俺たち……勇者達と俺は女王陛下に連れられて、会場の別室に向かった。
案内されたのは塔の頂上のような部屋だった。
その部屋は円卓の置いてある部屋で、
入り口の近くが尚文と女王陛下が座るので、上座なのだろう。
時計回りに女王陛下、空席、空席、錬、樹、尚文、と座ったので、俺は女王陛下の隣に座った。
「じきに槍の勇者様であるキタムラ様も来ます。どうかしばしのお待ちを」
錬と樹はステータスを確認し始める。それに習って尚文もステータスを確認し始めた。
俺も投擲具を装備して、ステータスを確認する。
前回の波の前にある程度強化をしていたし、道中で倒した魔物は逐一投擲具に吸わせていたので、能力としてはなかなかに高いのではないだろうか?
まあ、金銭によるオーバーカスタムは若干してある。何故課金要素?
痒いところに手が届かなかったからと言うのもあるけれどね。
およそ5分後、元康が戻って来るなり尚文を睨みつける。
「キタムラ様、娘に確認したかと思いますが? イワタニ様に毒を盛ろうとした罰ですよ」
「そう言えばそんな話をしていたな」
錬が腕を組んでいつものようにぶっきらぼうに答える。
「キタムラ様がお怒りになるかと思い、配下の者に我が娘マr……ビッチから直接白状するように命じました」
しかし、コイツは何に固執しているんだろうか?
奴隷紋の制約のせいで、元康と女王陛下には嘘を吐けないのにな。
「ま……アバズレは悪くない! 尚文が悪いんだ!」
「お前なにその超理論?? 良いよなぁ、人のせいにすれば、思考放棄に正当性を持たせられるもんな」
ボソッと呟いたのが聞こえたらしい、元康は驚いていた。
「な、なんで宗介が?!」
「宗介も勇者だからだ。七星……とか言ったか? 宗介もそれに選ばれてしまったらしい」
「え、あ、ふーん。そうなんだ。ま、よろしくな。一緒に世界を救おうぜ」
握手をしてきたので、まあ、返してやる。
話が逸れたせいか、元康はそのまま椅子に座って尚文を睨む。
「ではこれより、四聖勇者様と七星勇者の投擲具の勇者様による情報交換を始めます。司会進行は私、ミレリア=Q=メルロマルクが務めます。どうぞよろしくお願いします」
「ああ」
「よろしくお願いしますね」
そして、何故かいの一番に全員が俺を見る。え、何?!
「情報交換か……」
「まずは、宗介さんに話を聞かないといけませんね」
それに、全員が同意する。
「え、ナズェ……?」
「僕たちよりも色々と知っているんではないですか? 時折まるで未来を知っているかのような言動をしていましたし」
「ああ、俺もそれが気になった。特に前の波で俺たちを暴走して攻撃してきたときは顕著だった」
「宗介、腹を割って話す時だ。対価は女王が出すから、全部話せ」
「え、そうなの? 知っているなら教えてくれよ、な?」
「いやいやいや、俺だけなんでこう責められるんですかねぇ……?」
全員がずいっと顔を寄せて来る。
「カースシリーズ、でしたっけ? 尚文さんが使っているチート武器の解放方法も知っているみたいでしたし」
「だが、まだ解放できないでいる。実際のところはどうなのかを知りたい」
「アレは使っちゃいけない!!」
と、元康が大声を出した。
取り乱している?
「いいか、お前ら。言っておくが、あの武器には手を出しちゃいけないんだ! 正直、制御できている尚文が異常なんだ!」
どうしたと言うのだ?
