地球に選ばれた家族~夏季休業で帰省中、冬の駒王町に転移させられガイアメモリが生えてきた~ 作:しゃしゃしゃ
学校の授業が終わって表向きの部活も終了した夜、俺こと兵藤一誠はいつも通りチャリに乗って依頼者の元に向かっていた。
チラシ配りで鍛えられた端末捌きで携帯悪魔機器を操って俺を呼んだ人間の家に急いで向かう。
学園からそう遠くない場所で良かった。あんまり待たせると依頼者を怒らせちまうかもしれないしな。
………ひょっとして、部長がそういう依頼者を選んで仕事を回してくれているんだろうか。部長! 使えない眷属で本当にすいませんッ!
ドアの前に立って呼び鈴を鳴らす。…呼び鈴を鳴らす悪魔ってなんだろうな。
俺もできることなら魔法陣からシュイーンって召喚されたいもんだ。
少ししてインターフォンからが反応した。
「こんばんは! 悪魔グレモリーの眷属のものですが! 」
自分でも説得力がないと思うけど、こういっておかないと相手側も学生が間違えて鳴らしたとか思っちゃうかもだからな。
『兵藤? くん? 』
「え? 」
つい声が出る。俺の名前、なんで?
ガチャリとドアが開いてこの家の住人――今回の依頼者――が顔を出した。
「塚土…? 」
顔を出したのは、クラスメイトの塚土筬だった。
もう夜だから制服は脱いでいるしラフな格好に着替えているものの、間違いなく俺が今日 登校途中に出くわしたイケメンだった。
「兵藤…悪魔って」
こういう場合、どうすればいいんだろうか。
部長に報告?
記憶を消したりするのか? いやでも俺はそういうのできないし、色々するうちにこいつがネットとかに挙げたりするかもしれないし。
「………とりあえず、中にどうぞ」
「あ、お邪魔します」
とりあえず、玄関先でどうこうもないし、入ろう。
部長に報告とかは、後で考えるっきゃないな。
玄関で靴を脱ぎ、塚土について廊下を進み、俺はリビングに通された。
塚土は飲み物の用意をすると言ってキッチンに向かった。一応監視のような真似はしているが、キッチンの向かいで携帯とか使われていたら気づけない。
「なぁ、兵藤…くん」
「兵藤でいいぜ…えっと、塚土」
「そっか、なら兵藤。紅茶? コーヒー? 」
「えーっと、それならコーヒーで」
「了解。ちょっと待っててくれな」
会話が止まる。
きょろきょろと部屋を見回す。
………普通の家の普通の部屋だ。なんていうか、感じのいい…ホッとする雰囲気の。
黒いのは、あれピアノか? でも、ピアノにしては色々モノ置かれすぎというか…ピアノの上に写真立てやボトルシップ、赤いポストのような貯金箱、色々乗っていて騒がしい。
写真………そういえばこの家、親はどこにいるんだ?
「塚土、大丈夫なのか? 親御さんとか…」
「んー? ああ、大丈夫。俺一人暮らしだから」
「え、マジで! 一人暮らしなのか?! 」
驚いてデカい声を出してしまった。
「しー、もう夜だし静かに」
瓶から出した豆をくるくるするやつで粉にしている塚土は人差し指を唇にもっていって注意。
「わ、わりぃ…」
「まぁこの家しっかりしているから今ぐらいの声ならもれないんだけどね。
で、両親の話だけど、二人とも仕事でね。中学生の頃からこっちは一人暮らし」
「へぇー」
なんか、羨ましいような…でも本人がどう思ってるかはわからないし話題にしちゃいけない話題だったか…?
「いやー、好きな時に好きなモノ食べられるし、風呂も入り放題だし、エロいもん見てても親がノックなしで入室する危険も皆無だし、サイコーだぜ! 」
「ぶはっ! 」
思わず吹き出す。
塚土お前、そういうキャラだったのかよッ!
「おっと、学校とキャラが違うから戸惑ったかな? 」
「当たり前だろ! 」
「はっはっは。仮面を被っていたに決まっているだろう? 休学していた分、好印象を与えないとクラスに馴染めないと思ってね」
お、驚きの真実………。
人当たりが良いうえに、頭も顔もよくて復帰初日から先生にも評判良い感じのこいつにそんな秘密があったなんて…。
「ぶっちゃけ、初日でもう仮面被るのキツイなーと思ってたところだし、まぁこれで貸し借りなしでいい? 」
「は? なんのことだ? 」
貸し? 借り? …朝の案内のことか? あんなのべつにいいってのに。
「秘密の話。こっちは兵藤が悪魔だってこと。そっちは僕が仮面を被っているってこと。不可抗力とはいえ秘密を知っちゃったならこっちも明かさないとフェアじゃないでしょ? 」
違った。
秘密か………そうなのか…?
