波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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新章開幕……!


無職迷走
プロローグ


 世界が犠牲を求める時が訪れた。

 俺は無事にレイファ達に追いつき、ウォーレンから逃げるために国境沿いに差し掛かった時だった。

 亀の甲羅を背負った奇妙な魔物に遭遇したのだった。

 

「ギュアアアアアアアア!」

 

 飛行型の魔物は熱戦をこちらに向かって照射してくる。

 当たると手痛いダメージを負うことはわかるので、俺とリノア、アーシャ、ラヴァイトは迎撃をしてライシェルさんとレイファはサポートをする。

 そこまで苦労することなくサクッと討伐できたが、タネを植え付けられないように死骸は焼いておく。

 

「これで何度めだ? こんな魔物は見たことがないぞ」

 

 ライシェルさんは呆れたようにそう言った。

 

「ソースケくんが勇者の力を失ってから3日しか経っていないにもかかわらず、だ」

「ああ、霊亀が復活の兆しを見せているんだな」

「霊亀……伝説に語られる厄災の魔物か」

「ああ、そう言うこと。だからウォーレンから早く逃げ出さなきゃならないんだがな」

 

 俺は肩をすくめる。

 東の国が霊亀によって真っ先に滅ぼされるのだ。

 この使い魔達は予兆に過ぎない。

 

「ソースケは倒さないの?」

 

 レイファにそう聞かれるが、アレは俺が単独で戦って倒せるようなものでもない。

 しっかりと訓練された人員で……そう、例えば軍でも率いて戦うべきものだ。

 勇者ですら無いこの身では、戦死の可能性が高い。

 

「いや、アレは勇者の力を奪われた俺では難しいと思う。少なくとも純粋に火力が足りないかな」

「確かに。霊亀と言えば伝承でも勇者が鎮めたとされているはずだ。早く女王陛下に報告して、盾の勇者様に対応してもらうのが先決だろう」

 

 ライシェルさんはそう同意する。

 確かに俺のレベルは164まで上がってはいるが、投擲具の勇者武器を手にしていた時のステータスと比較しても圧倒的に弱くなっているのは事実だった。

 俺がわざわざレールディアを相手にしないように女どもを盾に戦ってたのは、勇者武器があったのならば五分五分といったところだったが、今の俺では9割の確率で俺が殺されるからだ。

 ともあれ、どっちにしてもこの国を出るのが先決だろう。

 この魔物の群れは予震みたいなものだ。本格的に暴れ出すのは3勇者を取り込んだ後からだろうけれどね。俺たちはこんなところで死ぬわけにはいかなかった。

 

 

 

「ふぅ、今日はここで一泊するか」

 

 あれから数日が経った。

 俺がそういうと、全員でキャンプの準備をする。

 すでに俺は勇者ではないので、ステータスからいろいろな情報が消えているし、スキルなんかも閲覧ができなくなっていた。

 というわけで、俺のできることも勇者になる前まで戻ってしまったわけである。

 まあ、特に料理スキルを鍛えていたわけでもないのでそうそう変わるわけでもないが。

 得意料理が酒のツマミばかりなのも、変わりがない。今はお酒、飲めないんだけれどね。

 ただ、実際全員がずっと続く野宿につかれているのは事実だった。

 俺の思考も疲れているのか幾分ずれたことを考えているのが現状だ。

 

「あ~……お風呂に入りたいわ」

「ここ数日はお風呂も借りれませんでしたしね」

「仕方がないだろう。我々は追われている身だ。一刻も早くメルロマルクに戻る必要があるからね」

 

 そう、俺たちはライシェルさんの提案でメルロマルクに戻る道中だった。

 実際、霊亀から逃げるならば西の国ゼルトブルに逃げるのが一番だろうしね。

 

「それに、鞭の勇者……いや、簒奪の勇者タクトについても陛下に報告せねばならないしね。ソースケくんの投擲具の聖武器が奪われたことは知らせねばならないからな」

「……う、ん。まあ、そうだよな」

 

 歯切れが悪いのは、あれが俺が女神の能力で別の奴から簒奪したものだったからだ。

 俺しかそれを知らないし、話しても信じないだろうしな。

 

 まあ、我は知っているがな! 

 

 オモシロドラゴンはそんなことを言いながら笑う。

 すでに何度もやり取りをしているので、すっかり慣れてしまった。

 

「とにかく、レイファ君とリノア君は寝てて構わない。夜の見張りは私とソースケくん、アーシャ君ですることにするからね」

「あ、はい、ありがとうございます」

「私は別に見張りをしててもかまわないんだけれどね」

「アーシャ君はそもそもソースケ君を守るために寝ないだろうから除外しているが、女の子がこんなことで遠慮してはいけないよ」

 

 ライシェルさんは相変わらず紳士だった。

 ともあれ、俺もライシェルさんも連日の夜の見張りで疲れているのは事実だ。

 ラヴァイトはすでに寝ているけれどね! 

 ご飯を食べたらすぐに寝てしまったのだった。

 

「はーい」

「まあ、交代したかったら言ってよね。ソースケもライシェルさんも疲れているみたいだしね」

 

 そう言って二人は馬車で眠ってしまう。

 そんな感じの日々をずっと、ウォーランで繰り返していたのだった。

 

 そして、何度目かの国境への偵察。

 何やら騒ぎが起きているようであった。

 

「ソースケ! 国境の検問付近で何か起きているみたい」

 

 そう、リノアに言われたので、望遠鏡を貸してもらってみてみると、どうやら騒ぎの中心にいるのは元康のパーティだということが確認できた。

 

「元康……!」

「槍、ね。どうしてメルロマルクじゃなくってここにいるのかしら?」

 

 リノアが疑問に思うが、俺たちからすればチャンスに違いなかった。

 混乱に乗じて国境を抜けるのだ。

 

「アーシャ、いるか?」

「はい、ソースケ様」

 

 まるで陰にでも隠れていたんじゃないかというほど素早くアーシャが姿を現した。

 

「あの元康達の騒ぎに乗じて俺たちはこの国を脱出する。元康が検問で騒いでいるのを代わりに見張っておいてくれ。何かあったら報告をしてくれ」

「わかりました。ソースケ様は?」

「ライシェルさんたちに知らせる。すぐに戻ってくるから、そしたら合流するぞ」

「わかりました」

 

 こうして、俺たちは元康たちを利用してこの国を脱出することにしたのだ。

 モタモタしていたら、霊亀復活までウォーレンに居座る羽目になってしまうからな! 

 勇者じゃない俺たちは格好の生贄になってしまう。

 霊亀のような怪物と戦うすべを俺は持たないのだ。

 なので、復活させに向かう元康の起こす騒ぎを利用することにしたのだった。

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