ダンジョンで混じり子が戦うのは間違っているだろうか?   作:にわかDRPGプレイヤー

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第3話

「まずは腹拵えから」

 

 ホームから出たウィズはそのままダンジョンに向かうと思いきや、軽食を求めて店を探していた。

 もとより常人より食事の量が多いウィズがおよそ一日の間気絶していたのだから空腹をおぼえるのは当然であった。

 元レベル1冒険者としては膨らんでいる財布にものを言わせて軽食を買い漁り、そのまま胃の中へと運んでゆき、漸く空腹が収まったところでダンジョンへと足を向けたウィズの視界に飛び込んできたのは山盛りの食料を運ぶアイズ・ヴァレンシュタインであった。

 

 アイズがウィズを知っていたのと同様、ウィズもアイズのことを知っていた。

 その理由は、オラリオの中でもひと握りの高レベル冒険者にして最短記録(ワールドレコード)()()()()()人形姫というアイズの知名度によるものであり、朝が早すぎる鍛錬の開始によって鍛錬場に二人きりになることが多かったから――などという理由ではなかったりするのだが。

 

 空腹が収まったとはいえ満腹ではなかったウィズは人形姫とも称されるアイズが頬を綻ばして口に運ぶ料理に興味を持ち、アイズが来た道へ寄り道をすることにした。

 

「じゃが丸くん……」

 

 ウィズがたどり着いたのはじゃがいもを潰して形成し、揚げたものが売られている店だった。

 掲げられてるメニュー表を見るに、アイズの持っていたのは小豆クリーム味という如何にもゲテモノといった感じのものだと推測できた。

 

 しかし店から漂う匂いは実に食欲をそそるものであり、地雷のようなトッピングメニューさえ避ければアタリの部類だとウィズは考えた。

 

「すみません。じゃが丸くんプレーン味と――」

 

◆◇◆

 

「買ってしまった……」

 

 やけに胸を強調する布地の薄い服を着ていたツインテールの少女のゴリ押しにより、プレーン味を基本として様々な味を購入することになったウィズであったが、その中には当然のように小豆クリーム味も混ざっていた。

 じゃが丸くん自体そこそこの熱量を持つ料理である。クリームなど直ぐに溶けてしまうだろう。

 

「――ええい、ままよ!」

 

 クリームが溶けてサクサクだろうじゃが丸くんの食感が崩れることやプレーン味がクリーム味になることを恐れたウィズは、最初に小豆クリーム味を頬張った。

 アツアツのじゃが丸くんと冷えたクリームによって口内が凄いことになったがウィズであったが――

 

「あれ、意外と美味しいか?」

 

 僅かに塩味を感じさせるじゃが丸くんと甘い小豆とクリームは見事に調和し、ウィズの舌を唸らせた。

 これならば人形姫が頬を綻ばせるのも頷けると理解したウィズは小豆クリーム味をひとつだけしか買わなかったことを若干後悔しつつ様々なバリエーションのじゃが丸くんを口へ運んだ。

 

 ウィズは小豆クリーム味の次にじゃが丸くんの中にレバーを入れたものを、その次にプレーン味を気に入ったようだった。

 その他の味も十分に美味しかった訳ではあるが、プレーン味を超えるものはなかったため、今後ウィズがじゃが丸くん買う場合はこの三種類から選ばれることになるだろう。

 

 露店区域の出口にあったゴミ箱にじゃが丸くんの容器を捨てたウィズはそのままダンジョンへと潜り、ミノタウロスが遺した刀を抜いて下層へと続く階段を目指した。

 

◆◇◆

 

「ここなら自由に検証できる」

 

 ダンジョン十階層。ギルドが冒険者に提供するマップの外にウィズはいた。

 十階層は霧に包まれたエリア(ダークゾーン)が点在するフロアであり、そのため多くの冒険者はこのフロアに留まることが少ない。

 上層から下層へと繋がる階段を目指して直進するのが常であり、ギルドのマップも二点間を結んだ範囲ほどしか記されていない。

 

 現在ウィズが居るのは階段から離れた場所であり、特に濃い霧を突っ切った先にあるそこそこの広さのある円形のエリアだった。

 この場所は三十七層の闘技場のような性質があり、出現する数も質も低いが、纏まった数を倒せるためウィズは二ヶ月ほど前まではこの場所を利用していた。

 ステイタスが一定の基準に達してからはさらに下層へと潜ったためこの場所は久しぶりであったが、その性質は変わっていなかったようだ。

 

「まずはインプからか」

 

 ミノタウロスの刀を抜いて十体前後のそれと相対する。

 ミノタウロスの刀はまるでウィズのために拵えたように手に馴染んでいた。

 新たな武器を入手した際にはそれ以前の武器との微妙な重心の違いなどから慣熟訓練が必要なはずだが、一時間にも満たないダンジョン探索のうち、半分未満の戦闘時間でウィズはこの刀を完全に使いこなしていた。

