「いたいた」
「今日のおやつは北極の氷でかき氷だとさ」
「コンビニ感覚で北極行くなよあのタコ」
「行くぞ」
「百億円は俺らで山分けだ!!」
「殺せんせー!!」
「かき氷俺らにも食わせてよ!!」
今、目の前で起こっている状況を説明すると、磯貝、前原、片岡さん、岡野さん、矢田さんという陽キャ集団と何故か陰キャの俺の6人で、庭でシート敷いて北極かき氷を食べているあのタコを殺すために笑顔で近づいているところだった。
「おお…」
うわぁ、キモォ。なんか号泣しだしたんだけど!
なんでこいつは俺ら殺気に気づいているくせに嬉しがってんの?ドMなの?
「でもね」
その一言を言っている間に俺たちが持っているナイフが全て奪われた。
「笑顔が少々わざとらしい。油断させるには足りませんねぇ。こんな危ないナイフは置いといて…」
ハンカチでつかんでいた6本のナイフをボトボトと地面に置いて
「え…!」
「花でも愛でて、良い笑顔から学んでください」
手には花壇に埋めていたであろうチューリップが手に握らされていた。
おい!これって!俺が大事に水あげてたやつ!俺これ大事に育ててたのに!
「ん? ていうか殺せんせー!!この花クラスの皆で育てた花じゃないですか!!」
学級委員の片岡さんが俺の気持ちを代弁してくれた。そうだそうだ。イケイケ片岡さん。
「ひどい殺せんせー。大切に育ててやっと咲いたのに」
そんな他力本願の俺の横では、ポニーテールの矢田さんが嘘泣きをしていた。
うわぁ。この手はこのタコには効くだろうなぁ。俺も今度可愛く泣いてやろうかな。キモいからしないけど。
矢田さんの嘘泣きに案の定「すいません!今新しい球根を…!」とか言って焦りつつ、女子たちにガミガミ怒られていた。
それを見た磯貝と前原は
「なー…あいつ地球を滅ぼすって聞いてっけど」
「お、おう…。その割にはチューリップ植えてんな」
とか言ってる。全くその通りだ。
そんなことはしてるから今後ろにいる寺坂に「…チッ、モンスターが」とか悪口を言われるんだよなぁ。
隣では何やら渚がせっせとメモ帳になんか書いてるし。
「渚。何書いてるんだ?」
「先生の弱点を書き溜めておこうと思ってさ。そのうち暗殺のヒントになるかもって」
ほー。意識高いなぁ。いいことだ。
「…で、その弱点役に立つの?」
こら茅野さん!そんなこと言っちゃダメだよ。確かにメモの内容は『カッコつけるとボロが出る』だけどさァ!
俺らは、殺し屋。椚ヶ丘中学校3年E組は暗殺教室。そしてーーー
「防衛省から通達済みと思いますが…明日から私も体育教師でE組の副担任をさせていただきます。奴の監視はもちろんですが…生徒たちには技術面精神面でサポートが必要です。教員免許は持ってますのでご安心を」
「ご自由に。生徒達の学業と安全を第一にね」
ーーー椚ヶ丘中学校の俺ら以外は…名だたる新学校。極少数の生徒を激しく差別する事で…大半の生徒が緊張感と優越感を持ち頑張る仕組み。合理的な仕組みの学校。隔離校舎も極秘暗殺任務にはうってつけ。だが、切り離された生徒達は…たまったものではない。
「烏間さん。こんにちは」
「ああ、こんにちは」
今長い坂を登ってE組のグラウンドに来たこの男は防衛省の烏間さんだ。俺たちに暗殺の指導をしてくれる。
「明日から俺も教師として君らを手伝う。よろしく頼む」
「そうなんですか。じゃあこれからは烏間先生ですね」
「ところで奴はどこだ?」
「それがですね…。あの怪物がクラスの花壇を荒らしたんですけど、そのお詫びとして…」
「おーい!棒と紐持ってきたぞーー」
そう叫んだのはクラスの変態隊長岡島だ。どうやら持って来たようだ。
「ハンディキャップ暗殺大会を開催しています」
ハンディキャップ暗殺大会とは…木の枝に殺せんせーをぶら下げてロープで両手を縛り、吊るしてみんなで暗殺を行うことである。
みんなは「そこだ!刺せ!」「くそ!」などと大いに盛り上がっている。
「ほら、お詫びのサービスですよ?こんなに身動きできない先生そう滅多にいませんよぉ」
「どうだ渚」
「うん…完全にナメられてる」
くっ…これはもはや暗殺と言えるのか!!
