瑠弾のネモ   作:ホウカ

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今回からイリーナ先生参戦です!


2巻
第6話 大人の時間


「もう5月かぁ。早いね1ヶ月」

 

殺せんせーが地球を爆破するという3月まで…残り11ヶ月。暗殺と卒業の俺らの期限だ。

俺は今登校中に不破さんと合流し、コンビニに寄っているところである。

 

「あっ…そういや俺今週のジャンプ読んでなかった…!」

 

「あ!私もだ!ちょうど予定があって買えなかったんだよね」

 

どうやら不破さんも買っていなかったらしく、足は自然と本棚の方へ向いた。

 

「おっ!デカい先生!久しぶりだねぇ」

 

「ええ。やっと給料が入りまして」

 

この声はまさか…。

 

「ねえねえ、あれって殺せんせーだよね?」

 

「ああ、めちゃめちゃ下手くそだけど一応人っぽい変装してる」

 

俺らはジャンプコーナーから見ていると、殺せんせーはここの店員と仲良く話していた。国家機密が何やってるんだか。

その後、読みたかった某忍者漫画の最初の3ページくらい見てコンビニを出た。

すると、何やら殺せんせーがガラの悪そうな人3人組から女性を助けているところだった。

なんかナンパしてた3人とも車に詰めて、リボンで車をぐるぐる巻きにしてた。ちょちょ、国家機密が目立つことするなって。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あっ……ありがとうございました!! 素敵な方!このご恩は忘れません! ところで、椚ヶ丘中学への行き方をご存知ですか?」

 

うわぁ。マジかよ。目眩がするぜ…。あれって100パー俺らの先生になるやつだろ。めちゃめちゃ美人じゃんか。しかも今のシチュエーション、中学近くの通学路で平日の朝っぱらからナンパとか、ありえねーから。

おそらくあの女教師の差し金だな。なんか目的があったんだろうが。

 

 

 

 

「今日から来た外国語の臨時講師を紹介する」

 

HRが始まり烏間先生が紹介したその女性は、殺せんせーにベタベタしていた。朝のナンパ黒幕女だ。

 

「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!!」

 

「そいつは若干特殊な体つきだが、気にしないでやってくれ」

 

烏間先生は俺らに申し訳なさそうにそんなことを言っていた。確かにボンキュッボンを体現したような体つきだからな。中学生には刺激が強いぜ。

そんな烏間先生の言葉に、クラス中がヒソヒソと話し始める。

 

「…すっげー美人」「おっぱいやべーな」「…で、なんでベタベタなの?」

 

ちなみに「おっぱいやべーな」は変態・岡島だ。

 

「本格的な外国語に触れさせたいとの学校の意向だ。英語の半分は彼女の受け持ちで文句はないな?」

 

「…仕方ありませんねぇ」

 

俺ら席の近い渚、茅野さん、根本さんプラス俺の4人のだべり組も例に漏れずヒソヒソと話し合っていた。

 

「…なんかすごい先生来たね。しかも殺せんせーにすごく好意があるっぽいし」

 

「…うん」

 

「でも渚。もしかしたらこれは暗殺のヒントになるかもよ?」

 

渚はよく殺せんせーの弱点をメモしているのでそんなことを言っておいた。

 

「確かに」

 

渚はそういってメモ帳を用意した。

 

「タコ型生物の殺せんせーが…人間の女の人にベタベタされても戸惑うだけだ。いつも独特の顔色を見せる殺せんせーが…戸惑う時はどんな顔か…」

 

にっやあぁぁぁ。

 

「「「「普通にデレデレじゃねーか」」」」

 

「なんのひねりもない顔だぞ…キンジ」

 

「ああ。人間もありらしいな」

 

イリーナとかいう先生の100倍くらい可愛い根本さんもそう言って呆れていた。

 

「ああ…見れば見るほど素敵ですわぁ。その正露丸みたいなつぶらな瞳、曖昧な関節。私、とりこになってしまいそう♡」

 

「いやぁお恥ずかしい」

 

「「「騙されないで殺せんせー!!そこはツボの女なんていないから!!」」」

 

…このクラスはそこまで鈍くない。この時期にこのクラスにやって来る先生。結構な確率で…只者じゃない。

 

 

「ヘイパス!」「ヘイ暗殺!」

そんな声がグラウンドに響き渡る、昼休み。

 

