地球に選ばれた家族~夏季休業で帰省中、冬の駒王町に転移させられガイアメモリが生えてきた~   作:しゃしゃしゃ

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 原作第一巻、ちょい進んだあたりからスタート。
 side兵藤一誠でプロローグ的な前置きです。短いです。

塚土(おさむ)とは

 前回の3つの出来事。
 1つ! 『渦の団』が崩壊した。
 2つ! 元団員たちが脳改造手術を施される。
 そして3つ! 郷秋敏は塚土筬に変身(なりかわっ)た!



「旧校舎のディアボロス」
第1話「Tの異変/平凡な男子高校生、塚土筬」


 

 俺の名前は兵藤一誠。両親や学校の奴らは俺のことを「イッセー」と呼んでいる。エロくて有名なだけの、青春を謳歌している平凡な高校二年生!………だったんだけど、すこし前から俺の人生は丸っと変わっちまった。

 

 人生って言ったけど、今の俺は人間じゃない「悪魔」だ。

 

 忘れもしないあの夕暮れの公園で夕麻ちゃ―――堕天使に腹を貫かれて死にかけていたところを部長の力で悪魔として蘇らされ、命を救われた。

 

 部長の話では俺の中の「神器」が危険なものと思われて、殺されたって話だ。話を聞かされた時は「ふざけんな! 」って思ったけど、そのおかげで部長の眷属になれたって思うと複雑だ。

 

 自分が人間でなくなったってことは俺でも結構ショックだったけど、そんな気持ちも部長の言葉で吹っ飛んだんだ!

 

 「やり方次第ではモテモテな人生も送れるかもしれない」って!

 

 なんでも、部長たち悪魔は昔の大きな戦争のせいで数が減って、下僕を集めるようになったそうだ。俺みたいな「神器」を持った人間や、特殊能力を持ったやつを悪魔に転生させたりして。

 

 そんでもって、悪魔のお偉いさんはそんな転生悪魔にもチャンスをくれるようになったんだそうだ! ――力さえあれば、転生者でも爵位を与えよう、って!

 

 

 つまり! 俺でもやり方次第では爵位を貰って、ハーレムを作ったり! エ、エッチなことをしたりもできるかもしれない!

 

 

 ただの人間のままだったら夢に見ることさえできなかったハーレム! 女の子たちの群れ! おっぱいの楽園が、努力さえすれば実現できるかもしれなくなったんだ!

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ‼ 悪魔、最高じゃねぇか! 」

 

 

 話を聞いたときは、俺秘蔵のエロ本を捨ててもいいかもと一瞬思ったぐらいにテンションが上がっちまった。

 

 どうせ人間に戻れないなら、このまま悪魔としての人生、悪魔生を突き進むだけだ! と自分でも意外に思うほどあっさり状況受け入れちゃってさ。

 

 悪魔とか天使とか堕天使とか、普通なら馬鹿らしいと思ったかもしれないけど、実際に見せられれば信じるしかないわけで。

 

 なんたってハーレムを作れるんだから、悩むことなんて何もなかった。

 

 

 

「ハーレム王に俺はなるっ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう宣言したのが数日前。

 今の俺が悪魔として何をしているのかといえば、下積みを卒業して「仕事」を取り始めたところだ。

 

 「仕事」っていうのは悪魔の契約のこと。人間に召喚されて、契約を交わして願いを叶え、代価をいただく。

 悪魔ってのはそういう仕事をしてポイントを高めていくものらしい。仕事をしまくれば悪魔の王さまから褒めてもらえるって話だ。

 

 つまりデカい仕事――契約をとれば王さまから爵位を貰えるかもしれない!

 

 

 俺もデカい契約を取り付けて爵位を貰ってやる! ………って意気込んでみたものの、今のところ俺の契約数は0。

 

 今まで何回か依頼者さんに召喚してもらったものの、今のところ1人も契約できてない。

 

 というのも、俺は魔力が全然ないらしく、部長たちの使う転移魔法陣を使ってのジャンプができなくって、仕方なくチャリで依頼者さんの家に行く羽目になって変態呼ばわりされたり、ただ話すだけで、契約をとってこれなかったり。

 

 まぁ、依頼者さんからは「また頼みたい」とか高評価だったらしく、そこが逆に部長の頭を悩ませる原因になっているっぽいくて、俺としては申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

 

 俺、魔力も子ども以下で、肝心の「神器」もどうやって使えばいいのかわからないし、こんなんで出世なんてできるのかな………。

 

 

 

 

 

 ああ、やめやめ! 落ち込んでも何にもならない! 俺は俺にできることを精一杯やるだけだ! そのためにもこの「神器」がなんなのか知ることができればいいんだけど。

 

 

 神器といえば、アーシアは元気にしてるかな………。

 

 

 

 

 

 

 一昨日の下校途中に出くわした金髪美少女シスターのアーシア。なんでも町外れの教会に派遣されたんだけど、道に迷ってしまったらしく、俺としては困っている美少女を放っておくなんて考えられなかったから道案内することになった。

 

 

 悪魔になったことで俺は日本語以外の言葉も日本語として聞き取ることができるようになった。そのおかげで英語の授業ではいきなりペラペラになっとことを先生や周囲のクラスメイトから驚かれたけど。

