波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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今回も大ボリューム!


聖邪決戦

 俺が会場に到着すると、凄まじい光景が目に入ってきた。

 まるで隕石でも落ちた後のようなクレーター、その余波で完全に崩壊した関所、そして、神父やシスターの集団と護衛の騎士たち。そして

 クレーターの淵に立つのは、ビスカ=T=バルマス。

 俺を散々苦しめてきた三勇教の教皇であり、【盾の勇者の成り上がり】第1部のラスボスだ。

 俺の手で始末をつけたいと言う欲望はあるが、まあ、ブラッドサクリファイスで死ぬ様はやはり、アニメを見ていてもカタルシスがあるため、尚文に任せて問題ないだろう。

 俺が淵に到着すると、

 

「行くぞ、ラフタリア、フィーロ、メルティ!」

「「「はい!」」」

 

 と言う尚文達の声が耳に入った。

 しかしなんで、錬も樹もクレーターに降り立っているんですかねぇ? 

 そこがわからない。

 しかし、今一番盛り上がっているところか。ならば俺の出る幕ではないかな。

 俺はそう考えて、覗くのを止めようとした。

 

「おや、そこに居るのは邪教を信仰する殺人鬼、《首刈り》ですかな?」

 

 いの一番に気づいたのは、教皇だった。

 

「よっ」

 

 俺は右手のヒラを見せるように気軽に手を挙げた。

 

 エボルトォォォォ! 

 お前余計なものも見過ぎだろう! なんで記憶の中で特撮見てるんだよ! 

 かめんらいだーとやらも面白いではないか! 

 ああもう! 

 

 俺が竜帝のカケラと内心でそんなやりとりをしつつ、黒幕と相対する。

 

「宗介!」

「ソースケさん!」

「よっ、尚文。盛り上がっているところ悪いな。無事ここまで来れて何よりだ」

「……どう言うつもりだ?」

 

 何故か尚文から睨まれる。

 まあ、色々と隠し事多いからね、俺は。

 信用はしてもらえても、怪しいやつだろう。

 

「ま、お前ら勇者の援護に来たんだ。あいにくと、俺もそいつらに散々辛酸を舐めさせられてきたんでね。ここいらで後腐れなく皆殺しにでもしようかとね」

「レイファは?」

「生きてるさ。元康、あとで後悔させてやるから覚悟しておけよ」

 

 俺は元康を指差しながらそう宣言した。

 元康は負い目があるからかバツの悪そうなさそうな表情をする。

 

「ほう、さすが悪魔を信仰する邪教徒ですね。ですが、偽勇者ですらない貴方に何が出来ると言うのでしょう?」

 

 教皇が嘲るようにそう指摘するので、俺は対象を指摘してやろう。

 

「そうだな……、お前の後ろにいる、邪教徒連中の皆殺しかな」

「はっはっは、邪教徒とは心外な。……させると思いますか?」

「むしろ、出来ないと思っているのか?」

 

 さっきまで、兵士を皆殺しにして来たところだ。

 俺の精神がここまで歪んだ報いをここで果たす時だろう。

 俺は腰から剣を抜く。

 さっきのは時間がなかったから使ったが、俺は別に投擲具を使わなくても強い。

 

「いいえ、貴方ほどの実力ならばおそらく可能なのでしょう。ですが、一足遅かった」

「チッ」

 

 教皇の微笑みに、俺は後ろに大きく飛ぶ。

 書籍版では使用しなかった、あの防御魔法を使うつもりか?! 

 確かこの後裁きの詠唱に入るだろうにな! 

 

「いやはや、やはり盾の悪魔と共闘とは、やはり偽勇者らしい愚行。やはり、浄化するしかないですね。……それも、徹底的に」

 

『力の根源たる我らの神に願い、奉る。真理を今一度読み解き、奇跡を起こして祝福されしもの達を守りたまえ』

「集団高等合成防御魔法『大聖堂』!」

 

 ゴーンと、どこからともなく鐘が鳴り響く。

 すぐさま効果範囲から出ようとしたが、透明な壁にぶつかった。発動した時点で閉じ込められるらしい。

 しくじったな。

 

「な……!」

 

 構成されていく『大聖堂』を見上げながら、勇者達が唖然と空を見上げる。

 

「はっはっははははは! 我が大聖堂へようこそ! ここがあなた方の終着点です!」

 

 メガネを光らせながらそう宣言する教皇。

 遠くてあんまり見えないけれどな。

 うーん、これは仕方ないのか? 

