メルロマルクまですんなりと戻れたのは意外だったと言う他なかった。
関所は霊亀の出現でそれどころではなく、槍の勇者の行方を知っているということで、俺たちはメルロマルク城へと案内されたのだ。
まだ、霊亀の再起動の話は聞いていないので、尚文たちは周辺の捜索中の時期だろうか?
どちらにしても、ここまできた以上はあの化け物と戦う必要がありそうだった。
「ソースケ様、よくぞお戻りになりました」
メルロマルク女王と謁見をする。
投擲具の聖武器を持っていないので、大丈夫か不安になったが、なんとかお目通りすることができた。
「投擲具の聖武器が奪われた事はすでに耳に入っております」
ライシェルさんをみると、うなづき返してくれる。
どうやらライシェルさんが報告してくれたようであった。
「ええ、なのでこの身はもはや勇者ではありません」
俺は首を垂れる。
まさか、こうして報告する羽目になるとは思っても見なかった。
「いえ、ライシェルからの報告は聞いております。どうやら、あの噂は事実のようですね」
そう言うと、女王陛下はため息をつく。
まあ、頭の痛くなるような問題が増えたと言う事だろう。
「タクト=アルサホルン=フォブレイ。フォーブレイ王国の王子ですが……。あまり良い噂を聞かないのは事実です。が、彼もまた、七星武器の奪い合いの参加者なのですね。彼は鞭の聖武器に選ばれているはずですが……」
ライシェルさんからの情報だけでここまで推測できるのは、やはり頭の良さからだろう。
てか、この人にここでバレてしまって良かったのだろうか?
「何にしても、ソースケ様が勇者で無くなったのは、この時期にとっては頭の痛い問題です。槍の勇者様と同行をしていたようなので、そちらの情報は助かりますが、霊亀との戦闘中にはぐれて行方不明になったとも聞いております。それに、あの子も足取りが掴めなくなったようですね」
女王陛下の眉間に皺が寄る。
「とにかく、霊亀はイワタニ様が鎮めてくださいました。現在はイワタニ様が中心となり行方不明の勇者様方の捜索を行なっているところです」
ジロリと女王陛下が俺を見る。
だいたい言いたい事は察することができた。
「ソースケ様にも、霊亀探索の支援をお願いしたいと思います」
ですよねー。
そう来ると思っていた。
ちなみに、怪我はもう完治している。
メルロマルクまでかなりの時間が掛かったからね。
そう、霊亀が再起動するには十分な時間が経っていた。
「伝令!」
慌てた様子のメルロマルク兵士が謁見の間に駆け込んできた。
「失礼、いかが致しましたか?」
女王陛下は他の兵士が止めるまでもなく、伝令の兵士に発言を許した。
「霊亀が! 霊亀が復活しました!」
「な、何ですって?!」
謁見の間が騒然とする。
そりゃそうだ。
なんと言っても、霊亀は途方もない被害を出しているのだ。
道中聞いた話によると、ウォーレンは既に霊亀によって滅ぼされてしまったらしい。
いくつもの小国が滅ぶほどの厄災だ。
それが活動を再開すれば、騒然とするのは当たり前であった。
「ソースケ様は驚かれていないみたいですね」
「そうなのですか? 陛下」
全く動じていない俺に目敏く指摘する女王陛下。
「と言う事は、この展開も未来の描かれた書物……と、勇者様方から聞いておりますが、それに書かれていると言う事ですね」
「……そうですね」
「いいでしょう。では、対策をとります。イワタニ様をこちらに戻ってくるように連絡をお願いします」
「はっ!」
「それから、会議室の準備を」
「かしこまりました!」
テキパキと指示をしていく女王陛下。
そして、俺の方を見る。
「ソースケ様、緊急事態でございます。以前のような出し惜しみはおよしになってくださいね」
「……わかりました」
これは逃げられないだろうな、と思った。
それに、あのクソ野郎はさっさと始末したいのが本音だ。
多少ショートカットしても問題はないだろうなと、そう考えたのだった。
「正直、助かります。霊亀の進路を考えれば、おそらくメルロマルクにまでやってくる事は明白でしたからね」
女王陛下はそう言って、謁見の間を後にした。
ライシェルさんがやってきて、俺たちに着いてくるように促したので、俺たちは女王陛下の後を追って、会議室に向かったのだった。
遅くなって申し訳ないですう