「酷いよ・・・自分だけ・・・桂さんと幸せになろうなんて!!」
ぐさっ
「「「速水!?」」」
本編どうぞ
球技大会が終わり7月に入ったある日のこと。
「視線を切らすな!!」
ヒュ ザザッ グッ
体育の授業。俺たち3年E組の授業内容は・・・暗殺訓練だ!
「次にターゲットがどう動くか予測しろ!!全員が予測すればそれだけ奴の逃げ道をふさぐことになる!!」
今は烏間先生による接近戦の訓練を行っている。
(それにしても・・・みんな凄まじい成長ぶりだ)
暗殺訓練4か月目に入るにあたり、『可能性』がありそうな生徒が増えてきた。
磯貝悠馬と前原陽斗。
この2人は運動神経が良く、仲がいいためコンビネーションも抜群だ。
2人がかりなら・・・烏間先生にナイフを当てられるケースが増えてきた。
「よし!2人それぞれ加点1点!次ッ!」
どうやら2人はナイフを当てたらしく、点数が上がったらしい。烏間先生に1発当てるにつき、1ポイント加点という仕組みだ。
赤羽業。
一見のらりくらりとしているが、その眼には強い悪戯心が宿っている。
どこかで烏間先生に決定的な一撃を与え、赤っ恥をかかそうなんて考えていそうだ。
ま、烏間先生相手にそう簡単にはいかないけどな。
「チッ」
今ちょうど攻撃が躱されたらしく、舌打ちをしている。
女子は体操部出身で意表を突いた動きができる岡野ひなた、男子並みのリーチと運動量を持つ片岡メグ。この二人がアタッカーとして非常に優秀だ。
そして、男女合わせた中で体育の成績トップ・・・
「はっ!」
今ナイフを振っている生徒、速水凛香。
鋭い目つきで烏間先生を追い、何発もナイフを当てている。
「くっ・・・銃といいナイフといい、恐ろしい成長ぶりだ、速水さん」
「いえ、烏間先生と・・・遠山の教えがいいので・・・ふっ!」
褒められても決してポーカーフェイスを崩さず、果敢に攻めている。
凛香は放課後、俺とほぼ毎日自主練習をしている。
たまたま射撃とナイフの腕前を見られてしまい、教える羽目になってしまった。
やる気◎、センス◎、身体能力◎なのはいいが
(顔まで◎じゃなくていいのに・・・)
そう思ってしまうほどの美人なのだ。美人が苦手な俺は、正直照れてしまって教えづらいところだ。
俺がそう思っている間も、また一発と当てる。さすがの身のこなしだ。
「速水さん凄いね」
「うん、最初は私の方が成績上だったのに・・・」
さきほど訓練が終わった片岡さんと岡野さんの会話が聞こえる。
「きっと、あの王子様の教えがいいんだろうね~」
む?
「私たちにも、教えてくれないかな~」
そう言うと、二人で顔を見合わせながら同時にこちらを振り向いてきた。
「「ね、王子様」」
こいつら、わざとか。
可愛らしく言いやがって・・・。
さっき凛香のことを顔◎と表現したが、この2人も負けず劣らず可愛いのだ。
本当このクラス、顔面偏差値高すぎませんかね、男女ともに。
「ねえ遠山君、真面目な話私にもナイフ教えてもらえないかな」
クラス委員の片岡さんがさっきの表情とは一変、今度は真剣な顔で頼んできた。
「あ、私もお願いしたいな。凛香に追い越されて、悔しいし。そして何より・・・元武偵さんだしね」
「・・・」
『椚ヶ丘中学校に編入してくる前までは武偵附属中学校にいた』この前俺がクラスのみんなに明かした内容だ。
そのせいかおかげか他の人に色々と聞かれ・・・結果、教える側に回ることが増えた。
教えるのは大変だが、その分友達が増えたので俺としちゃ万々歳だ。
「俺なんかで良かったら」
「充分充分!早速今日からよろしくしたいんだけど、いいかな・・・?」
「ああ、分かった」
そう言うとキャッキャと喜ぶ2人。可愛いからそういう仕草やめて欲しいんだが。
キラッ
「!」
また恒例の鋭い視線がいくつか。
もう怖いので誰が向いてるとか考えないことにした。
気を取り直して訓練の方に集中すると、今度は寺坂がやっていた。
だが、やる気がない態度でナイフを投げるなりどこかに行ってしまった。
「なんとか、あいつらもやる気を出してくれないかなぁ」
「じゃあ遠山君が教えたらいいんじゃないかな?」
「ん?」
声の方向を見ると、神崎さんがすぐ横に立っていた。
凄い眩しい笑顔で。
「いやいや、俺なんかに教わりたくもないだろうし・・・」
「遠山君が教えてあげればいいんじゃないかな?」
「いや、だから・・・」
「遠山君が教えてあげればいいんじゃないかな?」
俺はここで悟ってしまった。
(・・・目の奥がッ・・・笑っていないッ・・・)
全然眩しくなんてなかった。
てか怖い、怖いよ神崎さん。
なんか怒ってないか・・・?なんで・・・?