「……元康もカースシリーズを解放している。『傲慢の槍』だったか? 精神でも犯されそうになったか?」
「ああ、アレは使い続けると元の人間じゃなくなるからな! お前ら絶対に使うなよ!」
ものすごい剣幕だ。それほど真剣と言うことなのだろう。
「……まあ良い」
「それ以外に僕の知りたい情報は無いですね」
元康はどかっと椅子に座った。
「……では、話が止まってしまいましたので司会進行である私が各国の反応や配下の者達の声を伝えようと思います」
全員が女王陛下の言葉に耳を傾ける。
「正直に述べましょう。各国の伝承や波の記述、その他を総合するとイワタニ様、次にソースケ様以外の勇者様方に関して、強さに難があるのではないでしょうか? との意見が出ています」
「「「何?!」」」
三人の勇者がそれぞれ不快そうな声を上げる。
「どう言う意味ですか?」
樹の言葉に錬と元康が同意する。
「宗介はまだわかる。元が《首刈り》なんて二つ名がつくくらいの冒険者だからな」
「ええ、宗介さんの強さには疑問を挟む余地はありません」
「だが、よりにもよってなんで尚文が一番強いような事を言うんだよ!」
「ではお聞きいたします。三勇教の強行に対して、一番効果的な攻撃をなさったのは誰ですか? その前の波でもイワタニ様以外の御三方は敗れたと聞いていますが」
「う……」
うーん、これでは聞く耳を持たなくなるだろうな。正論で叩き潰しても人間納得はしない。相手をその気にさせるようにエンロールメントするのが一番だ。
これまで頑張ったのに、評価されないという事は、努力の方向性が間違っているだけなのだ。別に三勇者がサボっていたわけじゃ無いだろう。効率よく強くなろうとしているに過ぎない。
ただ、こういう育成系のゲームに『効率』をどの按分で追求するかは重要だろう。『効率的』過ぎるとステータスを犠牲にすることになる。尚文は効率よりも泥臭く解放していった結果なのだろうな。
現時点で強化方法を共有していない勇者の差異はそこだろう。
もちろん、言う気は無かった。
「この世界の者達は勇者様方が連携する事を提案しているのです。趣旨をご理解いただけたでしょうか?」
「……わかりました」
「そうだな」
「……わかったよ」
やっぱり、納得はしてない表情だな。
「……やはり、ここは宗介さんに聞くべきだと思うんですよ。もともと勇者になる前から恐ろしく強いキャラではありましたが、教皇戦前に兵士を一人残らず殺害した強さはただ事ではありません」
「そうだな。投擲具の勇者にいつなったのかは知らないが、宗介は俺のパーティにいた時から強かった。その秘密を知りたい」
「そういえば、いつも持ってる強そうな槍はどうしたの? あれコピーさせてよ!」
三者三様に聞いてくるな!
「あーあー、最初に基本事項確認した方がいいんじゃないかなぁ? ほら、尚文は知らないかもしれないしさ! もしかしたら基本的なことに隠された重大な秘密があるかもしれないぜ?」
「今更確認しても……」
「ヘルプを見ろ」
「うーん、まあ確かに、カースシリーズなんて元々ヘルプにも載ってなかったしな……」
気まずそうに各々が答える。
まあ、円滑に進めるためにも、俺が口火を切った方がいいだろう。
「じゃあ、基本のキからな。勇者武器は素材の数やレベル、後は所有者の心理的状況……ゲーム的にいうならカルマ値とか友好度とかそんな感じの条件を満たすと、固有の武器が解放される。武器には固有技能があるものもあり、時間経過で解放される。習得した技能があった場合はステータスアップに置き換わる。オッケー?」
「ああ、その通りだ」
「間違いないな。ブレイブスターオンラインとは仕様が違ったが、問題ないだろう」
「僕たちもそうやって素材を吸収させてますしね。ディメンションウェーブとの違いは前の武器が残っていることですね」
「ヘルプに載ってることだな。まあ、心理状態によるってのは初耳だが……」
他の勇者も同意する。
「じゃあ次は俺かな? 武器は同じ系統の武器を持つことで入手できるウェポンコピーシステムがあるよな」
「……は?」
尚文が素っ頓狂な声を出す。
「ええ、これは大きな相違点でしたが、タダで強い武器が手に入って助かりました」
「ああ、俺たちは勇者だ。そういうこともある」
「みんなわかっていると思うけど傭兵の国ゼルトブルの首都にある武器屋の品揃えが良い」
「宗介はどうなんだ?!」
尚文が聞いてきたので答えてやるか。
「投擲具はそもそもウェポンコピーが出来ないと使える武器種が増やせないからな。当然実装済だよ」
「なんだそれは?!」
驚いた様子の尚文。まあ、この時点では知らないもんな。
「尚文さん。そんなことも知らなかったんですか? よく生きてられましたね」
樹が煽る。尚文の表情筋がピクっと動いたのが見えた。言葉に命中を乗せるのやめてくれませんかねぇ……?
