あの後、再び四星……尚文以外とビッチ、クズが謁見の間に召集されて事情説明と、ビッチとクズの今後について説明がなされた。
尚文には事前に治療院で説明済みだったらしい。
勇者には今回の騒動の謝罪と説明、戦争が起ころうとした事、世界情勢の話が行われた。
本来であれば、フォーブレイから順番に一人ずつ四聖は召喚されるはずだった事。
メルロマルク国は4番目に召喚する予定だった事。
尚文がメルロマルク国で差別される理由。
本来の後任が第一の波で死んでしまった事。
三勇教が有能な人物を暗殺して回った事。(多分俺も含まれる)
ヴィッチの借金返済と、クズは国の将として波の前線で戦うか、冒険者に身を落とすかの選択を迫られる。
なんで俺がこんな場に居るんだろうな?
完全に七星の投擲具の勇者扱いである。
ちなみに、俺が三勇教から狙われた理由も説明された。
どうやら、俺の存在は錬に【いい影響】を与える存在だったらしい。
愚かなほうが操りやすいので、有能な俺は追放処分にしてついでに殺してしまおうと考えたそうだ。
だが、俺はしぶとく生き残った。三勇教の影や追っ手の騎士を殺して生き残った。俺が壊れたのはやはり三勇教のせいだったんだな。
で、行方不明になったと思ったら、アールシュタッド領で問題行動ばかり起こす事で有名な冒険者どもを抹殺したと。俺が惨殺した令嬢の中には当然ながら三勇教に寄付をしている悪徳領主もいたわけで……。結果、俺は賞金首になったそうだ。
まあ、確実に三勇教にとって目障りな存在だったんだな、俺は。
支援金については、今後は盾の勇者を多めにするが、これは不当な差別を行った結果の謝罪も含めているため、これまでの分を受け取るものだと言うふうに言われた。
まあ、納得せざるを得ないようだった。
「ソースケ様はどうされますか?」
女王陛下が聞いてきた。
「どう、とは?」
「我が国は七星勇者様に頼る権利を放棄しています。ですので、残られる場合は我が国としても支援金を支給するのが良いかと」
「では、メルロマルク国内で活動する最低限の支給で構いません。後は、騎士の一人であるライシェル=ハウンドを連れて行っても構いませんか?」
「構いませんよ」
「ありがとうございます」
ライシェルが居るだけで、安心感がぐっと上がる。やはりタンクは偉大なのだ。
錬は何かを言いたそうに俺を見ているがね。
「では、勇者様方、祝賀会の時間までごゆるりとおくつろぎください」
こうして、事後説明会は御開きとなったのだった。
俺は、レイファとリノアのクラスアップの為に、龍刻の砂時計まで来ていた。
我に任せれば特別なクラスアップが出来るぞ。フィロリアル如きに負けはせぬ!
などと言うものだから、なんだかなとは思う。
ちなみに、既に俺は仲間の投擲具シリーズが出現している。
投擲具のツリーは基本的に同一だ。
素材による解放系、心の変化による解放系は例えば、リーフ投擲具と言う項目があって、そこから投げナイフ、手斧なんかに変化するといった形だ。強化値は共有である。
ウェポンコピーは、アイアンナイフをコピーすればアイアンナイフが解放される。アイアンアックスをコピーするとアイアンシリーズで統括されるといった感じだ。武器のステータスはコピーした武器に依存する。
カースシリーズも素材系と同一だ。ラースダガーを所持しているが、ラースアックスに変化できるし、ラースチャクラムにも変化できる。
変化できる投擲具は、ウェポンコピーのが優先されるかな。
ナイフ、アックス、クナイ、鎖鎌が基本で、チャクラムや投石用具……パチンコとかはウェポンコピーするとほかの素材系武器でも使えるといった感じだ。
『狩猟具』や『投擲具』みたいなジャンル系は基本こんな感じなのだろう。まあ、それを言うなら『斬撃具』である剣、『刺突具』である槍みたいな形で認識さえすれば、槍でレイピアなんかを使えたりしそうである。
まあ、そんな武器の解説はいい。
とにかくクラスアップだ。
「わぁ! 龍刻の砂時計って初めて見るよ! ソースケ!」
「まあ、なかなか見る機会は無いものね」
「一般人がここに立ち入ることはまず無いからな。仕方ないことだ」
現在は、四聖教が管理する予定になっており、すでに教会の紋章は四聖教のものに置き換わっていた。現在はフォーブレイから司教を呼んでいる最中なんだそうで、現在はメルロマルク騎士が常駐して監視をしている。
「えーっと、龍刻の砂時計に手を乗せれば良いんだよね?」
「ああ、それでできるはずだ」
リノア、レイファの順に龍刻の砂時計に触れると、龍刻の砂時計本体と俺の体が光る。そして、その光がレイファとリノアに降り注ぐ。
「わわわっ! 勝手に選ばれちゃったよ!」
「……凄いわ! ステータスが2倍近くになってる!」
ふふふ、さすが我であるな。
お前がいてくれて初めて役に立ったと思ったよ。
俺が感心していると、アーシャとライシェルが驚く。
「2倍だと?!」
「普通は、どれかのステータスが1.5倍になればいいほうですのに……」
「確か、特殊な道具を用いることによって、特別なクラスアップが出来たはずだ。俺はその道具を持っているからな」
俺が解説すると、納得した様子だった。
「なるほど、そう言うことか」
「あの時、龍のアイコンが出たのはそう言うことだったんだね」
リノアはてっきり、フィロリアル系統かと思ったんだがな。龍って事は地脈関連のクラスアップか。
物知りよな。歴代の勇者の中でもここまで物知りでかつ現実だと認識しているものは居らんだろうよ。
龍のクラスアップならば、龍脈法の適性がレイファとリノアにはあると言う事か。
そうだ。なんなら我が祝福してもいいぞ?
ま、時期が来たらな。
竜帝との会話もそこそこにしつつ、俺たちは用事が済んだので龍刻の砂時計を後にする。
今後も俺とともに居るつもりのレイファとリノアはここで補正をかけておかないと厳しいからな。
いずれは異世界を渡る必要があるが、少なくともこの世界にいる間は俺が面倒を見ることになる。ならば、強い方が生き残る確率が高いからな。