波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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前の話の最後に追記してるので、それを確認しておいたら幸せになるかと


チャイニーズウォーラン

 道中、波の尖兵に妨害されながらも、俺たちはウォーランに到着した。

 いや、話に出すほど特出すべき波の尖兵はおらずあっさりと殺害できたのだけれどね。

 ライシェルさんには正当防衛として納得してもらってるが、メルロマルクを出た瞬間にこれだから、どれだけメルロマルクから異世界人が駆逐されてたのやら。

 いやまあ、メルロマルクはもともと三勇教のせいで異世界人にとっては厳しい環境だし、仕方ないけれど。

 ウォーランあたりは文化圏的に古代中国をイメージさせる文化圏だった。

 霊亀国も文化圏的には中国っぽいからそこは文化圏の違いなのだろう。

 服装も、いわゆる古代中国を連想させる服装が一般的で、中世ヨーロッパファンタジー世界の服装でいる俺たちの方が違和感があるほどだった。

 

「本当に他の国に来たって感じだよねー……」

 

 レイファも感慨深くそう言うので、俺は同意する。

 

「メルロマルクの言葉は通じる感じなのか?」

「メルロマルクは人間語と呼ばれる言語を使っているのだ。汎用人類共通語とでも言った方がいいかな? 国による訛りはあるが、人間主体の国ならば言葉は問題ない。現にこれまでの道中でも我々が言葉に困ったことはないだろう?」

 

 ライシェルさんの話になるほど納得する。

 たしか、俺の記憶によるとシルトヴェルト、シルトフリーデンとメルロマルクは言葉が違ったはずだし、尚文の仲間になる亜人のキールの事を『人間国の言葉を話す奇妙な亜人』と称されていたことからも、国による言葉の違いは『訛り』程度で人種による言葉の違いが顕著な世界観なのだろう。

 だから、獣人国に近いリノアの出身国であるアルマランデ小王国はメルロマルクと言葉が若干異なったのだ。

 

 店なんかを見れば、文字はメルロマルクで習得したそれと全く変わらないし、数字の表記の仕方も同じである。

 会話は武器の便利機能で翻訳されているけれどね。

 

 そんなこんなで俺たちは、ウォーランの王族に会うための面会を行うことにした。

 ウォーランの王宮は、平屋建ての豪邸でやはり中国を意識させるようなデザインの宮殿だった。

 投擲具の勇者一行である事を告げると、身分の確認の後すぐに王宮に通される。

 小国とはいえきっちりとしている国だった。

 

「お主らが、投擲具の勇者一行か?」

「はい、左様にございます、帝」

 

 帝と呼ばれたこの国の王様は大臣にそう言われると、「ふむ」と言って言葉を告げる。

 この国のしきたりとして、下賤のものが偉大なる帝と口を聞くのは御法度のようである。

 ただし、勇者は例外らしい。

 なので、帝の問いに答えるには大臣に全てを任せる必要があった。

 

「なるほど、その方が我が国の波を抑えてくれると申すか」

「そのためにこの国に訪れた模様でございます」

「よい、許す。では、龍刻の砂時計に案内するがいい」

「偉大なる帝よ、この者らは波に対処するために兵を借りたいと申しておりますが、問題ないでしょうか?」

「よい、許す。特に我が国の問題であるからな。波を抑えた暁には成功報酬を渡そう」

 

 それだけの謁見であったが、この国では帝がどのような扱いなのかがはっきりとわかったのであった。

 それから、龍刻の砂時計が安置された宮殿に案内される。

 一応、四聖教の施設らしいが、西洋感は無く宗教設備感が全くなかった。

 そして、龍刻の砂時計はメルロマルクと同じくファンタジー色の強い物なので、違和感がすごい。

 投擲具をかざすと、宝石から赤い光が伸びて登録される。

 

「お、出た」

 

 視界の右上の赤い砂時計の表示がメルロマルクのものからウォーランのものへと変更される。

 

「あと3日か……」

 

 意外に時間がなくて思わず呟いた。

 それでも、できる準備というのはほとんど済ませてしまっているので、あとは兵士を分隊に指定して共に波で戦えばいいだけである。

 

「それじゃあ、協力してくれる兵士のところに行こうか」

「そうだな。すまないが兵舎まで案内してくれないか?」

 

 ライシェルさんが案内してくれた人に伝えると、

 

「かしこまりました」

 

 と深々と礼をして、下級士官に伝える。

 なかなかに面倒臭い国のように思えた。

 

「では、案内いたしますのでついてきてください、投擲具の勇者様ご一行様」

 

 俺たちは兵舎に案内される。

 本当に古代中国の印象まんまな国である。

 赤を基調とした目に悪そうな建物といい面倒臭い仕組みと言い、本気で中国を意識させるお国柄だった。

 

 兵舎についても同じ印象で、兵士を見た瞬間に「古代中国やん」と思わず呟くほどには中国だった。

 俺は兵士長に分隊の隊長権限を渡して、激励をして準備完了となった。

 こうして、俺たちはウォーランの国を準備の名目で観光をする事を許可されて、決まった範囲の観光を行うことになったのだった。




7/11で1周年になるので、何か書きます
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