「いろいろと接近の手段は用意してたけど…まさか色仕掛けが通じるとは思わなかったわ」

 

「…ああ、俺も予想外だ」

 

俺がトイレのため暗殺サッカーから抜けていると、イリーナ先生と烏間先生の声が聞こえて来た。

イリーナ・イェラビッチ。職業・殺し屋。おそらくその美貌に加え、10ヶ国語を操る対話能力で数々のターゲットに近づき、魅了して殺して来たのだろう。

 

「だが、ただの殺し屋を学校で雇うのはさすがに問題だ。表向きのため教師の仕事もやってもらうぞ」

 

ボッっとタバコに火をつけ余裕の表情でイリーナ先生は言う。

 

「…ああ、別にいいけど。私はプロよ…授業なんてやる間もなく仕事は終わるわ」

 

仕事は終わる、ねぇ…。どうだか。カルマもそうだったが、あいつは国家機密なんだぞ。烏間先生は賢いが、この先生はダメだな。少なくとも今日までに決着がつかないことは断言できるって。

 

俺は再びグラウンドに戻り暗殺サッカーに勤しんでいると、イリーナ先生が校舎を出てきた。

 

「殺せんせー!烏間先生から聞きましたわ。すっごく足がお速いんですって?」

 

「いやぁそれほどでもないですねぇ」

 

「お願いがあるの。一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて。私が英語を教えている間に買って来てくださらない?」

 

「お安いご用です。ベトナムに良い店を知ってますから」

 

相変わらずデレデレな表情でそういうと、ドシュッと飛んでいってしまった。

キーンコーンカーンコーン。

ちょうどよく授業のベルが鳴る

 

「…で…えーとイリーナ先生?授業始まるし、教室戻ります?」

 

「授業?…ああ、各自適当に自習でもしてなさい。それと、ファーストネームで気安く呼ぶのやめてくれる?あのタコの前以外では先生を演じるつもりもないし、『イェラビッチお姉様』と呼びなさい」

 

「………」

 

「……で、どーすんの?ビッチねえさん」

 

「略すな!!」

 

イリーナ先生のせいで気まずくなった空気を打破したのは、意外にもカルマだった。

 

「あんた殺し屋なんでしょ?クラス総がかりで殺せないモンスター。ビッチねえさん1人で殺れんの?」

 

「…ガキが。大人にはね、大人の殺り方はあるのよ」

 

そう言ったビッチねえさんは俺の方に前まで来て…

 

「遠山キンジってあんたよね?」

 

そう言ってキスしようとしてきた。

ひえええ。

 

「!」

 

いきなりのことに驚くが、全然かわせそうなので、スウェーで後ろにのけぞった。

 

「「「なっ」」」

 

この行動には流石に俺を含めクラス中が驚いた。特に根本さん、矢田さん、不破さん。3人は異常だ。めちゃめちゃ怖い顔してるじゃねーか。

 

「なんで避けるのよ。私からのサービスだったのに」

 

「すみません。ついとっさに。でもここは一応学校なので」

 

女性に恥をかかせたと思い謝ったが、この女はそんなことを1ミリも思わなそうだな。

 

「ふーん。まあ良いわ。後で職員室にいらっしゃい。あんた、奴に詳しいらしいじゃない」

 

「えぇ…」

 

嫌だなぁ。この人美人だし。

 

「ま…強制的に話させる方法なんていくらでもあるけどね。その他も!!有力な情報持っている子は話しに来なさい!良い事をしてあげるわよ。女子にはオトコだって貸してあげるし」

 

ザッザッザッ

今日の朝にナンパ役をしていた3人組が大きな荷物を持ってグラウンドに入ってきた。どうやら暗殺の準備をするらしい。

 

「技術も人脈も全てプロの仕事よ。ガキは外野でおとなしく拝んでなさい。あと…少しでも私の暗殺の邪魔をしたら…殺すわよ」

 

圧倒的な美貌に従えてきた強そうな男達。『殺す』という言葉の重み。彼女がプロの殺し屋なのだと実感した。

でも同時に、クラスの大半が感じたこと。この先生は…嫌いだ!

