波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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本の勇者登場!

 一瞬、意識が飛んでいた。

 

「カハっ!」

 

 俺は血を吐き出す。

 身体中が熱を持っているように熱いが、なんとか生きていたようだ。

 

「ぐふぅ……!」

 

 ギシギシとぎこちなく動く体をなんとか動かして、俺は腰のポーションケースに手をやる。

 どうやら、あの熱線の中なんとか無事だったらしい。

 俺はヒーリングポーションを口に含み、飲み干すと10%を切っていたHPが回復する。

 ついでに残りのポーションも、火傷跡にぶっかける。

 身体にかける場合はヒーリング軟膏の方が効果が高いのだけれども、そっちの方はレイファに持たせていたのであいにく持っていなかった。

 

「っあ……!」

 

 ジューっと音がして、痛みが来る。

 火傷から回復する際の痛覚が戻ることによる痛みだった。

 それほど深く火傷を負っているようだった。

 だが、なんとか動けるようになった。

 ガレキを押しのけて立ち上がると、一直線に熱線で抉れた跡が見えた。

 地面は焼け焦げており、よくもまあ、なんで無事だったのかわからない状況だった。

 

「武器は……ダメだな、こりゃ」

 

 今まで使っていた剣は、今まで握っていた塚の部分以外が蒸発していた。

 仕方がないので、『魔王』を取り出し、いつでも使えるように装備する。

 ボウガンも先程の攻撃で吹き飛ばされて下敷きになったせいか、重要部分の鉄が曲がってしまい使い物にならなくなっていた。

 なので、頼れる武器はこの拳と『魔王』だけになってしまった。

 

「……また出やがったな。トドメを刺しにきたか」

 

 俺が視線を向けると、そこには簀巻きにされて気絶している元康を肩に担いだ霊亀の使い魔(親衛型)と、本の勇者……波の尖兵のキョウがいた。

 久しぶりに感じる俺の中の波の尖兵レーダーがビンビンに感じるほどには、ムカつく野郎の登場だった。

 

「へぇ、あの攻撃の中生きてたんだ。普通の人間だったら消し飛ぶはずなんだがな?」

「はぁ……はぁ……」

 

 ニヤニヤしたメガネの陰険野郎は、余裕そうな表情で俺を観察する。

 

「御同類ってわけでもなさそうだしな。霊亀はまだ目覚めたばかりなんだ。邪魔されるのも面倒なんでここで潰させてもらうぜ」

 

 キョウが軽く手を振ると、剣と弓を持った霊亀の使い魔(親衛型)が、俺に対して攻撃を仕掛けてくる。

 俺は即座に呼吸を整える。

 

「『三千大千天魔王』!」

 

 俺は『魔王』を起動させると、ズリュっと形がモーフィングで変化して槍に姿を変える。

 

「ツヴァイト・ブースト! ツヴァイト・ライトニングスピード!」

 

 身体能力を上昇させる。速度も上昇させる。

 俺の魔法適正は雷と補助。だからこそ、コイツらと単独で戦うには必要だと判断した。

 

「その死に体でまだ戦うつもりなのか? 抵抗しない方が楽に死ねるのにな」

 

 嘲笑うキョウ。

 だが、そんなものは関係がなかった。

 死にかけて意識が朦朧としていたのもあるが、俺はヤツを殺さねばと言う殺意に呑まれていた。

 剣を振るう霊亀の使い魔(親衛型)が接近してくる。

 俺は、その剣の軌跡に沿わせるように、槍の穂先を合わせる。

 剣の動き、勢いをそのまま操作して、霊亀の使い魔(親衛型)の体制を崩す。

 補助魔法のおかげか、なんとかコイツらの動きについていける。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 俺はその霊亀の使い魔(親衛型)の剣を盾にして、弓を持っているやつに接近する。

 そしてそのまま、『魔王』で2体を貫いた。

 手から感覚として、『防御無視』で貫いたことがわかる。

 

ラースオブハーム!」

 

 俺の声ではない声が、口から出た。

 途端に黒い、光さえ通さない漆黒の炎のような何かが槍から吹き出して、霊亀の使い魔(親衛型)を焼却する。

 

「な、なに?!」

 

 キョウは驚いた声を上げる。

 だが、そんなことはどうでも良かった。

 俺はギロリとキョウを見据える。

 

「な、なんでお前はそんな焼け爛れて肌が炭のようになりながらも、そんな殺気を放てるんだ?!」

「……死に晒せ」

「チッ! 理性は残ってねぇか! お前ら! 俺様を守れ!」

 

 キョウはそう言うと、霊亀の使い魔(親衛型)を複数体召喚する。

 

「ま、俺様はお楽しみの準備があるんで、これで失礼するがな。もう会うことはないだろうが、ここで死んでな!」

 

 襲いかかる霊亀の使い魔(親衛型)と乱戦を繰り広げる俺に、キョウはスキルを唱えた。

 

「プレゼントだ、とっておきな」

「文式一章・火の鳥!」

 

 キョウの手元にある本のページが捲られると同時にページが離脱して、火の鳥が形取られる。

 それは、霊亀の使い魔(親衛型)達を巻き添えにして俺を殺すために放たれたスキルだった。

 

「じゃあ、あばよ! 名前も知らない冒険者!」

 

 キョウと元康を抱えた霊亀の使い魔(親衛型)はキョウの出したページに紛れるように消えてしまった。

 転移スキルだろう。

 そんなことよりも、俺はこの状況を打開する必要があった。

 今のHPではとても受け切れない。

 だが、手を止めれば、霊亀の使い魔(親衛型)に殺されるだろう。

 火の鳥は炎を発して俺に狙いを定めて飛んできていた。

 そんな俺は、ひどく冷静に状況を把握していた。

 

ラースオブハーム!」

 

 黒い炎を出して、『魔王』で霊亀の使い魔(親衛型)を薙ぎ払う。

 あのスキルは自動追尾型だろう。

 避けれないならば、防げば良い。

 俺は霊亀の使い魔(親衛型)を強引に掴むと、『魔王』を突き刺して気を送り込む。

 破壊する気ではなく、盾にするために防御の気だ。

 

「コォォォォォォォォォォォォ!」

 

 特殊な、武術特有の呼吸をすることで、呼吸が整う。

 そして、練った気を霊亀の使い魔(親衛型)に送り込む。

 ビクンビクンッと痙攣して、硬直したのがわかる。

 向かってくる火の鳥を俺は盾で受け流す! 

 火の鳥の嘴が盾に触れた瞬間、まるで手にとるように力の流れがわかった。

 

「ハァァァァァァァァァァァァ!」

 

 俺は息を吐き出しながら、力の流れをコントロールして、火の鳥を振り回す。

 そのまま、俺を中心に回転する。

 すると、残っていた霊亀の使い魔(親衛型)を巻き込んで、火の鳥が燃える。

 そのまま力を流して地面に叩きつけると、爆発が発生する。

 俺は飛び上がっていて、爆心地は上空は範囲外となっていたおかげで無事、逃れることができたのだった。

 俺はあの時、斧の野郎に殺されかけた時の感覚を思い出していた。

 

「はぁ…………はぁ…………」

 

 俺はその場に膝をついた。

 HPもMPもほとんど残っていない。

 だがしかし、なんとか命の危機から逃れることができたのだった。




一回戦かな?

まあ、宗介くんが満身創痍だったのでこんなものです。
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