瑠弾のネモ   作:ホウカ

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「白皇学院生徒会長、桂ヒナギク!」


「サンデー読みながら何言ってんすかビッチ先生」



すみません、本編どうぞ


第30話 親愛の時間

「明日から体育の授業は鷹岡先生が?」

 

「ああ!!烏間の負担を減らすための分業さ。あいつには事務作業に専念してもらう」

 

そう言って教務室の方に親指を立てる鷹岡先生。

 

「大丈夫!さっきも言ったが俺たちは家族だ!!父親の俺を全部信じて任せてくれ!」

 

ドンと強く胸をたたく鷹岡先生だった。

 

 

 

鷹岡明。

烏間先生が空挺部隊にいた頃の同期。教官としては、烏間先生よりはるかに優れているらしい。

 

「どう思う?キンジ」

 

そう聞いてきたのは根本さんだった。

なにか事が進むたびに根本さんから『どう思う?』って聞かれる気がする。

 

「あー。こういうのもなんだが・・・俺は烏間先生の方がいいな」

 

「お、なんでだ?」

 

「・・・なんとなくだな」

 

「なんとなくねぇ」

 

確かに烏間先生はいつも厳しい顔してるし、ご飯とか軽い遊びも誘えばたまに付き合ってくれる程度だ。

その点鷹岡先生は根っからのフレンドリー。こちらの方が良いという人もいるかもしれない。

 

 

 

 

放課後、俺は凛香とともに差し足で教務室の前で盗み聞きをしていた。

ちなみに差し足は俺が教えた。最初は上手くできていなかったが、今はもう完璧に近いほどできている。

 

「さっきお前の訓練風景を見ていたがな烏間」

 

お、この声は鷹岡先生の声だ。しかも会話の流れからさっそく俺たちへの評価が聞けそうだぜ。

 

「3ヶ月であれじゃ遅すぎる。軍隊なら1ヶ月であのレベルになってるぞ」

 

あらら。どうやら低評価らしい。隣にいる凛香もムッとしちゃったよ。

しかしさっそくだが鷹岡先生は凛香のこともちゃんと見ていたのだろうか。そこは素直に気になるところである。

 

「職業軍人と一緒にするな。あくまで彼らの本職は中学生だ。あれ以上は学業に支障が出る」

 

ああ、なんていいことを言うんだ烏間先生は。

 

「かぁ~っ。地球の未来がかかってるのに呑気だな!いいか烏間。必要なのは熱意なんだ。教官自ら体当たりで教え子に熱く接する!多少過酷な訓練でも、その熱意に生徒は答えてくれるもんさ」

 

「・・・」

 

なんだろう。聞いてて無性にイライラしてくるな。

 

「首洗って待っとけよ殺せんせー。烏間より全然早く・・・生徒たちを一流の殺し屋に仕上げるぜ」

 

そう言うと鷹岡先生はわざわざ玄関に戻るのが面倒なのか、窓から出て行ってしまった。

 

「ヌルフフフフ。考えの甘い先生ですねぇ」

 

鷹岡先生からもらったお菓子で餌付けされてる殺せんせーが言えないと思うが・・・。

 

「体育に関してはあなた方が譲らないので任せています。ですから担当の交代にとやかくは言えませんね。では、私もこれで失礼します。にゅやッ!」

 

殺せんせーも鷹岡先生同様、窓から出て行ってしまった。下に降りた鷹岡先生と違って上に飛んで行ったが。

そのタイミングを見計り、俺は教務室に入っていく。

 

「烏間先生・・・」

 

「む。どうした遠山君」

 

「すこし聞いて欲しいことが」

 

「なんだ?」

 

「俺らが修学旅行に行った時の2日目の夜、烏間先生は俺らの旅行に負担をかけないよう、配慮してくれました」

 

「・・・?」

 

「先ほども俺たちの本職は中学生だ、学業に支障をきたさないようにとおっしゃってくれました」

 

「・・・聞いていたのか」

 

「はい。大人の事情とか、担当の交代とか、俺みたいな子供が何言ってんだって思われるかもしれないですけど・・・E組の体育教師は烏間先生、あなたしかいないと思います」

 

「・・・」

 

地球存亡の危機や賞金獲得が懸かってる中、鷹岡先生のよう『熱意』などと言う人が出るのは当たり前の話だ。

そんな中で俺たちのことを最優先に考え、気遣い、限られた時間の中で教えてくれる。こんな先生、この人以外でいないと思うんだが。

 

「そうよ烏間。アンタはこれでいいの・・・?」

 

どうやらイリーナ先生も鷹岡先生のことを好きになれないようだ。

 

「とりあえず、以上で失礼します」

 

少しでもこの言葉が響いて欲しいと思い、教務室から出る。

餓鬼のたわごとかもしれない。そんな、生徒の一意見を残して。

 

 

 

 

次の日

 

「よーしみんな!集まったな!今日から新しい体育を始めようか」

 

ついに始まった鷹岡先生の授業。

 

「ちょっと厳しくなると思うが・・・終わったらうまいもん食わしてやるからな!」

 

「そんなこと言って自分が食いたいだけじゃねーの?」

 

「まーな。おかげでこの横幅だ」

 

