FILE:01とか書いてますが多分続きません。
連載の方、ほっぽってこんなの書いててすみません。
京都は紫野の地にある仏教系の私立大学知恩大学。
関関同立のような有名私立大学ではないが、関西ではそこそこ名の通った大学である。しかし、京都の大学とは言え市街の中心からは大きく離れており、京都の端にたつ大学というイメージだ。さらに北には有名な上賀茂神社や鞍馬山あるのだが、やはりきらびやかな市中心部と比べると寂れているように感じる。実際、大学に至るまでの未知ではシャッターの閉まっているところも多い。
大学のキャンパスは最寄りのバス停から五分くらいのところにあるが、坂の上にあるから登校も一苦労である。キャンパスはここ数年で校舎の建て替えや新築が進み古い建物と新しい建物が入り混じっており、敷地の中に道路が走っていてキャンパスを北と南に分断している。最も大きい1号棟校舎の脇にある掲示板には講義の時間割と一緒にに仏教系の大学らしく法要や説法のお知らせが張られている。
そんな、風景を見ながら僕、白石剣児は、キャンパスの北側にある部活棟に向かっていた。当然、自分が所属するサークルの活動に参加するためだ。本来であれば今日は講義もなく映画でも見に行く予定であったのだが、我がサークル、超常現象調査研究会に君臨する暴君、宮藤薫に呼び出されたのだった。
あの会長はこちらの予定など知らずに呼び出すのでたまったものではない。しかし、逆らえばあの会長は何をしでかすかわからない。あの女帝はナンパしてきた男を5分後には土下座させていたとかとんでもな逸話に事と書かないのだ。噂によれば、大学の教授たちの弱みを握っているだとか、実家はとんでもない金持ちで逆らったら消されるとか言われている。真偽はともかく教授がたも会長を恐れているのは事実で、とある教授が講義中に彼女に泣かされた動画が友人から送られてきた事があったほどだ。
一年前、美人が多いとか彼女ができるとその友人にそそのかされ、こんなサークルに入ってしまった自分のおろかさが恨めしい。
と、そんなことを考えつつも、茶色のタイルで覆われた部室棟にたどり着くと急いで階段を上がり、二階の一番奥にある超常現象調査研究会と書かれた木製の看板がかけられた部屋の前へとやってくる。
「はぁ...」
開けたくない、またどうせろくでもないことをさせられる決まっている。この前は鞍馬の天狗を撮影してきてと、一週間鞍馬山でテント生活させられた。結局撮れたのは天狗の仮面をつけた観光客ぐらいで、理不尽にも怒られたうえ、罰として一週間、天狗の面をつけて生活することを強要された。
また、同じような、いやそれ以上の目にあうと思うと、このまますべてを忘れて、京都駅裏手のイオンに映画でも見に行きたい。とは言え逆らっても地獄。
なんだろうこの状況は。僕の楽しいキャンパスライフはどこに行った?おかしい、今ごろは彼女もできて青春真っ盛りな大学生活を送っていたはずなのに!
「おい、どうした剣児」
「ひっ、違うです、会長って...なんだ工藤か。びっくりさせるなよ」
後ろから声をかけられつい会長と思い反応してしまったが全くの無駄だった。会長じゃなければ恐れる必要などない。
「なんだ工藤ってなんだよ、同学部、同サークルの友人に何て言い草だ」
黒髪を長く伸ばし、耳にピアスまで開けているチャラ男が憤慨した様子でそんなことを言ってくる。
この男は工藤、同じ学年の社会学部生であり、このサークルに俺を引き込んだ悪友である。正直、講義ノートを融通してくれたりしなければ早々に縁を切ってしまいたいところである。
「色々と憂鬱なんだよ、お前も会長に呼び出された口か?」
「じゃないとこねーよ。基本このサークル会長の気分で活動してるからな」
工藤はどこか不愉快そうにそう言った。
