瑠弾のネモ   作:ホウカ

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第26話 球技大会の時間

「やっと梅雨明けだ~」

 

イトナが転校して休学した次の日、下校中の杉野が嬉しそうに言った。

 

「アウトドアの季節ですなぁ~どこか野外で遊ばねー?」

久々の晴天となり、いつもよりも元気が良い杉野。

授業で疲れた俺はあくびを噛み殺しながらそんな風に思った。

 

「うーん、何しよっか」

 

そんな杉野を見て微笑ましく思ったのか、渚も可愛らしい笑顔をしている。

ちなみに今日は速水さんが用事のため放課後の訓練はなしで俺、渚、カルマ、杉野の4人で下校している。

くう。友達4人で下校だなんて最高じゃないか。そして直接家には帰らず道草を食う。しっかり青春してるな、俺も。

 

「じゃ、釣りとかどう?」

 

「おお、カルマが釣りなんて意外だな。いいな。今だと何が釣れるんだ?」

 

俺も釣りは昔から好きなので、ついつい反応してしまう。

するとカルマは悪戯顔になってこんなことを言ってきた。

 

「夏場はヤンキーが旬なんだ。渚君を餌にカツアゲを釣って、逆にお金を巻き上げよう」

 

「・・・ヤンキーに旬とかあるのか」

 

そうツッコまずにはいられない俺だった。

 

 

 

 

 

 

カキーン。スパーン。ズバーンズバーン。

 

「ナイスボールキャプテン!!」

 

本校舎のグラウンドの横を通ると、ちょうどそこでは野球部が練習中のようだった。

 

「そういやうちの野球部って強いんだっけか」

 

確か前に椚ヶ丘中学校新聞で見た気がする。

俺らが立ち止まって練習の様子を見てると、さっきまでピッチャーをしていた生徒がこちらに近づいてきた。

 

「なんだ、杉野じゃないか!久々だな」

 

「・・・・・・おう」

 

「おお杉野~」「なんだよたまには顔出せよ~」

 

そういや杉野は元野球部だったよな。今も親しげなところを見ると、それなりに人望はあったようだ。さすが杉野。

 

「はは。ちょっとバツが悪りーよ」

 

確かにE組の生徒の杉野からすると、来たくないと思うよな。

 

「来週の球技大会、投げるんだろ?」

 

「お?そーいや決まってないけど投げたいな」

 

「楽しみに待ってるぜ」

 

はたから見ると仲がよさげなやり取りだった。

 

「・・・しかし、いいよな杉野は。E組だから毎日遊んでられるだろ?俺たち勉強も部活もやんなきゃだからへとへとでさ」

 

ここまでは。

杉野の顔色が変わる。だが、意外にも注意してきたのは先ほどまでピッチャーをしていた男だった。

 

「よせ、傷つくだろ」

 

なんだ、まともな奴もいるじゃないか。そう思ったのもつかの間

 

「進学校での部活との両立。選ばれた人間じゃないならしなくていいことなんだ」

 

案の定くそ野郎だった。

 

「へーえすごいねぇ。まるで自分らが選ばれた人間みたいじゃん」

 

挑発するようにカルマが言うと

 

「うんッ!そうだよ!」

 

と、自信満々に返事するピッチャー。

 

「気に入らないか?なら来週の球技大会で教えてやるよ。上に立つ選ばれた人間とそうでない人間―――この歳で開いてしまった大きな差をな」

 

そう言って練習を再開するのであった。

 

 

 

 

 

次の日。

今は来週行われる球技大会に向けて、話し合いをしているところだ。

 

「にゅや~。クラス対抗球技大会ですか・・・健康な心身をスポーツで養う!大いに結構!ただ、E組がトーナメント表にないのはどうしてです?」

 

「E組はさ、本戦にはエントリーされないんだ。1チーム余るっていう素敵な理由でさ」

 

三村の説明で俺も初めて知った。そのかわり、大会の締めのエキシビジョンには出なきゃいけないらしい。

 

(要するに、見せ物か)

 

全校生徒が見てる前で、男子は野球部の、女子は女子バスケットボール部の選抜メンバーと戦らされるらしい。

 

「一般生徒のための大会だから部の連中も本戦には出れない。だからここで、みんなに力を示す場を設けたわけ。トーナメントで負けたクラスもE組がボコボコに負ける姿を見てスッキリ終われるし、E組に落ちたらこんな恥かきますよって警告にもなる」

 

「なるほど、いつものやつですか」

 

「そ」

 

一般生徒向けの大会ならE組は圧倒的に有利、とは言え出してもらえない上に戦う相手が部活に所属している生徒とはな。

だが、俺はそれでも五分五分だと見てる。俺らは殺せんせーのおかげで勉強がすごい勢いで伸びているが、烏間先生の指導のおかげで身体能力も信じられないほど伸びている。

 