 つかなんで俺が巻き込まれているんだ。

 まあ、書籍版だと思ってうっかり踏み込んだのが悪いか。

 

「しゅ、終着点……!」

 

 元康がそう呟く。

 巻き込まれてしまった以上は仕方がない、か。

 まさかここでアニメ版の展開になるとは思っても見なかった。

 わざわざあんなクレーターに降りる必要性は感じないため、俺はそのまま上に残っている。

 

「雷鳴剣!」

「サンダーシュート!」

 

 錬と樹が結界破りの雷系統のスキルを使用する。

 当然ながら、一時的に教皇の展開していた魔力障壁が破られる。

 

「ラフタリア、フィーロ!」

「いっくよー!」

「はい!」

 

 フィーロとラフタリアが崖を駆け上り、教皇に近接攻撃を仕掛ける。

 え、俺は何しているのかって? 

 観戦しているだけである。

 だって、俺が戦ったら一瞬で首チョンパだぞ。

 さっきステータス魔法で確認したけれども、俺のレベルは既に105に到達している。明らかに殺害しすぎた。

 なので、この大聖堂の調査を開始する。呑気? 余裕だからな。

 

「はいくいっく!」

「ぐぅ……!」

「せいっ!」

 

 大聖堂は、雷檻と同じように術者と対象を閉じ込める防御結界のようだ。発動が確定した瞬間に、魔力で構成された透明な壁が展開し、術者と対象を封じ込めるようだ。

 本体が構成されて完成すると、術者にステータスボーナスが付与され、呪いや状態異常が無効化されるようだ。

 おまけに、外から回復魔法を常時受けているのか、多少の傷はすぐに回復してしまうようだ。

 

「フィーロ、もう一度だ! 元康もだ!」

「えっ?」

 

 尚文の指示にフィーロがクレーターの中に戻る。ラフタリアは縁に残って、教皇と鍔迫り合いをしている。

 尚文が戻ってきたフィーロにまたがり、フィーロが駆け出した元康を嘴で咥える。

 

「モトヤス様!」

 

 ラフタリアとの戦いで飛び火した攻撃が、ヴィッチの方向に飛んでいく。

 

「ツヴァイト・アクアシェル!」

 

 それをすかさずメルティ王女が防御する。

 

「姉上、よそ見をしないで!」

 

 うーん、やっぱり、俺いらないよね? 

 一方でフィーロと尚文、元康組が教皇に接近する。

 

「元康、教皇に近づいたら俺を攻撃しろ!」

「はぁ? 何言って──」

「行くぞ!」

 

 フィーロが大きく元康を投げ捨てる。

 

「今だ!」

「わかったよ!」

 

 ガキンと大きな音を立てて、元康が尚文の憤怒の盾を攻撃すると、呪いの炎が吹き出る。

 

「喰らええええええ!」

 

 その炎を、尚文はうまくコントロールして、教皇に投げつける。

 着弾と同時に爆発炎上するが、まあ、効いてないよね。

 教皇は涼しい顔をしている。

 

「あの呪いを一瞬で……!?」

「この大聖堂の中では呪いなど無意味。ここは、神に祝福されし聖域なのですから」

 

 余裕の表情の教皇。そのまま模倣品の剣で突風を起こしてクレーター内部を攻撃する。

 ラフタリアは、尚文の攻撃を読んで下がっているようだ。

 

「なんて強さなの!」

 

 メルティ王女がそう感想を述べる。

 うーん、まあ、確かに強いかもね。

 

「おい、宗介! お前も加われ!」

 

 錬に注意される。いつの間に近づいていたのか。

 首根っこを掴まれて、クレーター内部にひきづり降ろされる。

 

「え、いや、だって、俺みたいなよそ者がボス戦に加勢するのもね」

「宗介さん、ここまできた以上は協力すべきですよ」

 

 えー、だって、あんな雑魚本来一人の勇者ですら叶わない存在なんだよ? 

 取るに足らない存在なんだよ? 

