波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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奪われた武器

 はっきり言って、レールディアとの戦闘は俺にとって死闘と言って過言ではなかった。

 

「はあああああああああ!」

 

 人間形態とは言え、レールディアの爪の連撃は人間が目で追える速さを超えていた。

 一撃一撃が必殺だと言うのが、受けている投擲具から伝わってくる。

 直撃を受けていないにもかかわらず、まるでスリップダメージでも受けているようにHPが徐々に削られていた。

 竜の鱗は硬く、弱いナイフでは傷一つつけることができない。

 

「くっ……!」

 

 そのレールディアの爪を全て捌き切れていたのは、俺の実力だけではなかった。

 確実に勇者武器の補正がなければ俺は切り刻まれていただろう、そう連想できるほどに凄まじい攻撃だった。

 目は追いついても、体が追いつかなければ意味がない。

 これがステータスの恩恵と言うものだろうか。

 

「ツヴァイト・ウインドブラスト!」

 

 そんなレールディアとの戦闘中、横槍が当たり前のように入る。

 

「ふっ!!」

 

 俺は魔法の方向に的確に投擲具を投げる。

 左手を開けて、右手だけでレールディアの攻撃を全て捌いている理由がこれだ。

 

「苦戦しているようね、レールディア!」

「ネリシェンか、邪魔をするな! 我の獲物だ」

「タクトをお待たせするのも悪いでしょう? 私も加勢してやるわ」

「……ふん、好きにせよ」

 

 ネリシェンはレールディアの許可を得ると、グローブを装備して殴りかかってくる。

 はっきり言って、ネリシェンの攻撃の方が受け流すのは容易かった。

 

「せりゃあああああ!」

 

 レールディアのドラゴンの爪攻撃を目で追いつつ、右手の投擲具のナイフでいなしながら、ネリシェンの拳を左手で受け流す。

 流石に受け流すのは勇者武器的にNGではないらしい。

 

「はぁ!」

 

 受け流した拳を俺の中心に持っていき、大勢が崩れたネリシェンの腹部に膝を入れる。

 

「ぐはっ!」

 

 ネリシェンはそのまま崩れ落ちる。

 関節技はNGなのに、格闘術はオッケーなのか? 

 基準がわからない。

 

「邪魔だ、ネリシェン。役立たずが!」

 

 蹲ったネリシェンをレールディアが横に蹴り飛ばし、レールディアは再び爪を構える。

 

「俺様も手伝ってやるぜ」

 

 タクトはそう言いながら、俺とレールディアの間に入ってくる。

 

「チッ!」

 

 タクトの攻撃は、はっきり言って簡単に読める。

 直線的すぎるのだ。

 一撃をもらえばヤバいだろうが、フェイントすら入っていない爪の攻撃なんて見てさえいれば避けるのは容易かった。

 だが、レールディアとの連携攻撃となると話が違ってくる。

 

「うぐっ……!」

 

 なんとか、タクトの攻撃は回避できるが、レールディアと連携することでタクトの攻撃がちゃんと生かされているのが辛い。

 何度かレールディアの爪が俺の身体を掠めて切り裂いたのだ。

 こんな戦いの最中に投擲具を失うのはキツいので、タクトの攻撃は避けるしかなかった。

 

「エアスト・スラッシュ!」

 

 だが、ついに俺はレールディアとタクトのラッシュに耐えきれずに投擲具でタクトの攻撃を受けてしまった。

 

「チッ!」

 

 投擲具が震える。

 自分の中から勇者としての力が消滅していくことがはっきりと認識できた。

 投擲具は抵抗しているみたいだが、結局は俺の手元を離れて俺の中から光の球が飛び出してしまった。

 

「くそっ! やっぱりか!」

 

 俺は後ろに後退して、元々の武器である剣を腰から抜く。

 

「それじゃあ、返してもらうぜ」

 

 タクトがそう言うと、投擲具の光を掴み取り入手してしまう。

 

「……あれ? 弱いな? まあ良いや」

 

 タクトは投擲具に武器を変化させると、例のアクセサリーを投擲具に装着する。

 

「レールディア、俺様がとどめを刺す。良いよな?」

「タクトがそうしたいならば仕方あるまい」

 

 タクトはニヤニヤしながら、俺に投擲具のナイフを向ける。

 

「お前の得意技で、お前を殺してやるよ」

「エアストスロー、セカンドスロー、サウザンドスロー!」

 

 俺とは違う形で、様々な投擲具がタクトの背後に浮かぶ。

 王の財宝じゃあるまいし、なんだこの技は! 

 

「死ね! サウザンドシュート!」

 

 王の財宝のように投擲具が射出される。

 全てが俺を狙って飛んできているので、俺は走って回避を試みる。

 実際、こうして久しぶりに生身になってみると体が重たく感じるな! 

 

 お主、何を呑気に構えておるか! 

 ギリギリではないか! 

 

 どうやら、オモシロドラゴンは俺の中に残留しているらしい。

 回避しているその間に俺は『三千大千天魔王』……長いので魔王を取り出す。

 手に握って魔力を込めると、槍の形状にモーフィングして変化した。

 しかし、タクトやレールディアから距離をとったせいか銃撃や魔法までもが俺に飛んできており、回避に結構意識がとられていた。

 

 ……殺すか? 

 

 タクトハーレムのモブ女の一部なら殺しても差し障りないだろう。

 正直、うざい。

 そう考えると、俺の口元が歪に歪む。

 自分でもわかるほど、にやけている。

 

 決めた。殺すか。

 

 俺は決めると、タクト主要メンバーではないモブの女のところまで近づく。

 その女の表情は恐怖に歪んでいた。

 手元にある銃を乱射にながら俺の接近を拒むが、そもそも現状ほとんどの攻撃をギリギリとは言え避けることができる俺にとって、接近するのは容易かった。

 

「く、くるなああああああ」

「死ね」

 

 俺はその女の首を跳ね飛ばした。

 レベル差が凄まじいはずで、そのレベル差を埋めるチートがないにも関わらず、首はあっさりと切り飛んだ。

 魔王の槍で切り落としたからだろうか? 

 

「リリシスぅぅぅぅ!!! てめぇえええええええええ!!!」

 

 タクトが何か叫んでいるが、久しぶりの感覚に背筋がゾクゾクしていた。

 汚らわしい波の尖兵の首を刎ねるのとは違うこの感覚……! 

 

「ふふふ、ククククククク……ははははははは!」

 

 俺は悪役のように笑いながら、モブ女の死体を踏みつけてタクトに剣先を向ける。

 

「お前のハーレム、一部殺すわ」

 

 そうそう、これこれ、これだよ。

 勇者となって、大義名分がないとできなかったが、俺の破綻した精神は敵対者の殺しを求めていたのだった。




みんなお待たせ!
《首刈り》ソースケの復活だよ!

なんだかんだでみんな望んでたんやなって感想見て思いました笑

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