波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず

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遅くなりました!



マッスルと槍の勇者

 サクッとレベル上げを終わらせた俺たちは早々に解散した。

 まあ、俺は圧倒的強さを見せつけただけな気もするが、気にしてもしょうがないだろう。

 

「投擲具の勇者様」

「……ん、俺か?」

 

 戻ろうとしたところ、エレナの声をかけられた。

 しかし、勇者様呼ばわりはなれないね。初めからそうではなかっただけにね。

 

「強さの秘訣は教えていただけないのでしょうか?」

「んー。強さの秘訣ねぇ……」

 

 そう言われても、そもそも技量自体は努力で積み重ねてきた結果だしな。

 投擲具の戦い方だって、完全にスキル頼りだ。まあ、直接切りつける場合や狙いをつける偏差投げは俺の技量になるが。

 

「ええ、ステータスを上げる方法だったりですね。投擲具の勇者様がそこまで強いと言うことは、モトヤス様も強くなると言うことですしね」

 

 エレナの表情は完全に営業スマイルである。

 こう言ったところで差を埋めておきたいのだろうな。

 

「……参考にならないと思うんだがな。技量に関しては冒険者時代に培った戦闘経験や、これまで襲ってくる連中を皆殺しにした経験から来ているんじゃ無いか」

 

 皆殺しと言うキーワードに、エレナの表情が引きつる。

 

「俺は元々《首刈り》のソースケだ。何の因果か知らないが、たまたま投擲具の勇者武器を入手したに過ぎないよ。まあ、俺は一応武器の強化方法については教えている。信じるか信じないかは元康次第だな」

「そ、そうなんですね……」

「まあ、出し抜こうとしている間は無理なんじゃ無いの?」

「は、はぁ……」

「四聖の本気は俺みたいな七星なんかよりも圧倒的に強いから、早く強くなってくれるといいな」

 

 俺はそれだけ言うと、エレナに手を振ってレイファ達のところに向かった。

 ヴィッチもヴィッチ2も元康の強くなるための話を聞きに来なかったな。まあ、どうでも良いが。

 実際、錬ですら強くなった感じを受けないから、よほど強い衝撃を与えなければ固定観念の破壊は出来ないのだろう。

 ブラックサンダーやフレオンぐらい強烈な存在か、霊亀による失敗か、それとも最初から尚文が国に嵌められるのを見せつけるかのどれかの選択があいつらを正気? にするのだと俺は思う。

 専属フィロリアルをつけた後はどうなるかは知らないが。

 

 さて、レイファ達のところに戻ると、レイファとリノアが眉を潜めて不満そうな表情をしており、ライシェルがこまった様子をしていた。

 元康も困惑の表情をしている。リノアに詰め寄られて。

 

「……どうしたんだ?」

「あ、ソースケ!」

 

 レイファは俺のところに満面の笑みを浮かべて駆け寄ってきた。

 

「あのね、槍の勇者様ったら酷いのよ! 私だって戦えるようになったのに、見ているだけで良いって……!」

「ああ、あいつはそう言う奴だから気にしないほうがいいよ」

「むー……」

「で、リノアは何で詰め寄っているんだ?」

 

 気になって事を指摘すると、レイファはポケットから一枚のチケットを取り出した。

 なになに? ……美容エステ券? 

 

「これは?」

「槍の勇者様が戦いづくめだと美容にも悪いって事でくれたんだよ。こんな高いところに行けるわけないじゃん!」

 

 そのチケットには高級エステの店の名前が書かれてある。

 

「これを貰って憤慨しているのか?」

「うん、そんな感じ」

 

 レイファが抱きついたままだが、俺は元康の近くまで寄る。

 

「……あんた、本気でどういうつもりよ!」

「だから、女の子には危ないことはさせられないんだって! 男だけでちゃんと狩れたんだし問題ないだろ?」

「それって本当に仲間なの? ただの取り巻きじゃない!」

 

 リノアの指摘に元康は慌てて否定する。

 

「いや、仲間だって! 信頼し合う仲間!」

「一緒に戦わないで、何が仲間よ! 女の子は飾りじゃないのよ! こんなアクセサリーなんかもらってもうれしくないんだからね!」

 

 リノアは例のあのアクセサリーを元康につき返した。

 

「ふんっ!」

「え、あ、ちょっと!」

 

 俺はその様子に、何があったのかをだいたい把握することができた。

 

「……だいだいわかった」

「ソースケはどうだったの?」

 

 レイファが聞いてきたので、答える。

 

「まあ、元康……槍の勇者様の在り方に従ったさ。一人で魔物を狩ってたよ」

 

 俺が肩をすくめると、レイファが怒り出す。

 

「やっぱり、あの王女様……元王女様だったわね。あの人はとんでもないわ!」

 

 レイファもどうやらヴィッチの本性を知っているようだった。

 

「ま、元康も召喚される前に思うところがあったんだろうよ」

 

 とりあえず、成果を話すために元康のそばまで近づく。

 

「やあ」

「……宗介か」

 

 なんか、すごく困惑している様子だ。

 まあ、元の世界からしてみれば主人公である元康に対する女の子の好感度は高かったはずだ。

 この状況は、ギャルゲーの世界でないこの世界は元康にとってみれば当たり前でないことが起こってしまうのは当たり前だろう。

 

「盛大にどぎついこと言われていたみたいだが、問題なかったか?」

「……まあな。そっちのほうはどうだ?」

「とりあえず、全員が70までは上げておいてやった。感謝しろよ?」

「お、おう……。サンキューな」

 

 元康は困惑した表情のまま感謝の言葉を述べる。

 これで改心したら愛の狩人なんてものに変貌しなくてすんだんだろうがな。

 自分でも自覚があるが俺も人格が歪んでしまっている。

 

「まあ、だいたい何が起きたのかは分かっているがな。とりあえず、リノアを宥めに行こうか」

「うん、そうだね」

 

 ちなみに、アーシャは最初から元康についていかず、俺を遠くから見守っていた事が発覚したのだった。

 ストーカーかよ! 

 

 何が起きたのかをリノアの愚痴に付き合って聞き出した所、やはりと言うか案の定と言うか、デートから始まったらしい。

 デートで高級エステのチケットをプレゼントされたり、詐欺商から例のアクセサリーを購入してプレゼントされたり、挙句にライシェルとラヴァイト以外は見守っててくれ宣言。

 アーシャはこの時点で消えるように俺のストーキングに向ったらしい。

 

「あの男はきっと、女の子をブランドもののバッグか何かと勘違いしているのよ! そりゃ、あの性悪女に気に入られるのも理解できるわ! 勇者様が聞いて呆れる!」

 

 リノアは怒り心頭であった。

 

「アイツら、世界を救う気あるのかしら? 勇者に選ばれたのならばその気概を見せて欲しいものだわ」

 

 その言葉は俺にも刺さる。やめてくれ、とは言える雰囲気ではなかった。




書いてて、レイファ視点も面白みもなかったので悩みに悩んだ末こんな感じになりました。
そして遅くなると言うね。

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