地球に選ばれた家族~夏季休業で帰省中、冬の駒王町に転移させられガイアメモリが生えてきた~   作:しゃしゃしゃ

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 Over Quartzer見た。色々あるけど最高だった。
 ルシエド先生の補完考察短編も最高でした。




第2話「Tの異変/青春 二度目の高校」

 

 

―――駒王学園・男子トイレ

 

 

「(たまごまごまごまごひまごー)」

 

 適当なことを考えて頭を空っぽにして用をたす。

 

 しょんべんに意識を集中すると出なくなっちゃうからね。

 

 くっちゃべりながらじょろじょろ出来るやつの気が知れない。うん。

 

 ああいうの本当にむかつくよね。こっちが出そうと思って集中してるのにぺっちゃくっちゃぺっちゃくっちゃ………喋りたいならトイレの外で喋れっつーの!

 

 

 しっ…かも…っ、鏡の前で髪いじってんじゃねーよ! 女子かおまえは! っと、いけないいけない。そういう男女の偏見は駄目だ。

 

 ともあれ、静かに出して速やかに退室しろやという話ですよ。

 ただし手を洗わないやつ、お前は一体何なんだ。理解不能、理解不能。チ●コ触ったら手を洗えよ! ああ、気持ち悪い気持ち悪い。

 

 

 そんなこんな考えていたら出し尽くせた。

 ピッピッと振ってしずくを落としてごそごそ。

 

 

 もちろん私は手を洗います。当然です。

 石鹸も使います。当然のことです。

 

 手の平も手の甲も、手首も爪のところも丹念に洗います。

 

 

 え? はよしろって言ってたのに、そんなに手を洗ってていいのかって? 問題ありません。僕以外このトイレに人はいませんから。

 

 

 

 

 

 

 

 ここは駒王学園の奥まったところにある旧男子トイレ。

 利用者の大半は階段側だったりの新しいトイレに入るので、ここは穴場なのです。

 トイレはリラックスできるところでなければねッ!

 

 

 やっぱり女子高だった名残なのでしょうかね。この学校、男子トイレの数が少ない。

 男子の数の少なさだったり、回転率の違いだったりでまぁ、問題になるほどじゃないけど、やっぱり少ない。階によっては男子トイレのない所もあるからね。うん。

 

 登校一日目で気づいたこの学園の不便さよ。

 

 

 

 足音。

 

 そうやら僕以外の利用者が来たようだ。僕みたいに繊細ボーイなのかもしれんし、さっさと泡を流してトイレを出よう。

 

 

 新品のハンカチで手を拭く。

 繊細ボーイ(仮)とすれ違う僕。

 

 さて、昼食はどこで食べようか………。

 教室でクラスメイトと親睦を深めるってのもいいけど、やっぱり食事は一人で食べたいよね~。

 

 偉大なる藤子不二雄先生の短編でもあったけど、食事は性行為と同じようなものだし、せめて友人以上の関係でないと食事を一緒に取りたくはないにゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭の奥で違和感。通信が来る。

 

 

『呼ばれてなくてもジャジャジャジャーン♪ お父さんの頭の中に這い寄る混沌、ナイアルラトホテップこと、ナイちゃんだよ♪ 』

 

 頭の中に埋め込んだ、通信装置からうちの子の特徴的な甘ったるい声が伝わる。

 

(ナイちゃん、どしたの)

 

『どうしたって、挨拶の方? 通信の方? 』

 

(両方。こっちはお昼時だから適当に屋上に上がって昼飯をいただこうと思ってたんだけど? 何かあったの? )

 

『んっんー、何もないよ。“何もない”っていう、報告。あとは単純に私がお父さん成分を補給したくなったから! 』

 

  

 ムスコニウムとか系列だろうか。

 ………お父酸?

 

 

『それでそれで、お父さん、学園生活どんな感じ? 楽しんでる? 』

 

 んー………。

 

(順調だよ。特に問題もないし、“主人公”との縁も自然に結べたしね)

 

 実際、午前中はかなりいい感じだった。

 前もって、地球の本棚でクラスメイトの個人情報漁っておいたおかげで名前も好みも、何もかも把握できてたから会話も戸惑うことなかったし、話をするときもちゃんと相手の名前を呼べた。

 

 いやー、ほんと地球の本棚さまさまだわ。これがあれば、うっかり名前を忘れても再検索で楽勝だし、会話のストックも尽きない。

 

 

『主人公…ねぇ…本当にあんなのが? 』

 

 ナイちゃんの声に呆れのような感情が乗る。

 

(あんなのでも、主人公なの。夢世界で見せたでしょ。ハイスクールD×D第一巻の表紙にリアス・グレモリー、アーシア・アルジェントの両名と共に乗っかってたでしょ。まだ信じられない? )

