波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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宗介と勇者たちが合流した時のお話


チートコードを教えろ

 傷ついた勇者達が、俺のいる馬車に集まってきた。

 時期は、教皇のところに向かう前の話である。

 俺がラヴァイトと共に南西の砦に向かっていると、影が出現する。女王陛下の影を名乗る影だけど、ごじゃる口調では無い。

 

「《首刈り》のソースケ様」

「うおっ! ビックリしたー」

「勇者様を確保しましたので、迎えにきていただけないでしょうか?」

 

 あー、そう言う時期だったなと思う。今はちょうど一人だったので、それは問題ないだろう。

 

「わかった、どこに行けばいい?」

「こちらのポイントに」

「わかった。ラヴァイト、右に向かってくれ」

「クエー!」

 

 俺は影の指定するポイントに移動する。

 すると、その地点には樹と錬、そしてレイファにリノアがいた。

 

「レイファ?! リノア!」

「クエー?! ゴシュジンサマ?!」

 

 俺とラヴァイトは二人の元に駆け寄った。

 ややこしいのでラヴァイトが喋ったのは無視する。

 レイファは身体を縮めて震えている。

 

「おい、錬! なんでレイファとリノアが?」

「ああ、宗介か。レイファとリノアが兵士に襲われたんで俺が助けて同行させてるんだ」

「? ……あー、細かくきくぞ。レイファとリノアが襲われたタイミングはどのタイミングだ?」

「元康とともに北西の関所で検問をして、尚文を追い詰めたタイミングだ」

「襲われた理由は?」

「許可されたそうだ」

「許可された、ね。誰にかわかるか?」

「いや、言っていなかった」

 

 おそらくヴィッチか? 

 

「近くにマルティ王女はいたか?」

「ああ、メルティ王女を救いたいと言っていた」

 

 なるほど、状況が飲み込めてきたぞ。

 

「どのタイミングで錬のパーティになったんだ?」

「レイファとリノアと俺が兵士達に囲まれたから、逃げるためにパーティ申請をしたんだ」

「理由は?」

「転送スキルを使うためだ」

 

 あー、おおよそわかった。

 つまり、尚文がフィーロに乗って逃げるタイミングに、どさくさに紛れて元康に見えないようにレイファ達を消そうとしたんだろう、ヴィッチが。

 純粋なレイファは奴の好みだし、それがヴィッチには邪魔者に映ったか。

 それを目撃した錬が、レイファ達を助けるために介入して、転送剣で逃げたのだろう。つまり、尚文からは三勇教の調査依頼を受けていないと言うことになる。

 次だ。

 

「お前らはなんで、三勇教の施設にいたんだ?」

「怪しかったからだ」

「怪しいと思ったタイミングは?」

「レイファに三勇教のロザリオを見せてもらった時だな」

「三勇教のロザリオを見てどう思った?」

「盾が無い事を疑問に思ったな。レイファやリノアの話を聞いて、きな臭いと思ったんだ。尚文だけが優遇されない理由も、察した」

 

 なるほどなるほど。それで調査を開始したんだな。

 

「オーケー、事情は大体把握した」

 

 俺がそう言うと、樹が信じられないものを見る目で俺を見ていた。

 

「宗介さん、凄いんですね」

「ん? 何がだ?」

「錬さんからそこまで情報が引き出せる事ですよ!」

 

 そうか? 

 

「……とにかく、樹は錬から誘われて調査に乗り出したんだろ。お前の好きそうなイベントだって言ってさ」

「……当たりです。なんでわかるんですか?」

「お前について行ってアルマランデ小王国で活動してたからな」

「コミュ力の塊ですね、……羨ましいです」

 

 樹が珍しく褒めてくるので気持ちが悪かった。

 

「ソースケ様」

「アーシャ、よくやった」

 

 俺は頭を撫でてやる。ま、絶対にヤらないが、これぐらいならな。

 

「勿体ないお言葉です」

 

 で、レイファの方に戻る。

 

「レイファ、大丈夫か?」

「うぅ……ソースケぇ……怖かったよぉ……」

 

 俺は抱きしめてやる。そして安心させるように頭を撫でてやる。

 

「そ、ソースケ! 私も怖かったわ!」

「ああ、リノアもご苦労様」

 

 俺は空いた手でリノアも撫でてやる。

 うーん、なんだこれ? 両手に華やん? 興奮なんて全くしないが。アーシャが後ろから抱きしめてくるのはぞわぞわする。

 ラヴァイトもフィロリアル・キングのまま俺たちを抱きしめてくるので暑い。

 

「そう言えば、宗介、聞きたいことがあったんだ」

「お、おう。なんだ?」

「さすが錬さん……」

 

 真剣な表情で聞いてくる錬。何が聞きたいんだ? 