「(女子ばっかりじゃなくて、男子にも)遠山君が教えてあげればいいんじゃないかな?」
なんか心の声も一緒に聞こえた気がする・・・。
「すみません・・・もちろん頼まれたらそうさせていただく所存です・・・」
俺は知ってる限り丁寧な言葉遣いを選び、そう言うのであった。
(ま・・・それはともかく・・・)
寺坂竜馬、吉田大成、村松拓哉の3人・・・いわゆる寺坂組は、未だに訓練に対して積極性を欠く。3人とも体格はいいだけに、本気を出せば大きな戦力になるのだが。
全体を見れば、生徒たちの暗殺能力は格段に向上している。この他には目立った生徒はいないものの
「!」
バシッ
「渚!」
烏間先生が予想以上に強く防ぎ、渚がふっ飛んでしまった。
「うっ!」
良かった。セーフだ。
俺は何とかすぐ反応し、スライディングをするように渚のクッションになった。
なんとか頭を打たずに済んだようだ。
「すまん!強く防ぎ過ぎた・・・立てるか?」
烏間先生もハッとした様子で駆け寄ってくる。
「あ・・・へ、平気です!遠山君がクッションになってくれたので・・・」
渚も状況を理解したようで、無事なことを伝える。
「遠山君も、助かった。さすがの動きだ」
「いえ・・・無事で何よりです」
潮田渚。
小柄ゆえに多少はすばしっこいが、それ以外に特筆すべき身体能力は無い温和な生徒。
だがこいつには、恐ろしい才能がある。
烏間先生も何かを感じ取ったのか渚のことを凝視している。
俺もいまだに・・・鳥肌がおさまらない。
今感じた得体のしれない気配に。
「それまで!今日の体育は終了とする!」
「「「ありがとうございました」」」
「烏間先生~!放課後にみんなと一緒に遊び行きません~?」
挨拶が終わった後、チャラ男イケメンの前原がそんなことを言う。
「ああ。誘いは嬉しいが、この後防衛省からの連絡待ちでな」
烏間先生はそう言い残し、校舎に戻ってしまった。
「・・・訓練中もそうだけど、私生活でも隙がねーな、あの先生は」
「というより、俺たち生徒との間に壁のような、一定の距離を保っているんだと思う」
俺は誘いを断られてしょんぼりしている前原に対して、そう言う。
「でもさ、厳しくて優しくて、俺たちのこと大切にしてくれてるけど、それってやっぱり、ただ任務だからにすぎねーのかな」
「そんな事ないって。確かにあの先生は、殺せんせーの暗殺のために送り込まれた工作員だけど・・・まっすぐとした目で俺たちを鍛えてくれる、人情に厚い良い先生だと思う」
「へへっ、違いねーや」
前原も同意したようで、はにかんで見せた。くっ、チャラ男イケメンめ。かっこいいな。
ひとしきりだべった後、俺たちも教室に戻ろうと歩いていると、大きな段ボールを抱えて手には沢山の小袋をもった体格のいい男の人がグラウンドに向かってきた。
「よっ!!」
身長は2メートル近くあるだろうか。オールバックにツーブロックの髪型が特徴的な男だった。
「俺の名前は鷹岡明!!今日から烏間を補佐してここで働く!よろしくなE組のみんな!」
そう言いながら持ってきた段ボールを開ける鷹岡という男。
「「「!!!」」」
中には大量のケーキが入っていた。
「・・・!これ、『ラ・ヘルメス』のエクレアじゃん!こっちは『モンチチ』のロールケーキ!」
ケーキを見るなり子供のように大はしゃぎしているのはスイーツ系女子、茅野さんだ。
良くわからんが、見るからに高そうだということだけは分かる。
「いいんですかこんな高いもの?」
磯貝が聞くと鷹岡という男は笑顔で頷いた。
「おう!食え食え!俺の財布を食うつもりで遠慮なくな!モノで釣ってるなんて思わないでくれよ。お前らとは仲良くなりたいんだ。それには・・・みんなで囲んでメシ食うのが1番だろ!」
その言葉にE組の生徒たちは次々とお菓子を開封していった。
数分が立つ頃にはみんなと自然に談笑し、E組に溶け込んでいた。
「同じ教室にいるからには・・・俺たち家族みたいなもんだろ?」
そう言って生徒と肩を組む始末だった。
まだ、極めて危険な異常者であるということを知らずに。
読んでいただきありがとうございます。
つい先日、合計文字が100000字を突破し、通算UAは10000を超え、お気に入りも100を超えました。
感想なども含め、本当にありがとうございます。