 

 彼女たち幹部勢には、子どもの時に「世界の秘密」について話してある。でもまぁ、なかなか信じられないようで。

 

 

『信じる信じないじゃなくてさー………。あんなのが主役とかイヤなの。ねぇ、本当にあんなよわっちぃゴミクズが? 』

 

(ゴミクズ言うない。甘く見るなっての。今はそりゃ、僕にだって敵わないほどよわっちぃいけど、一月もすれば抜かれるし、一年ぐらいすればナイちゃんも敵わなくなるかもだよ)

 

『………信じられなーい! 』

 

 

 と、まぁこんな感じで我が最愛の娘たちは脅威を脅威と認識してくれないのである。彼女たちは悪魔らしい悪魔だから、生まれつきの実力に驕って敵を見下し侮る習性があるのだよね、悲しいけど。

 

 ………信じられないのも分かるけどね。常識的に考えて、普通の学生だった奴が一年とかからず異形実力ランキングで上位にランクインするとかわけわからんよね。僕もそう思う。

 

 

『………本当にそんな強くなるなら今のうちに殺しちゃえばいいのに』

 

(だーら、言ったでしょ? 殺しは駄目。つまんないからね)

 

 そう、つまらない。僕と僕の勢力にとって、今の原作主要キャラをぶっ殺すのは簡単なことだけど、もったいないから止めている。止めて、って言えば止まってくれるのは娘たちの良い所。

 

 

(確かにこの世界は原作主人公でしか解決できない危機や問題は存在せず、彼らを排除したところで世界が詰むこともないけれど………彼らがいた方が都合がいいんだよ、何かとね)

 

『ぶー…まあ、わかったよ』

 

 

 都合がいいというのは原作知識的にということ。ナイちゃんもその有用性をわかっているからそこまで食い下がることはない。今までのはちょっとした不満によるじゃれつきだったんだろう。可愛いものだ。

 

 

 

 

 

『あ、そうだ。ねぇねぇお父さん、話は変わるんだけど』

 

(ん? なに? )

 

 教室に寄って、弁当をとり、良い感じに一人になれる場所を検索する。場所から紐付けて、人が来ない感じの穴場スポットをーっと。

 

 

『言い忘れてたけど、才古銃ってさ、まだ未完成だからデータ取りとか継続してやってんのさ』

 

(………)

 

『それでね? どのメモリのデータがダウンロードされたかとか、情報送られてくる仕組みになってるの』

 

(………)

 

『………「アイズ」と「インビジブル」のメモリが使われたみたいなんだけど…? ねーお父さん、なにに使ったの? 』

 

(それは…)

 

『んー? それはー? 』

 

(あー…うー…あー…)

 

 

『おとうさん』

 

(はい のぞきました。すみません! )

 

 

 精神的ドゲザ状態。

 僕はド畜生ですごめんなさい。

 

 

 …授業中、日本史の授業の先生が話し方クソつまらんかったから、ついうっかり、出来心でやってしまったんだ………。浮遊義眼と透明化能力のコンボによる NO☆ZO☆KI。

 

 机の正面下に潜り込ませチラチラ。

 覗きに集中しすぎると不意の動きに対応できないからスリルもあって楽しかった。

 パンツは正直オマケだったけど楽しい楽しいだった。

 

『………』

 

(…言い訳をさせてください)

 

『どーぞ』

 

(あれはロマンだったんだ)

 

『ロマン? 』

 

 そう、ロマンだったんだ。

 

 机の下から覗く女子高生のパンツ。それはロマンなのだ。

 僕らの安田くん*1もそう言ってる。

 

 断言しよう。よこしまな感情などひとかけらもなかったとッ!

 

 僕は単純にシチュエーションに萌えていただけだとッ!

 

 そもそもどんなパンツ履いてるかは本棚で検索済みだし。そういうのじゃないんだよ。エロ目的じゃなくてね?

 

 そうだね、青春と言い換えてもいい。僕の青春が溢れてしまったっていうだけ!

 楽しかった! 机の下に配置して「股もーちょい開けやァ! 」ってやるのも、「うおおお! ギリギリだァ! あっぶねぇ! 接触したらさすがにばれるぜ、わっはっは! 」ってやるのもマジ最高に楽しかった。

 

 これぞ青春。

 アホやったりバカやったり、後々思い返せば黒歴史な行為に全力で取り組む! これぞ青春……これが青春だ!

 

 思いっきり視姦させていただきました! ごっつぁんです!

 やっぱ花のJKは最&高! まぁ、一号には遠く及ばないがな!

 思わず神に感謝しちゃったっつーの。この世界神死んでるけど!