 

 肉体的な強度は並程度だが集団かつ知恵のあるインプたちの波状攻撃に対し、ウィズは向かってくるインプを軽々と撫で切りにしていく。

 技量はもちろんだが、レベルアップによって向上した身体能力と、抜群の切れ味を持つミノタウロスの刀があってこその結果だった。

 

 数分と経たずに全てのインプを灰へと還したウィズは魔石を回収すると独り言ちる。

 

「もう刀はいいか。魔法を試そう」

 

 刀を納めこそしないが、意識を切り替えて魔法を使うことを考える。

 現在ウィズが使える魔法は七つの位階のうち下位の四つまでであり、それぞれのカートリッジ数は下から9/6/3/1回ずつであった。

 これが二種類あるため魔法を使える回数は合計で38回。一日のダンジョン探索における使用可能数としては少し足りない程度のではとウィズは考えた。

 完全なマジックユーザーとしての戦闘は難しく、速攻魔法の特性を活かしてのフラッシュアクションによる魔法の行使によって近接戦闘を優位に進めるというのが良さそうである。

 

 壁に寄りかかってモンスターの出現を待ちながら思考していたウィズは空気を叩くような音と獣臭さを感じて目を開ける。

 数メートル前方には豚頭人身のオークと巨大なコウモリであるバッドバットが出現していた。

 

 敵を確認したウィズはひとまず魔法の射程を確認するために壁に寄りかかったまま魔法を発動する。

 

「<ハリト>」

 

 掌を敵へ向けて詠唱したウィズであったが、それに対して魔法が出現したのはウィズの背後の空間からだった。

 出現したのは火の玉。

 それはそこそこの勢いで飛び出してゆき、見事にオークへと直撃。肉の焼ける香ばしい香りと共にオークをダウンさせた。

 殺害こそできていないが広範囲の火傷によって戦闘復帰は困難そうである。

 

「第一位階の魔法でこれか。レベルアップ前の魔力ステイタス評価がSだったとはいえ強力過ぎないだろうか?」

 

 思わぬ結果に驚いたウィズだったが、倒れ伏した同胞を無視してオークの一匹が突貫してくる。

 横に滑るように回避し、背中側に回り込むと蹴り(ヤクザキック)を御見舞し、オークの体勢を大きく崩させる。

 

「<ハリト>」

 

 再び火球が発射され、オークに直撃する。

 その炎は瞬く間にオークを飲み込み、一体目のように戦闘復帰が不可能な傷を与えた。

 敵の集団へと振り返りながら<ハリト>の呪文への評価をするウィズに、バッドバットからの怪音波が照射される。

 思わず眉間に皺がより、不快な気分となって集中が乱れる。

 

「<ハリト>!」

 

 速攻魔法の特性は詠唱が簡単なこと。

 ムカツク音波に当てられようと、僅か三文字の魔法名を唱えることなど容易なことであった。

 火球はバッドバットに向かって飛んでいくが、宙を飛ぶ身軽なバッドバットは回避行動をとり、体の中心を外して翼の端に命中することになった。

 さらに、バッドバットより大きなに体躯を持つオークを戦闘不能に追い込んだはずの炎威はバッドバットを包むことなく、僅かに翼を焦がす結果に終わる。

 

「集中できてないと威力が落ちるのか」

 

 カス当たりではあったがバッドバットに攻撃が命中したことにより怪音波の照射が停止したことで僅かに冷静になったウイズは今の現象を理解する。

 翼が焼けたことで高度を落としたバッドバットに接近し、バッドバットの首を刎ねたウィズは、残る数体のオークとバッドバットでさらに魔法の検証を続けた。




Wizardryではおおよそ全てがTRPGよろしくダイスで決定しますが、現実において全く同じ状況から全く異なる結果が発生するのは違和感しかありません。
そのため、クリーンヒット+集中状態をダメージダイスの上限と設定しカス当たりになればなるほど、集中が乱れれば乱れるほど下限に近づくとしました。

また、wizardryではファンブルが採用されておりどのような判定も成功率95パーセントが上限となっていますが、どんな簡単なことでも得意なことでも5パーセントで失敗するのは理不尽なためそこら辺も平時なら考えないことにします。(にわかTRPGプレイヤー並の感想)

そもそもTRPGのダイスは実際にプレイヤーが行動できないことをダイスの結果から空想するもののはずですので、実際に行動できる物語の中の人がダイスに縛られる必要は無いですしね

あとwizardryでは『レベル〇呪文』とかそんな感じで言うと思いますが、ダンまちのレベルと被るので位階という表現を使わせてもらいました。

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