波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

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勇者の武具

「ソースケのことは後回しにするとして、俺はこれから武器を買いに行く。お前らも必要な装備は買った方が良いだろう」

「支度金は銀貨600枚ですからね。まずはアマキ様の装備を整えるのが一番でしょう」

 

 実際、あの中で一番装備が貧弱だったのは、ヴィッチだろう。

 もちろん、ワザとであるだろうが。

 

「そうだな。この服では防御力がないようだ。剣を育てるにしても、まずは店売りの剣を使った方が良いだろう」

「ふむ、ではアマキ様、近場に武器屋がありますので、まずは先にそちらを確認しましょうか」

「……ん? この国の武器屋は一つだけだろ? それも、序盤でしかお世話にならない武器屋が」

「いえいえ、最近できた武器屋があるのです!」

「そ、そうか……」

 

 あれ、もうちょっとゲーム知識に固執すると思ったのだが、案外素直にウェルトの言う事を聞くんだな。

 最初の頃だからだろうか? 

 

「では、案内しますね、アマキ様」

 

 最初の指示は、国からの指示があるまで他の勇者を盾の勇者に近づけないことである。

 確か、やり直しでは盾の次に剣が親父さんの店に行くんだっけか。

 黙ってウェポンコピーしていっただけだと聞いていたが、実際どうなんだろうな。

 

 ウェルトの案内で俺たちは武器屋に来ていた。

 

「いらっしゃい」

 

 この店は、どちらかと言うと量販店みたいなイメージの店だ。

 親父さんの店とは異なり、綺麗すぎる。

 奥に工房もないみたいだし、ゼルトブルの流通武器を扱う店のようである。

 

「すまないが、剣を一本購入したい」

「お客様、では当店自慢の一品をお持ちしましょう」

 

 棚に丁寧に飾られている剣を店主が持ってきた。

 

「こちらはいかがですか?」

「……悪くはないんじゃないか?」

 

 今の錬は目利きスキルや鑑定スキルなど持っていないから、テキトーに格好つけただけだろう。

 あの剣は、微妙な出来であるのは見ればわかる。装飾過剰の鉄の剣だろう。

 

「お持ちになってみますか?」

「ああ」

 

 錬が装飾剣を持って振るうと、バチバチッと音がして、錬は装飾剣を取り落としてしまう。

 

「くっ、何が?!」

「アマキ様?!」

 

 と、空中で文字を読むように目線が動く。

 

「何? 《伝説武器の規則事項、専用武器以外の所持に触れました》だと?」

「レン殿、どう言うことだ?」

 

 燻製も困惑している様子だ。

 

「どうやら勇者はこの武器以外には武器として使えないようだ」

 

 錬はそう言うと、装飾剣を拾う。

 お、動きが止まったぞ。

 

「ウェポンコピー……」

 

 錬はぼそりと呟くと、装飾剣を机に戻す。

 

「すまない。落としてしまって。他の剣も良ければ見せてもらえないか?」

「??? 構いませんが、装備できないのでは?」

「コイツらが装備するかも知れないだろう?」

「わかりました」

 

 錬は店員から色々な剣を受け取り、片っ端からコピーしていった。

 生産者からしてみれば、泥棒行為だなと呆れる。

 

「ソースケさんは、なんで呆れた顔してるのかしら?」

「えーっと、テルシアさん、だっけ?」

「そうよ。で、ソースケさんはなんで呆れたような顔をしてるのかなって思いまして」

「……さてな」

 

 まさか目の前で勇者が泥棒行為に近いことをやっているなんて、誰が悲しくて指摘してあげなければならないだろう。

 まあ、勇者は武器をいっぱい解放すれば強くなるので、誰も文句は言うまい。

 店主以外はな! 

 

「おい、行くぞ。やはり品質はあの店の方が良さそうだ」

 

 錬は剣を置くと、俺たちにそう告げた。

 どうやらこの店の品質はあまりよろしく無かった様子だ。

 結局俺たちは武器屋の親父さんのいる店に向かった。

 

「おう、いらっしゃい」

 

 相変わらず気のいい人である。

 

「お、あんちゃんじゃないか」

「おっす、親父さん」

 

 俺は知った仲ではあるので、挨拶をする。

 

「さっき盾の勇者様って奴が女連れできてたんだがよ。どーにも引っかかる感じの女を連れててやな感じだったぜ。ほら、お前が連れていたミナって嬢ちゃんに似た」

「あー、やっぱりそう見える?」

「ああ、あんちゃんの場合はそもそも信用してない感じだったが、盾のアンちゃんは信用しているみたいだったからな。気をつけてやんな」

「……善処するよ」

「で、さっきから剣を触ってる見慣れない服装の坊主は何者なんだ?」

 

 錬は黙々とウェポンコピーをしている最中だった。

 一応、紹介しておいた方がいいかな? 

 

「ああ、彼は天木錬って言って剣の勇者様だ」

「へぇー。って事は、四聖全員が召喚されちまったって噂は本当だったみたいだな」

「ああ、で、俺は剣の勇者様のパーティになったわけだ。不本意ながらな」

「あー、まあ、あんちゃんはそう言うのは好きじゃなさそうだもんな」

 

 なんか納得して言われたが、若干腑に落ちない。

 

「で、今日は何の用だ?」

「ああ、あの勇者様が使える防具を見繕って欲しいんだ」

 

 隕鉄の剣はまあ、良いだろう。

 

「はいよ。と言ってもまあ、見た感じだとあんちゃんと同じく軽装がいいだろうな」

 

 そう言うと、親父さんはアニメの一話で見たことがあるような錬の防具を取り出した。

 

「銀貨130枚と言ったところだ」

「おい、錬。防具はこれで良いか?」

「ん? あ、ああ」

 

 俺がメインで話しすぎたか。

 まあ、親父さんもあまり錬の方は覚えてなさそうではあった。

 最終的には弟子になるんだがな! 

 錬は鎧を手に取る。

 

「序盤だとそこそこ防御力が高い鉄の鎧の亜種か。いいんじゃないか?」

 

 錬はそう言うと、試着室に向かう。

 

「おい、冒険者!」

 

 燻製に胸ぐらを掴まれた。

 お、なんだこいつ? 

 燻製になりたいのか? 

 

「なぜ、剣の勇者様を呼び捨てにしているんだ?」

「ん? ……あ」

 

 年下だからすっかり忘れていたが、つい呼び捨てにしていた。

 いかん危ない危ない危ない……。

 燻製だけではなく、他のメンバーも若干睨んでいる感じがする。

 うーん、これは俺が悪いな。

 

「す、すまない。錬様、これで良いだろ?」

「波を鎮めたと言っても調子に乗るんじゃないぞ! 冒険者!」

「ああ、次からは気をつけるよ」

 

 俺が素直に謝ったからか、燻製は少し離れてくれた。

 

「おいおい、喧嘩は他所でやってくれよ」

 

 いかんいかん、確かにちょっとばかし傲慢になってしまっていたようだ。

 もう少し冷静に改めるとしよう。




つい、傲慢になってしまうのは、仕様です。

どのタイミングで剣の勇者のパーティを抜けようか

  • 燻製と同じタイミングで
  • 最初の波の後で
  • ドラゴン退治の後で
  • 第二の波の後で

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