波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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剣の勇者のソロプレイ
プロローグ


「ソースケ様」

 

 宿の一室で休んでいると、ノックもされずに扉が開く。

 どうやら国の騎士らしい。

 

「おお、ここに居ましたか!」

「何の用だ? 俺は大人しく街に滞在しているんだが……」

「今日はお願いがあって参上しました」

「お願い?」

 

 この腐った国が俺にお願い? 

 面倒臭そうなのでパスでいいだろう。

 

「断る。それよりいつになったらアールシュタッド領に戻れるんだ?」

「いえ、是非とも聞き入れていただきたいのです」

 

 どうやら、目の前の兵士は俺の言葉はYES以外聞く気はなさそうである。

 自分勝手な奴らめ……。

 

「本題ですが、是非ともソースケ様には勇者様の冒険を手助けする仲間となってほしいのです!」

 

 それを聞いて俺は、ようやくメルロマルクが俺を城下町から出したくない理由を悟った。

 なるほどね、そう言う理由だったのか。

 そう言えば、ギルドにもそう言うのを募集している張り紙があった。

 

「お断りしていいですか?」

「いえ、是非ともソースケ様には勇者様の仲間になっていただきたく!」

 

 いや、ホントそう言うのはやめてほしい。

 ここで俺が介入するとややこしい事になるからな。

 小説では仲間の描写が明確にされたのは、ヴィッチと燻製ぐらいなものであるが、少なくともアニメで剣、槍、弓を装備していたやつなんていなかったはずだ。

 少なくとも召喚当日には城内に燻製が居たはずなので、今日明日中には召喚されると思われる。

 

「なぜ俺なんだ!」

「それはもちろん、最初の波を鎮めた冒険者だからです」

 

 ああ、なるほどねぇ。

 波を鎮めるとこう言う弊害があるのか……。

 

「もちろん、盾の悪魔は召喚されないのでご安心ください。剣、槍、弓の勇者様を、このメルロマルクで召喚することになっています!」

 

 はい、ダウト。

 本来はフォーブレイから召喚していって、メルロマルクは3番目なはずだ。

 昨日運ばれていたのは召喚具で間違い無いだろう。

 

「はぁ、まあ、確かに波に対抗するんだったら、七星か四聖の勇者様に依頼をするのが適当だと思うけど、下手したら全部召喚されるんじゃないの?」

「そこはご心配なさらずとも大丈夫です。万が一召喚された場合は、他の勇者様が討伐する手はずになっています」

「はぁ……」

 

 何もわかっちゃいないんだなと、この三勇教兵士を見て思う。

 実際に波を目の当たりにした俺からしてみれば、とてもではないがコイツらの態度は脳内フラワーガーデンか、脳内ハッピーセットでしか無い。

 四聖が召喚される意味を全く理解していないのだろう。

 だからこそ、協力はしたく無い。

 面倒臭いな、ミナを通じてヴィッチに断らせるか。

 

「ミナはどうしたんだ?」

「ミナ様……ですか……」

 

 途端に目を泳がせる。

 

「どうしたんだ?」

「その……ミナ様……ミリティナ=アールシュタッド様は、現在アールシュタッド領に戻られています」

「ああ、やっぱり?」

 

 最近見ないなと思ったらそう言う事だったのか。

 

「城内でアールシュタッド卿に見つかり、先日アールシュタッド領に送り返されました」

 

 実際、ミナは夜に誘ってくる以外はそこまで邪魔になっていないせいか、悪い印象はない。

 ミナのせいでレイファに会えないと言う重大な障害ではあるけれど、それ以外はまあ役に立ってるし、冒険の間はいても居なくても正直どっちでも良かったりする。

 ま、父親に見つかって送り返されたなら、合法的に別れたので良い事だろう。

 思わぬところで解決して良かった良かった。

 

「アールシュタッド卿曰く、単に冒険者として活動するならともかく、勇者様と旅をするなどと言う危険な冒険に参加させるわけにはいかない、との事でした」

「……」

 

 あれ、これって俺が勇者のパーティに加わらずにアールシュタッド領に戻ったら監視再開されない? 

 

「はぁ……」

 

 頭が痛い。

 後ろ盾がない俺は半強制的に勇者パーティに参加じゃないだろうか? 

 うーん、だとしたら、剣の勇者……天木錬のパーティが一番良いだろう。

 菊池宗介なんて名乗ったらヤバいのはわかりきった話なので、偽名を使うことにしよう。

 確か、web版の記憶によると、メルロマルクの波の3波目の頃には燻製が抜け、一人が入れ替わってたんだっけ? 

 

「……わかった。協力しろと言うなら仕方のない事だ。どうせ王命だったりするのだろう?」

「……はい、助かります」

 

 と言うわけで、俺は渋々勇者パーティに参加することになった。

 

「なら、防具も新調しておくかな」

「わかりました。勇者様のパーティに入っていただけるのならば準備金として国が負担致します」

「そうか、助かる」

 

 俺は早速、()()()()()()()()()()()の購入をしに、騎士を同伴して武器屋に向かう。

 

「おう、いらっしゃい。あんちゃん、今日はどうしたんだ?」

 

 武器屋の親父さんはにこやかに対応してくれる。

 

「ああ、防具を調達したくてね。顔が隠れる防具が欲しい」

「となると、兜付きの防具だな。あんちゃんの戦い方にあったものなら……すぐに用意できそうだ。ちょっと待ってな」

 

 ごそごそと取り出されたのは、どこかで見たことのある鎧であった。

 

「あんちゃん動きが阻害されない作りになっている、市販の鎧に似た防具だ」

「これってカスタムオーダーメイドってやつじゃ……」

「ま、色々作っていて、これは試作品の一つだ。銀貨210枚であんちゃんに融通してやるよ」

 

 俺が城の兵士を見ると、うなづいた。

 

「では、こちらで受け持ちます」

「ん? 城の兵士じゃないか。どうしたんだ?」

「まあ、召喚される勇者様のパーティ? のメンバーをする事になるらしくてな。半強制だし、支度金で防具買ってくれるって言うからね」

「へぇー。ま、さすがは波を鎮めた冒険者ってところだな」

 

 親父さんは渡された銀貨を数える。

 

「よし、210枚だな。まいどあり!」

 

 と言うわけで、鎖帷子を引き取ってもらい(この分の料金は俺が受け取った)、一般的な鎧に見えるカスタムオーダーメイドの鎧を装備した。

 カシャカシャと音はするが、動きは確かに阻害されない。

 これはなかなか良いものである。

 

「では、ソースケ様、城の方に案内します」

 

 と、そんな感じで俺は城に案内された。

 そこで候補の控え室に案内されたのだった。




ミナとお別れ
でも奴はきっと戻ってくる(確信)

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