そういうもんなんだろうか…。理解はできるけれど…。なんか、やっぱり変わったやつだな。
それから少ししてコーヒーを二人分持って塚土がリビングに戻ってきた。
「はい、どうぞ。砂糖とミルクはお好みで」
「ああ…サンキュ」
…そういうけど、塚土は手をつけずにブラックで飲んでいる。それが一番ってことなんだろうか。
なんかめちゃくちゃ凝ってたし、多分そのはずだ。
カップを持ち上げて、匂いを嗅いでみる。
(いい匂い…)
朱乃さんの入れてくれたお茶と同じぐらいうまそうだ。
ずずずっと一口、
「ぶっ! 」
まずっ!
「くっくっく、大丈夫? 」
こいつ!
「なんだこれ! こんなひどいの飲んだことねぇぞ」
「おいおい、出されたものにひどい言い草だな。そう言われることは分かっていたけどね。お父さんもお母さんも僕の入れたコーヒーはまずいって酷評してたし」
なんてやつだ。
「………お前は平気なのか」
「ん、平気だとも。僕は僕の入れたコーヒーが嫌いじゃないし、これはこれでいい味してると思うんだけどねー」
信じられないがマジのようだ。
悪いけどブラックは無理だ。砂糖とミルクマシマシで飲もう。
「さて、それじゃあ本題に入ろうか」
塚土がカップを置いてこちらをじっと見つめる。
「まず兵藤。お前は僕が召喚した悪魔ってことでいいんだよな? 」
「ああ そうだ。信じてもらえないかもしれないけど」
「いや、信じるよ。召喚のチラシ、調べたけど発信機とかそういうのは何もなかったし、悪魔でないとしたらタイミングが良すぎる」
「おお…」
信じてもらえた…! 悪魔っぽいこと何もしてないのに!
「それに、悪魔グレモリーの眷属…リアス・グレモリー先輩も悪魔ってことだろ。なら納得だ」
「え、お前部長が悪魔だって知ってたのか!? 」
「いやいや、知らなかったよ。家名が悪魔とは攻めた家だなとは思っていたけどね。あの美しさも、高貴なオーラも悪魔というなら納得だ。
それに“部長”か…確かオカルト研究部だっけ? なるほど部長がリアス・グレモリー先輩で、他の部員は眷属ってことね」
……………!
なんなんだこいつ…! さっきまで抜けたところを見せていたのに感がいいとかそういうのじゃ、
「―――まぁ、べつにそれはいいんだけどね」
「え? 」
「だから、うん。誰が悪魔とかそういうのはいいってのさ。『あなたの願いを叶えます!』ってチラシの文字に偽りがなく、悪魔という超常の生物が存在しているのなら、ね」
「………ああ。代償を払ってもらえるなら悪魔として願いをかなえられる…はずだ」
「はず? 」
「うっ…いや、あのさ、俺…実は悪魔になりたてで、契約のこととかも詳しくは知らないんだ…」
「ふーん…まぁいいや。相談料とか言って魂や寿命をぶんどったりはしないよね」
「そんなことはしねぇよ! 」
「ならいいか」
そう言うと塚土はソファに座り直して態勢を整えた。
相談内容…一体何なんだろう。
願いがあるようには見えないんだけど………。
「僕の願いというのは、兵藤。僕のルーツを知ることなんだ」
ルーツ…?
生まれ、親のことか? それならそういうのを調べる研究所とかに…。
「違う、違うんだよ兵藤。僕が知りたいルーツってのは生まれのことでもあるけどそうじゃない。親の浮気とか、本当の親とか、そういうことじゃない」
俺の考えをナチュラルに読んで否定すると、塚土は上を向いて話し出した。
「………。初めは、ちょっとしたことだった。
夜中に、ひどい爆音が鳴り響いた気がして飛び起きたんだ。けどそんな音は近所の人の誰も聞いていなかった」
? いきなりなんなんだ………?
