ダンジョンで混じり子が戦うのは間違っているだろうか?   作:にわかDRPGプレイヤー

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割と説明会なんで進行はほとんどないです。


第4話

 始まりの戦闘から数時間後、バリボリと飴を噛み砕くように咀嚼しながらウィズは思考する。

 長時間の戦闘に耐えられるウィズの肉体ではあるが、その分燃費が悪い。

 地上では大量に食事を、ダンジョンではこうして栄養の塊を噛み砕いて補給するのだ。

 

「カートリッジは一定時間――最短で十五分ほどの休憩を挟むことで回復する。これは累計でもいいが、休憩の質が悪ければ時間がかかる」

 

 ウィズは今までに二度カートリッジを枯渇させており、最初の枯渇の際にダンジョンを破壊して思考時間を確保して今のように考えていたところ、カートリッジが回復するという事実を知り、さらに二度カートリッジを使い切り使える魔法の効果の把握に努めていた。

 

「おそらくカートリッジは精神力(マインド)を汲み分けて作成されているもの。回復の際にごっそりと減った感覚があったから間違いないはず」

 

 つまり、裏を返せば戦闘中には精神疲弊(マインドダウン)の心配がないという事だ。

 カートリッジは自身の精神力で作られているが、カートリッジとなった時点で精神力とは別の場所に保存される。

 一度の戦闘中に使える回数こそ限られるものの、全てを使い切っても精神疲弊(マインドダウン)による気絶や体調の悪化などがないのはわかりやすいメリットである。

 現在のカートリッジの数とウィズの精神力容量の場合、連続して二度、完全に枯渇した状態からの補給が限界だということもウィズは理解していた。

 また、完全に枯渇する前に休憩を挟んだり、一度だけ魔法を使って休憩をするなどをして位階別に精神力の消費量を検証した結果、当然と言うべきか位階の高い魔法ほどカートリッジの作成に精神力を使うという結果となった。

 休憩によりカートリッジが補充できるということが分かったため、今後長時間の探索を行う場合は位階の低い魔法に使用を絞り、総合的な魔法使用回数を確保することも必要だとウィズは理解した。

 第一位階の時点でも十分強力な魔法が揃っており、第二位階にも使い勝手の良い魔法が多くあるため、第三位階以上の魔法はカートリッジ作成に使う精神力のことを考えて使用を控えていくことになるだろう。

 

「とりあえず魔法をまとめよう。今は脳内に浮かんでいるがいつ消えてなくなるかもわからない」

 

 レベルアップの折りに唐突に脳内に浮かんできた魔法の羅列ではあるが、これがいつまでも続くとは限らない。

 レベルアップ直後のみの現象である可能性も考え、ロキに渡されてから今までポケットに入れっぱなしにしていた自分のステイタスが記された紙を取り出し、魔法を書き込んでゆく。

 


 

グループA/第一位階

 

ハリト(HALITO)/クリーンヒットでオークを戦闘不能にする程度の火球

 

カティノ(KATINO)/眠りを誘う空気を放射し、吸い込んだ者を数秒間無防備にさせる。痛みで覚醒

 

ボラツ(BOLATU)/敵を石のように硬直させる。オークには無効化されることもあるがバッドバットには確定。対象の生命力次第?

 

グループA/第二位階

 

ディルト(DILTO)/敵の眼前に暗闇を生成する。そこまで視界は悪くならないが割と邪魔

 

メリト(MELITO)/広範囲版ハリト。威力は据え置きだが単体に使う場合でもクリーンヒットさせやすい

 

ポンチ(PONTI)/敏捷に補正

 

グループB/第一位階

 

ディオス(DIOS)/傷を回復。ポーションの節約になる程度

 

バディオス(BADIOS)/傷を開く。ディオスで塞げるくらいの傷

 

グループB/第二位階

 

モンティノ(MONTINO)/敵を黙らせる。咆哮による強制停止(リストレイト)を防げそうだが吐息なども聞こえなくなるので注意

 


 

 と、ここまで書き記したところで紙に余白がなくなった。

 

「……これはロキへの提出用にしよう。多分色々と聞かれるだろうし。これを渡しておけば手早く済むはず」

 