かくいうあの生物は顔を緑のシマシマにして完全にナメきっている。
「ヌルフフフフ。無駄ですねえE組の諸君。このハンデをものともしないスピードの差。君達が私を殺すなど夢のまた…」
バキ。ボトッ。
木 の 枝 が 折 れ て タ コ が 落 下 し た
「……………」
「「「今だ殺れーーッ!!」」」
「にゅやーーーッ!しッしまったァ!!」
アホだ。アホすぎる。
「………弱点メモ。役に立つかもな」
「…うん。どんどん書いていこう」
「ちょっ…ちょっと待って!な…縄と触手が絡まって!」
この間にも皆はナイフで先生を攻撃している。
ドシュッ!
ついに違反とも言える上空移動をしだした。そして必至に屋根にしがみつく。
「ここまでは来れないでしょう。基本性能が違うんですよ、バーカバーカ!」
「ぬー、あと少しだったのに」
誰からともなく声が漏れた。
「ゼエゼエ…ハアハア……フーー………明日出す宿題を2倍にします」
「「「小せえ!!!!」」」
その後またどこか彼方に飛んでいき、見えなくなってしまった。
「逃げた…」
「でも今までで1番惜しかったよね」
「この調子なら必ず殺すチャンスが来るぜ!」
生徒達は何か感覚をつかんだように口々に言っていた。
「やーん、殺せたら百億円何に使おー♪ 遠山君は何に使いたい…?」
さっき一緒に先生に襲いかかったうちの1人、ポニーテールの矢田さんが俺にそんなことを聞いてきた。実はさっきの暗殺に誘ってくれたのも彼女なのだ。もしかしたら陰キャを1人にさせまいという天使のような優しさかもしれん。あ、美少女だから俺にとっちゃ悪魔か。
「んーそんな額考えた事もないな。でもやっぱりそんなに多くならない程度にみんなで山分けしないと生活狂いそうだしなぁ…奨学金と高校の入学金と授業費だけもらって後は返金でいいんじゃないか?」」
いけね。何真面目に答えてんだ俺。つまんない奴だと思われるだろ。
だがそれを聞いた矢田さんは感心したような態度だった。
「遠山君て…すごく考えが大人っていうか…なんていうか、すごくかっこいいね」
…なに? …大人?…カッコいい…?オーマイゴット。
「あ?…そそそうかな?優しいんだな矢田さんは」
やばい、めっちゃパニクって噛みまくってしまった。
俺がそう言うと、矢田さんもなぜか顔を真っ赤にしてとても恥ずかしそうに俯いた。
そして絞り出すように
「そ…そんなことないよ。遠山君はかっこいいって言われ慣れてるかもしれないけど…」
そう言って、そそくさと去っていった。その後を目で追っていたら、人気のないところで胸を押さえていた。顔が赤いまま。
え?俺と喋ったせいで気持ち悪いってこと?だとしたら萎え
「いてっ」
誰だ俺が考えている間に対先生用ナイフを俺の頭に当ててきた奴は。成敗してくれる。
「って、根本さん!?」
「もー…キンジのスケコマシ」
ドクっと心臓が跳ね上がった。ん…なんでだ?ああ…彼女が可愛いからか。
「え…それってどういう」
「ふん!」
可愛らしくそう言って去ってしまった。まずい、なぜか一気に2人の女子から嫌われた気がする。なんで!どうして!
「どう?殺せんせーは殺せそう?」
またじょ…しに似てるけど実際は男子の渚が聞いてきたので、俺は迷うことなく言い放った。
「殺すさ。殺す気じゃなきゃあの先生とは付き合えない」
ーーー不思議だ。生徒の顔が最も活き活きしているのは…標的が担任のこのE組だ
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