 弱いお前らが悪いんじゃん。

 まあ、口にはしないが。

 

「え、じゃあ何すればいいの? 援護魔法でもかける?」

 

 俺は速攻で全員に援護魔法をかける。

 

「アル・ツヴァイト・ブースト」

 

 全員に強化魔法をかける。

 みんな忘れているようだけれども、俺の魔法適性は雷と援護だからね! 

 

「それも助かるが、攻撃に参加しろ!」

「はぁ、まあ、剣でなら良いか」

 

 俺は腰に収めた剣を抜く。

 そして、痛めつける算段をする。

 

「聞こえますか司教。神の意向を示すため、皆の更なる祈りが必要です」

 

 教皇は、外にいる司教と会話をしているようだ。

 

『ですが、既に三割近くのものが魔力の限界に来ています。これ以上使えば、命にも関わるかと……』

「何か問題でも?」

『?!』

「これは、神と悪魔との戦い。三勇教信徒としてここで殉教するのは何よりの誉れではありませんか」

『……仰せのままに』

 

 ヒュー! 

 さすがはカルト宗教ですね! 

 

「自分を信じてついてきてくれた人にあんなことを言うなんて……!」

「でも、彼らはきっと付き従ってしまうわ」

 

 ラフタリアがみんなの気持ちを代弁してくれる。

 あと、3割ねぇ。

 

「じゃ、行きますか。錬、お前も協力するよな?」

 

 俺は仕方なく手伝うことにした。

 ブラッドサクリファイスであむあむされるまでをここで観戦しても良いけれども、あと少し魔力を減らす必要があるだろう。

 俺は、邪教の信徒が死のうが何も思わない。俺の手で首を刎ねられるか、魔力が尽きて死ぬかのどちらかだからだ。

 

「ああ、行こう宗介」

 

 俺と錬は前に出る。

 

「宗介、錬……!」

「ま、巻き込まれた以上は手伝うさ。俺は勇者でもなんでもないがね」

「無駄口を叩くな、行くぞ!」

 

 俺と錬はクレーターを駆け上がり、教皇に接近する。

 

「偽勇者と何を企んだか知りませんが、いいでしょう。相手をしましょう」

 

 教皇は槍を構える。

 

「宗介!」

「おうよ」

 

 俺と錬のコンビネーション剣技だ。あいつら(燻製達)がコソコソ何かを企んでいた時に、錬と二人で強敵と戦っていた時に編み出した連携技だ。

 久しぶりで息が合うかな? 

 

「せりゃあああああ!!」

「シッ!」

 

 俺が槍を剣でいなし、錬がダメージを与える。

 対人を鍛えすぎたためか、俺には教皇の動きが手に取るようにわかる。

 所詮は付け焼き刃のど素人だ。

 

「ぐあ!」

 

 ダメージを受けると、信徒が回復魔法で回復する。

 たくさん回復すれば、魔力が尽きる。

 そうすれば、大聖堂も崩壊し、武器に供給する魔力もおじゃんという考えだ。

 

「せい!」

「スキル!」

「エアストバッシュ!」

 

 タイミングバッチリで錬のスキルが命中する。

 錬は未だに集中すると一つのことだけに意識が向くが、あの時編み出した連携技は覚えていたらしい。

 ボコボコに叩きのめして、PSの重要性は教えたしな。

 

「雷鳴剣!」

「小癪な……!」

「三歩!」

 

 俺は、動きから教皇がスキルを使うのを察して下がらせる。

 

「大風車!」

 

 教皇が槍を振り回す。それだけで物凄い風圧が生じるが、そんな隙だらけの技を使うとか、戦いを舐めてるんだろうか? 

 

「必殺! 連続剣!」

 

 少しカスタマイズしてもらった魔法鉄の剣で俺は槍の動きを阻害して、剣で切り刻む。

 しかし、必殺技を使ったのは何気に久しぶりじゃないか? 

 

「ソードラッシュ!」

 

 錬も俺に続いて教皇を連続で切りつける。

 かなりダメージを負ったようで、流石に回復が追いついていない様子だ。

 

「やるな、宗介」

「まあな」

 

 俺と錬は拳を合わせる。

 しかし、こう言うのも懐かしいものだ。

 最近は俺単独で敵を倒していたせいですっかり忘れていた感覚だ。

 

「おのれ、偽勇者……!」

「たあああああああああああ!」

 

 俺たちの後に続いて、元康が攻撃を仕掛ける。

 

「乱れ突き!」

「ふん!」

「のわああああああああ!」

 

 そして吹き飛ばされた。

 馬鹿ですかね? 