工藤の言う通り、このサークルは会長の気分、会長が興味がわいた超常現象を調査するという形で活動している。私物化もいいところなのだが、誰も逆らえないし、特に誰も他に活動を提案しないのでこんな状態が続いている。
と、こんなことをしている場合ではない、早く部屋に入らないと会長にどんな懲罰を下されるかわかったものではない。そう思い、工藤と一緒に部屋に入る。
部屋にある本棚には民俗学や歴史学、神話、オカルトの本が所狭しと置かれ、壁や棚の上には良くわからない気味の悪い人形やら全国の神社仏閣のお札や破魔矢が飾られいる。日本のもだけでなく、海外のものもあり、その無駄な国際性のせいで部屋は異様としか言いようがない空間と化している。
その中心には長机がコの字に置かれているが上座にあたる机には誰もおらず左側の机で本を読んでいる眼鏡をかけた短髪の陰険女が一人いるだけだ。
「おい、今何か失礼なこと考えたでしょ。罰金千円払いなさい」
「言い掛かりをやめろ!大体、人の考えていたことがわかるわけないだろ!」
「超能力で心を読んだのよ」
「嘘コケ、大体お前、超能力とかオカルト否定派じゃん」
この失礼な女は市川御子。生粋の科学信奉者で超常現象を正しく解き明かすためにこのサークルに入ったらしい。といってもこの女、文学部日本文学科在籍という生粋の文系なのだが。
「私は超能力や幽霊を完全に否定してるわけじゃないわ。幽霊や超能力をそういうものとして
「そのわりに毎回、毎回、サークルの活動結果を否定なさっていますが」
「それが大抵、科学的に説明がつく現象だからよ。この前も薫が心霊写真だって騒いでたけど。典型的なオーブ、空気中の雨粒や微粒子やらがフラッシュに反射しただけのものだったわ」
それだけ言うと御子は本に眼をもどし読書に戻ろうとする。今日は荒俣宏の帝都物語のようだ。
「読書の前に会長は?あの人がいないと何も始まらないんだが」
「知らないわよ。私も結構前から待ってるけどまだ来てないわ。あの子が自分の好きな時間にくるのはいつものことでしょう?」
そうぶっきらぼう言うと御子は今度こそ読書に戻ってしまった。なぜ、こんな愛想のない女がモテるのかわからない。そう、この女はなぜか知らないが学内の人気が高い。昨年の、ミス知恩大では他の参加者と二倍近くの得票差をつけぶっちぎりで優勝したほどだ。
それで、本人は興味ないだとか
まあ、確かに肌は玉のようで髪の毛は絹糸のように綺麗だし、瞳は宝玉のようで吸い込まれるように美しい。全体の顔立ちだってすれ違った人という人が振り替えるくらい美人だ。だからといって、それだけで人間の評価は決まる訳ではない。こいつの人格は溝のようだし、しかも愛想はないし、口を開けば人を小馬鹿にしたような言葉が出てくる。黙ってさえいれば美人の好例だろう。外見に騙されている男子学生が不憫でならない。
「なあ、会長がいないんなら解散でよくないか?俺この後はデートあるんだが」
「お前、この前彼女と別れたとか言ってなかったけ?」
「うん、だから新しい彼女」
工藤は何でもないことのように言うが、今年に入って六人目の彼女である。なんで、僕はこんなくそ野郎と友人なんだろうか?そろそろ刺されればいいと思う。
しかし、皆やる気がない。呼び出した本人がいないというのだから当然か。あの自由人の会長にも本当に困ったものだ。大体、あの人は傍若無人にすぎるのだ。いい加減、僕たちが都合のいい奴隷ではなく、人権が保障された人間であることを認識させるべきかもしれない。というか、そうすべきだ、今こそあの暴君に反逆する時...
「待たせたね!私だよ!」
「お待ちしておりました会長!」
部室に入室された会長に最敬礼するする。このサークルの頂点である会長に対しては当然の対応である。逆らった何されるかわからないからね!