 

 

 

 

 

「さて、遠山キンジ。あなたに聞きたいことがあるわ」

 

空き部屋に連れ込まれ、ずいっと顔を寄せてきたので俺は一応持ってきたノートを顔と顔の間に挟み、盾代わりにした。

 

「殺せんせーの事ですよね。どこから話せば良いですかね」

 

「それももちろんだけど、気が変わったわ。あなた、この学校には最初からいた?」

 

「……どういうことですか?」

 

「あなたが入った学校にたまたまあのタコが来たという解釈でいいのか聞いているのよ」

 

「その解釈で合っていると思います。俺がこの学校に入ったのは2年生の3学期からですけどね」

 

「タイミングがいいわね。まさかあの怪物がくることは知ってた?」

 

「いや、知りませんでした。偶然入ったところに偶然あの怪物が来ました」

 

そう…きっとこれは偶然だ。

 

「…名簿であなたの名前を見たときは半信半疑だったけど、顔を見て確信したわ。あなた…相当強いわね?」

 

は?何を言ってるんだ、この女。俺をあの怪物を倒すために雇われた生徒だとでも勘違いしてるのか?

 

「意味が分かりません。多分戦闘で言えばカルマの方が強いと思うし、暗殺で言えば渚がずば抜けていると思います」

 

「いいえ…違うわ。あなたの昼休みの『遊び』を見て思ったけど、手を抜いているわね。きっと普段から」

 

「そんな事ありません。俺はいつだって本気です。今日の昼休みだけ見て何がわかるっていうんですか?」

 

「分かるわよ」

 

イリーナ先生は少し考え込み…数秒間の沈黙の後、口を開いた。

 

「あなた、武装検事ってわかる?」

 

「…?はい。まあ簡単に言うと戦闘ができる検事ですよね。かなり強くないとなれないっていう」

 

「そうね。その武装検事に、あなたに顔と雰囲気がそっくりだった人がいるのよ。そして…彼は私が知る限り最強の武装検事だったわ」

 

「…!まさか…!」

 

「そのまさかよ。彼の名はトオヤマコンザ。サイレント・オルゴ(静かなる鬼)の二つ名を持つ男よ。この男、あなたの父親なんじゃなくて?」

 

まさかここで父さんの話を聞くなんてな。

検事とは、ようは検察官。つまり武装を許可された検察官ということだ。

 

「そうですね。遠山金叉は父さんです。俺が覚えてないうちに死んでしまいましたがね」

 

「…そう。あなたは彼のことを何もわかっていないのね」

 

「……?」

 

「その遺伝子を継ぐあなたなら、あの程度じゃないって思っただけよ。彼も手を抜いて弱く見せていた時があったから、そこは親子で似るのかしらね」

 

いや…それはきっと違う。なんとなくだが分かる気がする。条件が整えば強くなる。そういう体質だ、俺の家系は。

 

「だから暗殺のためにあなたも派遣されたのかと思った。以上、私が聞きたいことでした。で?その答えを聞いてないのだけれど?」

 

どうやら質問を質問で返してたっぽいな。ちょっと反省。

 

「俺は遠山金叉の息子ですが、強くないです。もう一度言いますが戦闘で言えばカルマが上、暗殺で言えば渚が上です。暗殺のこともここに来てから知りました。なので『偶然』です」

 

「そう…ま、あなたにも色々と言えない事情があるでしょうから、話半分くらいに聞いてあげるわ」

 

参ったな。厄介な奴に目をつけられちまった。

 

「ところであなた、いい顔立ちじゃない。やっぱりサイレント・オルゴの息子だわ」

 

「何言ってるんですか。そういう先生こそ…そんなに綺麗なのにタバコをお吸いになるんですね」

 

「あら、いいこと言うじゃない。気に入ったわ。あなた、私からハニートラップ習ってみない?きっと才能あるわ」

 

「い、いや!それは大丈夫です」

 

そう言ってこの場を締めくくったのであった。

 

 

午後始めは英語の授業。

だがビッチ先生は授業をせずに、教壇の椅子に座って端末をいじっているだけだ。

 

「なービッチねえさん。授業してくれよー」

 

それに腹を立てたのか最前列のやんちゃイケメンの前原君が授業をするように促した。

 

「そーだビッチねえさん」「一応ここじゃ先生なんだろビッチねえさん」「ビッチねえさん」「ビッチさん」

 

それに賛同するように、クラスメイトの声が飛び交う。

 

「あー!!ビッチビッチうるさいわね!!まず正確な発音が違う!あんたら日本人はBとVの区別もつかないのね!」

 