 

「ふふふ、やはり所詮は偽勇者。私と信者の皆さんの力を合わせれば、どうと言うことはありません」

 

 教皇はそう言うと、槍を防御に構える。

 

「彼らの力と、聖なる武器の最強の力を持って、あなた方を真なる浄化へと導きましょう」

 

 魔力を溜めているようだ。

 

「神が与えたもう、究極の慈悲です」

「ははは、面白いな」

 

 俺はつい、笑ってしまった。

 いやごめん、ただの寝言を言われてもね。

 

「魔力を溜めているんだわ」

「フィーロ! ラフタリア! 奴の思い通りにさせるな!」

 

 メルティ王女の指摘に、尚文はすぐに指示を出す。

 

「わかったー!」

「行きます!」

 

 ラフタリアがフィーロに乗って、駆けつけてくる。

 

「錬、一旦引くぞ」

「? なぜだ?」

「あの馬鹿回復してやらないとな」

「……わかった」

 

 俺と錬は元康のところに駆けつけて、俺の即席回復薬を元康にぶっかける。

 

「す、すまない!」

「そのかわり、あとで殴らせろよ?」

 

 ラフタリア達が戦っている間に態勢を立て直すため、尚文のところに戻る。

 俺は錬とはうまく連携できても、ラフタリアやフィーロと連携したことないからな。邪魔になると困る。

 戻って早々、元康が尚文に聞く。

 

「なあ、魔力が溜まりきったらやっぱり」

「大技が来る、と思います。メルティさん、そうですか?」

「ええ、あの天井いっぱいに光が満たされたら、きっと……!」

「なあ、なんとかできないのか? お前の盾」

 

 おいおい、なんで元康は尚文に聞いているんだよ。一貫性のない奴め。

 

「はぁ?」

「だって、お前が一番あの、カースシリーズ、だっけ、使いこなせてるし……」

「お前だって使えるだろう?」

「いや、なんか、俺のは、ね。ははは……」

 

 歯切れが悪い元康の様子に疑問を抱く。

 

「そうですね、確かに僕らより低いレベルなのに、普通に戦えるのも、その盾のおかげですよね?」

 

 樹の言葉に、露骨に嫌そうな顔をする尚文。

 まあ、信頼ブーストって実は強化方法を知らなくても有効だからな。

 信頼値が落ちた他の勇者が弱くなってしまうのは道理だろう。

 

「何か特殊スキルとかないのか?」

 

 錬が尚文の盾の宝石を覗き込む。

 あれ、ガエリオンじゃないのか? 弱虫ガエリオンの気配がするぞ。

 

「ふぇ?!」

 

 突然話しかけてくるものだから、思わず声に出てしまった。

 あの盾からだ。濃厚な好ましい憎悪の気配に混じって、ガエリオンの気配がするな。

 ガエリオン……。

 そうだ、我のような他の竜帝に叶わないからと、人里に逃げたあの、弱虫ガエリオンだ。

 ガエリオンェ……。

 

「そんなものあるわけ……うぐっ?!」

 

 尚文が突然胸を押さえて苦悶の声を出した。

 

「尚文……?」

「……かなりの博打だが、こいつならあるいは……」

 

 どうやら、何かのスキルに目覚めたらしい。

 勇者の武器は心の力。ガエリオンは錬に殺されたからな。その憎悪が影響を及ぼしたのだろう。

 我もあの小僧に殺されるのはごめんだな。ま、全盛期の我ならばあの小僧に負ける道理など無いがな! 

 黙れ竜帝! 面白いあだ名つけるぞ! おしゃべり竜! 

 

「ほらみろ!」

 

 嬉しそうに言う馬鹿。

 尚文の苦悶の声を聞いたのか、駆けつけてきたラフタリアとフィーロが尚文に駆け寄る。

 

「ナオフミ様……。またあの力を使われるのですか……?」

 

 尚文はうなづく。

 

「前も大丈夫だったんだ。帰って来られる」

 

 おいおい、教皇がお留守になっているぞ。

 仕方ない。俺が行くか。

 

「ファスト・サンダーファストアップ」

 

 俺は魔法を唱えると、素早く教皇に近づく。

 

「またですか! 邪教徒風情が!」

「お前の魔力を貯める邪魔をしてやるよ!」

 