「元気のいい挨拶だね、関心感心」
「僕は会長、一番の忠臣ですから」
「薫ちゃんおはよう......あんた、まさに犬ね。恥ずかしくないの?ああ、恥を感じないわね。ごめんなさい」
いつか、こいつだけは絶対に泣かす。女とか関係ねぇ、絶対泣かす。
「おはようございます、会長。御足労ありがとうございます」
工藤は額に手を掲げ軍人や警官が戴帽時にするような敬礼をしている。こいつも会長には絶対服従だな。まあ、会長を口説いて泣かされたらしいので仕方ないのかもしれないが。
「皆、おはよう。皆、ちゃんとそろっているようで会長はうれしいよ」
来なかったら、居場所突き止めて攫いに来たでしょうからね。アンタからメールが着た瞬間飛び上がって全力でここまで来ましたよ。恐らくほかのメンバーも似たようなものであろう。基本このサークルは会長による独裁体制によって運営されている。
「で、今度はどうしたんですか、会長。深泥池の幽霊でも捕獲するんですか」
「いや、今日はもっと近いとこの調査さ。兄から面白い話を聞いてね。...みたら自殺する幽霊って面白いと思わないかい?」
また、笑顔で頭のおかしいことを言い始めたよこの人は。思わねえよ、関わりたくねえよそんな幽霊。
会長こと宮藤薫は、度を越したオカルト好きである。西に幸運を呼び起こすパワースポットがあれば谷や山があろうとその効能を確かめに行き、東に超能力者がいるとなれば台風、火事、親父、何があろうと会いに行くそれが会長である。
このサークルも会長がおのが手足とするために作ったのであり、会長の好奇心を満たすために存在しているといっても過言ではない。
「また、薫ちゃんは馬鹿馬鹿しい話を。大体、見て自殺するならだれがこの話、広めてるんですか」
御子は、読んでいた本をパタンと閉じそんなことを言う。会長を薫ちゃん何て気安く呼んで、反論できる人間は学内では間違いなくこいつだけだろう。僕か工藤がこんなものいいをすれば裸で学食に吊るされることになるだろう。下手をすれば琵琶湖に沈められるかもしれない。
「もちろん、その辺りも含めて調べ尽くすのさ。ワクワクするだろう?」
笑顔で会長がそう返すと御子は、「そうですか」とだけいってため息をついた。ミス知恩大でも会長はどうしようもないらしい。
「で、結局どんな話なんですか、その幽霊の話」
工藤がそういい話を本筋に戻す。会長は待ってましたといわんばかり大袈裟に腕を広げ、一泊おいて手を叩いた。
「この話はね、兄が今勤めている同僚から聞いたのだがね。ある警備員がとある建物の夜間警備をしていたんだ。その建物は五階建てでね。その警備員は深夜に誰か残っていないか、忍び込んでとないかと巡回することになっていた。彼は一階、二階といつものように見回っていると五階についた時、物音がするの気づいたそうだ。シューシューとガスボンベのガスが漏れるような結構大きな音だったらしい。だがどうらやら物音はこの階からしているのではなく丁度彼のいる、階段の上、屋上からしてるようだったんだそうだ。彼は誰か忍び込んだのか、屋上にある設備が故障しているのかそのどちらかだろうとおもい、屋上に歩を進めた。しかし、そこには誰もいないし設備も故障している様子はない。音もいつの間にやんでいたので風か何かだとおもってその場を立ち去ろうとしたんだ。その時、また、シューシューという音が聞こえてきた。それもさっき聞いた時よりも大きかった。彼は音が自分の後ろからしていることに気づいた。そして、うしろを振り向くと、そこには....真っ白な女があああ!...ってみんな反応薄いなぁ!もっと驚いてよ」
会長は拗ねたよう言うがそんなこといわれても。こんなの展開が読めすぎて驚けという方が無理だ。古典的過ぎて怪談というよりギャグだ。今時こんな怪談を真面目に話すのは創作の世界の人間だけだろう。大体シューという音と幽霊との関連性が見えないし、伏線はきっちり回収してほしい。
「で、その方はなくなったのですか?」
御子は会長の要望を無視し、話の重点だけを聞こうとする。こいつの誰も恐れず唯我独尊なところだけは尊敬に値すると思う。
「それからしばらくして自殺したらしいよ。ただその同僚の方も他の同僚さんから聞いた話らしいから詳しい話はわからないけどね」
典型的なFOAF、
「そんな、適当かつ具体性のない話で何を調査するんですか、会長。まさかその建物に行って自殺するか検証して来いっていうんじゃないでしょうね」
「もちろんそうだけど?」
さも当たり前のように言うこの反社会的人格者。逆になんでそんな当たり前のこと聞くのといわんばかりだ。死ねと、たかが大学のサークル活動で死ねと。やはりこのサークルには人権は存在しないらしい。
「心配しなくても、ちゃんと準備はしているよ」
そう言って、会長は冠婚葬祭互助会のパンフレットをスカートのポッケから取り出した。
「もしもの時は盛大な葬儀にするから、安心して成仏してくれたまえ」
どうやら会長は人間ではなく悪魔のたぐいだったようだ。今すぐエクソシストを呼んでほしいい。あと、葬儀の時に流す曲は坂本真綾の色彩でお願いします。
「冗談だからそんな顔をしないでくれ。ちゃんと市内の有名な祈祷寺に連絡してあるから調査が終わったら皆で除霊にいこう」
調査をするのは確定なんですね。出来れば調査自体を除霊したいのですが。工藤や市川も会長の話を聞いてげんなりしている。
「で結局、我々はどこに行けばいいんです。まだ、その話が何処で起きたか聞いていませんでしたが」
近い場所といっていたし、バスで数駅といったところだろうか。僕の言葉を聞き会長は待ってましたといわんばかり微笑んだ。
「なあに、移動する必要はないさ。何せ、我々はもうそのビルにいるんだから」
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そんなわけで僕は一人誰もいなくなった校舎の中で息をひそめ、警備員に見つからないよう隠れていた。もちろん件の幽霊を調査するためである。
近い場所といっていたがまさかこの大学のことで、しかも我々の拠点だとはさすがに思いもしなかった。
というか、一年近く活動しておいて自分たちの頭上の怪奇現象を知らない何て、仮にも超常現象調査研究会としてどうなのだろうか?
