ゴドリック・グリフィンドールの名を覚えていますか?
以前お話しした若い<決闘者>の事です。
980年のグラストンベリ決闘大会を若干17歳で制し、<決闘者>として最高の栄誉を得たグリフィンドール騎士団の若獅子。
信じられない事ですが、人づてに聞いた噂によると彼は狂気にかられたようです。
まず彼は叔父であり養父でもあるグリフィンドール家の当主、シドニウス・グリフィンドールを殺害しました。
理由は分かっていません。不仲だったと聞き及んでおりますが、斬り合うようなものではなかったそうで、だからこそ狂気に取りつかれたとしか思えないのです。
あなた方非魔法族の世界でもそうでしょうが、我々魔法族において血縁殺しは最も忌むべき罪科とされます。魔法は血にこそ宿り、守り伝えなくてはならない物だからです。
だからこそグリフィンドール家の中では彼に対して厳しい処分が下されました。彼は実父に剣を折られ(彼の家系は剣をもって家族の証明としています)家を追放されたのです。
そして、ここからの彼の足跡はまさに呪われた物になります。
聞くところによると荒野を放浪する彼は叔父だけでは飽き足らず、老若男女マグルの別なく襲って殺傷し、彼に挑んだ<決闘者>の中で命を落とした者は多数、その数百とも言われ“人食い獅子”と渾名されるようになります。
この強さは、これも以前お話しした、彼の血に宿る<剣の魔法>のせいだと考えられています。
それを彼の実家はこの上ない不名誉と考えたのでしょうか、手の付けられない彼を騎士団(魔法戦士の集団です。中でもグリフィンドール家の騎士団は伝統強さ共に並ぶものはありません)をもって粛清するという事態になりました。彼は死んだそうです。
何故この痛ましい噂話をご紹介するのかと申しますと、死んだとされるゴドリック・グリフィンドールは実は生きていてブリテン島を徘徊しているという噂が後を絶えないからです。
曰く、ドーヴァの海岸の洞窟に隠れ住んでいる。テムズ川で魚を獲って生で食べていた。夜の森を歩いていたら身長5メートルで金の目のゴドリックに出会った。恋人が誘惑されて別れる事になった。月夜の晩ハドリアヌスの防壁の上で踊っていた。大イカに乗って海を渡っていた。ロンドンでカツアゲされた。親の言いつけを守らない、又は夜寝ない子供を攫って行ってしまう。
このように多数の目撃談を耳にします。
不思議な事に、猛獣のごとく誰彼構わず襲うと噂されるゴドリック・グリフィンドールから実際に傷を負わされた、もしくは命を落とした者として確認が取れるのは<決闘者>ばかりで何故か一般の魔法使いが一人も居ないのですが、話によると非魔法族でも容赦なく襲ったり攫ったり寝ている間に袖のほつれを繕ってくれたりするらしいので、貴方も十分に用心してください。
私が980年グラストンベリで出会ったゴドリック・グリフィンドールは身長190センチ、赤い髪、琥珀の目、右利き、猫舌、好きな果物はリンゴ、好きな女性のタイプは年上で子供好きな人の、粗野だけれど笑うと可愛い少年でした。
こんな怪物に成り果ててしまうなんて、私はいまだに信じられません。
<981年“心配性”ケニヨンからある修道士に宛てられた手紙より抜粋>