 尚文のパワーアップイベントを邪魔してはいけない(戒め)

 教皇は剣に変化させて、攻撃を仕掛けてくる。槍よりは多少動きがいいものの、素人だな。

 

「紅蓮剣!」

 

 スキルを使うタイミングが遅い。技はこう使うんだよ。

 俺は振りかぶった剣を受け流し、入り身投げを仕掛ける。

 グルンと回転して、ドシャッと地面に倒れる教皇。

 

「ははっ、間抜けだな。俺は常々、俺を殺すように指示を出した元締のお前を痛めつける方法を考えていたんだ」

「ぐ……!」

 

 俺は剣を鞘に収める。

 

「ほら、来いよ。今からお前はサンドバッグだ!」

 

 攻撃してくる教皇の攻撃をいなし、思いっきり当身を入れる。壊しても、外の邪教徒が回復させてくれるので、サンドバッグだな。

 

「ぬおおお! フェニックスブレイド!」

「遅い」

 

 掌底を入れる。

 そもそも、それは遠距離攻撃だろうに。

 コメカミ、鳩尾、金的、他人間の弱点多数を編み出した流水系の技で攻める。

 

「コオオオオオオォォォ!!」

「ぬおおおおお!!」

「必殺! 流水千打刻!」

 

 どうせ回復するならば、思いっきりぶん殴ろう。思う存分ぶん殴ろう。まさかこんな機会が訪れるなんて思ってもみなかった♪ 

 激しい打撃音が響く。流石に伝説の模倣品を破壊するほどの威力はないが、大ダメージは与えられたようだった。

 ちらっと、尚文達の様子を観ると、尚文の鎧が言葉に表せないほど禍々しく変化し、ラフタリア、フィーロ、メルティ王女が尚文にすがりついていた。

 ようやくパワーアップ完了かな? 

 

「ぐううううう! 貴様、どれほどの力を……!」

 

 教皇が焦りの表情を見せる。その顔を見れただけで十分かな。ふふふふふ……。

 

「おい、宗介!」

 

 尚文に呼ばれたので、戻ることにする。残念ながら、魔力が溜まるのを遅延はできなかったようだ。

 殴っている時魔力障壁でなかったもんなー。

 戻るとちょうど、元康が恥ずかしいセリフを言っている最中であった。

 

「友情と絆が勝つことを証明しなきゃだしな」

「ぶふっ」

「な! おい、宗介、笑うなよ!」

 

 思わず吹き出してしまった俺に、元康が恥ずかしそうにそう言った。

 いや、お前らに友情なんて存在しないし、肝心の絆も【勇者である】点以外に存在しないだろ。

 と、周囲を照らす大聖堂の光が強くなる。魔力が溜まったらしい。うーん、時間稼ぎにもならなかったか。まあ、教皇は防御よりも魔力を貯めることを優先していたようだし、仕方ないか。

 

「なにやら小細工を弄していたようですが、準備は整いました。これにてお別れです、盾の悪魔!」

 

 剣のビームが発射された。そこはちゃんと技名を言えよ! 剣ビームは【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】と言うのが決まりだ!! 

 尚文が前に出て、剣ビームを防ぐ。物凄い風圧だ。

 

「いかに盾の悪魔と言えど、大聖堂全開の攻撃を受け止められるとは……!」

 

 教皇も間違っているんだよなぁ。

 今はラースシールドだが、本当にフル強化の盾の勇者ならば、防御技すらなしに『裁き』を「なんか暑い」で済ませてしまうからな。

 

「強い力には代償がいる。お前の神の力の代償が信者達だと言うのなら、お前一人の命では安いな!」

 

 グロウアップしてラースシールドに変化した。後ろから見てもその盾は禍々しく、強いのがわかる。

 

「ぬぅ! その盾は……!」

 

 歴史上、実際に盾の悪魔が……いや、魔王が存在した時がある。

 その時の盾が、ラースシールドだったのだろう。

 レイファとドラルさんと暮らしている時に歴史書で読んだ記憶がある。

 

「行くぞ!」

「「はい!」」

 

 尚文の掛け声に、フィーロとラフタリアが答える。

 

「「「おう!」」」

 

 そして、勇者達も応える。

 

「……え、俺も?」

「早く行きなさいよ! 《首刈り》!」

 