なんで、一人かって?工藤は彼女とのデートがあるからって帰ったし。市川は家の門限があるから、会長は兄君との久々の外食があるらしい。あの会長はあれでかなりのブラコンである。本人に指摘したら殺されるが。というわけで一人残ったの僕がすべてを押し付けられここにいるというわけだ。これで死んだら、奴ら全員を祟り殺してやろうと思う。
そんなことを考えているとコツコツと足音がする、こっそり物陰から伺うと警備員が懐中電灯をもって巡回をしていた。僕はそれを見ると、会長から渡されていた、部室の合いかぎを使って音をたてないように扉を開け部室に隠れる。
本来、この鍵は帰る時に用務員さんに返すのだがあの会長はこっそり合い鍵を作っていたらしい。もちろん、犯罪である、しかし、あの会長は天も法も恐れないのだ。恐れているのはきっと兄君との絶縁ぐらいなものだろう。
そうこうしてるうちにコツコツという音がちづく、そして、扉に付けられられた曇りガラスの窓から懐中電灯らしき光が漏れる、しばらくするとコツコツと足音は階段の方へと離れていった。この部室は二階なので、もうしばらくすれば屋上までの巡回も終わり下へと戻っていくことだろう。
僕はその間、外に光が漏れないよう細心の注意を払いながらスマホで、電子書籍版リングを読むことにした。
「小説版はやっぱこの怪奇現象の原点を探っていく感じが、どことなくクトゥルフっぽいよなあ。推理小説かといわれれば微妙な気もするけど」
当時、これを送られた横溝正史賞の審査員も困っただろうなあ、面白いけどジャンル違いんだもの。と、読書にふけっているともう深夜で日付が変わろという時刻だ。扉を開け外をうかがうと誰もいない。警備員の巡回も終わったようだ。幸い、この部室棟には監視カメラのたぐいもないので自由に動ける。
誰もいないことを確認した僕は会長から預かっていたカメラを機動作させる。確か、これが暗視モードだったかなっと。そうしてカメラの持ち手を手に付けるとレンズを自分に向ける。
「えーでは、知恩大学超常現象調査研究会、自殺に誘う幽霊の正体を調査したいと思います」
カメラに向かって僕はセリフを吐くが気恥ずかしさしかない。このカメラは会長から証言だけじゃ物足りないから証拠を取って来いと渡されたものだが、果たして怪奇現象をデジタルな機器でとらえられるものだろうか。世に出回る心霊動画なんて偽物ばかりだし、僕自身はそう言ものは肉眼でしか見れないのではないかと思うのだけども。
誰もいない部室棟は物音ひとつせず、シーンと静まり返っている。ただ、僕の足音とカメラの動作音だけが真っ暗な部室棟に響く。流石にこの静けさは怖いので、さっさと目的を果たすために屋上に向かう。もちろん、屋上にも鍵とそのうえ暗証番号を打ち込まないと警報が鳴る警備システムがついているのだが、これも会長から渡された合鍵と暗証番号が書かれた紙で突破。どうも、会長の兄君が用意してくれたらしい。どうやら、会長の兄君も妹の凶行を止めるどころか幇助する頭のおかしい人らしい。
大体、警備会社もなんで気づかないんだ。僕は無能な警備会社に憤りを感じながら、屋上の扉に手をかける。何事もなく終わりますようにと祈りながら屋上に入ると、別段異常はない。
この大学は京都の中心から離れた高台にあるため、屋上からは京都市街中心の美しい夜景が望め、余り恐怖というものは感じられない。さすが、百万都市なだけあって、深夜というのに街は煌々と輝いている。
「やはり何もないな、結局くだらない噂だったな」
そう判断して、帰路に就こうとしたその時、物陰から誰かが飛び出してきた。
「だ、誰だ、あんた!こ、こんな時間に何を!」
そこにいたのは震え声で叫ぶ青年手には茶封筒を握っている。いたって普通のどこでもいそうな奴だ。
どう見たって会長が言っていた霊には見えない、大体男だし。というか、何をといいたのはこちらのほうだが、青年がその手に握っていた茶封筒で何をしようとしていたか、分かってしまった。なぜならその茶封筒には遺書なんて書かれていたからだ。