 

「お前や尚文が使える、あのチート武器を使えるようになるチートコードを教えてくれ。知っているんだろう?」

「チートコード?」

 

 思わず素で返してしまったので、詳細を聞くことにする。

 もちろん、レイファとリノアを撫でながら。

 

「あのチート技ってのは、具体的には何を指すんだ? 勇者の武器ってのはチートの塊だからどんな形状か言わないとわからないぞ」

「何を言う? あの禍々しい、竜の掘られたデザインのナイフのことだ。尚文は黒い竜の模様の描かれた炎を出す盾だったがな」

「ああ、憤怒の盾ね。あれのシリーズが欲しいと」

「ああ、そうだ。宗介のその言い方ならば、憤怒の剣か? 出すためのチートコードが知りたい」

 

 つまり、あのカースシリーズを錬も使いたいという事か。

 どう説明しよう。

 

「あー……。お前、三勇教に対して怒っているか?」

「もちろんだ」

「どれぐらい?」

「勇者である俺を嵌めようとしたんだ。許されない」

「……お前、この世界はブレイブスターオンラインだと思っているのか?」

「そうだろう。……ん? 待て、何で宗介が知っているんだ?」

「それは置いておいては、殺されかけたことに対してどう考えている?」

「……そりゃイラッとは来るが、倒されても復活するだろう? 現在登録されているメルロマルク城下町の龍刻の砂時計前に復活するはずだ」

「ははは、死んで復活する訳ないだろ。なるほどなるほど、その認識なら『憤怒』は難しいな」

「どう言うことだ?」

 

 錬は眉を潜めている。よくわからないのだろうな。

 

「お前らがゲームだと思っているから、それ以上怒るわけがないだろ。恨むわけがないだろ。だから、錬は手に入れられないさ」

「??? ゲームだろう? 入手方法はあるはずだ。正規入手手段があると宗介は言っているが、不正な入手手段もあるだろう? チートやバグを使った裏技みたいな」

 

 訳のわからないと言った顔をしているな。

 ワザップジョルノするか? 

 

「おいおい……」

 

 リノアを撫でていた手で錬を指差す。

 

「あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます! 理由はもちろんお分かりですね? あなたが皆をこんなウラ技で騙し、セーブデータを破壊したからです! 覚悟の準備をしておいて下さい。ちかいうちに訴えます。裁判も起こします。裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい! 貴方は犯罪者です! 刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい! いいですね!」

「?!?!」

「ワザップジョージですか……。錬さんはわかってないみたいですよ?」

「えぇー。って、錬はVRMMOの世界から来たんだったな」

 

 てか、樹が反応したって言うことは、樹は知っているのかよ……。

 名前が若干違うってことは、似たようなネタがあるという事か。

 

「まあ、そんな感じで訴えられても困るんでね。訴える機関は無いし、仮にあったとしてそのチートコードを入力する方法も無いはずだ。確かに武器はまるでゲームのように育成されるし、ステータスなんて閲覧できるから勘違いするが、現実だぞ」

「……宗介が言いたいことがわからないな。何が言いたい?」

「この世界は現実だ。ライフは1つだけ。まずはそれを認識しろと言う話だ」

「いや、ゲームだろう? 現実ならばステータスなんて存在しないからな」

 

 あー、こっち方面で理解はできないっぽいな。

 認識の壁を破壊するには、もっと強烈なインパクトが必要だ。

 

「お前、他のゲームとかするか?」

「他のゲーム?」

「ブレイブスターオンライン以外のネトゲでもいいしコンシューマゲームでもいい」

「……ああ、それはあるぞ」

「そのゲームで、ヒロインが出てくるよな。好感度って見る方法があるゲームと見ることができないゲームがあると思うんだが、どうだ?」

 

 錬は少し考えて、何か思い当たったのか、顔を赤らめてうなづいた。

 

「……そんなゲームもあるな」

「お前今エロゲの事を考えたな?」

「うっ、くっ……! そりゃ好感度を観れるゲームって普通はエロゲーが殆どだからな! やるだろう?!」

 

 幼馴染がいるのにエロゲもやるのか……。高校生だと買うのはNGだが、実際に購入する際は誰も気にしないからな。

 

「じゃあ、普通の大作RPGは好感度は見れるか?」

「見れるわけがないだろう? 何が言いたい?」

 

 こう言うのって樹の方が察しがいいらしかった。

 

「隠しパラメータ、ですか……」

「正解だ。ステータス魔法で確認できるステータス値以外にも、隠しパラメーターが存在する。憤怒の剣が欲しいなら、隠しパラメータのカルマ値である『憤怒値』を一定以上貯める必要がある」

「……! なるほど。隠しパラメータは盲点だったな」

「ええ、確かに。よくよく考えれば、存在して当然ですね。ゲームならば変数やフラグの管理は当然しますし、RTAをやる場合は隠しパラメータが何をすればどう貯まるのかも気にしますからね。失念していました」

 

 謎の納得が起きる。うーん、さらにゲーム認識が固着化している気がする……。

 なので、これだけは忠告しておいた方がいいだろう。

 

「お前ら、仮にこの世界がゲームだとしても、残機の存在しないデスゲームだから、もっと真剣になった方がいいぞーって聞いてないな……」

 

 さっきまで殺されそうだったにもかかわらず、怒るでもなしにゲームだと認識しているその感覚のズレには驚くしかない。

 こう言う話って、主人公ならば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろうにな。つまり、自分たちが主人公だと思っている脇役の立ち位置にいる事に気付かないのだろうか? 

 そろそろ、命がけで……ゲームだと認識しててもいいから、真剣に、真摯に取り組んで欲しいものである。

 俺はため息をついて、撫でるのを再開した。

 レイファは死の恐怖でこんなにも震えているんだ。

 レイファの体温、呼吸、命の熱量がゲームだなんて否定はさせない。

 だが、ラヴァイトのせいでクソ暑い! 

 

「ラヴァイト! 馬車もってこい!」

「クエ! ソースケ、わかったよ」

 

 ラヴァイトはそう言って、馬車を取りに行った。

 俺たちは馬車に乗り、南西の砦……関所に向かって進み出したのだった。

次はほんへはカルミラ島編!宗介たちはどうする?

  • カルミラ島行き
  • 世界に出る
  • メルロマルク国内で残党狩り

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