「でも心配しないで殺せんせー」

 

そう言ったのは片岡さんだった。

 

「暗殺で基礎体力がついているし、良い試合して全校生徒を盛り下げるよ!ねー皆!」

 

「「「おおー!」」」

 

スポーツは勝つばかりがすべてじゃない。負けるときは負け方も大事だが、片岡さんは責任感がありリーダーシップも抜群。女子チームはこの逆境も良い糧にできるだろうな。

 

「俺らさらし者とか勘弁だわ。お前らで適当にやっといてくれや」

 

「寺坂!・・・ったく」

 

寺坂、吉田、村松のいわゆる寺坂組がダルそうに教室を出て行ってしまった。

まだうまくクラスに馴染めないらしい。

 

「野球となれば頼れるのは杉野だけど、何か勝つ秘策とかないのか?」

 

俺が聞くと、杉野はため息を吐いて俯いてしまった。

 

「無理だよ・・・。最低でも3年間野球してきたあいつらと、ほとんどが野球未経験者のE組。勝つどころか勝負にもならねー」

 

杉野の話によると野球部はかなり強く、特に今主将の進藤とかいうやつは剛速球で強豪校からも注目されているらしい。

 

「勉強もスポーツも一流とか、不公平だよな人間って。 ・・・けどさ殺せんせー。だけど、勝ちたいんだ殺せんせー!善戦じゃなくて勝ちたい!好きな野球で負けたくない。野球部を追い出されてE組に来て、むしろその思いが強くなった。E組のみんなとチームを組んで勝ちたい!!・・・まあでも、やっぱ無理かな殺せんせー」

 

野球でも負けて勉強でも負けて。昨日もあんなにバカにされて、悔しかっただろうな杉野は。

 

(・・・どうにかして勝たせられないもんかな)

 

その思いが届いたのか、殺せんせーはいつの間にか野球のユニホームを着ていた。

 

「先生一度、スポ根モノの熱血コーチをやりたかったんです。殴ったりは出来ないのでちゃぶ台返しで代用します」

 

「「「用意良すぎだろ!!」」」

 

「最近の君たちは目的意識をはっきりと口にするようになりました。殺りたい。勝ちたい。どんな困難な目標に対しても揺るがずに。その心意気に応えて、殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう!」

 

 

 

 

 

『試合終了―!!3対1!トーナメント野球は、3年はA組が優勝です!!』

 

球技大会どうやらトーナメントはA組が優勝したらしい。

 

『それでは最後に・・・E組対野球部選抜のエキシビジョンマッチを行います!』

 

そうアナウンスされ、俺たちE組と進藤率いる野球部が準備にかかる。

 

「・・・おいおい、なんであんなに気合入ってんだよ」

 

死に物狂いで素振りを始めた野球部を見て、つい漏らしてしまう。

 

「野球部としちゃ、全校生徒にいいとこ見せる絶好の機会だしな」

 

E組相手じゃコールド勝ちで当たり前、最低でも圧勝が義務らしく、情け容赦なく本気で来るらしい。

 

 

「整列!」

 

 

審判から声がかかり、双方ホームベースの前で一列に並ぶ。

 

「学力と体力を兼ね備えたエリートだけが・・・選ばれた者として上に立てる。それが文武両道だ杉野。お前はどちらも無かった。選ばれざる者がグラウンドに残っているのは許されない。E組共々、二度と表を歩けない試合にしてやるよ」

 

進藤にそう言われ、動揺を隠せない杉野。

試合開始のアナウンスがなり、ベンチへ戻るのであった。

 

「そういや殺監督はどこだ?」

 

モノ作りが得意な菅谷に尋ねられた俺は、ライトのポールの下に指をさす。

 

「烏間先生に目立つなって言われてるから、遠近法でボールに紛れてる。顔色とかでサイン出すんだと」

 

「そう・・・」

 

殺せんせ・・・いや、殺監督の方を見ていると、ちょうどサインが出されてた。

 

「あれ、どういう意味だ?」

 

サインも無駄に凝っていて、色で見分けれければならない。

俺は殺監督からもらったサイン用のメモをパラパラとめくり、今出されたサインを探した。

パターンが多すぎるし、見分けるの面倒だし、ケータイとかで良かっただろうに、と思う。

 

「① 青緑②紫③黄土色だから・・・みんな!殺せんせーからの指示だ」

 

そう言って全員の視線を集める。

俺らにはもっとでかい目標がいる。こいつら程度に勝てなきゃあの先生は殺せない。

 

 

 

 

「・・・『殺す気で勝て』ってさ」

 






「ここから先は一方通行だ!!」

「「「どうしたカルマ!?」」」


暗殺教室の声優さんで、このキャラ同じだというのがありましたら是非感想欄にお願いします。
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