「まあ、幽霊探し?何を言っているのかわからないと思うけどさ」
「ふざけてんのか、あんた!」
自分でもそう思うが残念ながら、うちの会長は大真面目なので、こんなふざけたことでも僕はまじめに取り組まないといけないんだよ。いたのは自殺青年だったわけだが、だからといってほって帰るわけにはいかない。下手をすると自殺幇助に問われそうだし、死ぬんならせめて自宅にしてもらおう。なによりこれから、部室棟に行くたびこいつの顔が浮かぶんなんてごめん被る。
「君さぁ、こんなとこで自殺とか迷惑だからやめようよ。明日も平日だから、皆登校してくるんだよ。落下死体とかトラウマだよ。警察や消防だって来ないといけないし、かたずけだって大変なんだよ。死ぬのは止めないからもっと人の迷惑のかからない場所、ほうほうでやってくれない?」
「あんた本当に何なんだ!」
青年は激昂する。そんな元気があるのなら自殺なんて考えずに元気で生きてほしいんですが。
「なんなんだといわれれば、幽霊撮影しに来た不法侵入者だよ。というか君はどうやってここに?」
僕のように合鍵でも持っていなければここには侵入できないと思うのだが。まさか、本当に幽霊とかではないだろうな、一応カメラにはバッチリ映っているが。
「屋上で誰もいなくなるまで隠れてたんだよ、もういいだろう、ほっといってくれ」
青年は吐き捨てるように言う。ちゃんと言ってくれる当たり素直な奴だなこいつ。
しかし、やはりここの警備を担当している警備会社は無能らしい。大学には新しい警備会社を探すことをお勧めしたい。
「だから、死ぬのならここ以外にしてくれ、下手したら僕も警察に事情聴取されるかもしれないし」
「アンタ止める気一切ないのな」
「赤の他人に命の使い方をどうこう言うほど僕は偉い人間ではないからな。大体、自分の命をどう使おうとそいつの勝手だと思っているからな。君が止めてほしいというのなら止めてやらんこともないが」
大体、僕の説得でこいつが自殺を思いとどまてくれる保障なんてどこにもないし、自殺の理由も知らないのに止められるわけがない。
命は大切とか、いいことがあるさ程度の一般論で止めるくらいの自殺なら最初からいしないでほしい。
青年はため息を一息つくと座り込んでしまった。ここでの自殺はあきらめてくれたのだろうか。
「もう、いいよ、どいつもこいつもふざけやがって。自殺なんてばかばかしくなってきた。そうだよなんであんな奴らのために俺が...」
なにやら一人でブツブツといいだし始めた、どうも自己解決したらしい。結局幽霊なんかいなかったが自殺未遂を止めれたということでよしとしよう。
あの会長ならこの話で満足してくれるだろう。そう、思い僕は屋上の扉に手をかける。
「あっ、そうだ君も一緒に...」
帰らないか?と言おうとしたがそれ以上は言葉は続かなかった。彼の様子が明らかにおかしかったからだ。目は大きく見開かれ頭を上に向けていた。何か目を奪われているように。呼吸は大きく乱れ、体は震えていた。
そしてそのとき、ヒューヒューという音が屋上に響いた。それは何かの生き物呼吸音のようであり、それとともに屋上には生暖かい風が吹いた。
おいおい、うそだろ?。あの会長の与太話が本当だったなんて。
僕は恐る恐る、目とカメラを青年が見ている方に向ける。そこにいたのは白い影だった、恐らく長い髪の様な物が見えるから女だろう。それが暗闇の中、空中に浮いていた。
僕はそれを確認すると青年の手を取り無理やり立たせる。
「走れるか!?」
そう聞くと青年は青い顔でうなづいた。それだけ聞くと僕は全力で走った。そのまま階段を駆け下り、一階まで走り抜けると扉を開けそのまま走り去っていった。
恐らく警備システムを切らないで扉を開けたので警報が作動しただろうが関係ない、あれから逃げるのが先決だ。監視カメラはないから多分大丈夫。そしてそのままキャンパスの外に出ると大学のある坂を駆け下りふもとのコンビ二に駆け込んだ。