 メルティ王女に蹴飛ばされて、俺は仕方なしに教皇の元に走り出す。

 うーん、仕方ないか。俺は投擲具を装備する。

 

「サンダーシュート!」

 

 樹の弓が再度張られた魔力障壁にダメージを与える。

 

「まだまだ! ウインドアロー!」

 

 盛り上がっている感じかな。

 俺もアニメで見たときは、ようやく盛り上がってきたものだと思ったものだ。

 

「ツヴァイト・アクアショット!」

「「ツヴァイト・エアーショット!」」

 

 メルティ王女、レスティとエレナが魔法を唱える。魔力障壁の破壊ね。俺も加勢したほうがいい? 

 俺は投擲具を上に投げる。ブワッと投擲具のナイフが分裂する。

 

「ナイフレイン」

 

 物凄い音を立てて、魔力障壁を破壊していくナイフ。

 思ったより高威力で、俺は驚くしかなかった。一応、手加減して弱めのナイフで攻撃しているんだがな。

 

「良いぞ! このまま敵に隙を与えるな!」

 

 尚文の指示に従って、フィーロとラフタリアが近接攻撃を仕掛ける。

 

「はいくいっく!」

「せいや!」

 

 ガキンと鍔迫り合いをした音が響く。

 

「同じ手は効きません!」

「私達は囮です!」

 

 背後に錬が出現し、スキルを放つ。

 

「流星剣!」

 

 尚文の指示は、俺や樹の遠距離攻撃可能なメンバーは魔力障壁の破壊をすることになっている。錬やラフタリア、フィーロの近接組は接近戦で教皇の動きを撹乱する。そして、元康の役目は、教皇に決定的ダメージを与えることだった。

 

「ツヴァイト・パワー!」

 

 ヴィッチが元康に援護魔法をかける。あれ、ヴィッチの適正って炎と援護だったんだ。すっかり忘れていた。

 パワーはブーストと異なり、ファストアップと同じように単一系統強化魔法だ。この場合は、炎との相性が良いとより効果が高かった筈だ。

 すなわち、攻撃力が上昇する。

 

「俺が言い出したことだが……、やっぱり尚文の言いなりだなんて……! くそっ!」

 

 何を喚いているんですかね? 

 

「この怒り! 食らいやがれ! エアストジャベリン!」

 

 元康の投擲した槍は、魔力障壁に防がれるものの貫いて直撃する。

 

「『友情と絆は勝つ』、だったか?」

「うるせぇ! 良いからぶちかませ!」

 

 尚文に茶化されて文句を言いつつも、激励を飛ばす元康。

 やれるなら最初から連携しておけっての。

 尚文とフィーロはトドメ役だ。

 

「聖なる炎で一片残らず浄化する! フェニックスブレイド!」

「エアストシールド! セカンドシールド!」

 

 フィーロは尚文の出した盾を足場に、フェニックスブレイド(二発目)を回避する。

 

『力の根源たる盾の勇者と眷属が命ずる。真理を今一度読み解き、炎を食いて力と化せ』

「「ラースファイア!!」」

 

 フェニックスブレイドを尚文の盾が吸収し、その炎を盾が噴出する。

 竜を象った炎は、教皇を襲撃する。

 

「ぬわああああああああああああああああ!」

 

 ダメージを負ったのか? 教皇は叫び声をあげる。

 この後の展開、知っているからなー……。

 

「やったぜ!」

「このまま一気に!」

「ああ!」

 

 三馬鹿は疑いもせずに、トドメをさすために駆け出す。

 

「《首刈り》は行かないのかしら?」

 

 メルティ王女が話しかけてくる。

 

「はは、これで終わるならば、誰も苦労はしませんよ」

「それってどう言う……?」

 

 俺がそうメルティ王女に指摘したときだった。尚文も気づいたようだった。

 

「おい待て! 何か様子が──」

「乱れ突き!」

 

 元康が一番乗りで教皇に接近し、スキルを放つ。

 炎の中から姿を見せた教皇は、スキル名を唱えた。

 

「──無我の境地」

 

 教皇は槍で乱れ突きをカウンターする。全て回避され返された乱れ突きをモロに食らった元康は、再び吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐあああああああああああああ!」

「元康さん!」

「はあああああああ!」

 

 入れ替わりで錬が攻撃するも、槍で全ていなされて、石突きで殴られて吹き飛ばされる。

 

「ぐ、なんだ、まるで宗介と戦っているような……!」

「あ、あれは槍の上級スキル……! カウンター技だ!」

 

 スキルでカウンターなんて便利だな! 

