霊亀の再討伐に、俺たちも加わることになった。
女王陛下には、道案内は出来ないことを前提として、霊亀の討伐方法について全て話した。
いや、正確に言うならば、暴走霊亀の討伐方法だな。
心臓と頭の両方をほぼ同時に潰す必要があるのは変わらず、霊亀を暴走させている原因が心臓のその先、コアに当たる部分にいる事は話した。
「なるほど。そうなのですね。とは言っても、私たちには暴走しているかなんてわからないのですけれども……」
「盾の勇者の尚文様が、来賓を連れて来ます。それで理解していただけると思います」
実際、暴走霊亀は人類で対処できるレベルを超えた災厄だ。
波はまだ、人類でも対処可能だが、暴走霊亀はそれを遥かに超えている。
俺だけでは無理だし、流水気孔波で頭を吹き飛ばせるのが関の山だろう。
「それでは、出立の準備を致しましょう。場内の庭園でメルティを中心に準備をさせております。ふふ、メルティも成長していて嬉しいのですよ。ご容赦くださいませ」
女王陛下はそんな娘自慢をしつつ、情報を吐き出した俺を連れて、城の庭に案内してくれた。
そこでは、リーシア、メルティ第二王女殿下、エクレールとレイファ達が準備をしていた。
「おか……陛下! いらしてたのですね」
「ええ、準備の方はどうかしら?」
「はい、再調査から再討伐へと変更になったので、準備に少し時間がかかりましたが、先程完了しました」
俺はそんな二人を横目に、レイファ達の元へ向かう。
「ほんと、大変なことになったわね」
リノアはため息をついて、肩をがっくし落とす。
「ともあれ、アレを討伐するのは俺たちの役目じゃ無い。盾の勇者の仕事だ」
「ソースケはそれで良いの?」
レイファにそう聞かれる。
何を察してかは知らないけれども、レイファはレイファで俺を勇者だと見ている節がある。
そもそも俺は元々は勇者の……世界の敵なんだけどね。
「……ああ、流石に暴走霊亀を倒せるわけがないさ」
「……うん」
俺はレイファの頭を撫でる。
そういえば、レイファの頭を撫でるのも何か久しぶりな気がするな。
やはり、妹的な存在の頭を撫でると気持ちが落ち着くのは、姪っ子の頭を撫でた時に似ているからだろうか?
「ソースケ様は霊亀再討伐でどのような役割を?」
「おそらくだが、霊亀の内部に突入して、心臓の破壊を行うことになるだろう。俺の想定通りならば、8人目の七星勇者が手助けしてくれるだろうしな」
「8人目……? ソースケってたまに訳のわからないことを言うわね」
「まあ、頭は援軍に任せて、内部に侵入するのが役目になるだろう。龍脈法が使えるレイファは、多分こっちになると思うが……」
「うん、大丈夫だよ。任せて」
「そうか」
レイファも強くなっているんだ。
そこまで心配する必要はないだろう。
「ライシェルさんは……?」
「ライシェルさんは、エクレールさんと一緒に行くそうよ」
「まあ、あの人はメルロマルク騎士だからな。仕方がないか」
「ラヴァイトもついてくるし、心配しすぎよ。レイファはそこまで弱くないわ」
リノアの言葉に、俺がレイファを心配しすぎていたことに気づく。
まあ、後衛とは言え、装備はしっかりとしているし、前衛にならなければそこまで心配しなくても大丈夫なほど強くなっていたのは確かだった。
それに、レイファは龍脈法に適性があったのか、ハッキリ言って俺なんかよりも扱いが上手い。
と、不意に庭の地面に魔法陣が展開して、青白く発光すると、盾の勇者……岩谷尚文一行が出現した。
尚文は周囲を見渡すと状況を把握しようとしているところだった。
「これはイワタニ様。報せを受け取っていただけたでしょうか?」
「ああ、霊亀が活動を再開したんだったか」
「はい。イワタニ様がご帰還されたならば再調査を私どもで行おうとしていた矢先だったのですが……」
「運が良いのか悪いのか……」
尚文は頭を抱える。