幸いなことにあれが追いかけてくるとかそういうことはなかったが...みちゃったよ、死ぬの?死ぬの僕?こんなくだらないことで死ぬの?会長が予約したっていう祈祷寺の除霊が効くといいなあ。
そんなことを考えながら持っていたスマホでタクシーを呼ぶこんな時価では市バスも地下鉄も完全に止まっているからだ。
電話し終わると適当に飲み物を買ってそのうちの一つを青年に手渡す。
「大丈夫か、家は近いのか」
「御所の近くです。あなたもあれを見たんですか...」
「見たよ。幻覚や何かの見間違いだと思いたいけど君も見たということはそうじゃないよだな、はぁ...」
僕のため息と共に青年もうだなれる。どうと落ち込まさせてしまったらしい。といっても僕はここで場の空気を変えられるほど話術は持っていない。従って、沈黙するしかないわけだが....なにか話さないと耐えられない精神状態であるのもまた事実。というか何かを話してないとさっきの白い影がフラッシュバックしてくる。泣きそう。
「とにかくタクシーを待とうか、そういえば君、名前は?僕は白石剣児だ。」
「吉野卓郎です。あれがあなたが探してたとか言う幽霊なんですか?」
「わからん。多分そうだと思うけど。僕は霊能力者でもなんでもないからなぁ」
結局、話は続かずはタクシーがくるまでほとんど無言で過ごすしかなかった。別れる前に連絡先だけ交換し彼は家に帰っていた。
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翌日、会長に連絡をとるとすぐさま部室棟に来るよう呼び出された。
昨日の今日でこれだからあの暴君には困ったものである。そんなこんなでサークルのメンバーで昨日の僕が撮った映像を見ているわけだが。
「やっぱり何度見てもなにも写ってないわね。あんたの妄想と言わざる終えないわ」
御子がそう断言する。
まあ、わかっていましたがこうなるよね。実際問題、僕がみたものはカメラにはなにも写っていなかった。男二人が勝手に怖がって逃げ出してる恥ずかしい様だけが延々と写っているだけだ。しかも、最後の方はノイズもひどく音が聞き取れない。
「うーん、確かにこれだけじゃあ御子ちゃんの言うとおり白石君の妄想という可能性も否めないね」
オカルト肯定派の会長までこの調子だ。僕の頑張りはなんだったのか。と否定的な意見が出てくるなか工藤が疑問を呈してきた。
「とはいえ、二人同時に同じ妄想や幻覚を見るってあり得ますかね」
「集団幻覚というものがあるわ。あの時点で二人共幽霊の話を知っていた訳だし同じような幻覚をみた可能性は否定できないわ」
出ました、集団で超常現象を観測したときの常套否定句。確かにあれが幻覚という可能性は否定できないが。
「なんにしても現時点では確定できることじゃないね。とにかく、もう一人の証言も聞こうじゃないか。それにその彼も徐霊を受ける必要があるだろう」
そう言って会長は僕に吉野君に連絡してくるように促してくる。僕はスマホに登録した、吉野君の電話番号にかけるとコール音が鳴り響くものの出ない。その時だった、なぜか窓の方からAndroidの規定の着信音が聞こえた。
―――それにつられ、部室の窓をみると、僕は吉野君と
その意味に気付いた時には外から悲鳴が聞こえていた。
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吉野君は即死だった。屋上から転倒して落下死したのだという。警察が来て事故、事件の両面から捜査されたそうだが結局自殺と判断された。
僕はそのあと大急ぎで徐霊を受け、そのお陰か自殺することはなかった。
「もとから自殺を考えてたんでしょ、その子。思い直しちゃったんじゃないの」
