波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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弾劾裁判

 俺は現在城の中央広場にいた。

 先日、尚文が目を覚ましたわけで、全治1ヶ月だそうだ。一応知り合いだし、治療院にお見舞いには行っている。

 その日のうちに、城下町には重大な発表があるため城下に集まるようにと御触れが出る。

 俺は投擲具の勇者として謁見の間に来るように言われたが、流石に弾劾裁判まで参加はしたくなかったからな。ヴィッチはまあ色々思うところはあるが、クズは俺にとって不利益になることはしてこなかったので、特に感慨もない。

 と言うわけで、俺は城下に行き、映像を見ていた。

 

「何故我々は城内へ入れないのだ! 盾の勇者の従者だけとはどう言うことだ!」

「マ、マルドさん落ち着いて!」

「ええい! うるさい!」

「ふぇぇぇぇ!」

 

 と言う燻製とリーシアのやりとりが聞こえる。

 俺を毛嫌いしているアイツのことだ、見つかったら面倒臭いのでそっと離れておく。

 映像水晶が映し出す光景には、アニメとまったく同じ展開が繰り広げられていた。

 

『それでは始めましょうか、愚かな王配と第一王女の弾劾裁判を!』

 

 女王陛下がそう宣言すると、広場はざわめく。

 

「裁判だって?!」

「王様とお姫様のか?」

 

 俺はアニメもちゃんとチェックしていたため展開を知っている。

 まあ、茶番だし別に重要なことを考えている方がいいだろう。

 そう思いながら、俺は呪具ポケットから取り出した。

 

『マルティには酷い虚言癖がありますので』

『そんなぁ、私、素直で誠実な良い子でしょう?』

 

 ヴィッチの懇願にリノアが

 

「どこがよ」

 

 と呟いた。さすがはヴィッチ。喋るだけで他人を不快にするのか。

 

『や、やめてぇ……ママァ! う、ぐ、うわああああああああ!』

 

 奴隷紋……多分王族であるから高位奴隷紋だと思うが、それが刻まれたらしい。

 ざまぁないな。流石に胸がスッとするね。

 ヴィッチはまあ、俺の因縁の相手ではないし、これから先も出番があるので俺は殺すことはないがな。

 本気で消すなら呪具の機能を全開放した上で消すのが一番だろう。

 並行世界攻撃まで開放したら、魔神化的な意味でとんでもないことになりそうな気はしないでもないが、目標としては悪くないだろう。

 愛の狩人に殲滅される前にグリフィンにでもあった方が良いかもしれないな。

 

 七つの大罪には司る魔物というのが存在する。

 これは普通にWikiに載っているんだがね。

 興味で調べてことがある。

 俺の記憶が正しければ、こうだったはずだ。

 

 傲慢……グリフォン、ライオン、孔雀、フクロウ、コウモリ

 憤怒……ユニコーン、オーガ、ドラゴン、狼、猿

 嫉妬……マーメード、蛇、犬、猫、土竜

 怠惰……フェニックス、熊、牛、ロバ、ナマケモノ

 強欲……ゴブリン、狐、ハリネズミ、カラス、クモ

 暴食……ケルベロス、豚、トラ、リス、蝿

 色欲……インキュバス、サキュバス、山羊、サソリ、ウサギ、鶏

 

 竜帝の予測では、俺はこれらの種族のうち7種を取り込む必要があるらしい。もちろん、知的生命体になるわけだが。

 しかも、性質上は亜人はNGらしく、魔物でなくてはならないそうな。マーメードはどうするんだよ。

 と言うわけで、ドラゴンと同様の感じである知的生命体な魔物を探して取り込むと言うタスクが俺に加わったのだ。

 

 我の知識では、グリフィンの王なら傲慢に該当するのは間違いないな。だが、我はあいつらが嫌いだ。我の縄張りをしょっちゅう荒らしてきた故にな。

 

 はいはいそーですか。

 