 

 

 

『………べっつにー。私はお父さんが覗き魔だろうがラブだけどー』

 

(正直すまんかった)

 

 謝るときは謝る。

 青春が暴走したと言い訳したいところだけど、そうしたら機嫌悪いままだし。形だけでも謝ったほうがいい。

 

 ごめんなさい したという事実が重要なのだ。

 

 

『ん。許したげるっ。お父さん私で良かったね~。気づいたのが初ねぇだったら………? 』

 

(バイオハザードだな。うん)

 

 

『えへへへ』

 

(いきなりなんだよ)

 

 唐突に笑い声が響くとびびる。

 穴場スポットも検索完了したし、そろそろ昼飯にしたいんだが。

 

『んー、お父さんがおかしくて』

 

(え? )

 

 瞬間視界にノイズが走る。

 

 暗闇。

 

 見えない。

 

 目は開いているはずなのに、暗闇が晴れない。

 

 

(なにを)

 

『えへへへへへ。まったくお父さんったら♪

 パンツが見たいなら言ってくれればよかったのに』

 

 あ、まずい。

 怒ってる?

 

 

『えっと、こうかな? 』

 

 視界が開ける。

 目の前には黒と肌色のコントラストが、

 

 ってこれ

 

(ナイちゃん)

 

『あ、映ってる? お父さん見えてるー? 私のおパンツ』

 

 見えてる見えてる。

 

 むっちむちの太ももから きわきわな鼠径部から、むちゃくちゃいい感じの黒パンツが見える。

 

 今日の服装は下着オンリースタイルですかナイちゃん。

 父親(ぼく)だからいいけど、はしたないですわよナイちゃん。

 

 

 目を閉じてもおパンツ様が見える。

 

 というか、それしか見えない。

 

 眼球を動かしても視線が揺れてくれない。

 

 

 

(視界ジャックですか、ナイちゃんさん)

 

『イッエース! 今お父さんの視界は私の発明品「ハチ撮リくん」のリアルタイム映像と同機してるよ。

 さぁ、お父さん! 私のパンツ好きなだけ見ていいんだよ! 』

 

 

 強制じゃねぇか。  

 それはともかく前が見えねぇ。

 

 

(ナイちゃん戻してくれない? )

 

『えー? パンツみたいんでしょ? 』

 

 あ、これは怒ってるやつですね。

 拗ねてますね。

 分かります。

 

 これはすぐには戻してくれませんね。

 

 仕方がないので、視覚以外の感覚を底上げし補う。

 

 道順は地球の本棚(あたまのなか)にある。嗅覚と聴覚と肌の風読みで他の生徒をよけつつ進もう。

 

 

 

(いやー、嬉しいなぁ。ナイちゃん最高だよ! )

 

『いやーん♪ お父さんのえっちー』

 

 

 きゃっきゃっきゃっきゃっとわざとらしく喜ぶ彼女にこちらもやや大げさに合わせ、しばらく茶番。

 

 

 

 

 

 その後、昼休みが終わっても視界ジャックを解除してくれなかったので、娘のおパンツを瞼の裏に映しながら午後の授業を受ける羽目になった。

 

 先生に当てられた時は焦ったけど「わかりません」で乗り切った。屈辱。

 

 

 


 

 

 

 

 塚土家。

 学園から徒歩15分ぐらいの場所にある一軒家。

 少し前まで本物の塚土(おさむ)が暮らしていた家。

 

 

 今は僕の第二の家。

 

 つっても僕が暮らしてるのは一号がいるアパートが主で、この家には“塚土筬”にジーンで変身させた作業員を置いているんだけどね。

 今日は特別に僕がいる。

 

 

 なぜかっていうと、

 

 

―――ピンポーン

―――こんばんは! 悪魔グレモリーの眷属のものですが!

 

 

 予定通り。

 

「兵藤? くん? 」

 

『え? 』

 

 

 がちゃりと扉を開けて顔を出す。

 

「塚土…? 」

 

「兵藤…悪魔って」

 

 

 自分でも白々しいと思うが、驚いたような演技。

 まぁあっちも驚いているしバレることはないだろう。

 

 さて、こっからだ。気合を入れろ。

 

 

「………とりあえず、中にどうぞ」

 

「あ、お邪魔します」

 

 

 

 “契約”を通じて主人公組に組み込ませてもらう。

 

 全ては 敗北の運命(ほし)から逃れるために。

 

 

 

 

*1
「くそっじれってーな俺ちょっと やらしい雰囲気にしてきます‼」で有名な僕らのHERO




 『保健室の死神』なんだかんだめっちゃ好きだった。鈍ちゃんさんエロかった。

 次回、悪魔眷属イッセーと改造人間オサムの話し合い。
 第3話「Tの異変/変…身…!」
 

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