波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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尚文視点です。


くっ!クラーケンを倒せば良いはずなんだ!

「フィーロ! 急ぐぞ!」

「うん!」

 

 俺たちは、フィーロに跨り波の本体に移動していた。

 いっこうに来ない宗介を探したいからという事で、レイファも同行している。

 すでに3時間が経過したにもかかわらず、波が収まる気配がなかったため、兵士の連中やババアの後押しで俺たちは波の本体に向かっていた。

 

危険! 

 

 突然メッセージに表示された言葉に、俺はフィーロに止まるように指示を出す。

 

「フィーロ!」

「う、うん!」

 

 木々の間から現れたのは……

 

「そ、ソースケ……?」

 

 宗介だった。だが、その手に持っている武器は、どこかで見たことのある宝石が装飾された、竜の描かれた禍々しい短剣であった。

 両手両足が黒い炎で発火している。

 

危険! 危険! 危険! 危険! 

 

 空気が重い。以前戦ったドラゴンゾンビのそれよりも圧倒的にヤバい。俺はそう直感していた。

 さっきからメッセージの警告が煩わしいほどに出ている。

 

「宗介……なのか……?」

「ああ、尚文。盾の勇者」

 

 違う。コイツは宗介ではない! こんな邪悪な笑みを、狂気に濁った瞳をするような人物ではなかった! 

 

「ソースケ!」

「レイファさん、危ないです!」

 

 宗介のところに走り出しそうになるレイファを、ラフタリアが引き止める。

 

「宗介、急いでいるんだ。悪いが退いてもらえないか?」

「そういう訳にはぁぁ、いかねぇなぁぁ」

 

 宗介はそう言うと、俺に短剣を向ける。

 あの禍々しさは、見覚えがある! 

 

「尚文ぃぃ、お前に恨みは無いし、むしろ感謝しかないが……」

 

 俺は咄嗟に盾を構えた。

 

「ぐあっ!」

 

 俺が守っている範囲がわかるほどの無数の斬撃が俺を襲う。

 

「悪いが世界を破壊するためにぃぃ、死んでくれぇぇ」

 

 まるで、いや瞬間移動をしながら攻撃してくる宗介に、俺はラフタリア達に攻撃が来ないように防ぐだけで精一杯であった。

 

「エアストスロー、セカンドスロー、ドリットスロー、コンボ、サウザンドスロォォ」

 

 勇者スキル特有のスキルを使い、禍々しい短剣を分裂させて投げてくる。

 その攻撃は、俺が防がなければ、ラフタリアやフィーロ、それにレイファを殺すには十分な威力と、人体の急所を狙った攻撃であった。

 

「宗介! お前はどうしたんだ!?」

「尚文ぃぃぃ! お前と同じだぁぁぁ!」

「どう言う事だ!」

「わからねぇならぁぁ死ねぇぇ!」

 

 その瞳は完全に狂気と憎悪に彩られている。

 

「ぐっ!」

 

 攻撃力が高いのか、かなり重く感じる。

 受けるだけでもダメージだ。

 

「ラフタリア、フィーロ、宗介を取り押さえるぞ!」

「わかりました!」

「いっくよー!」

「レイファは俺の後ろに!」

「はい!」

 

 ラフタリアとフィーロが宗介に攻撃を仕掛ける。

 あの奇妙な体術……本人曰く合気道をさらに実戦で研ぎ澄ませた格闘術を織り交ぜながら、ラフタリアとフィーロを相手に互角に渡り合っている。

 

「邪魔するならぁぁ、先に死ぬかぁぁ」

 

 すでに殺意と憎悪によって、宗介は染まっている。

 あの武器はまるで、俺の所持するカースシリーズの憤怒の盾のようだった。

 ラフタリアも気がついたのか、こちらに戻ってくる。

 

「ナオフミ様!」

「ああ、あの短剣はおそらく憤怒の盾と同じカースシリーズのものだ」

 

 だとしたら、相当強いのも納得である。

 ただでさえ戦い慣れた宗介がカースシリーズを持つ勇者の武器を持っていると仮定するならば、こちらも殺す気で行かないと対応できそうにない。

 

「ラフタリア、殺す気で行け。俺も憤怒の盾を使う!」

「ナオフミ様?!」

「そうしないと、アイツは止められない!」

「……わかりました」

 

 俺はレイファに顔を向ける。

 

「すまない、アイツを止めるために少し危険を冒してもらうことになると思う」

「いいえ、ソースケの為なら、何も問題はありません」

 

 俺はレイファの覚悟を聞いて意識を集中する。

 

「来い! 憤怒の盾!」

 

 憎悪が侵食してくる。だが、この程度ならば耐えられる。

 盾に呪いの炎が張られる。

 俺は憤怒の盾に切り替わると同時に走り出す。

 宗介はラフタリアとフィーロが翻弄しているが、宗介はまるで読んでいるかのように的確に対処している。

 