どうやら俺たち日本人のBとVの発音がおかしいらしい。

 

「正しいVの発音を教えてあげるわ。まず歯で下唇を軽く噛む!ほら!」

 

やっと授業をしてくれる気になったらしいな。みんな言われた通りに下唇を噛んだ。

 

「…そう。そのまま1時間過ごしていれば静かでいいわ」

 

前言撤回。なんだこの授業。

結局、まともに授業にならないまま英語の時間が終わってしまった。

 

 

「イリーナ先生!」

 

ドン。

マッハで上空から着地し、殺せんせーがベトナムから帰ってきた。

 

「ご所望してたインドのチャイです」

 

「まぁ。ありがとう殺せんせー!午後のティータイムに欲しかったの!」

 

うっわぁ。先生が来た瞬間この態度の変わりよう。嫌な女だな。

 

「…それでね殺せんせー。お話があるの。6時間目倉庫に来てくれない?」

 

5時間目は体育で暗殺の授業。烏間先生が担当するのでこの2人にとっては管轄外だ

 

「お話?ええいいですとも」

 

そして先生が背を向けた直後、烏間先生に目配せした。まるで、ガキどもは邪魔だからお守りしておいてーーーとでも言うように。

その後の暗殺の授業ではさっきの英語でのフラストレーションもあり、みんな気合い十分だった。

今俺の目の前にいる速水さんも例に漏れず、クールながらも黙々と銃を撃っていた。

 

「速水さん、もしかして射撃とか得意なのか?」

 

速水さんが他の人よりも比較的射撃がうまかったので、そんな事を聞いてしまった。

 

「どうだろう。私はナイフがからっきしだから、ほぼほぼ射撃をやっている。だから他の人よりはうまいかも」

 

それにしてもだぞ、このうまさは。きっと黙々と作業ができる集中力過剰型なんだな、速水さんは。間違いなく狙撃手タイプだ。

 

「センスはあるんだと思う。だけど撃つときに肩と手首に力が入りすぎてるんだ。あとはもっと目線を照準に合わせて、こういう風に…」

 

パン パン パン

おー当たった当たった。反動ないし狙いやすいな。

速水さんはというと、全部真ん中に当てた俺の射撃の腕に目を丸くして驚いている様子だった。

 

「凄い。今まで何回もやってるけど、この距離から的に当たる事はあっても真ん中になんて当たった事ない。遠山君こそ何か習っていたの?」

 

いけね、つい遊び心でやっちまった。そりゃいきなりこんな事されたら驚かれるに決まってるじゃん。

 

「まあ、ピストルは何回も使ったことあるからな」

 

「へー。遠山君って大人っぽいのに、そういう遊びもするんだ。少し意外かも」

 

ま、俺の場合BB弾じゃなくて実弾だけどな。ピストルっていうこと自体嘘じゃないし、いちいち言わないけど。

てか俺全然大人っぽくないと思うんだが。

 

「そんな遠山君にお願いがある。暇な時に私に射撃を教えてほしい」

 

「別にいいけど…いいのか?教わるのが俺なんかで」

 

「全然なんかじゃない。でも疑問がある。なんでいつも射撃の手を抜いているの?」

 

す、鋭い。

でもいつも申し訳ないと思いつつみんなにレベルを合わせているのは事実。今、それがバレてしまったのは確実に俺の落ち度だ。

 

「手を抜いているわけじゃない。今のはマジで出来過ぎだ。あんまり買い被らないで欲しい」

 

「そんな風には見えなかったけど」

 

じー。速水さんはクールな表情で凝視してくる。疑ってるんだろうなぁ。

 

「その…速水さんみたいな美人に見つめられるとちょっと恥ずかしいんだが…」

 

俺がそう言っても速水さんは全く動じることなく俺のことを見てくる。

ぽろっ。あっ、銃を落とした。反応遅ッ。

 

「そそそそそんな適当言ってもダメ。騙されたりしないんだから」

 

「全然適当じゃないって。E組の中で一番美人なんじゃないか?いつも自分で鏡とか見た時にそういうのって思わないもんなのか」

 

カアァァァァ。

 

「そそ、そ、それ、嫌味?」

 

俺を見る目が鋭くなるが、顔がどんどん真っ赤になっている。耳まで真っ赤だ。あのクールな速水さんが取り乱したところは初めて見たな。

 