 フェニックス、ゴブリン、ケルベロス、サキュバスと言う種族の魔物はこの世界には存在せぬ。代替となる知性を持つ魔物もおらぬ。

 もしかしたら別の世界に渡る必要があるかもしれぬな。大罪を司る魔物はドラゴンを除き各世界に2体存在すると記憶にある故にな。

 

 竜帝が持っている記憶がそれなのか……。

 

 ほぼほぼお主の記憶している書物と被るのだ! 仕方なかろう。

 妲己……狐の魔物種は、この世界の何処かに生息するのは確かだな。我の記憶には、存在することまでしか記憶にないがな。司る魔物故に非常に強欲な種族だったはずだ。

 

 という事らしかった。

 しかし、ヴィッチの叫び声は汚いな。女が発して良い声じゃないよ。

 メルティ王女を殺そうとしてた事を知られて、クズはかなり驚愕の表情を浮かべた。クズが狂ったのはマルティおよびシルトヴェルトのヴィッチが第一皇子をウロボロス劇毒を使用して殺害したからだったな。

 

『マイン、君はあの夜尚文に犯されそうになった、そうだよな?』

『そうよ元康様! 私は……ぎゃあああああああああああああああああああ!!』

『マイン!』

 

 元康の純粋な確認行為にすら奴隷紋発動でダメージを受けるってなぁ……。

 

「……あの王女様、嘘しかつかないんだ……」

 

 レイファが唖然としていた。

 

「そりゃ、マリティナにそっくりの性格じゃない。世界のゴミであるマリティナと同じ性格って、マルティ王女は傾国の悪女よね。今後のためにきちんと処刑したほうがいいわ」

「リノアさんに同意です。ソースケ様、サクッと首を刈っちゃいましょう!」

 

 あー、うるさいうるさい。ヴィッチを処刑しない合理的な理由が見つからないので、俺はスルーすることにした。

 物語を改変しないのは、こちらの都合なのだ。

 すでに俺が投擲具を持っている時点でやばいぐらいにズレが発生している気がするが、気にしてはいけない、気にしたら心が折れる。

 

 まあ、結果としては、尚文にかけられた容疑は全て冤罪、強姦の罪はマルティ王女が盾の勇者をおとしいれるための自作自演、便乗したオルトクレイも同罪。三勇教は国家反逆罪および国家転覆準備罪、マルティ王女およびオルトクレイはその邪教三勇教に加担した罪で大逆罪、国家反逆罪で廃嫡および王権の停止となる。

 女王に追求されて、クズはその内心を吐露した。

 

『確かにワシは王族としてあるまじき事をしたのかもしれん。だが、それも皆、我が愛する国のため家族のために! そのためにワシは盾を排除しようとしたのだ! 盾は悪魔だ。かつて我が家族が受けた災いを此度も必ずもたらす! そんな事は断じて許さん! 断じてな!』

 

 迫真と言うか、本気でなのだろう。それで目が曇ってしまい、三勇教の暴挙を悉く見逃してしまったのはどうかと思うがな。

 

『判決を言い渡します。オルトクレイ=メルロマルク32世およびマルティ=メルロマルクは、大逆罪および国家反逆共謀罪によりその王位を剥奪しかる後に死刑に処す!』

 

 女王陛下の処断に、広場がざわめいた。

 

「死刑だって」

「本当かよ!」

『陛下、それはあまりにも!』

「そうだ! 死刑はあんまりだ!」

「姫さま可哀想」

 

 王様は、確かに可哀想だけれど、ヴィッチは死んで良いよ。

 俺が関わらずに死ぬなら、助ける義理もないし、レイファを殺そうとしたのだ。むしろ死んでしまえと思う。

 ちなみに、レイファを襲った兵士の顔は教えてもらえなかったため殺していない筈だ。いや、もしかしたらあの一個師団の中にいたかもしれないが、あの集団の輪から出た数人以外皆殺しにしたしなぁ……。

 しかし、兵士200人近く殺害はやりすぎかな? 

 どうでも良いな。

 

『刑の執行は即日、今この時! 大罪人たちの最期を我が国民に見せしめるのです!』

 

 刑の執行が決まった。




狐に変更でオッス、おねがいしまーす。

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