波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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レイファちゃんが居なくなって寂しい……

 私達は村に立ち寄りながら、東へと移動していた。

 時間としては、既に2日は経っていた。

 リノアさんもアーシャさんも回復して、私達は既に槍の勇者様のパーティを抜けていた。

 道中の教会で聖水購入し、ソースケの両手両足を浸している聖水を取り替えながら進んでいた。

 ソースケは一向に目を覚まさなかった。

 栄養は、盾の勇者様からいただいた栄養水を適宜摂取しているけれど、やはり心配であった。

 聖水の効果があってか、宗介の両手は若干肌色の部分が出ている程度には回復していた。

 

「しかし、散々な目に遭ったわ」

 

 リノアさんはそう振り返る。

 

「クテンロウでしか見られない服を着た黒髪の女が舞い降りてきたかと思ったら、勇者様共々吹き飛ばすんですもの。他の人を盾にして直撃は防いだけれども、大ダメージよ。ひどい目に遭ったわ!」

 

 今でもヒール軟膏を塗って包帯を巻いているので、治りきっていないのだろう。

 

「それにしても、ソースケが暴走するなんてねぇ……。やっぱり、あの時の光の玉をソースケが吸収しちゃったせいかしら?」

「リノアさん、どう言うことですか?」

 

 リノアさんが何かを知っている感じなので、深く聞いて見ることにした。

 

「ユータ=レールヴァッツって言う有名な冒険者が居たんだけれど、ソースケがそいつを殺しちゃったのよ」

 

 それは、特に驚くことではなかった。

 ソースケは自分と敵対するものは理由がないと殺してしまう。

 前に、何故弓の勇者一行を殺さないのか聞いた際に、勇者一行だから無理。ただの冒険者なら容赦はしないさと答えたことがあった。

 

「で、そいつが死んだ後に、光の玉が飛び出したのよね。すぐに逃げ出すような動きをしたけれども、まるで吸収されるようにソースケに引きづられてしまったのよ。今思い返しても不思議な光景だったわ」

「リノアさん、それってもしかして、投擲具ではありませんでしたか?」

 

 アーシャさんが聞くと、リノアさんはうなづいた。

 

「そうね。ユータは投擲具を使っていたわ。まあ、ソースケが一蹴しちゃった訳だけれど……」

「つまり、ソースケ様はユータから()()()()()()()?」

「アーシャ殿、それはどう言うことか説明していただこうか?」

 

 馬の行者をしているライシェルさんが話に入ってきた。

 

「憶測なのだけれど、ソースケ様は今、()()()()()()だと思われます」

「……どう言うことだ?」

 

 ライシェルさんが険しい顔をする。

 

「ソースケ様の強さは、本来は4つの武器を使った距離を問わない戦闘スタイルです。武器を使わない場合は格闘術も使います」

「よく知っているわね……」

「これでも元影ですから」

 

 アーシャさんの言う通りだ。

 ソースケは殺すと決めた相手には人間無骨と言う槍で首を狩る。

 魔物との戦いでは、短剣と弓をメインで戦闘を行い、強敵相手だと格闘術を使う。

 

「ですが、今回はソースケ様は短剣はもちろん、鎖鎌、手投げ斧、投げナイフ、と言った武器に変化する武器を使っていました。変化する武器なんてそれこそ、勇者様の持つ武器以外にあり得ません」

「メルロマルクでは、かつて勇者の武器を再現したものがあったはずだ」

「ですが、その武器は失われていますし、そもそも出力には大勢の人間の魔力が必要と聞いています。ソースケ様はそんな魔力量を持っているとは思えません」

「ふむ……確かに」

 

 勇者武器をソースケはどこで入手したかが問題ということだろうか? 

