波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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エピローグ

 アーシャの戦闘スタイルは暗殺者だった。

 リノアは一緒に旅をする中でその戦い方を知らなければ、あっという間に殺されていただろうなと、実際に戦ってみて感じた。

 

「アーシャ! 目を覚ましなさいよ!」

 

 リノアは声をかけながら、アーシャの鋭い攻撃をブーメランで受け流す。

 ここまでの戦闘経験と、自分とアーシャのレベル差がそこまで無いからこそ、リノアはしのげていた。

 

(これはなかなか難しいわね……。けど、このままじゃ幻術使いがこっちに襲ってくるのを指を咥えてみてるしか無くなるわ!)

 

 リノアはそう考えていたが、幻術使いの女はその場から一歩も動かずに、ニヤニヤとこちらの様子を伺っているだけであった。

 自分で戦う気がないのは一目瞭然である。

 

(意地汚い女ね……! まあ良いわ。お陰で操られている二人をなんとかすれば良いだけで済んでいるんだもの)

 

 リノアはそう切り替える。

 今はアーシャを制圧するのが先決なのだ。

 しかし、アーシャは錯乱状態とは言えめっぽう強かった。

 アーシャの武器である暗器には当然ながら掠めるだけでも死に至るレベルの毒が塗られているため、攻撃は全て回避するしか無い。

 ライシェルもよくもまあアーシャと殴り合って生きているものだと感心する。

 まあ、ライシェルは盾の……タワーシールドの扱いは、盾の勇者よりも長けていたので(勇者の補正は除いても)それで受けるべき攻撃と受けるべきで無い攻撃を感覚で判断していたのだろうけれど。

 リノアにはその判断はつかないので、攻撃全てをブーメランで受け流し、回避する必要があった。

 

(このままじゃジリ貧ね……!)

 

 リノアがそう考えていると、ラヴァイトが筋肉ムキムキな姿で声を出した。

 

「ゴシュジンサマ! 盾のおじさん抑えたよ!」

「わかったわ!」

 

 レイファはすぐにライシェルに駆け寄る。

 ライシェルは人形になったラヴァイトに制圧されていたのだった。

 

「行きます!」

 

 レイファはそう言って詠唱を行う。

 

「我、レイファ=アーティモンドが天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。彼の者の精神を癒やし、その幻覚を打ち破る力を与えてよ!」

「破幻想!」

 

 レイファの接触した手から緑色の淡い光が伝い、ライシェルを癒す。

 幻覚によって狂った認識と精神を癒す魔法が、ライシェルに正気を取り戻させたのだった。

 

「はっ?! レイファくん?」

「良かったです! 正気に戻ったんですね!」

「お、俺は幻覚を見せられてたのか……!」

 

 レイファによって回復させられたライシェルは頭を左手で抑えて、自分の正気を確認する。

 

「はい、なので龍脈法の魔力操作の応用でライシェルさんの魔力の流れを強引に正常になるように戻しました。神経とか傷んでいるかもしれないので回復魔法も使ったんですが、具合はどうですか?」

「……ああ、悪くない。むしろこれまでよりもスッキリしているまである」

「そうですか、良かったです!」

 

 そんな事を呑気に話す二人に、リノアが助けを求める。

 

「ちょっと! 回復したなら手伝いなさいよ!」

「ん、ああ、すまない」

 

 ライシェルは立ち上がると、アーシャの制圧の手伝いにリノアの元へと駆け寄る。

 

「ふむ、面白ろないわねぇ」

 

 そんな、リノアたちの様子を見て、眉をひそめるトゥリナ。

 最終的には幻覚を見ていたアーシャも取り押さえられて、レイファによって回復させられてしまった。

 そんな折、ちょうど良く通信魔法によってタクト軍撤退の話が伝えられる。

 

「…… 役立たずのグズめが。タクトの手ぇ煩わせるとは愚か者め」

 

 トゥリナはそう吐き捨てると、タクトたちに合流すべく踵を返した。

 気に入らないレールディアの判断ではあるが、タクトがその意見を飲んだのならば従うべきだと判断したからだ。

 これ以上遊んでいても面白く無さそうなので、トゥリナは撤退することにした。

 

「あんたら運良かったわね。今回は見逃したるわ」

「なっ……!」

「ふふふ、ほならね」

 

 そう言って、トゥリナは姿を消した。

 塵と消すのもトゥリナには容易かったが、興が乗らなかったので見逃すことにしたのだった。

 

「た、助かった……?」

 

 残されたリノアたちは、その場にへたり込んだ。

 すでに周辺は魔物の気配もなく、空はいつもの空に戻っていた。

 

「レイファくん、リノアくん、急いでソースケくんと合流してこの国を脱出しよう。悪い予感がするからね」

 

 ライシェルの指摘に、レイファはうなづいた。

 

「そうですね。国境沿いに移動しながらソースケと合流しましょう」

「そうね。それが良いわね」

 

 レイファの判断に全員がうなづいた。

 ソースケたちはすでにこの国ではお尋ね者なのだ。

 だからこそ脱出する必要があった。

 だが、すでに、世界的な異変は始まっていた。

 勇者でない者たちはそれに気づくのが遅くなってしまうのだった。




次回から宗介視点での霊亀編ですね!
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