「お前ら、自分で見つけたのか?」
「と言うよりも、店売りの武器を使うのは当たり前だろ? 最初は弱い武器だったし、強くしていくと言われても最初はな……」
元康の言葉に頭を抱える尚文。そりゃ、盾で試すわけがないよな。
「規則事項で弾かれはしたけど、ウェポンコピーが出来て装備できたんだよな」
「ああ」
「ですね」
尚文が苦虫を噛み潰したような表情をする。
煽り以前に自分が気づかなかったことに対する悔しさだろうけどね。
「……話を続けてくれ」
「魔物は武器の素材になると同時に、武器の項目内で調べるとドロップアイテムが出る」
「!!」
錬の解説に、驚きの声をあげる尚文。目が泳いで動揺しているのが見ているだけでわかる。
「なんか店じゃすごく高いアイテムもあるよな。在庫もあるようだし、この辺りは異世界って感じだよな」
「そうだな」
「ですね。魔物のドロップ頼りのものもありますよね」
俺はアイテムエンチャント……元康の強化方法のほとんどにドロップアイテムを突っ込んでいる。
ちなみ、ドロップにはG……つまりお金のドロップもある。と言うか、お金によるオーバーカスタムを知っているからこそドロップするのだろうけれど、それを使っての無課金強化ならしてはいる。
「後は道具の作成だよな」
「技能系ですね。これは元からありますよね」
「……一応詳しく」
ちなみに俺はこれは活用していない。
自分の手で作った方が品質がいいからだけれどな。
これでも上級レシピの一部までなら自作できる。
「技能のレシピとスキルを習得したら武器に材料を吸わせてシステムで作るんですよ。しばらくすると武器から出てきます」
ダメージを受けまくっている尚文。
まあ、別に知らなくても強くなれることを尚文が証明しただけである。
「難点はドロップとか作ったアイテム以外取り出せないところだよな」
「そうだな。出し入れが簡単に出来ないのが問題だ」
ため息をつく尚文。尚文にはかなりの収穫になったっぽいな。
「狩場に関しては一概に言えませんよね」
「そうだな……これは一覧を作れば良いが、このレベル帯だと適正な魔物を狩る事さえ守ればどこも同じになってくる」
「そうですね」
全員が意見が一致するようだった。
「宗介さんはどこで狩りをしてるんです?」
「え、うーん、俺は人間を狩ってレベルが上がった口だしなぁ……」
「……聞いたのが間違いでした」
なぜガックリするんだ?
一応狩る人間の経験値には傾向があるんだぞ!
クラスアップ前の人間の経験値はあまり高くない点、高レベルであるほど経験値の倍率が高い点、あと、俺特有だが波の尖兵はさらに倍率が高いのだ!
……よく考えたら誰もやらないよなぁ。
「じゃあ、他に何かあるか?」
尚文は俺をスルーして尋ねた。
「では、尚文さんは理解していないようなので特別に強くなる秘訣を教えてあげましょう」
いつになく自信ありげな樹。
「この世界はですね、武器のレア度が全てなんですよ。付与とかはついでです。元が強くないと意味がないんです」
あー、なんかそう言うのあったなぁ。
確か、共有できない強化方法である。弓独自な感じかな?
むしろ、こっちとしては付与の方が重要である。
「ユニーク武器とかレジェンド装備とかそんな感じ?」
「はい。認識は間違っていません」
少し試してみるか。
信じてみるが、ダメでしたー。
「堂々と嘘を言うな!」
「最初は本当のことを言って途中で嘘を混ぜるなんて最低だぜ」
毎回思うが、なんでこいつらここで怒るのかね?
