波の尖兵の意趣返し   作:ちびだいず@現在新作小説執筆中

23 / 186
剣の現実

 錬の装備を整えた俺たちは、錬のレベリングをすべく城下町を出ていた。

 

「アマキ様、パーティの申請を送っていただけないでしょうか?」

「パーティの申請……ああ、これか」

 

 錬から申請が来たので、俺は許可する。

 すると、ステータス魔法左上にあるメンバー一覧が更新される。

 錬がパーティリーダーなため一番上に表示され、次に自分、他のメンバーの順に続いていく。

 しかし、ゲーム脳の錬がパーティ申請を忘れるなんて、よほどワクワクしていたんだな。顔も何だかんだでワクワクを隠しきれていない。

 

 まず、俺たちは錬の指示に従い、錬のレベル上げをすることになった。

 錬曰く、剣ならばどの地域の魔物を倒せば最適にレベルを上げられるかと言うのがわかっているため、俺たちは錬に従い戦闘を行う。

 尚文とは異なり、バルーン程度なら一発で切り捨てられるんだな。

 そこはさすがは剣の勇者様と言ったところか。

 入手経験値も、勇者様のパーティメンバーと言う事もあってか若干高めである。

 まあ、バルーンの場合は入手経験値は1な事には変わらないけれどね。

 錬のレベルが10まで上がったところで(これは驚くほかなかったが)、錬がこう言い出した。

 

「お前らの戦闘方法が知りたい」

「そうですね! 連携を取ることが重要ですから」

「いや、お前たちもレベルを上げるべきだと思ってな。戦い方によって適した狩場があるから、お前たちは今の俺に付き合わずにレベルを上げるべきだ」

「……勇者様がそう言われるなら」

 

 若干不満そうなウェルトだが、勇者様の言うことだし素直に従う。

 

「私は主に勇者様と同じく剣で戦います」

「なるほど、アタッカーか。レベルは?」

「14です」

 

 錬はウェルトを観察しながらそう断言した。

 俺の戦い方とは違い、後衛を守るような動きをする片手剣使いがウェルトの特徴だ。盾でも持ってればより良いのではないだろうかと思うが、盾は宗教上の敵のため、所持していないらしい。

 

「吾輩は主に斧で戦う。レベルは16である」

「メインアタッカー兼タンクか」

 

 燻製は斧を使う。樹を殺したのも、確か斧だったっけな。

 立ち回りは一発が大きいメインアタッカーだろう。

 

「私は主に魔法で皆さんを支援するのが役目です。適性は水と回復です。レベルは13になりました」

「後衛の支援型だな」

 

 テレジアさんは自己紹介でも言った通りのことを繰り返した。

 実際、錬が怪我した時にすぐに回復魔法を唱えていたしな。

 

「あたしは攻撃魔法ね。土と風の魔法が使えるわ。あたしは一発が強い魔法を使うわよ。レベルは21ね」

「攻撃魔法使いか」

 

 ファーリーさんは、的確な攻撃魔法で殲滅するタイプの魔法使いアタッカーである。

 今はあまり魔法を使っていないが、錬の撃ち漏らしを確実に仕留めていた。

 

「……俺は、まあなんでもできる」

「なんでも……?」

「前衛、中衛、後衛、魔法の攻撃、支援魔法、それこそなんでもだな。器用貧乏なだけだが」

「そうか、ならばお前は中衛をやってくれ。あと、レベルは?」

「20だ」

 

 ムカっとしたが、ここで対立をしても意味はないだろう。

 俺は素直に従う事にした。

 

「では、お前たちはこれから俺の指示する狩場で魔物を討伐しろ。魔物の死骸は剣に吸わせるから確保しろ」

「アマキ様はどうされるので……?」

「俺は、レベル10の剣を鍛えるのに適切な狩場があるから、そこでレベル上げをする」

「は、はぁ……」

「では、ここから二つ先の村で夕方6時に落ち合う事にしよう」

「わかりました」

 

 と、そんな感じで錬は俺たちに狩場を指示する。

 錬の指示した狩場は確かに効率よくレベルを上げることができた。

 俺にもどうやら勇者の加護がかかっているらしく、レベル上げ自体は快適にできたが能力補正は発動していないことは確認できた。

 お陰でレベルが22まで上昇した。

 1日でそこまで上がるにのはなかなか凄いことではあった。

 

「おお! さすがはアマキ様!」

「勇者様って言うのは本当になんでも知っているのね」

 

 と大絶賛であった。

 しかし、魔物の分布までゲームで再現されているのか……。

 よほど調査したに違いがなかった。

 ま、メガヴィッチは因果律まで操れる存在だから、わかって当然なのだろうね。

 

 夕方には俺たちは錬の指定した村まで行き、宿を取る。

 錬は18時ごろに一度戻り、食事をすると俺たちの成果を確認したあと、もう少し近くの狩場で魔物を狩ってくると言い、俺たちが集めた魔物の死骸を剣に吸収させた後に再び出て行った。

 

「ぬぅー……何なのだ!」

 

 何故か燻製が憤慨している。

 

「どうされました? マルド様」

「あの剣の勇者は一体何を考えていられるのだと言いたい!」

「と、申されますと?」

「これでは、正義を成せないではないか!」

「正義……? 勇者様に従って強くなれば正義を成せると思いますよ」

「……ふんっ」

 

 それからしばらくして、錬が戻ってきた。

 燻製は先ほどの不満そうな態度から一転して錬に従う様子を見せる。

 ヴィッチ関係者じゃ無いにしても、燻製はさすがヴィッチと同類なのだなと改めて感じる一幕であった。




剣の勇者のソロプレイ、はーじまーるよー

どのタイミングで剣の勇者のパーティを抜けようか

  • 燻製と同じタイミングで
  • 最初の波の後で
  • ドラゴン退治の後で
  • 第二の波の後で

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。