「ささいなことだよ。うん…些細なことが始まりだった。
学校に行こうと靴を履いた時に、全身が激痛に襲われた。制服や下着や靴下の繊維一本一本が皮膚を削るような、激しい痛みだった。
そのあとも、ふとした瞬間に異常なほどキツイ匂いを感じたり、目が良くなりすぎて失神したりした。感覚の暴走が始まったんだ」
「………」
「暴走の感覚が早まる前になんとか、救急車を呼んで入院した。大仰な検査を受けて、結局原因は不明。麻酔を打ってもらって、それでも止まらなかった。その頃には声を出すだけで耳やのどが死にそうになるからひたすら耐えた。耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、そうしてようやく制御ができるようになったんだ」
「塚土…」
ずっと休んでいたのは、そういうことだったのか。
でも、それは、つまり………どういうことなんだ?
何かが、目覚めたってことなのか?
「そして、ついこの間。決定的なことが起きた」
言いながら塚土は立ち上がった。
「決定的なことというのは、ありえないことということだ。感覚の暴走は、原因不明なれど、異常なれど、あり得ることだと納得できた」
「塚土!? ちょ、おまえ! 」
喋りつつ服を脱いでいく! お前なにするつもりだよ!
「あ、悪い。つい気分が盛り上がって…ここじゃまずいな」
上着を脱ぎかけた状態で塚土が部屋から出ていく。
「………」
『それでな、こっからが願いに関係するところなんだけど』
扉の向こうから声が聞こえてくる。
もしかして脱いでいるのか…?
おいおいおい! まさかあいつソッチの趣味があったのか?! そういうことなのかッ?!
『違うからね。僕は普通に女の子が好きだし。おっぱい最高。
脱いだのは“変身”のコントロールがまだうまくいかなくて、服が破れるかもしれないからさ 』
“変身”?
「うん、まぁ、百聞は一見に如かず。それじゃあ見てもらおうかな」
そう言ってドアの向こうから現れたやつは下半身にタオルを巻いただけの状態だった。
分かりやすく言わないでも全裸。多分!
こいつ綺麗な体してんな………じゃなくて‼
「おいおい、ちゃんと説明してくれよ! 」
俺にそういう趣味はねぇ!
ぶ、部長! 朱乃さん! 小猫ちゃん! 木場! 助けて‼
「だから違うってば…
フゥー………、変…身…! 」
塚土がまるで特撮のヒーローのようにポーズをとる。
次の瞬間、塚土の体が蠢き文字通り『変身』していく。
筋肉が膨張し、鱗が全身を覆い、瞳が赤く染まり、爪や尻尾が生えていく。
さっきまでの塚土筬の面影はどこにもなく、そこにいるのは巨大なトカゲの怪物だった。
「な………な……」
「まぁ、こういうわけだ」
いやいやいや、こういうわけってどういうわけ?!
「んー。見て分かる通り、怪物に変身する力が僕の中に目覚めちゃったわけなのよ。あんだーすたん? 」
パクパク口を開いて声を出す塚土。
声は変身? 前と同じだ。
めちゃくちゃ違和感……なんだろう、牛乳だと思ったら豆乳だったみたいな…。
「この通り、ヘビっぽい化け物に変わることができるようになってな、見た目通り力も上がったし、それは別にいいんだけど、いい加減この力が何によるものなのか知りたくって」
「知りたい? 」
「うん。だってさ、不安じゃん。感覚・肉体とどんどん人間離れしてきて、そのうち精神とかまで人間離れする可能性がないとは言い切れんし、この変身だったりが寿命とかそういう命のエネルギーを消費して行われている変化で、身体を変換するたび細胞の交換が行われテロメア消耗とか、テラフォのM・O手術みたいなさ」
「M・O手術? 」
「ああ、こっちの話。ともあれそういう訳なんだ」
びっくりしてそれどころじゃなかったけど、そうか。
「なぁ塚土、それってもしかしたら神器ってやつかもしれないぞ」
「? セイクリッド・ギア? 」
それから俺は塚土に神器の説明をしてみたものの俺じゃ持っているのかどうか見分けられないと気づきまして、話し合った結果、部長たちに判断をゆだねることになりました。
帰ったら部長に報告だな…。
そうして塚土家を後にしてチャリで学園に。
はぁ……また契約とれなかったなぁ…。
コーヒーがまずいのはわざとです。おやっさんリスペクト。
この後兵藤一誠くんはフリードに撃たれたり、「アーシア!」したりしました。
→そのリアルタイム映像(冠ちゃんのゴキブリ監視網+メモリー・ドーパント映写怪人)を郷秋敏は家族でゲラゲラ笑いながら見て鍋パーティーしました。
↓からの次回。
第4話「Tの異変/人を外れたもの」