波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

109 / 150
やはり我を飽きさせぬ男よ

「ナオフミ様……」

「ああ、先に聞きたいのは次の敵だ。俺たちは今、メルロマルクの連中に追われている。あのビッチ王女の手先だということは間違いないが、どうだ?」

「逆だな。あのクソ女は単純に今の状況が美味しいから便乗しているだけだ。お前らの敵は、メルティ王女ならわかるんじゃないのか?」

 

 俺がそう指摘すると、メルティ王女は驚いた表情をする。

 

「え、なんでわかったの?!」

 

 ああ、自己紹介してなかったもんな。

 それで名前を当てられれば、そりゃ驚くだろう。

 

「お前の知る登場人物に第二王女が出てくるんだな?」

「ああ、まあ、でもこの国の第二王女と言えばメルティ王女しか居ないから、推測可能な話だろう」

「そう言えば、盾の勇者様が私をそう呼んでいたわね……」

 

 メルティ王女はため息をついて、尚文の敵について話し始めた。

 

「そう、私たちの敵は三勇教よ。これは盾の勇者様も推測していた通りだけれどね」

「となると、正解ということか」

「ああ、お前達は近々勇者供に見つかり、西へと向かう事になる。そこで、この章のボスである、三勇教教皇ビスカ=T=バルマスと戦う事になるな」

「なるほど、あの教皇とな……」

 

 尚文はそう言うと次の質問をする。

 

「次の質問だ。《波》とは何だ?」

「俺からは話すことはないかな。ただ、探す際のヒントは売ろう。《次元の波》を超えて、別世界に行けば良い。ま、これは尚文も次の波で知る事になるだろうけれど」

「次元の……波……!」

 

 それだけで何かを推察する尚文。

 ちょっと情報料に対して多めの情報だったかなー? 

 

「どういう事なの?」

「いや、確信は持てないがな。だが、推察はできる」

 

 尚文はそう言うと、自身の考察を始める。

 

「波が《次元の波》で、別世界に通じているのだとすると、波の戦いの意味が変わってくるんだ。グラスも、恐らく次元の波を渡ってこちらの世界にやってきた別世界からの敵だ。奴の言うこととも符合する」

 

 ここまでは、盾の勇者ならば推察ができる範囲だろう。

 

「じゃあ、何故《次元の波》が発生するのかと言う原因を考える必要がある。勇者が呼ばれると言うことは、《次元の波》は自然に発生しない現象だろう。伝承として残っている厄災ならば、過去にも起きたと考えられるはずだ」

 

 芋づる式に出てくる推理に、俺は舌を巻かざるを得ない。

 

「つまり、波は人為的に起きていると考えるのが自然だ。つまり、【波】は人災、それも犯人が何らかの意図を持って起こしている犯罪だと考えられる!」

 

 おお、そこまで行くのか! 

 まあ、実際にこの3ヶ月でもヒント自体は無数に存在していた。

 樹の遊んでいたゲームのタイトルは【ディメンションウェーブ】である。

 

「だが、動機についてはわからないな……。何故世界を破滅する事を起こすんだ?」

 

 動機が無いと犯罪は起きない。

 こう言う人知を超えた犯罪は……つまり魔術師・魔法使い・神の犯罪なんかは【どうやってやったのか】よりも【何故やったのか】が重要になる。

 ロードエルメロイ2世の事件簿のアニメ、見たかったなぁ……。

 つまりは、今起きている現象と【ホワイダニット】が重要なのだ。

 

 と、尚文がこっちを見ている。

 まあ、知っているんだけれどね。

 ここまで推理させておいて何だが、本当に俺の頭は破裂してないよね?! 

 マジで心臓がバクンバクン言っているんだが! だが! 

 我を信じるが良い。何故お前を信じる必要があるのか? 

 

「さてね」

 

 俺は答える気のない態度で返答する。

 それで察したのか、尚文は次の話題を振る。

 

「次だ。お前は波の最中に俺を殺そうとしたが、何故だ? グラスも同じことを言っていた」

 

 あー、まあ、気になるよね。

 

「波の最中に四聖が死ねば、その世界は崩壊するからな。つまりは、それが目的だった」

「?!」

 

 尚文が警戒し、ラフタリアが剣を構える。

 俺は両手をヒラヒラさせてこう言った。

 なんか、エボルトを演じている気分だ。

『チャオ』とか言っちゃう? 

 

「ああ、今はもう諦めているから。警戒しなくて良いよ。どっち道、あの波が最後のチャンスだったわけだしな」

 

 最終期限を言うならば、女神が降り立った時点でアウトである。

 俺の目的は、クソ女神の思う通りにさせないことだ。

 それならば、経験値をグラスの世界に与えたほうがいいだろう。

 あのクソ女神の目的は経験値の獲得と世界をおもちゃにして遊ぶ事なのだからな。

 

「宗介、お前の目的はなんだ?」

「俺の目的はそうだな……。気にくわない奴がいるから、そいつの思い通りにさせないことだ」

「それは、波を起こしている犯人か?」

「ご想像にお任せするよ」

 

 ミナ……ミリティナの顔を思い浮かべながらそう言った。

 この返答で死なないのならば、竜帝のカケラが言う通り、女神の呪いの大半が解けているのだろう。

 いや、この身に竜帝のカケラを宿しているせいか? 