「いや…思ったことをそのまま言っただけなんだが…」

 

「は、はいはい。もういいから。とにかく、不用意にバラされたくなかったら射撃を教えること。そうしたらこの『秘密』は守ってあげる」

 

そう言って離れていってしまった。

なんだったんだよ…マジで。

 

「遠山君〜私も射撃の的使ってい〜?」

 

「あ、倉橋さん。いいぞ、今ちょうど速水さんがいなくなったし」

 

「あ…やっぱ今使ってたの凛香だったんだ…。なんか顔をものすごく真っ赤にして何処かに行ったから…遠山君がいたんなら納得だね〜」

 

え?どういうこと…?俺ってそんなに嫌われてるの…?

 

「全くも〜。顔がかっこいいと大変ですな〜。それにしてもあの凛香のポーカーフェイスをいとも簡単に崩すなんて、やるね遠山君」

 

顔がかっこいいとは…? その定義を見失いかけていた横で、倉橋さんは銃に弾を入れてポコポコ撃っている。お世辞にも上手いとは言えず、的にすら当たっていない。

 

「今日初めて遠山君と喋ってみたけど、やっぱり緊張するなぁ。緊張しすぎて的に弾が当たらないや」

 

倉橋さんがなんで緊張するのかは分からないが、俺も緊張している。話すのは初めてだし、こんな美少女と話してたらそりゃ緊張する。

 

「多分、銃が悪いんじゃないか?ほら、こっちの方が小さくてブレが少ないから撃ちやすいと思う」

 

倉橋さんはアサルトライフルを使っていたので、ハンドガンを使うように言ってみる。これはワルサーPモデルだな。

 

「おお〜確かに的に当たるようになった。なんだ、ちっこい銃の方が当てやすいんだ」

 

「近くの場合は、だけどな。もちろん遠い時は大きい銃の方がいい」

 

「おお〜なるほど。遠山君って銃に詳しいんだ?」

 

「まあ……少し好きでかじってた程度だ」

 

「じゃあじゃあ、今度暇な時でいいから私の射撃練習に付き合ってよ。遠山君射撃うまそうだし、1人でやってもつまらなそうだし…」

 

速水さんに続きそんなことを言ってくる。2人して仲よすぎかって。

 

「俺とやってもつまらないと思うぞ。それでもいいのか?」

 

「え〜?そんなことないよ〜。実際今楽しいし、やりましょうよ先輩〜」

 

誰が先輩だ誰が。こう言う感じで誰とでも仲良くなるのが倉橋さんの良いところだよな。俺もその点は学ばないと。

 

「分かった。暗殺も成功させたいしな、頑張ろう」

 

「やった〜。よろしくね遠山君」

 

うーん、美少女2人と射撃訓練か。嫌だなぁ。

 

「あ!見て見て遠山君!先生とイリーナって人、体育倉庫に入っていくよ」

 

倉橋さんに指さされた方向を見ると…殺せんせーがだらしなく笑いながらイリーナ先生について行くところだった。

 

「…私、あの女のこと好きになれないよ〜」

 

「そうだな。まあそれについては烏間先生も謝ってたしな。プロの彼女に一任しろって言う指示らしい。だが…わずか1日で全ての準備を整える手際…殺し屋として一流なのは確かだろう」

 

大方ハニートラップで誘い込んでプロの奴らに撃たせるつもりだろう。

 

「どうなるんだろう。もしこれでやられちゃったら殺せんせーにがっかりだよ。あんな見え見えの女に引っかかって」

 

「いや…それはない。断言できる」

 

「なんで?」

 

「なぜならあの3人組は…」

 

ーーードドドドドドドドドドドドドドドド

とても大きな銃声がグラウンドに鳴り響いた。生徒のみんなは心配そうに倉庫を見ている。

 

「殺せんせー…」「まさか…」

 

大丈夫だみんな。あのタコは絶対に生きてるぞ。

1分ほどして銃声が鳴り止み、シン…と静まり返る。

 

ヌルヌルヌルヌル。

「いやあああああああ!!」

 

「「「!!」」」

 

「な、何!?」

 

「銃声の次は鋭い悲鳴とヌルヌル音が!!」

 

なんだよこのヌルヌル音。

ヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌル。

 

「めっちゃ執拗にヌルヌルされてるぞ!」

 

「行ってみよう!」

 

大方予想できるが、念のため確認を取りたくて、体育倉庫に生徒が集まる。

何人かが集まったあたりで、キィーーとドアが開いた。

 

「殺せんせー!!おっぱいは?」

 

ブハッ。誰今言ったの!?渚か!