 ほかの魔法は詳しく検証できなかったし、と呟いてから荷物をまとめて帰り支度を始めるウィズ。

 流石にハリトとメリト、ボラツの三つは自分に向けて使わなかったが、ほかの魔法は本来敵に使うだろうものでも()()()()()()使用し、おおよその効果を把握した。

 カティノは敵が動きを止めるということが分かっていたがどのような理屈でそうなっているのかが分からなかったり、ディルトもどの程度視界を塞いでいるかが分からなかったりしたため自分に使うという工程は魔法の効果の把握には役立っていた。

 

 本来ならばマジックユーザーはこのような検証をする必要はなく、ステイタスに魔法の効果が記されているが、ウィズの【カートリッジ・スペル】には魔法の効果が明記されていないのだ。

 仮に複数人の味方に効果がある魔法が使えたとしても今のウィズではその真価に気づくことが出来ないだろうし、高威力の魔法もそれに耐えるモンスターと相対しない限り性能を把握することは出来ない。

 

「パーティ……はだめだな。とりあえず攻撃魔法の限界を知る為にも明日は中層に足を運ぼう」

 

 ウィズは数時間の戦闘結果にしてはそこまでの量がない魔石を四つの袋に分けて腰に括り付けると、上層への階段へと歩き出した。

 

◆◇◆

 

「トータル210オーバーやと」

 

 ロキファミリアホーム、ロキの私室では部屋の主であるロキが神聖文字(ヒエログリフ)で記された紙を見て驚いていた。

 その紙はレベルアップ後、数時間のダンジョン探索を行って帰ってきたウィズ・イルミナル・ドリーのステイタスが記されたものだ。

 いくらレベルアップ直後はステイタスが上がりやすいとはいえ、オラリオ二大派閥の主神であり、数多くのステイタス更新を行ってきたロキでも一日でここまで成長した眷属は見たことがなかった。

 

「魔力が60オーバー、力、耐久、敏捷で120オーバー。器用も他と比べると微妙やけど常識に当てはめれば異常や」

 

 レベルアップ、レアスペルに加えてこの成長の速さという神会でド級の話題性の塊となってしまったウィズのことを考えて頭を抱えるロキは、忌々しげに紙を睨みつけて呟く。

 

「どーせ主神のウチにも読めないようにロックが掛けられてるこのスキルが原因なんやろなあ」

 

 ウィズ本人には伝えていなかったが、ウィズにはステイタスを刻んだロキにすら読めないスキルがひとつある。

 ステイタスを他者に読めないようにする処置はいくらかあるが、それは主神であるならば無条件で解除できるものばかりである。

 例外としては改宗前の主神によってロックされたものが残っている場合、改宗後の主神は読むことが出来なくなったりするのだが、基本的にそれらは解除されてからの改宗となるためそんなことは滅多に起こらない。

 

 そもそもの話、ウィズはロキが刻んだ恩恵で初めてステイタスを得たのだ。

 ()()()()など居るはずもない。

 

「まあええわ。考えてもしゃーないしな。今は渡された魔法について考えるべきやな」

 

 ロキはウィズのステイタスが書かれた紙を厳重に保管し、ウィズに渡された紙を手に取る。

 こちらには共通語で書かれたウィズのレベルアップ直後のステイタスが記されている。

 当然、ロキが読めないスキルは書かれていないので初期値の能力値と発展アビリティに加え【カートリッジ・スペル】の概要しか書かれていなかったものだ。

 それが半日ほどの時間を掛けて【カートリッジ・スペル】の詳細である魔法名とその詳細が書かれてロキの手元へ戻ってきていた。

 

「これがなかったら引き止めて色々聞けたんやけどなあ。うまいこと躱された感じや。それにしてもスロットひとつで回復と補助、攻撃まで出来るんはやっぱ強いわな。ウチにはあのモンスターが倒せるとか言われてもようわからんからフィンらに聞くしかないんやけど……この魔法名はどこの言葉なんやろな。魔法は必ず共通語ってわけでもあらへんけどそれでも各種族の言葉ってのが基本やけど」

 

 見たことも聞いたこともないわーと、ロキはベッドに倒れるように身を投げて思考も放棄するのだった。


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