波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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それぞれの決意

 さて、野営をしていると気配を感じた。

 三勇教の影は向かって来るやつは手当たり次第にアーシャと俺が殺しているので、最近は監視以外の動きがなくなってしまった。

 死にたくないよな、そりゃ。

 で、この気配は敵対の感じがしなかったので待っていると、俺の前方に影が現れた。

 

「《首刈り》のソースケ様ですね」

「誰だ?」

「私は、女王陛下が遣わした影でございます」

 

 俺のところにも来るのか……。

 いやまあ、最近重要人物っぽい感じがしているので、来るかもしれないなーなんて思ってはいたけれどね。

 

「陛下の!」

 

 ライシェルさんは驚いた声を出す。

 

「それで、メルロマルク女王陛下の影がソースケ様に何の用です?」

「はい、ソースケ様を保護したく参上しました……が、道中の活躍を見る限りはそれも不要と判断しましたので、女王陛下からの依頼をお願いしたいと思い参上しました」

「陛下から?」

「はい」

 

 影はうなづいた。

 ライシェルがこちらを見るので、俺の許可を求めているのか? 

 別に害がなければ問題ないのでうなづいた。

 

「では、ソースケ殿への依頼です。盾の勇者様の援護をお願いしたいのです」

「援護、ねぇ」

「西南の砦に現在、三勇教の信者およびオルトクレイ王直属の兵士が集結しています。おそらく、そこが決戦の地となると予想されます。そこに、ソースケ殿が勇者様の援護に入って欲しいのです」

 

 いやまあ、行く予定だったけれども、それは先回りしてレイファとリノアを回収するためである。

 戦いに介入するつもりはなかった。

 

「俺が勇者同士の戦いに介入しろと? 無理を言わないでほしいな」

「報告によると、お一人で剣の勇者様や盾の勇者様のパーティと善戦する程の実力を持っているとのこと。相応の実力は持っていると女王陛下は判断しておられています」

「……」

 

 いやまあ、確かに投擲具を使えば勇者に匹敵すると言うか、尚文含めた今の勇者を倒すのは難しい話ではないのは確かだ。

 フィトリアが嘆くレベルで今の勇者連中は弱いからな。

 

「もちろん、介入していただくのは邪教『三勇教』との戦いのみで問題ありません。如何でしょうか?」

「……対価は?」

「これまでの冒険者や貴族令嬢、我が国民である三勇教徒や兵士の殺害を特例として罪を免除いたします」

「……ああ、つまり、命令って訳ね」

「そう思っていただいて構いません」

 

 と言うことは選択の余地無しという事か。

 ……嫌な流れだな。

 まるで世界が俺に原作に介入せよと言ってきているかのようである。

 俺は愛の狩人ではない。

 俺は、俺の手に抱え切れる分しか守れない。

 抱え切れる盾の勇者様に全部丸投げしたいところだ。

 

「……わかった」

「ご理解いただけて幸いです。アーシャ様とライシェル部長は別命がございます」

「私にですか?」

 

 アーシャがこちらを見る。なので、うなづいておく。

 

「はぁ、仕方ありません。私はソースケ様以外の命令はあまり聞きたくないのですが」

 

 ライシェルを見ると、普通に答えてくれた。

 

「私はそもそもメルロマルクの騎士だ。オルトクレイ王からのソースケくんの監視の任務よりも、女王陛下からの任務の方が優先されるよ」

 

 ですよねー。

 アーシャは影に同行して、勇者達の救出の任務が与えられた。

 勇者達の向かっているそれぞれのポイントで三勇教が怪しい動きをしているらしく、三勇教所属の魔術師が集まっているそうだ。

 時系列的にそろそろかと思ったら、俺の方が処分が先だったのか。

 その怪しい施設に、それぞれ弓の勇者一行と剣の勇者一行が向かっているらしい。

 アーシャは優秀な元影だ。だから力を借りたいそう。

 

「では、剣の勇者様の方に行きますわ。ソースケ様が信頼されているようですし、そもそも弓は私は助けたいとは思いませんもの」

 

 という事で、アーシャは錬の方に向かうことになった。

 

「ライシェル部長は女王陛下と合流して三勇教討伐任務の指揮に当たってください」

「はっ!」

 

 ラヴァイトは俺とともに行くことになる。

 まあ、俺も一応オーナーだしな。

 

「では、ソースケ様、ご健勝を」

「ソースケくん、任せたぞ」

 

 ライシェルさんは影が連れてきた迎えの早馬に乗って、アーシャは影とともに、俺の元を去る。

 

「ここからだと、西南の砦はもうすぐか。早馬で向かったライシェルの方が先に到着するかな。ま、時間的にもここからラヴァイトなら急ぎで1日程度だし、ゆっくり行くか」

「クエー!」

 

 と言うわけで、俺たちはゆっくり向かうことにした。

 まあ、当たり前の権利のように道中で三勇教騎士が襲ってくる訳であるが、俺は殺さずにしばき倒して許してやることにした。

 

 

 

 俺、北村元康はマインから報告を聞いて衝撃を受けていた。

 

「なんっ!」

「……本当のことですわ、モトヤス様。盾の悪魔はあの盾であのレイファと言う少女を人質に取り、助けようとした二人の勇者様を殺害したのです!」

「……そんな! 錬と樹を! あいつらを尚文が殺したと言うのか! それにいつのまにか行方不明になっていたレイファちゃん達を人質にだと?!」

「はい、勇者様達を殺害した後用済みになったとして、亜人の女に命じて殺害しましたわ」

「!!」

 

 俺の心に尚文に対する憎悪が募る。

 なんでだ! やっぱり、あいつは盾の悪魔だったと言うのか!! 

 許せない! 錬や樹を、世界を救うと誓った勇者仲間である二人を殺した挙句に、レイファちゃん達を殺害するなんて!! 

 

 俺の目の前がちらつく。

 

カースシリーズ

──の槍の条件が解放されました。

 

 メッセージが出現する。

 俺の目の前が真っ暗になる。

 ああ、尚文め……! 

 絶対に! 絶対に許せない!! 

 常に冷静で、強敵と戦ってみんなを救ってきた錬! 

 正義に燃えて、みんなを悪の手から解放していた樹! 

 天使みたいな穢れのない純真なレイファちゃん! 

 ツンデレで素直じゃないけれど、元気で可憐なリノアちゃん! 

 勇者と共に世界を救おうとした仲間たち! 

 

 なぜ殺されないといけない!! 

 そんな暴虐! 許されてはいけない! 

 

 尚文に対する怒りで視界が歪む。

 

「モトヤス様?」

「マイン、尚文を……盾の悪魔を倒そう! そしてきっと、メルティちゃんを取り戻そう!」

「ええ!」

 

 今の俺を支えているのは尚文への怒りだった。

 俺はアイツの理不尽を決して許しはしない! 

 俺が、俺こそが勇者なんだ!!




くっせぇなお前!
人間の屑がこの野郎!

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