なんだよおっぱいは?って吹いちまったじゃねーか。

 

「いやぁ…もう少し楽しみたかったですが。皆さんとの授業の方が楽しみですから。6時間目の小テストは手強いですよぉ」

 

「…あはは、まあ頑張るよ」

 

殺せんせーが生きていたら次はイリーナ先生だ。どんな風に手入れされているか…しばらく体育倉庫の方を見ていたらフラフラとした足取りで出てきた。

 

「「「健康的でレトロな服にされている!」」」

 

フラフラな足取りのイリーナ先生はブルマの格好をしてハチマキを巻いている。さらに無様によだれをダラダラ垂らしており目の焦点は合っていない。

 

「まさか…わずか1分で…肩と腰のコリをほぐされてオイルと小顔とリンパのマッサージされて…早着替えさせられて…その上まさか…触手とヌメヌメであんな事を…」

 

「「「どんな事だ!!?」」」

 

「殺せんせー、何したの?」

 

「さぁねぇ。大人には大人の手入れがありますから」

 

「悪い大人の顔だ!!」

 

「さ、教室に戻りますよ」

 

はーい。大半の生徒が教室に戻る中、俺はイリーナ先生を見ていた。

 

「遠山君…?どうしたの?」

 

「いや。イリーナ先生が少し気になってな。このままだと可哀想だから、せめて運んであげることにする」

 

「さすが遠山君。優しいね」

 

見下していた生徒の前で這い蹲り、恥をかかされたイリーナ先生の表情は…殺意に満ち溢れていた。

そんな彼女に俺は手を差し伸べる。

 

「イリーナ先生。一つ言い忘れていたことがありました」

 

「なによ…?」

 

「いやぁ、実は昨日殺し屋たちを見たときに、鉛の弾をたくさん持っていたので、使うだろうとは思っていたんですが。効かないということを伝え忘れてました。その事はもう試して知っていたので」

 

「…!なんで言わなかったのよ…?」

 

「伝え忘れたって言ったじゃないですか。でも、あれだけ偉そうにしてたみんなの前でこんな醜態を晒した。もうみんなも気が晴れたと思うので、どうか俺らの先生をやっていただけませんか。今ならみんなも認めるはずです」

 

もちろこれを狙ってあえて言わなかったんだけどな。

 

「みんなで一緒に暗殺を進めていきませんか。俺だって、倉橋だって、クラスのみんなだって外国人の人と授業できるのは嬉しいはずです」

 

俺は隣にいる倉橋指してそう言った。

 

「…気にくわないわ!私は殺し屋よ!次に新たな殺し屋を雇って今度こそ殺すわ」

 

俺が差し出した手をパシィ、とはじいて睨んできた。

 

「大丈夫ですよ」

 

ハアとため息をついてこの頑固な先生をおぶってやった。

 

「…なっ!何を!」

 

「ただ保健室に運ぶだけですよ。きっともうハニートラップも効きません。なので必然的に他の殺し屋を雇おうと思ったんでしょうが、他の生徒の目にも安全にも良くないのでやめてください。俺らは暗殺者の前にただの受験生ですから」

 

そして次の言葉に俺は怒気をはらんで言った。

 

「もし俺以外のクラスメイトをE組のことで馬鹿にしたり、あなたの身勝手な暗殺の被害に合わせたら…許しませんから」

 

「ーーーっ!」

 

そう。今回は運良く密室でやったが、この女の暗殺は危険なのだ。もし仮にも危なかった場合は殺せんせーが助けるだろうが万が一もある。

 

(もう嫌なんだ…仲間が傷つくところを見るのは…)

 

俺のその言葉にイリーナ先生は俺の背中に預けていた身をビクッと震わせた。

どうやら少しはビビってくれたらしい。

 

「あなた…やっぱりあいつの息子だわぁ」

 

なぜか顔を赤くしながらそう言うのであった。隣に倉橋さんがいるので是非そういう発言は慎んでほしいところだ。

 

 

 

それにしてもさっきなんだか…さっきなんだか曖昧な記憶のようなモノが……。

まあいっか。そのうち思い出せるだろ。

 

 

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