御子はそんなことを言っていたが僕は納得がいかなかった。ほんの少ししか話さなかったとはいえ、あの時全力であの幽霊から逃げた彼がまた死を選ぶとは思いたくなかった。そして、これは僕に話を聞きに来た刑事から聞いたのだが――どうも僕の電話番号が登録されていたことから彼と最後にいたことがばれたらしい、幸い夜中に校舎に忍び込んでいたことはばれなかった――彼の遺書は見つかっていないらしいからだ。
僕の記憶が正しければ彼はあの時、駆け込んだコンビニで遺書を捨てていた。もし自殺を再び決意したとして彼が遺書を残さないものだろうか。
そして、その刑事から妙なものを見せられたのだ。それは一枚のA4のメモ用紙に書きなぐられた奇妙な落書きだった。中央には大きな顔がかかれていて、お世辞にも上手いとはいえない子供の落書きのようなものだったが、どうにも不気味で一度みたら離れない顔だった。
眉はなく目は不揃いの黒目でかかれていて鼻は一本線、口は歪んだ曲線で笑っているようにも怒っているようにも見えた。そして、周りにはびっしりと同じような顔が小さくかかれていた。不気味、気味が悪い、そうとしか言いようがないものだった。
刑事達に、見覚えがないかと聞かれたときは意味がわからなかった。どうもこれも彼の遺品だったようで状況から見て死の直前にかいたものらしく一応、関連性を調べているということだった。僕には自殺する人間の胸中はわからないが死ぬ前に書くものにはとても思えなかった。
それとこれは吉野君の自殺からしばらくたって会長から聞いたのだが実はあの屋上で白い影を見ていた警備員は結構いたらしい。だが、彼らが自殺していたという話はなかったという。
では、幽霊と自殺にはなんの因果関係もなかったのだろうか。しかし、そうとも言いがたい話も会長から聞いた。実はこの大学の警備を担当していた警備員が少なからず自殺していたらしい。警備会社はこの事を隠蔽しており、今回の事件で大学側から警備の不備を指摘されそれによって当局が動き発覚したようだ。他にも違法な残業やら、杜撰としかいいようのない管理体制や警備状況もバレ、今テレビでは連日その報道ばかりだ。
自殺した警備員たちは全て部室棟の警備になった後自殺したという。もし屋上と自殺に関連があるとするなら実は僕には一つだけ思い当たることがあった。
あの白い影をみたとき僕は彼が向いている方をみて白い影をみたから彼もそうだと思ったが、彼はあの時上を向いていた。そして、彼は一言も白い影をみたといっていなかったのだ。彼はあれをみたかと聞いただけだ。そして何よりも引っ掛かるのは白い影をみたとき影の後ろが
僕は屋上に入ったとき確かに京都のきらびやかな夜景をみたはずなのに。だとすればあれは暗闇などではなく...。
あの時、上を向いていた彼はあの暗闇の正体をみてしまったのだろうか。
もちろん、今となっては確かめるすべはない、いや、また屋上にいけば確かめることはできるのかもしれないがそんな勇気は僕にはない。
だから、この事は誰にもいっていない。
それに今までの推察だってただのこじつけだ。
冷静になって考えれば、吉野君は思い直して自殺しただけだろうし、警備会社の警備員達にだって過酷な勤務によって死に追い詰められたのだろう。少なくとも世間はそう判断している。
だから、この件これで調査終了だ。
会長や他のメンバーだって今は他の件に夢中だ。なにやら京都に潜むカッパを捕まえるのだと騒いでいる。だから僕もこの件を忘れよう。きっと世の中には
これは余談ではあるのだが、あれから気になって僕は自分が撮ったビデオをみなおしたのだがノイズの部分を何度も聞くと言葉のように聞こえることに気付いた。
「か....え....れ」
そう聞こえた。
そういえば、白い影をみたという警備員がいたということは、それは白い影をみた人間は死なずにすんだといことではないだろうか。
だとするとあの白い影に僕は礼をいわないといけないのかもしれないが、あれから僕はあの屋上には一切近づいていない。
一応、この後のプロットもあるので気が向いたら書くこともあるかもしれません