 

「勇者武器をユータから奪ったって言うこと?」

「はい、恐らくですが」

「それが何か問題があるのかしら?」

 

 リノアさんは断言した。

 

「私は、ソースケなら勇者武器に選ばれてもおかしくないと思うわ。最近だと、斧の勇者が行方不明になっちゃったらしいと言う話も聞くし、どうも七星勇者辺りは胡散臭い話が飛び交っているのよね。それに、レジスタンスの頃に仕入れた噂なんだけれど、七星武器は奪い合いが行われているらしいわ。斧の勇者様は元々異世界人だったとも聞くし、投擲具の勇者様も異世界人だったらしいのよね」

「つまり、ソースケ様は勇者武器の奪い合いに参加している一人であると……」

「そこまではわからないわ。ただ、七星勇者はあまり信用できないみたいね。上層部はごまかしているみたいだけれど」

 

 リノアさん独自の情報だろう。私はそんな話は聞いた事がなかった。

 

「一応、他の国の波は、フォーブレイの鞭の勇者様が有償で対処しているらしいけれども、他の国ではすでに波によって滅んだ小国もあるのよね。その点でも、メルロマルクが四聖を独占している事が問題になっているはずよ」

「そうだったんですか……」

 

 ライシェルさんもうなづいたと言うことは、事実なのだろう。

 

「それで、我が国の女王様は外交に出ていらっしゃるのだ。国王様の方が得意分野であったのだが……、今はすっかり耄碌されておられる」

 

 ライシェルさんはそう言うと、ため息をつく。

 

「で、アーシャ殿。このタイミングでその話をする意図は何だ?」

 

 確かに、それは気になる。

 

「いえ、いつものソースケ様ならば大丈夫とは思いますが、もし仮に『勇者の武器をその様に弄んでいる、偽勇者』と言われた際にソースケ様が世界を敵に回す可能性があります。なので、ソースケ様に同行する意味をきちんと考えた方がいいかと思いました。もちろん、私はソースケ様に忠誠を誓った身ですので、たとえ世界を敵に回したとしてもソースケ様のお供をしますがね。レイファさんはともかく、リノアさんは身の振り方を考えた方がよろしいかと」

「アンタ、そう言って私をソースケから遠ざけようとしているわね……!」

「なんのことかしら?」

 

 睨み合う二人に私は苦笑いをするしかなかった。

 

「ふむ、ソースケくんは慕われているのだな。勇者様方の反応も好意的だった」

「はい、ソースケは教会が言うような神敵ではないですし、絶対間違っています!」

「……まあ、ソースケが人殺しなのは間違いないけれどね。今でも、ソースケが人を輪切りにして笑っている光景を思い出すだけで震えてくるわ」

 

 ソースケは最初から、……あの時冒険者に襲われた時でも【敵】に対しては容赦の無い性格だったように思う。

 もちろん、ソースケの良いところはいっぱい知っているし、優しくて大好きだけれども。

 何故、あそこまで容赦なく人を殺せるようになったのかは、未だに聞けていなかった。

 

「うっ……!」

「ソースケ!」

 

 ソースケが苦悶の声をあげたので、そちらに意識を向けると、ソースケが目を開けた。

 

「レイファ、か。……リノアにアーシャ、それにライシェルさんもいるのか」

「ソースケ、大丈夫?」

「ソースケ様?」

 

 手には別に投擲具を持っている感じでは無い。

 それに、この感じはいつものソースケである。

 

「ああ、すまなかったな。迷惑をかけたみたいだ。特にアーシャとレイファには申し訳ない」

「そんな、全てはソースケ様のためです」

「うんん、ソースケが元に戻ったんだから問題ないよ」

 

 ソースケは物凄く気まずそうな表情をする。

 あの表情は、何かを誤魔化そうとする顔色だ。

 ……何を誤魔化そうとしているのだろうか? 

 

「……ソースケ?」

「……はあ、レイファには後で話すよ。それより、波が終わってから何日経った?」

 

 起きて早々であるが、意識ははっきりしているようだ。

 両手も普通に動いているので、芯までは燃えていなかったのだろう。

 現状、真っ黒でとてもではないが動かせるようには見えないのだけれど。

 

「2日です」

「そうか、なら、今すぐ近くの村に寄った方がいいな」

「どうしたの?」

「ま、確認したい事があるんだよ」

 

 こうして、私達はメシャス村から西に真っ直ぐ言ったところにある村、ロッソ村に立ち寄ることになったのだった。




ちなみに、ブラッドサクリファイスを使った後レベルの呪いを受けています。
常時両手両足を呪いの炎で焼いてましたしね…。
そんな呪い程度で宗介はへこたれませんが。

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