波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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マッスルとラルクベルク

 その場の空気が変わったのは、勇魚が倒された直後であった。

 

「あ、始まったか」

「ソースケ?」

「なにが始まったって言うのよ?」

「世界の命運を決める戦い?」

「はぁ?」

 

 レイファやリノアと冗談を交えながら話していると、ここまで聞こえるほど大きなガキンと言う金属がぶつかる音が聞こえてきた。

 

「なっ?!」

「盾の勇者様と冒険者が戦ってる……?」

 

 レイファ達の載っている小舟に手をかけつつ俺は、勇魚の死骸がある方向に顔を向けた。

 

「盾の勇者であるイワタニ様への攻撃という暴挙に出た冒険者に制裁を!」

 

 旗艦からは結構距離があるにも拘らず、女王様の声がここまで聞こえてきた。

 そう言う魔法でも使っているのだろうね。

 それと同時に近くの船から呪文を唱える声が聞こえる。

 

「勇者様!」

 

 船が一隻此方に近づいてきた。

 兵士が乗っているのがわかる。

 

「ん?」

「投擲具の勇者様! ここにおられましたか!」

「えーっと、何のようですか?」

「盾の勇者様の支援をお願いしに参りました!」

「支援……?」

 

 ちらりと見ると、空に魔力が集まりつつある。

 そして、尚文達が流星盾……青い半透明のバリアを形成しているのが見える。

 

「集団合成儀式魔法『裁──」

 

 言い終わる前に巨大な炎の玉が雨のように降り注ぐ。

 

「きゃあああああああああああああ!!」

「わああああああああああああああ?!」

 

 大きい船に直撃して、爆炎が上がる。

 これがテリス──テリス=アレキサンドライトの魔法『輝石・流星炎雨』だった。

 このバカみたいな威力なのも、此方の世界と彼方の世界が一時的に結合してレベルが統合されているためだろう。

 あれ、ライシェルさんは無事かな? 

 一応メルロマルクの兵士という事で、女王様の護衛に向かってたはずだけれど……。

 

 まあ、何方にしても気にする必要はないだろう。

 

「で、俺はどちらを気にすればいいのかな? 救助活動? それとも……」

「……盾の勇者様の支援をお願いします」

「……はいよ」

 

 俺は海中から飛び上がり、レイファの乗ってる方の小舟に上がる。

 

「私たちも手伝ったほうがいいかしら?」

「いや、リノアはレイファと一緒に救助活動をお願いするよ。今発生している海の渦もすぐに消え去るだろうしな」

 

 俺がそう断言するのと同時に、テリスの魔法が原因で発生していた海の荒れが鎮まった。

 

「……なんか、この先の展開を知っているような感じね。ソースケって時たまそう言う言動をする事があったけれど、今回はバッチリ当ててくるわよね」

「ああ、まあ、知ってるからね。俺が助けに入ると展開が変わっちゃうだろうけれどもな」

「あの話のこと……?」

 

 俺は頷いて、背を向ける。

 

「じゃあ、あとは任せた」

 

 俺はラヴァイトにまたがる。

 

「行くぞ、ラヴァイト」

「うん! オイラに任せとけ!」

 

 俺はラヴァイトと共に、戦場へと向かったのだった。

 俺が尚文達のところに到着するとちょうど、元康が吹き飛ばされるところだった。

 

「一ノ型・風薙!」

 

 ラルクの鎌が巻き起こした風が元康を吹き飛ばす。

 

「ぐわぁああああああああああああああああああ──」

 

 元康はまるで木の葉が吹き飛ばされるように吹き飛んで海に落ちて行った。

 俺たちとはちょうど反対側に落下したのでどうしようもないだろう。

 

「どうやらまだ戦う元気があるようよ?」

「しょうがねぇな。加減が難しいがやるか」

「そうね」

 

 俺たちがラルクとテリスが見える位置まで到着すると、ちょうど合成技を放つタイミングだったらしい。

 

「ラヴァイト!」

「うん!」

 

 俺は短剣を仕舞って拳を構える。

 

「輝石・爆雷雨!」

「合成技! 雷花火!」

 

 テリスの魔法を受けたラルクの鎌が雷を纏い、鎌が帯電する。

 そして、ラルクが鎌を回転させると鎌から無数の光が打ち出される。

 その光は周囲の連中を貫いていく。

 俺は俺の方向に飛んでくる光をことごとく手で払う。

 雷エネルギーの制御ならば俺自身慣れているから、撃ち落とすのはそう難しいことでは無かった。

 

 まあ、錬や樹、その仲間達や他の冒険者は撃たれてしまい倒れてしまった。

 

「な……馬鹿な──」

「ぐ……そんな?!」

 

 ここまで手加減された攻撃……いわゆる雑魚散らしを受けて行動不能になるとか、どんだけって驚くのと、強化方法を共有していない勇者はこんなものかと、実際に目にして呆れるのだった。

 

「死なねぇ程度に加減したつもりだぜ。だが、ナオフミとの戦いを邪魔するなら死なないように手加減する余裕は……ないぜ」

 

 ラルクの言葉に周囲を見渡す尚文。

 そして、目があった。

 

「なんという力……彼らは一体……」

「まて、女王……決定打がないなら、下手に手を出すな。こいつ等は……どうやら俺にだけ用があるようだ」

「物分かりの良いのは尚文の良いところだぜ?」

「僅か数日で俺の事を理解したみたいに言うんじゃねぇよ」

「そうか? 少しでも一緒にいれば相手の性格ぐらいはわかるぜ?」

 

 言葉でラルクを牽制しつつ、尚文は盾を構えた腕と反対側の腕を後ろに回して手でサインを送ってくる。

 その手の向きはラフタリアではなく、あきらかに俺の方を向いていた。

 あれは、野球のサインかな? ハンドサインを俺に向けて尚文が送っていた。

 

「ナオフミが倒れた奴から道具を奪ったってのは何か理由があるんだろ? お前は理由もなく悪事を働いたりはしない奴だと思っている」

「ナオフミ様が今までで一番理解されている気がします」

「言うな……悲しくなるだろ」

 

 サインでなにが伝えたいかはあんまりわからないが、まあ、何を言いたいのかは察する事ができる。

 要するに、待機していろと。

 タイミングを見て乱入しろと言うサインらしかった。

 

「とにかく、降りかかる火の粉は払うまでだ! ラフタリア、フィーロ! 知らない相手じゃないが、あいつ等を倒すぞ!」

「正直戦いづらいですが、わかりました!」

「えー……あの人たちが戦いたいならフィーロも頑張るよ!」

「と言うわけだ。じゃあ、尋常に勝負と行こうじゃないか」

「尋常……確か正々堂々だったか? 戦いは奇策の連続だと思うからうなづきたくないな」

「ナオフミらしいな。じゃあ、いつでもやってくれば良い。俺は……お前の命を狩る事を目的にこの世界に来たんだからよ!」

 

 それが戦いの始まりの合図だった。




次回の戦闘はオリジナル展開になると思います。

戦闘にガッツリ絡むべき?

  • ラルクを倒しちゃえ☆
  • 時間稼ぎなら任せたまえ!
  • 支援一徹!

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