なぁ、空から女の子が降ってくると思う?
俺は思いたいね、だって例のあのネタができるだろ?
親方ー!空から女の子が!!って具合にさ
でも俺が想像してたのはこんな状況じゃなかった。
後ろを向いてみるとUZIを乗っけたセグウェイが一定の距離を保って
え?ひとりじゃないのかって?そうだ、結論から言うとひとりじゃない
「ハァッ!!ハァッ!!」
俺の隣で満身創痍に息を荒らげているのは元
確か今は
こんなことになるとは朝の俺は思いもしなかっただろう。
時は一時間前にさかのぼる。
久しぶりに二度寝しなかった俺は朝のシャワーとストレッチを終えて着替えたところだった。
トーストを焼こうとしたところで、インターホンが鳴った。
玄関先にいる人物には悪いが、少し待ってもらおうと、コーヒーを淹れていると
「ご主人様、リベルテです、朝食を作りにまいりました。」
少しの沈黙ののち、俺はコーヒーをコップに注いだ。
「ご主人様、まだ寝てらっしゃるのですか?開けますよ?」
ガチャと男子寮の重々しい扉が開く、そこから現れるのは、俺のメイドで
メイドらしい静かな足音でリビングに入るなり、すぐに俺の淹れたコーヒーとトーストを取り上げた。
「ご主人様、朝食作りは私の仕事でありご主人様がすることではありません、それに最近外食のしすぎで栄養が偏っています。なのでより一層私の作る朝食を食べてほしいのです、お願いできますか?できますよね?わたしのご主人様ならわかってくれるはずですだってご主人様は私を唯一わかってくれますご主人様がいないと私は生きる意味がありませんだから私の生きる意味を奪わないでくださいご主人様...ごしゅじんさまぁ...」
「うん、それはわかるんだけどさ、ベレッタを俺のこめかみに突き付けないで、冷たい」
俺のこめかみに突き付けられているのはベレッタM92、イタリア生まれの世界的に有名なハンドガンだ
ていうかさ、メイドが主人に銃向けるってなんなんだろう?主従ってなんだっけか...ていうかハイライトのない目で見つめないでもらえるかな、ゾクゾクするから
「ご主人様が何度言っても聞いてくれないのが悪いんです、ご主人様がおとなしく私の料理で胃を満たしてくれればそれで済む話なんですよ?」
本人はこう言っているが実際はそれでは済まない、最初のころにこいつの料理を美味いと褒めて息が苦しくなるまで食わされ続けたのはいい思い出だ。
未だに夢に出てくるレベルだ、しかも無駄に美味いぶん怒る気が失せる
「ところでご主人様、刀のメンテナンスはしましたか?防弾制服は?ナイフは何本持ちましたか?」
俺は部屋の隅にもたれかかっている刀、銘を
「手入れは十分だし、防弾制服も見ての通り着てる、ナイフは・・・今ちょうど切らしてるから放課後にでも調達する。」
俺がそういうとリベルテはふむ、というように下唇に手を当てる、不思議と俺の視線はその艶やかな下唇に集中してしまうが、これでも男だ、仕方ないだろう
その後俺は結局リベルテの朝食(白飯と鮭のグリル)を食い、登校の準備をした、武偵高はここからだとバスに乗らないと確実に間に合わないので早めに出発したいのだが今日は運が悪かったらしく、バスに乗ることができなかった。
なのでチャリに乗りもうダッシュして学校に向かっていた。
「あ、キンジ」
「あ、ってなんだよ、ところでお前も遅刻組か?」
根暗なキンジにしては珍しく饒舌に俺を煽ってくる
「まだ遅刻はしてないから大丈夫」
「どうだかな、そういえばメイドはどうした?」
「いつの間にかいなくなってた」
そう、俺が食い終わる頃にはリベルテはとうに居なくなっていた、これじゃメイドじゃなくて忍者だ
「お前も大変だな」
「お前のところの白雪さんほどじゃないよ」
キンジは確かに、というように頷いた
あの子だいぶキンジに惚れ込んでるからなぁ、ちょっとヤンデレ気味だし
そんな特に面白味もない話をしていると後ろから何かが聞こえてきた
『その チャリには 爆弾 が 仕掛けて ありやがります』
『チャリを 降りやがったり 減速 させやがると 爆発 しやがります』
『助けを 求めては いけません ケータイを使用した場合も 爆発 しやがります』
とまぁ今までの経緯はこんなところだが・・・
なんで俺が爆弾仕掛けられないといけないんだよ・・・
確かに昨日は麻薬取引やってたマフィアのグループを壊滅させたり(やり方が雑すぎるって蘭豹に怒られたが)そのマフィアと取引してたヤクザのグループにちょっと注意しに行ったけども
「和正、お前の刀でどうにかできるか?」
「無理だ、セグウェイをどうにかできたとしても爆弾の解決方法がない」
正直、軽く詰んでいるナイフは今ちょうど持ち合わせがないし、刀じゃ爆弾を取り除けない
俺がそんなことを考えていると、もうすぐ通り過ぎるであろうビルの屋上に小学生、いや、ぎりぎり中学生にも見えなくない背丈の、おそらく少女が俺たちを見下ろすように立っていた、髪はピンクに染まっており地面まで着くんじゃないかというくらいに長いとも思ったが彼女の背丈が小さいため、ひょっとするとそこまで長くないのかもしれない。
そして信じられないことに、種類まではわからないがスカートからチラ見させている太ももの部分に黒と銀の銃が見えた、ということは少なくとも彼女は武偵であるということになる、おそらく俺たちの救援に来てくれたのであろう。
そしてもう一つ信じられないことに、その少女はおそらく5~6階はあるであろうビルの屋上から
「バカ!!来るな!!このチャリには爆弾が!!」
「そこのバカ2人!!伏せなさい!!」
ズガガガガガガ!!!
キンジの制止に見向きもせずその女の子はなんとパラシュートを開き頭をこちらに向けたまま2丁の銃で俺たちを追っていたセグウェイを撃墜した。
ただ、セグウェイを壊したところで状況はあまり変わらない、チャリに爆弾が仕掛けられているんじゃ脱出もできない
俺たちはそのまま第二グラウンドへ入った
先ほどの女の子も今はキンジのチャリに乗っている
グラウンドの半ばほどで少女がチャリから降り、俺たちはUターンする。
これによって俺たちは少女と向かい合わせに走っていることとなり、つまりそういうことだ
少女の意図を理解した俺たちは全力でチャリを走らせそして―――――
「痛ってぇ・・・」
「やっと気づかれましたかご主人様・・・よかったぁ」
と心配そうに顔を覗いてくる。
その目はどこか儚げで、今にも溶けてしまいそうなほど弱弱しかった
「あぁ・・・そっかチャリジャックに遭って・・・そういえば遠山は?」
「ご安心を、あの後何台かのUZI付きセグウェイに襲撃されたようですが、
「それはよかった」
俺はよくこっちには襲撃してこなかったなと思ったが、後から聞いた話によると、リベルテ一人で五台ほどのセグウェイを一瞬にして撃破したという
さすがは
ちなみに俺は
「そういえば、リベルテ」
「はい、なんでしょうか?」
「今・・・何時だ?」
「・・・もうすぐお昼でございます」
今日は・・・休むか
かくして、二年生になる初日の今日、俺たちは完全に学校をさぼったのだった
(ちなみにリベルテは俺が休むと言ったら勝手に付いてきた)