フィトリアはボロボロになったラヴァイトと回復させると、俺のところに近づいてきた。
「ソースケ。投擲具の勇者。何であの時、勇者を殺そうとした?」
「この世界を救うことを諦めようと思ったからだな」
「……!」
「おっと待て、これ以降はもうタイミングも無いから別の可能性を探っているんだ。それに……」
俺はチラッとレイファ達を見る。
それに、フィトリアは同意した。
「わかった。港町にはフィトリアが送るから、少しゆっくりしたらいい。フィトリアはソースケ、投擲具の勇者と話がある」
「わ、わかりました」
フィトリアの圧に負けて、レイファ達はラヴァイトのところに駆け寄る。
「……で、言いわけを聞こうか、ソースケ?」
「言い訳する事は何も無いけれどな。事情なら説明するさ」
「ん」
と言うわけで、俺は事情を話すことにした。
お喋り竜帝が茶化して来ないのは、きっと目の前にフィロリアル・クイーンがいるからだろうか?
試しに包み隠さずに喋ってやった。女神については、やっぱり怖いのでちょっとぼかしたが。
俺の話を聞いたフィトリアは、なにかを納得したような表情をした。
「……フィトリアには難しいけれど、ソースケの言う【描かれた書物の世界】を表とするならば、この世界は裏……可能性の世界の一つと言うことになると思う」
「可能性の世界……」
「そう。誰かが選んだ可能性、誰かが選ばなかった可能性。それが積み重なった世界が今の世界」
「難しい言葉を知ってるんだな」
「フィトリアは長生きだから。忘れたことも多いけれど、覚えていることも多い」
Fate的な世界線の考え方で良いのだろうか?
剪定事象があるかはともかくとしてね。
そう考えるならば、俺が昔読んだ事のある盾の勇者の二次創作世界も別の並行世界としてありえると言うことになるが……。
「この世界は可能性の一つか。なら、この世界を滅ぼすとどうなるんだ?」
「わからない。それは予想のつかない事。どちらにしても、この世界が滅ぶのはフィトリアも困る」
「マアソウデスヨネー」
どっちにしても、今この世界を滅ぼせば俺も滅ぶだろう。
本気で滅ぼすならば、尚文が強くなる前のあのタイミング以外にはなかったと言う事は間違えようがないだろう。
「どちらにしても、世界は滅させるわけにはいかない。それがフィトリアがした勇者との約束。ソースケの言う事は難しいけれど、それだけは間違いない。今のソースケを見て確信したけれど、ソースケはすでにフィトリアでは殺せないほど強い。だからこそ、今の弱い四聖を……強くなるように導いて欲しい」
「まあ、あいつらがこの世界をゲームだと勘違いしたままなのが問題だろうがな。強烈な出来事……霊亀乗っ取り事件が起きるまでは俺は静観するつもりだ」
「……すでにわかっていると思うけれど、この世界には四聖を遊ばせている余裕なんてない。覚醒は早い方がいい。波の尖兵……? はフィトリアも見つけ次第殺す。だからお願い」
とは言っても、尚文以外は現実逃避をしている状態だ。それに、俺の考えが正しいのならば、クソ女神が俺を生かしている目的は……。
だからこそ、見極める必要がある。
「ダメです」
フィトリアが驚いた顔をする。
ブリブリブリブリブリ(ry
俺の脳内で竜帝が脱糞音を喋る。黙れ! いや、考えたけどさ!
「なんで!」
「俺に与えられた役目は、この世界を本来の流れから変えることだ。……言葉にしてしっくりきたな。だからこそ、俺は本来は干渉するべきでは無いだろう。まあ、ゴミ処理は俺もやるがな。もう世界を救う以外の選択肢は残っていないからな」
「……そう、ソースケの考えはわかった」
「それに今、現実を直視しないまま強くなったとしても、連中にいいように扱われるか訳もわからず死ぬかのどちらかだろうしな。悪いが、連中には痛みが必要だ」
「……」
フィトリアもそこはわかっているのか、何も言い返して来なかった。
「……じゃあ、ソースケは霊亀の暴走……本当に起こるのかは疑わしいけれど、起こった際は協力して」
「……できる状態だったらな」
「できる状態?フォーブレイの愚かな勇者に関係する事?」
「…まあな」
俺のことに関しては、先が全くわからないのが実際のところであった。
タクト、奴にはこの投擲具をくれてやる必要があるからな。アイツが強ければ命からがらになるだろうが、弱ければ奪わせてからおさらばすれば良い。
俺はすでに勇者の武器によってレベルキャップがない状態だ。
そもそも俺はこんなものがなくても強い。
「ソースケ、投擲具の勇者はこれから活性化の島に行く?」
「ああ、その予定だな」
「ならば、四聖によろしく。強くなるように期待する。今の四聖は弱すぎるから」
「ははは、断るが」
「ぶー」
そんな感じで俺たちはフィトリアと邂逅をしたのだった。
ラヴァイトは冠羽をもらい、ショタ顔マッチョにアホ毛が立つと言う、さらに奇妙なナマモノに進化してしまったのは言うまでもなかった。
そして、投擲具のフィロリアルシリーズが全て解放される。
まあ、レベル105だからね、仕方ないね。
そして、俺たちはロラまで送ってもらい、出航時刻に余裕で到着するのだった。