ギャハハハ。

生徒にツッコまれ、爆笑の渦ができる。

 

「あと気合入れの掛け声も決めようぜ!俺が『1・2・3』と言ったら、お前らみんなでピースを作って『ビクトリー!』だ」

 

「うわ、パクリだし、古いです」

 

「やかましい!パクリじゃなくてオマージュだ!」」

 

またまたグラウンドに笑い声が響き渡る。

見事にE組の心を掴んでいる。軍隊とちゃんと区別もできているようだ。

 

「さて!訓練内容の一新に伴ってE組の時間割も変更になった。これを皆に回してくれ」

 

紙が全員にわたると同時に周りがざわざわと騒ぎ出す。

 

「嘘…でしょ?」「10時間目・・・」「夜9時まで・・・訓練?」「休日も・・・?」

 

(やっぱりこうなったか・・・)

 

その配られた紙に書かれた『新時間割』とは普通の中学生では到底考えられない内容だった。

まず、平日は毎日10時間目まである。終わる時間が夜の9時だ。そして土曜日も授業がある。授業内容もひどいものだ。どの日も3時間目まで普通の授業があるのだが、午後からは夜の9時まで訓練だ。これでは体が壊れてしまう。

 

「このぐらいは当然さ。理事長にも話して承諾してもらった。『地球の危機ならしょうがない』って言ってたぜ。このカリキュラムについてこれればお前らの能力は飛躍的に上がる!では早速・・・」

 

「ちょっ・・・待ってくれよ!無理だぜこんなの!!」

 

「ん?」

 

時間割を指さし、前原が文句を言った。

 

「勉強の時間これだけじゃ成績落ちるよ!理事長もわかってて承諾してんだ!」

 

その言葉に他のE組の生徒もうんうんと頷く。

 

「遊ぶ時間もねーし!できるわけねーよこんなの!!」

 

その瞬間―――

 

ズドッ!!

 

「かはっ!」

 

信じられないことが起きた。文句を言っていた前原の元まで近づき、腹部に向かって膝蹴りをしたのだ。軍隊にいた人間が、中学生に対して。

 

「『できない』じゃない。『やる』んだよ」

 

そう言って前原を投げ捨てた鷹岡先生の目は

 

(・・・狂っている・・・)

 

そうとしか思えないような目だった。

 

「言ったろ?俺たちは『家族』で、俺は『父親』だ。世の中に・・・父親の命令を聞かない家族がどこにいる?」

 

そんな奴どこにでもいると思うが・・・というツッコみはさておき、やりやがったな。

鷹岡先生・・・いや、鷹岡は烏間先生に対して強い対抗心があるようだった。おそらく完璧な烏間先生に同期として劣ってきたのだろう。

中学生相手に無茶はしないと踏んでいたが、甘かった。

 

「さあ、まずはスクワット300回だ!」

 

パンパンと手を鳴らし、笑顔で指示を出す。

E組の生徒の大半は、今の光景を見て逃げ出そうとしている。

 

「抜けたい奴は抜けてもいいぞ。その時は俺の権限で新しい生徒を補充する。俺が手塩にかけた屈強な兵士は何人もいる。1人や2人入れ替わってもタコは逃げ出すまい」

 

「「「・・・!」」」

 

「けどな・・・俺はそういうことはしたくないんだ。父親としてひとりでも欠けてほしくない!家族みんなで地球の危機を救おうぜ!なっ!」

 

教え子を手なずけるために与えられる『親愛』と『恐怖』。

 

(・・・なるほどな)

 

延々と『恐怖』に叩かれた兵士たちは、一粒の『親愛』をもらうだけで泣いて喜ぶようになる・・・ってことか。

手始めに、逆らえば叩き、従えば褒める。

鷹岡は生徒たちの間をゆっくりと歩き始めた。

そして神崎さんの後ろで止まる。頭を掴まれた神崎さんは恐怖で震えていた。

 

「な?お前は父ちゃんについてきてくれるよな?」

 

「あ・・・あの・・・わたし・・・」

 

恐怖により顔色が真っ青になる神崎さん。声も震えているようだった。

 

「私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」

 

震えながらもいつも通り笑顔で、そう言い切った。

 

(・・・よく言った!神崎さん)

 

直後、鷹岡が右手を引き、ビンタのモーションに入る。

そして

 

ガシッ

 

「「「!」」」

 

俺は鷹岡の後ろに立ち、腕をつかむ。

 

「遠山君・・・!」

 

「おい、どういうつもりだ」

 

鷹岡が腕を押さえてる俺に対して聞いてきた。

どういうつもり・・・?笑わせるな。

 

「父ちゃんに逆らうなって言ってるのが分からないのか?」

 

「父ちゃん?DVオヤジの間違いでしょ?」

 

つかんでいる指に力を入れ、鷹岡を睨む。

その俺に対して、鷹岡はニヤリと笑った。

 

「・・・お前らまだわかっていないようだな。父ちゃんの言うことには『はい』以外ないんだよ」

 

俺の手を強引にほどき、向き直る。

 

「文句があるなら拳と拳で語り合おうか?そっちの方が父ちゃんは得意だぞ!!」

 

ははははは、と悪魔のような笑い声を上げてーーー

 




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