 フハハハハ、さすがは我! 褒めるが良い! 

 黙れ! 地の文に入ってくるな! 

 

「……まあ良い。とりあえずはこれまでだ。これ以上は質問が思いつかないからな」

 

 尚文はそう言うと、金貨を3枚渡してきた。

 ま、尚文の今の所持金としてはカツカツだろうから、素直に受け取っておくとしよう。

 

「毎度!」

 

 しかしまあ、俺はほとんど知識を話したわけではないので、そのまま貰うのも気が引ける。

 なので、サービスとしてひとつだけ話してやっても良いだろう。

 

「ああ、それじゃサービスにひとつだけ、確実に未来で得る知識をを一つ話そう」

「……なんだ?」

「盾の強化方法だ」

「……? 普通に素材を入れて、解放していくことによって強化されるものだろう?」

 

 ま、クテンロウで入手する知識だけれども、盾の勇者が強くなることには何も問題がないからな。

 ひとつだけ、情報をあげることにした。

 

「四聖武器には特徴的な強化方法が3つ、存在する。まあ、尚文は知らないだろうけれどね。そのうち、盾の勇者の強化方法の一つは、『信頼を受ける事・信頼を与える事』だ」

「何だと?!」

「どっちにせよ、尚文は知る事になるからな。少し先の未来だけれど、尚文が強くなることは悪い事じゃない。まあ、役に立てて欲しい」

 

 俺が尚文にそう話すと、尚文はステータス魔法を使って強化方法を検索し始めたようだ。

 目の動きを見ればさすがにわかる。

 

「ナオフミ様、信じて良いのでしょうか? ソースケさんの事ですから嘘ではないと思うのですか……」

「宗介が諦めたような表情でそう言っているんだ。試してみる価値はある」

 

 しばらく待っていると、尚文はため息をついて、腰を下ろした。

 

「どうやら事実だったようだ。ヘルプに項目の説明とステータスに信頼の数値項目が出現した。それに、盾の全体的な能力値が軒並み上昇してやがる……!」

 

 それと同時に、俺のステータス魔法にも同様の信頼値が出現した。

 ……悲しくなった。

 

「……それで、ソースケさんはどうしてこの街へ?」

 

 ラフタリアの問いに、俺は率直に答えた。

 

「想像はつくだろう? お前達を探しにだよ。ま、俺が捕まえる義理は無いがな。()()()()()()と言われただけだし」

「……ふっ、なるほどな」

 

 そもそも、司法取引? とは言え、俺に散々煮え湯を飲ませてきたメルロマルクに対して、いや、三勇教に対して利することをする義理は無い。

 物語に関わらない人物ならば、俺にとっては粛清対象だ。

 

「ま、尚文達がこの街を出てしばらくしたら此処にいたと知らせるだけで良いのさ」

「そうか。それは助かる」

「どちらにせよ、一度東の国境線まで向かうと良いさ。俺としてはその三勇教のロザリオを錬に渡してくれればそれでいいからな」

「……わかった。むざむざこの状況で会いに行くのも気が引けるが、宗介の言葉に乗ろう」

「助かるよ」

 

 尚文達には物語の通りに動いてもらいたい。

 それが俺が達成すべき道だ。

 まあ、多少のズレは許容範囲内だろう。

 大筋が変わらなければ良いのだ。

 

「宗介、お前はどうするんだ?」

「レイファが元康に狙われているからなぁ。しばらくは探すふりをするさ」

「レイファさんが?!」

「……なるほど、レイファが元康の性癖にぶっ刺さったわけか」

 

 いやー、1を聞いて10を理解されるのも困りものだよね。

 ヘイトを高めるつもりはなかったんだがなぁ。

 

「まあ、言うてもその信頼値が指すように、道中の人間は基本尚文の味方だ。兵士に見つからないように慎重に行動しさえすればいいさ」

「ああ、そのつもりだ」

 

 俺は尚文の言葉を聞いて立ち上がる。

 

「じゃあな、俺はしばらくこの街にいるが、さっさと出たほうがいいぞ」

 

 俺はそう忠告をして、この場を去る。

 はぁぁあぁぁぁ……。

 どうしよう。このままじゃあ、槍の勇者のやり直しじゃないか……。

 わははははは! 面白い! 面白いぞ! やはりお前に憑いたのは間違いではなかったな! 

 そう笑う竜帝のカケラに、俺は何も反論することができなかった。




実際、やっている事は思考にくるヒントだけですけどね!
すでにやけっぱちの宗介君でした。

ちなみに、盾の勇者の強化方法はクテンロウまで本来お預けだったかな?

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。