 

「あの武器は……上級スキルすら使えるようになるのか……!」

 

 錬が驚いたように言う。

 はは、あれこそがチートだろうな。弱いが。

 

「じゃあ、俺の攻撃を受けてみるか?」

 

 俺は接近して、投擲具の斧で攻撃する。

 槍の使い方は慣れている俺は、斧の二刀流で教皇を攻める。

 

「また貴方ですか!」

 

 むう、流石にオートでのカウンターは突破するのが難しい。

 カウンターにカウンターで返すが、さらにカウンターが帰ってくる感じ。ラチがあかない。

 投げ技に移行しようにも、それもカウンターで返される。

 

「チッ」

 

 俺は舌打ちをして引き下がる。

 タイム・フリーズを使えばまあ、余裕で殺せるけれどね。錬にいちいちうるさく言われるのも面倒なので、今回はパスだ。

 

「神への反逆! その大罪! 浄化では生ぬるい!」

 

 槍を弓に変形させて、大聖堂の中心に矢を放った。瞬間、雰囲気が変わる。

 ミラージュアローだっけ。至る所から矢が飛んでくる。

 

「うぅ……こないでー!」

 

 フィーロが叫ぶ。元康はあらぬ方向へ槍を振る。

 

「ミラージュアロー」

 

 俺がヒントを出してやると、あらぬ方向を向いている樹がハッとする。

 ラフタリアも気づいたようだ。

 

「これは幻影です!」

「ええ、ミラージュアローと言う幻影を見せる攻撃です! 気をつけてください!」

 

 俺は矢の雨の中、平然としていた。投擲具を装備しているせいか、見えてしまうのだ。

 教皇は向こうの方でひたすらにアローレインを放っている。ミラージュアローのフェイクと威力のあるスキルを織り交ぜた攻撃だ。

 こっちは大聖堂内の壁から教皇が顔をのぞかせて弓を放ってくる気色の悪い映像を見せられているというのにな。

 

「そのスキルは幻影で惑わし、対象を誤認させるスキルです! 気をつけて!」

 

 樹の声が虚しく響く。

 

「神の慈悲など欠片も無い、圧倒的絶望! その幻想に押し潰されろ!」

 

 しかし、厄介だ。敵は見えているのに照準が定まらない感じ。

 ……少し吐き気がしてきた。

 

「灰さえ残さなぬ完全なる消滅を! 存在した証など残させはしない!」

 

 弓の強力なスキルがくる。そんな時であった。

 

『力の根源たる女王が命ずる。真理を今一度読み解き、彼の者等を氷結の檻で捉え、拘束せよ』

『アル・ドライファ・アイシクルプリズン!』

 

 大聖堂に干渉するような冷気が教皇を襲う。そのまま、教皇が氷漬けになり、ミラージュアローの効果が消失した。

 

「馬鹿な……! 大聖堂の中にまで魔力を通すだと!」

 

 驚愕の表情を露わにする教皇。さあ、最後の時だ! 本来だったら止めるべきだろうがな。

 

『早く彼の者を!』

 

 おそらく女王の声だろう。

 その声と同時に、尚文から暗い詠唱の声が響く。

 

『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は神の生贄たる絶叫! 我が血肉を糧に生み出されし竜の顎により激痛に絶叫しながら生贄と化せ!』

「ブラッドサクリファイス!」

 

 一瞬、時が止まる。

 

「──ガハッ!」

 

 先に血を吹き出したのは尚文だった。

 アニメじゃそこまででは無かったが、実際見るとかなりゴア表現だった。

 鎧の至る所から血を噴出させ、目や鼻、耳や口から血を吐き出す光景は、誰がどう見ても尚文の死を連想させるのに相応しい有様だった。

 

「なっ……!」

「ひっ!」

 

 その場にいたその凄惨な光景に全員が息を飲んだ。

 地面には尚文の大量の血痕が撒き散らかされ、とてもでは無いが致死量以上の血を噴出しているように見える。

 教皇はその光景を見て、あざ笑う。

 

「さすがは盾の悪魔。最後は己の力に食い殺されましたか」

 