武器独自の強化方法だと言う考え方はないのかね。
「な、何を言っているのですか! これが真実ではないですか!」
「いいや、嘘だ」
「そうだぞ。お前は嘘を吐くんだな」
「い、いや! 嘘なんて言っていませんよ!!」
「宗介もそう思うよな!」
「え、俺に振らないで。ご自由に続きを、どうぞ」
俺の反応に、二人は気勢が削がれたのか、興奮して立っていたのに椅子に座った。
「宗介さん! どうなんですか?」
「え、いやー、だってねぇ。ゲーム違うなら強化方法も違うの普通じゃない? 逆に嘘をついてるって騒いでるお前達の方が滑稽だぜ?」
ニヤニヤしながら言う。
「基本は同じなのに応用が異なるって言うのも変だと思いますが……」
「じゃあ、同一規格で異なる強化方法がある理由を考えたら良いんじゃないの?」
「ああ、宗介の言うことにも一理あるな。それじゃあ一応最後まで聞いておこうじゃないか」
尚文が樹を促す。
「え、ええ。他には武器によってまちまちですが、鉱石を使って強化をするんですよ」
鉱石強化はよく使うな。武器によって鍛えられる強さの限界値が変わってくるのだ。
樹の強化にはアイテム必須で、アイテムからエネルギーを抽出して使用する系統が多いが、基礎能力を強化できるジョブレベルはオススメだな。
「最大数まで強化するのが鉄板です」
「失敗のリスクがあるだろ。そんな危険な嘘を教えるなよ」
元康の強化はグラインダーで強化する旧生武器といったところだな。
失敗すると入れの脳内で「ふむ、失敗じゃないかな」と幻聴が聞こえる。ちなみに大失敗で「素晴らしく運がないなぁ、君は」と聞こえる。
樹の鉱石強化はモンハンの武器の強化だが、元康の精錬はPSO2だ。
「失敗なんてありませんよ!」
尚文が混乱している。
「何いっているんだ? 強化に鉱石は必要ないだろ」
うーん、俺が諌めたにも関わらず、やはりいざこざになってしまう。
どうしようもないな、コイツら……。
「さっきから否定ばかり! アナタはどうなんですか、錬さん!」
「俺か? そうだな、正しい強化方法を教えてやろう。この世界はレベルが全てだ。何だかんだでレベルさえ高ければどうにかなる」
「錬」
「……武器を使えば熟練度と経験値が溜まる。武器のレベルさえ上げていれば強くなるんだ」
「嘘は良くないぞ」
「ええ! 澄ました顔で嘘を言うのはやめてください!」
錬はやれやれといった表情で、なぜか俺を向いた。
「あの嘘吐きどもとは違ってちゃんとした強化方法を教えよう。武器にはさっきも言った通り、熟練度がある。この熟練度を変換するんだ」
「熟練度?」
尚文が代わりに答える。俺は知ってるからなぁ……。しかも、実践済みだし。
「ああ、同じ武器を使っているとその武器は強くなるんだ。で、その武器が役に立たなくなった頃に熟練度をエネルギーに変換させる。そして新しい武器に付与すると秘められた力が解放される」
これ、実はレアリティアップだけでは無くて技能の習得なんかにも使えるんだよね。『タイム・フリーズ』はまさにそれで習得したスキルだ。
「何を調子の良い嘘を言っているんですか!」
「気にするなよ。後は武器のレアリティを増加させれば完璧だ。失敗すると本来はなくなるんだがな。伝説の武器は大丈夫らしい」
ちなみに、今までのものを全て実践するだけでもスモールナイフは恐ろしいほどに強くなる。スモールナイフは実験で色々と強化しちゃったからね。消費するライト鉱石もアルファ鉱石も少ないし、課金する金額も一番低い。
SO4で鉄パイプを最強になるカスタマイズをして鉄パイプでラスボスを倒した俺としては、スモールナイフを強化するのは当然だった。
「なんて奴だ。クールな顔で外道だな。尚文と変わらねえ」
「なんだと?!」
「ええ、信じてはいけませんよ。嘘なんですから」
「見分けが付かん! どうやるんだ? 後俺は外道じゃねぇよ!」
「いや、この中で一番の外道は俺じゃ……」
「まずはツリーを開いて、使っている武器をチェックし熟練度を見るんだ」
錬も必死なのか、いつも以上に丁寧に解説するな。
普段からそれぐらいちゃんと説明しろよ!