「宗介ぇぇぇ!」

「尚文ぃぃぃ!!」

 

 叫んではいるものの、宗介は冷静に対処する。

 セルフバーニングカースが近接攻撃のカウンターである事を知っているように、俺には遠距離から投擲攻撃しかして来ない。

 近接で距離を縮めると、ナイフを使った格闘術に切り替えてくるため厄介だ。

 

「ナオフミ様!」

「チィッ!」

 

 宗介の両腕は黒い炎で轟々と燃えている。

 どうやらアレにもこの憤怒の盾の炎と同様の呪いのある炎らしかった。

 

「ラフタリア!」

「はい、行きます!」

 

 俺はラフタリアと二人掛かりで攻撃する。

 流石に俺たちの連携攻撃は回避しきれなかったのか、宗介はダメージを追った。

 

「ぐっ! さすがは世界を救う勇者様ってところか!」

 

 俺ですら憤怒の盾の憎悪に飲み込まれまいと必死なのに、宗介はそれを制御できているように感じる。

 攻撃の判断が冷静で正確なのだ。

 

「フィーロ!」

「はいくいっく!」

 

 よろめいた瞬間にフィーロの攻撃を受けて、宗介は吹き飛ばされる。

 しかし、受け身を取りすぐに起き上がる。

 

「ごしゅじんさまー、武器の人、ほとんど避けたよ!」

 

 フィーロの攻撃をほとんど避けただと?! 

 

「遅い! 遅い遅い遅おおおおおい!」

 

 一瞬、場の空気が固まった気がした。

 

「ラフタリア、フィーロ!」

「はい!」

「うん!」

 

 直後にナイフのスコールが発生した。

 盾で防がなければ、不味いレベルだ。

 防いでいるのが盾の部分なのでダメージは負っていないが、憤怒の盾でなければ受けきれなかっただろう。

 

「さすが盾の勇者! 現時点でこの強さか! ハハッ! 殺しがいがあるなぁぁ!!」

 

 宗介が構え、こちらに走り出そうとした時、宗介をレイファが抱き留めた。

 

「ソースケ! 元に戻って!」

「ぐっ、離せ! 俺はこの世界を破壊するんだ!」

「なんでよ! ソースケはいつだって、みんなの事を考えてきたじゃない!」

「離せ! お前も殺すぞ!」

「レイファ!」

 

 宗介は本当にレイファを短剣で切り刻んでいる。

 

「ナオフミ様!」

「ああ」

「待ってください!」

 

 俺たちがレイファを救おうと、宗介に近づこうとすると、レイファが止める。

 

「お願い、ソースケ。どうかその怒りを、憎しみを、私にも教えて? なんでそんなに怒っているの? 私にもちゃんと話してよ! ソースケ!」

「なんだこれは! やめろ! 聞きたくない! 離せ! 殺すぞ!」

「絶対離さない! ソースケは私の一番大切な人だから! 絶対離さない!」

「離せ! 離せぇぇ!! はな……dhjkcうvjぎdjkづいどんくxkjdがいkdksgぼえう!!!」

 

 宗介はまるでパソコンから出るようなバグった声を出す。

 そして、そのまま気絶した。

 短剣はまるで宗介の中に消えるように消失してしまった。

 

「終わった……のか……?」

「どうやらそう見たいですね……」

 

 俺とラフタリアはその場にへたり込んでしまった。

 憤怒の盾をキメラヴァイパーシールドに戻して、宗介の様子を見る。

 完全に気絶しているようで、意識はなかった。

 

『彼の者を癒せ!』

「ファスト・ヒール!」

 

 俺はすぐさま、レイファに回復魔法をかける。

 やはり、ラフタリアと同様に傷の治りが遅い。

 

「ありがとうございます。盾の勇者様」

「いや、例には及ばない。レイファのおかげだしな」

 

 宗介の両腕は真っ黒に焼き焦げている。

 治るかどうかわからないが、魔法を宗介にもかける。

 

『彼の者を癒せ!』

「ファスト・ヒール!」

 

 やはり、呪いの炎のせいか、治りは良くない。

 

「仕方ない。フィーロ、レイファと宗介を村の避難所に!」

「うん、わかった!」

「俺たちはフィーロが戻るまで待機した後に、波の本体に向かうぞ」

「わかりました、ナオフミ様」

 

 しかし、どういう事だ? 

 宗介はなにかを知っているような感じがする。

 だが、まずはこの波を収めることが先決だ。

 俺はそう判断をして、フィーロを見送るのだった。




レイファはヒロインやなって、改めて思ったんだ。

実は100話目だったのか…
web原作からすると遅れているのかなー
カルミラ島編の中頃だっけ?

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