 そう言うと、教皇は自信を覆っていた氷を破り、スキルの準備を始めた。

 

「そ、宗介!!」

「くっ! 尚文が倒れた今、俺たちがなんとかするしか!」

「ナオフミ様! ナオフミ様!!」

「ナオフミ! しっかりして!!」

「ごしゅじんさま!!」

 

 こっちはこっちで大慌てだ。

 俺はすぐに即時回復薬を取り出して、全部ぶっかける。

 

「汚らわしき悪魔の身でありながら、神の浄化を受けられる慈悲に感謝なさい!」

 

 その、最後の言葉を述べた瞬間であった。

 教皇の足元から血が噴出する。そして、赤黒い錆びたトラバサミ……龍の顎のようなアニメで見たそのままのものが教皇を咥え、上空に伸びる。

 普通のトラバサミとは違って嚙みあわせる部分が多重構造になっており、一言で言うならばそう、地面から生えたドラゴンであり、口内は肉食獣の歯がサメのように並んだものだと思えばいい。クリーチャーの口内でもいいだろう。

 

「うおあはぁ! 何故だ! 何故私がこんな! 私は神の代行者!」

 

 ギシギシと音を立てて伸びていくトラバサミ。いや、ギシギシ鳴っているのは伝説の模倣品の方か? 

 

「どぉぉこぉぉがぁぁぁぁ、こんなあああああああああああ!」

 

 内部構造の顎が開き、教皇を捕食しようとする。

 ──バキンっ

 それが、最後だった。

 

「うおああああああああああああああああああああ──」

 

 グシャグシャバキボキゴリっと音がする。肉や骨を砕く音が響く。トラバサミの横から教皇の血が噴出する。三段構造になった顎が順に閉じ、教皇を肉塊へと変貌させる。

 断末魔は途中で止まり、血の雨が降る。

 

 ──ああ、これを見て、この光景を生で見て心地いいと感じてしまった俺はもう、壊れているのだろうな。

 

 トラバサミは肉塊を血溜まりに引き摺り込む。

 それで、処刑は終了した。

 

「勝った……のか……?」

 

 あまりの凄惨な光景に、顔を青くした元康がそう呟いた。

 同時に、魔力の基盤となる教皇が死んだことにより、大聖堂が崩壊する。

 

「きょ、教皇様が悪魔に負けてしまった……」

 

 絶望したかのように三勇教徒達が呟く。

 兵士たちがそんな三勇教の連中を捕縛していく。

 

「ごしゅじんさまあああああああああ!」

「ひどい傷! それにあのスキル、血肉を糧にするって……。そんな! じゃあナオフミは……!」

 

 この状況、先の展開を知っていると非常に居心地が悪い。

 俺はさっき治療薬をかけたせいで近くにいるため、余計にね。

 

「母上!?」

 

 物凄い美人の司令官が近づいてきたので、俺は距離をとった。

 いや、だって、ここはヒロインの見せ場じゃん? 

 俺みたいな野次馬には居場所がないんだよ。

 

「此度の活躍、目を見張るものでした。盾の勇者様」

 

 すぐに女王陛下は指示を出す。

 

「皆の者! 盾の勇者様の治療を最優先にするのです! これは王命である。必ず盾の勇者様を生かしなさい!」

「「「ハッ!」」」

 

 治療師達が尚文を取り囲む。

 これで、ようやく俺も肩の荷が降りるってものだ。

 

「ソースケくん」

「ん、ライシェルか」

 

 話しかけてきたのは、討伐軍に居たライシェルだった。

 

「無事でよかった。レイファちゃんやリノアちゃんも無事だと聞いている」

「ああ、もう、こんな目はこりごりだよ……」

 

 俺はため息をついた。

 しかし、これでようやく第4巻の終了である。

 いい運動したな! 

 尚文は大変なことになってしまったが、今の話の流れならば、原作再現度は80%以上は維持できているはずだ。

 あとはこのままメルロマルクをオサラバして、原作に関わらないようにひっそりと暮らせばいいだろう。

 俺はウキウキ気分で今後のことについて想いを馳せていたのだった。

 

 もちろん、運命はそんな事を許してはくれなかったわけであるが。




アニメ版を改良した?物を基準に書いてみました。
最後の最後、結末は書籍版になりますので、ご安心を。

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