「連合軍の方はどうなっている?」
「霊亀の周囲を探索していた者達は急いで退避しましたが、一部では間に合わなかったのか……。連絡が取れていません」
この会話を聞いて、ずいぶん昔に読んだ小説の内容を、今更ながら思い出していた。
流石に、何ヶ月もこの世界で戦い続けているのだ。
だいぶ小説の内容も忘れてきてしまうものだった。
と、女王陛下がオスト=ホウライに気づいたようだった。
「ところでそちらの方は……あの国で王の妾であられたオスト=ホウライ妃ではありませんか?」
「はい。何度かお会いしたことがありますね。メルロマルクの女王……」
深々と頭を下げて、頭を上げないオストの様子に、女王陛下は驚きを隠せない様子だった。
「これはどういった事でしょうか? 貴方が私にそのように頭を下げるなど、考えつきもしませんでしたよ」
「知り合いか?」
あれ、なんかちょっとだけ女王陛下の台詞が違うような気がする。
「世界会議の時に彼の国の王や使者と共に何度かお会いしました……」
「言うなれば……政治的な敵の立場で争っていました」
二人のやりとりに、俺は目を向けていた。
俺たちの準備に関しても、城の兵士がテキパキとやってくれているので、することが無いのだ。
あ、そう言えば親父さんに挨拶してなかったなぁ……。
顔ぐらい見せておくかな。
「鎖国をしている国ですが、上層部は他国との会議に出る事はありましたからね。こう……正直に言いますと嫌な女を演じておりました」
霊亀国は入国の時は面倒くさかったのは事実だ。
元康が槍の勇者だと名乗ってようやく入国が認められたのだからね。
今となっては死骸しか残ってないが。
「そう、彼の国の妾が此度の霊亀について知っているのですね」
「流石はメルロマルクの雌狐と呼ばれた聡明な女王……。そこまで把握しているのでしたら話が早いですね。盾の聖武器の所持者と協力体制にある貴方もどうかお聞きください」
「それならば、彼の力も役に立つかもしれません」
そう言うと、女王陛下が俺に目配せをする。
来い、と言う事だろう。
「どうやら、お呼びらしい」
「人気者ね……。あんまりこう言う状況じゃ羨ましくないけど」
「違いないな」
俺はリノアに軽口を叩きながら、女王陛下のところに馳せ参じる。
「宗介……!」
「彼は、現在は投擲具の勇者ではありませんが、相応の実力を持つ者です」
「……何だと?」
「イワタニ様、仔細は後ほどソースケ様からお聞きになられてください」
「……良いだろう」
尚文が俺を見るが、俺は肩をすくめる。
「《首狩り》のソースケですね。冒険者としては私の国まで噂は聞き及んでいます。問題ないでしょう」
オストはそう言うと、自己紹介をする。
自らが霊亀の使い魔である事、霊亀の本体が何者かに乗っ取られた事を告げる。
そして、霊亀としての役目が果たせないことも話した。
おおよそ俺の話した通りなので、女王陛下も何か納得するようにオストの話を聞いていた。
「元より我等は霊亀の狙いを阻止するのが目標です。信頼はできませんが、拒否も致しません」
「同意見だな。だから話を戻すが、ポータルで霊亀を倒した場所には飛べそうにない。ここから皆んなで出発すべきだろう」
「イワタニ様の考えの通り……私たちも行くしかないようですね」
「行くまでの間に作戦会議でもするか。準備はできているのか?」
「既に、出発の準備は完了しております」
どうやら、親父さんには会えなさそうだった。
まあ、槍も剣もボウガンも、城で用意してくれたものがあるので戦えないこともない。
「俺も大丈夫だ」
俺がそう言うと、尚文はうなづいた。
「じゃあ出発だ」
尚文の……盾の勇者の声に、その場にいた兵士たちが歓声を上げるのだった。
ここからは原作合流ルートになりますね。
なので、文章量が多くなり、更新も少し遅めになります。
宗介くんのせいで色々と話が前倒しになりそうですね!