波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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次元の波

 翌日、貞操を守った(と言っても俺は童貞ではないけど)俺は、ミナと一緒に依頼を受けていた。

 そしてそれはミナと一緒に依頼のための魔物を狩っている最中であった。

 

 ──パキン

 

 まるでガラスが割れるような音が聞こえて、辺り一面がワインレッドの光で染まる。

 

「波か!」

 

 俺が空を見上げると、南の方から絵の具を垂らしたように紫色と青色が混じった何かが広がっていく。

 と同時に、波の裂け目から魔物が溢れ出す。

 まさに、アニメで見たとおりの光景が、広がっていた。

 今の俺がいる位置は、ルロロナ村の近くだ。

 

『力の根源たる俺が命ずる。理を今一度読み解き、我等に戦う力を与えよ!』

「アル・ツヴァイト・ブースト!」

 

 俺は援護魔法を自分とミナにかける。

 ミナは……逃げ出そうとしていて、援護魔法を掛け直したことに驚いていた。

 

「ソースケさん?!」

「ここは波の発生源に近い! 戦うにしても逃げるにしても、戦闘は避けられないからな!」

 

 上を見上げると、この世界の法則的に確認できない動物系の魔物が降り立って来ている。

 例え、結末が変えられないとしても、俺にできる事はあるはずだ。

 彼女らの悲惨な結末を知っている以上、俺には見過ごすことなんて出来ない! 

 俺はルロロナ村の方に駆け出した。

 と言っても、走っても最短で1時間はかかる。

 尚文達が城下町と村を素早くいききできたのも、フィロリアルクイーンのおかげであると言えるだろう。

 

「ソースケさん、どちらへ?!」

「波の中心だ!」

「どうして?!」

 

 俺は少し考える。

 このヴィッチはメガヴィッチと繋がっている、と考えた方が良い。

 俺が波を鎮めにいく正当な理由を言わなければ、ミナは強引に止めるだろう。

 だから、俺はあえて傲慢な回答をする。

 

「俺が波を鎮めれば、俺の力が証明されるだろ? まさに勇者様ってな!」

「……」

 

 ミナは少し考えて、答える。

 

「それは良いですね。では行きましょうか、ソースケさん!」

 

 メガヴィッチからの承認は降りたようだ。

 本当に悲惨なのは、この波の後に来る奴隷狩りであるが……。

 恐らく、冒険者はあの時締め出されたのであろう。

 セーアエット領領主も、恐らく助ける事はできないだろう。

 領主は恐らく波のタイミングで暗殺されたとみるべきだ。

 それに、止めようにもこの位置からでは間に合わないし、領主の館にそもそも立ち入れない。

 波は3時間強継続すると考えたなら、どれだけ早く要の魔物を討伐するかが重要だろう。

 今のレベルは12まで上げている。

 俺なら、慢心しなければ出来るはずだ。

 

「はああああああ!!」

 

 俺は波の魔物を容赦なく切り捨てて行く。

 

 次元ノワーウルフ

 次元ノライガウルフ

 次元ノレッサーコカトリス

 

 魔物は動物系が多い印象を受けた。

 

「ツヴァイト・サンダーショット!」

「ツヴァイト・ファイヤストーム!」

 

 魔法で蹴散らしつつ、俺とミナは波の魔物を討伐する。

 普通に狩る時と比較して、経験値が若干高いのが見て取れる。

 証拠に、ステータス魔法が入手経験値を教えてくれている。

【EXP +127】

 渋い経験値に慣れていた俺としては、これは確かに経験値を稼ぐチャンスだろう。

 

「アローレイン!」

 

 俺は弓に矢を複数つがい、放つ。

 ステータス魔法が示す範囲内に矢の雨が降り注ぐ。

 これは魔力を矢に乗せて放つ技だ。

 レベルアップで習得したものだが、なかなかに便利な技である。

 技もちゃんと口に出して宣言しないと発動しないのが厄介なところだろう。

 すぐに装備を切り替えて、近場の魔物を切り捨てる。

 槍で牽制して、剣で強敵を切り裂く感じで俺は波の魔物を討伐しながら、前に進んでいった。

 

「ソースケさん! 村が見えました!」

 

 次元の波の発生源に一応ボスがいない事を確認して、ミナに近くに村はないか尋ねたところ、近場に亜人どもの村があると白状したので案内させた。

 案の定、この波のボスと思わしき魔物が亜人の冒険者達と戦っている最中だった。

 

 次元ノケルベロス

 

 そいつはまさに、アニメでラフタリアが回想で見ていた犬型の魔物に違いなかった。

 

「恐らく、あの魔物がボスだ!」

「はい、ソースケさん!」

 

 切れかかっている援護魔法をもう一度俺はかける。

 

『力の根源たる俺が命ずる。理を今一度読み解き、我等に戦う力を与えよ!』

「アル・ツヴァイト・ブースト!」

 

 再び能力が上昇する。

 パーティメンバーではない亜人の冒険者達にも念のために対象にして魔法をかけた。

 太腿に装備している薬が入ったポーチから魔力水を取り出して俺は飲み干す。

 

「お前ら、状況は?」

 

 俺が聞くと、後衛の亜人の女性が答えてくれる。

 

「村の者はだいぶ殺されていました。現在は避難誘導中です!」

「お前らが波のボスを抑えているのか?」

「ええ、ですが、何人か犠牲に……」

「わかった」

 

 次元ノケルベロスの口元には、はっきりとわかる赤い血が付着している。

 既にラフタリアの両親は食い殺されてしまったのだろう。

 くっ……変えようがないとわかっていても心苦しい。

 

「ミナ、コイツを討伐するぞ!」

「わかりましたわ。援護します!」

 

 俺は剣と槍を構える。

 俺は波のボスと対峙していた。

 

「グルルルル……」

 

 コイツを倒さなきゃ、話が先に進まないだろう。

 だから、俺が倒す。

 

 俺は決意を持って次元ノケルベロスに剣を向けたのだった。




本当に次元ノケルベロスで良いのかなぁ?
犬系の頭が3つある魔物で思いついたのがケルベロスだっただけですけどね。

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