 

 

 

 だからその時も俺には彼女の言葉が日本語で聞こえて、何に困っているのかも理解できたからな。俺が人間のままだったら、多分どうしたらいいかわからなかっただろうし、そこは悪魔になったことに感謝だな。

 

 

 で、道案内の途中で膝を擦りむいた子どもがいて、アーシアはその子に駆け寄ると手の平から淡い光を発してけがを治しちゃったんだ。

 

 あれは驚いた。あれが「神器」の力、特定の人間に宿る規格外の力ってやつなのか、って。

 

 

 

 俺の「神器」の力がどんなものなのかはわからないけど、確かにこんなすごい力が俺の中に宿ってるなら、俺も出世できるかもしれない。そんなふうに少し思ったけど、アーシアのどこか陰のある微笑みを見たら、「俺も神器持ってるんだけど、どうやったら使えるようになるかな? 」とか聞くのははばかられた。

 

 

 その後アーシアを教会の近くまで送り届けて、夜そのことを部長に話したらかなり怒られた。………すげえ迫力で、真剣に怒ってくれて、ビビったけど少しうれしかった。こんなに大事に思ってくれるなんて、俺本当にリアス・グレモリー部長の眷属になれてよかったって思ったよ。

 

 まあ、なんにしても―――

 

「そろそろ契約とらないとまずいよなぁ…」

 

「契約? 」

 

「のわっ!? 」

 

 突然呼びかけられて思わず飛び上がる。

 びびった………、ていうか俺今声出てたか。やばいやばい、気をつけないと。

 

 とりあえず息を整えて、声の方を見る。

 

 駒王学園の制服を着た男がリュックを肩に背負ってきょとんとした顔で立っていた。

 

 誰だ? と、そんなふうに怪訝な気持ちが顔に出ていたのか、そいつは爽やかな表情で俺に笑いかけてきた。

 

 

「どうも! 今日付けで復学となりました、駒王学園2年生、塚土筬でっす! 兵藤一誠くんだよね? よろしく! 」

 

「え、ああ、おう…よろしく? 」

 

 なんだこいつ。

 

 ん? 塚土筬…?

 

「あ! もしかしてずっと休んでた、塚土? 」

 

「YES! その塚土です! あっはっは、久々の学校で舞い上がっちゃってますね、私! 」

 

 ずいぶん、なんていうかエキセントリックなやつだな。

 

 

 

「病気だとか聞いてたけど、もういいのか? 」

 

「ああ、もう大丈夫。それでさ、僕四月の始業式の前から休んでたじゃん? 先生が色々教えてはくれていたんだけど、教室の場所とかわからないんだ。だから、連れてってくんない? 」

 

「おう、いいぜ」

 

「ありがとう! 助かるよ! 」

 

 

 塚土筬、ずっと休んでるからどんな奴なんだろうと思っていたけど、明るい奴なんだな。ちょっと意外だ。

 

 ………あと、良い奴だな。

 

 俺は結構馬鹿やってるから、女子からはゴキブリ並みに嫌われてるし、男子も一部の連中は「一緒にいると女子に同類かと思われる」って露骨に避けてきたり嫌な目で見てくる奴がいる。

 

 でもこいつは普通に話しかけてきた。確か聞いた話では一年の時は健康だったらしいから俺の醜聞も耳に入ってるだろうに。

 

 

 

 

 ん、よく見たらこいつけっこうイケメンだな。さすがに木場には劣るけど。

 

 ………イケメンっていい奴が多いのか?

 

 人は見かけだけではわかりませんね。イケメンの認識が俺の中で変わりそうだぜ。

 

 

 そうして歩いている間に校門の前まで来た。

 

「それじゃあ、教室に案内するからついてきて」

 

「はいよー」

  

 

 

 

 

 

 

 

(“主人公”とのファーストコンタクトは良好、っと)

 

(まぁ、本番は夜だ。ひとまず学園生活を満喫させてもらおうかな)

 

(………とりあえずブルマ女子を観察だな。ブルマとか僕の世代では絶滅してたもんな。本当にロマンすぎる。ありがとう! )

 

 







塚土筬(本物)
…駒王学園2年生。両親出張の一人暮らし(一軒家暮らし)。
 ラノベ主人公みたいな状況に、空から女の子でも振ってこないかと期待していたが一年間なにもなかった。
 つまんねーのー、と3月の下旬に買い物から帰ってきたところを郷秋敏に攫われ、“なり替わり候補”として脳改造を受けた。以降は病気といって学校を休んでいた。
 原作が始まったので、郷秋敏の学園生活のための仮の姿として、名前と顔と記憶と戸籍と、存在の全てを奪われて廃棄された。
 人づきあいが苦手で友達は一人もいなかった。休んでいる間に大体の生徒は自然と彼のことを忘れた。なので微妙にイケメン化してても誰も気づかない。
 ちなみに、両親は脳改造して確保済み(親との顔合わせとかあるかもしれないしね! 授業参観とか! )当たり障りなく出張先で働いてもらってる。
 

 主人公は自己改造と地球の本棚によるカンニングで、勉強関係は無敵です。






第2話「Tの異変/青春 二度目の高校」

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