「何も起きないのだが……」
「そんな訳ない! 知っていて俺に嘘吐きの烙印を押すつもりだな!」
「俺もそんなものはないぜ」
「僕もですよ。ヘルプにありません!」
「な……もういい! 話した俺が馬鹿だった!」
そりゃ、あると信じてないからな。
尚文も疑っているため出ないんだろうな。
錬は不快そうに腕を組んで椅子に座った。
「まだ僕の話は途中でしたね。武器の強化には他にもアイテムからエネルギーを取り出して武器に武器にパーセントを向上させるエンチャントを確立で行うんです」
「攻撃力10%みたいな?」
「ええ、これは振れ幅が大きいのですけれどね。失敗すると0になってしまいます」
スモールナイフには、素早さ30%のエンチャントを付与している。首刈りが捗るのはだいたいこのエンチャントの所為だったりする。
「嘘だな。まったく。別のゲームの知識を尚文と宗介に教え込むなよ」
「だから嘘じゃありませんよ! 後は魔物やアイテムの力を武器に与えることでステータスがアップします。これは全ての武器に共通する、別枠のジョブレベルのようなものです」
「アイテムや魔物のエネルギーを使った基礎資質向上みたいな感じだな」
「そう捉えてもらっても構いません」
なぜ、俺が口を挟むと「わかってくれるか」みたいな顔をするのかね?
「はいはい、いい加減なことを言う樹と錬は置いておいて、次は俺だ」
「あんまり期待していないが……」
と言っても、特化武器を作成するならば元康の強化方法は外せないからな。
スモールナイフが首刈りナイフになったのも、この強化方法のおかげだ。
「ぶっちゃけこの世界は武器の精錬強化とステータスの高さこそ全てなんだ」
ステータスの高さは共有できない強化方法だな。
「レベルよりも性能を最大限引き出せる特化したステータスがあれば問題ない。最悪、初期の武器だってちゃんと精錬すれば強い! 俺の装備ボーナスは全て攻撃力に特化させている」
あー……コイツも俺と同じく初期の槍を強化してたのか。だから槍直しでレベルを1にされた時にも初期の槍で凄まじい強さを叩き出していたのか。
でも、武器を鍛えられるなら初期の武器を最強武器と並び立つほどに鍛えたりしない? え、しない? そうですか……。
「大嘘だ!」
「ええ、尚文さん。騙されないでください!」
元康は確信があるためどこ吹く風と言った感じだな。
「武器によって変わるがまずは精錬用の鉱石を調達して精錬することが重要だ。ただし、失敗すると本来のエメラルドオンラインじゃ武器の消失……ロストだ。だけど伝説の武器は精錬の値が0になるだけで済む」
「そんなのありませんよ!」
「ああ!」
この精錬は、マジでアイツの顔が浮かぶ要素だ。強化値が上昇すればするほど成功度が下がる。10%が下限だ。「失敗じゃないかな?」
「後は目玉のスピリットとステータスのエンチャントだ。武器に吸わせた魔物の魂のかけらとアイテムによって効果は変わる。様々な恩恵が施されるんだ。例えば、宗介、お前の好きな対人用にするんだったら人間に与えるダメージアップを限界まで貼り付ける」
スモールナイフには実践済みだ。
ちなみに、魔物の死骸本体を入れた方がスピリットのエネルギーは高く入手できる。
「樹のに似たのが無かったか?」
「貼れる個数が決まっている。パーセントも固定だ」
これは、スモールナイフだと結構枠が少ない。追加の枠は課金して購入しました。
「いい加減にしてください!」
「そうだ。別のゲームの話はうんざりだ!」
最早会議どころではない感じだが、樹が俺を見る。
「そう言えば、宗介さんの話は聞いていませんね。参考までに聞かせてくださいよ。宗介さんの武器の強化方法」
「んー、必要?」
「僕たちだけ話してそれで終わりなんて無しですよ!」
「……じゃあ話すが、笑うなよ?」
おそらく、笑われるな。俺の強化方法は
