンケンのように次々出てきた殺せんせーの弱点。本当なら、みんなでこの教室で見つけたかったはずだ。

みんなで・・・殺したかったはずだ。

 

(なにしてんだよ・・・あのタコ・・・)

 

みんな、俯いちまったじゃねーか。あんたが不甲斐ないばっかりに。

 

「脚の再生も終わったようだね。さ、次のラッシュに耐えられるかな?」

 

「・・・ここまで追い詰められたのは初めてです。一見愚直な試合形式の暗殺ですが、実に周到に計算されてる。あなた達には聞きたいことは多いですが・・・まずはこの試合に勝たねば喋りそうにないですねぇ」

 

そう言って立ち上がり、指の関節をぽきぽきと鳴らす殺せんせー。

―――良かった。やっと本気か、心配させやがって。

その様子を見た俺は即座に対殺せんせー用ナイフの刃の先っぽを持った。

サービスとして、手で持つ部分にハンカチをかけてな。

 

「・・・?なにやってるの?遠山」

 

俺の意味不明な動作にカルマは眉を寄せている。

 

「いや、一応な、念のためってやつだ」

 

そう言って殺せんせーの方を見る。

 

「まだ勝つ気かい?負けダコの遠吠えだね」

 

「シロさん。この暗殺方法を計画したのはあなたでしょうが、ひとつ計算に入れ忘れていることがあります」

 

「無いね。私の性能計算は完璧だから。殺れ!イトナ!」

 

その指示通り、イトナは殺せんせーに向かって触手を振り下ろした。

皆が心配そうに見つめる。

そして俺はさっきまで持っていたモノが手元から消えたことを確認し、にやりと笑う。

なんと攻撃したはずのイトナの触手が溶けていたのだ。

 

「おやおや、落とし物を踏んだしまったようですねぇ」

 

「床に・・・対先生用ナイフ!?」

 

先生は俺がお膳立てしたことに気づき、そのナイフをイトナの攻撃の落下地点に置いたのであった。

 

「同じ触手なら、対先生用ナイフが効くのも同じ。触手を失うと動揺するのも同じです。でもね、先生の方がちょっとだけ老獪です」

 

先生は先ほど脱皮した皮でイトナを包み窓の外、つまりフィールド外に投げ飛ばした。

 

「先生の抜け殻で包んだからダメージはないはずです。ですが君に足はリングの外に落ちている」

 

先生はそれを確認すると、顔の色を黄色と緑のボーダーにして宣言するのであった。

 

「先生の勝ちですねぇ。ルールに照らせば君は死刑。もう二度と先生を殺せませんねぇ。生き残りたいのなら、このクラスでみんなと一緒に学びなさい。性能計算ではそう簡単に計れないもの、それは経験の差です。君よりも少しだけ長く生き、少しだけ知識が多い。先生が先生になったのはね、それを伝えたいからです。この教室で先生の経験を盗まなければ・・・君は私に勝てませんよ」

 

ったく。よく言うよ、ギリギリだったくせに。

 

「勝てない・・・俺が・・・弱い!?」

 

「!」

 

そう呟いたイトナの触手が黒色に変化した。

 

「ま、まずい!」

 

シロが急に焦りだした。先生も驚いた様子だ。

この状況、考えられることはひとつ。

 

(・・・暴走か?)

 

 

 

ただちに暴走を止めなければいけない。そうしなければ・・・

 

 

―――ジェノサイドが吹き荒れるぞーーー

 

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