城の正門から城下町の入り口までまっすぐと続くメイン通り、そこに居を構えているのが、尚文御用達の武器屋である。
他にもメイン通りには武器屋はあるけれど、量販店って感じがするんだよね。
扉を開けるとカランカランと呼び鈴の音がする。
奥から頭のハゲた親父さんが出てきた。
あーそうそう、こう言う感じだよ。
まさに武器屋のおっさんって感じ。
「はい、いらっしゃい!」
安心の武器屋の親父さんである。
名前はエルハルトだったけな。
「ミナ、ここがおススメの武器屋か?」
「ええ、そうですわ」
一応、確認である。
とてもではないがミナは武器屋と縁があるとは思えない。
ヴィッチと情報を共有しているのだろうなと俺は推測した。
「すみません、武器を購入したいんですが、おススメってあります?」
「ん? ああ、あんちゃんの武器を探してるのかい?」
「ええ、先の戦いで剣が折れてしまって、それで」
「なるほどねぇ。剣、槍、弓、小手を装備して戦ってるのか。普段なら、そう言う戦い方は良くないと言うか、武器を一つに絞れと説教するところだが、どうやらあんちゃんは4つ別種類の武器を取り扱うことに長けてるみたいだな」
「……すごいな。そんなことまでわかるのか」
「まあな。どの武器も使い込み具合が均等だし、身体つきもそれぞれの武器で特徴ってものが出るものだが、あんちゃんは満遍なく筋肉がついているように見える。それで推測はつくのさ」
うーん、さすがは親父さんである。
元康2号の弟子ってこんなに優秀なんだな。
「ま、俺が見た感じだと、折れちまった剣も、その槍も弓も、小手も防具も今のあんちゃんにはかなり物足りない感じになってるんだろうよ」
確かに、今の武器はレベルにあった装備だとは思えなかった。
剣が折れたのだって、剣の適正レベルと俺のレベルがあってない結果とも言えるだろうからな。
「で、あんちゃんは一式買い換えるのかい?」
「見積もりは?」
「そうだなぁ……。魔法鉄の装備一式に買い換えるとして、武器一式で装備を下取りして、おまけして銀貨320枚ってところだな。防具も含めると、430枚になる」
「じゃあ、武器だけかな。防具はしばらくやりくりして、お金が貯まったら買うさ」
「そうかい」
一応、オーダーメイドもできるみたいだが、今日初めましてである以上、信用も無いだろう。
本編にあまり深入りをしたくない俺としては、関わるのは今回限りかなと思う。
「なら、あんちゃんの武器を見せてみな。ちょうどいいものを見繕ってやるよ」
「助かる、ありがとう」
俺は装備を外して、折れた剣、槍、弓、小手を机に置いた。
「んー、あんちゃんの場合、小手よりもバックラーみたいな盾の方が良さそうな気がするが、拳の先に殴った跡があるな。あんちゃんは格闘も使うのかい?」
「当身を入れる程度なら使うかな」
「なるほど、なら小手で良いか。ただでさえ複数武器を同時なんて戦法を取っているんだ。あんちゃんの戦闘スタイルを崩すのは良くねぇな」
親父さんは商品棚から剣、槍、弓、小手を見繕って、台に置く。
「これぐらいが、今のあんちゃんにはちょうど良いだろ。持ってみな」
言われて俺は武器をそれぞれ持ってみる。
なるほど、今までの武器は若干心もとない感じがしていたが、この武器なら安心して使えそうだ。
振ってみた感じはまだ若干重みがあるが、問題ないだろう。
「へぇ、ちょっと重いがいい感じだな!」
「そりゃ良かった。そっちの嬢ちゃんは……。必要なさそうだな」
「ええ、私は魔法職ですし、前衛はソースケさんに任せてるので大丈夫ですわ」
「へぇー、あんちゃんソースケって言うのか」
「ああ、菊池宗介だ。冒険者をやっている」
「キクチソウスケ……。まるで勇者様みたいな名前なんだな、あんちゃんは」
「まあ、よく言われる」
「ま、是非ともご贔屓にしてほしいものだぜ」
「それは考えておく」
と言うわけで、俺は新しい装備を入手したのだった。
しかし、本当に気持ちのいい親父さんだ。
人を見る目もあるみたいだし、常連になってもいい気がする。
アールシュタッド領からは距離があるのが問題だけどね。
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