「俺の強化方法は、課金だ。課金によるオーバーカスタム。例えば、枠を増やしたり失敗をなかったことにできたりする。この知識を知っている場合、ステータスの項目にGという武器に課金するための金額が表示されるようになり、モンスタードロップからもGを入手できるようになる。知らない場合はそもそもヘルプに記載されることもないし、Gの確認をすることもできない。それに、最大の欠点は、それ以外の強化方法がないため、ただの貯金箱と化してる点だ!」
いやほんと、投擲具の勇者だけだと、本当に頭一つ抜けただけの冒険者にしかならないんだよなぁ……。
俺の説明に、嘘だと糾弾される以前に哀れな目で見られてしまった。
「か、課金要素だけなのか……」
「しかも、課金対象が存在しないと……」
「……なあ、宗介。それでどうやって強くなるんだ?」
「知らんな」
武器強化方法共有ぐらい自分で気付けって話。
ちゃんと言っただろう? 同じ規格の武器で強化方法が異なる理由を考えろと。
エクゼイド的にいうなら、錬がタドルクエスト、樹がバンバンシューティング、元康がマイティアクション、尚文が爆走バイクみたいなものだ。
「宗介、そう言えば、お前は盾の強化方法を知っていたな。四聖勇者の武器がそれぞれ4つあったが、そのうちの一つを教えてくれた。という事は知っているのか?」
「ははは、いずれその時になったらな」
俺はお茶を濁す。
知っているが教えるつもりは無いと言う意思表示だ。
「おい!」
「まあいいからいいから。最後は尚文だぞ?」
「宗介さん、そう言って誤魔化そうとしていますね!」
「そうだ。宗介は他にも知っているだろう? 宗介から情報を聞くのが一番重要な事だ。尚文は次でいい」
「それには俺も同意だ。宗介、お前が一番この中で秘密主義だからな。今日こそは腹を割って話してもらう」
「そうだぞ! 今こそ協力する時! なんじゃ無いかな?」
お前ら、あんだけ嘘だヘチマだと罵り合っていたくせに、なんだこの協力関係は!
「……俺の強化方法についてはちゃんと話したぞ?」
「なら、なぜ尚文の強化方法を知っている?」
「そりゃ俺が未来から……正確にいうならば、尚文が2012年の日本から来ているが、俺は2019年の日本から来ているからだな」
「本当か?!」
尚文はうなづいた。
「ああ、宗介は俺とほとんど同じ世界から来ている。少しだけ差異はあるが、流通しているゲームも、漫画もほぼ全てが共通していた。連載終了になった漫画も、俺が期待していたアニメも宗介の世界ではすでにDVDで観れるようになっているそうだ」
「なるほど、宗介さんは尚文さんにとっての未来人なんですね」
「で、コイツもお前らと同じようにゲームじゃ無いが事前知識がある」
「ゲームじゃない?」
「ああ、小説らしい。だから、俺はお前に聞きたい。その小説では色々と先の展開が書かれてあるはずだ。それを話せ」
「……」
周囲を見渡すと、全員の目が俺を見ている。
うーん、話したく無いなぁ……。
「じゃあ、ネタバレ料金を請求します! みんなネタバレ嫌いだよね! 終了! 解散!」
「逃がさないぞ! 宗介!」
「ええ、メルロマルク女王としても、聞き捨てなりません。ソースケ様、お代はいくらでも出しますので、どうかお話になってください」
「グゲっ!?!?」
変な声出た。
身体中から変な汗が噴き出す。
俺は脳をフル回転させて、ゼロ知識証明をするためにどうしたらこの場を切り抜けられるかを模索する。
「……じゃあ、4つだけだ。それ以上は何も答えない!」
「4つだけですか……」
「勇者一つずつって事だな」
「チッ! おい、絶対に致命的な内容を聞き出すぞ!」
「あ、もちろん、知らないこともあるから、その場合は答えられないって言うよ。もちろん質問権は消失します」
「はぁ? 全部話せよ!」
「全部話したとして、アンタら信じるの? ほら、早く質問してよ」
「ぐっ……」
言葉に詰まる元康。
シンキングタイムがスタートしたのだった。
今こそ言おう!
宗介のせいで幾分か罵りタイムが減ってます。
アンケートがある程度行くまで更新待ってねー
127話に幕間を公開してます!
4つの質問、尚文は何を聞いた?
-
波の詳細
-
盾の強化方法
-
宗介の正体
-
波のラスボス
-
宗介の目的